うなぎ「宮田楼」で ひつまぶし四段活用大須観音老舗の焼きぶり

miyataro.jpg伏見通りから門を潜り境内へ。 聳り立つ大きな幟は、南無聖観世音菩薩の八文字と一緒に、風と雨に揺れている。 そんな大須観音のお堂に一礼してからさらに奥を臨むと、境内がそのままアーケードと繋がっていて、大須観音通商店街と示す看板が読める。 のんびりとした雰囲気のアーケード。 そのアーケードの下に入って傘を畳んで振り向けば、そこにあるのがうなぎの店「宮田楼」だ。
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外装は漆喰風の外壁が綺麗に手入れされていて、殊更草臥れた印象はないものの、暖簾やその上の庇あたりはシブい風情になっています。 そして店内は、そんな入口廻りの雰囲気と同じ時間を過ごしてきたことを思わす年輪の味わいだ。 miyataro02.jpg「おしながき」の冒頭は、「上長焼き定食」「長焼き定食」。 でもここでもやっぱり所望するのは、ひつまぶし。 あれ?っと思ったのは、「上ひつまぶし」のところにお茶漬け出来ます、と書いてあって、「並ひつまぶし」のところにはそれがないこと。 お茶漬けまでの三段活用がひつまぶしのお決まりかと思っていたけど、そふいふ訳ではないのかしらん。 お櫃に塗す、から「ひつまぶし」であるとすると、茶漬けにすることとはそもそもは直接関係がない、ってことかもしれないね。 そうはいってもひとまず、三段活用に馴染んでしまっていることもあってお願いしていた「上ひつまぶし」がやってきた。miyataro03.jpg薄くカリっとしたところが包んでいるのは、ふっくら柔らかな気配の白い身。 ふと熱田神宮の有名店「あつた蓬莱軒」を思い出し、それらと比べると、タレや焼きっぷりのコッテリ感が控えめに映る。 お約束に従って、まずは茶碗によそったまんまをガツガツって頬張る。miyataro04.jpgタレは十分に甘く、ぐっと引き込む味わいの芯と脂とを備えている一方で、見た目に沿うように遠火の炭火というイメージのやや繊細な焼きぶりだ。 今度は、細かく刻んだ葱をたっぷりとのっけて。miyataro05.jpg意外なほどツユだくなご飯とちょっと混ぜ込むようにして、ハグハグ。 うん、薬味のしゃくしゃくと鰻の旨み、脂と甘辛いタレの風味の渾然が思わず頷かせる感じ。 そして、出汁を注いで、茶漬け仕立て。miyataro06.jpgやっぱりお茶でなくて、出汁がいいよなぁと独りごち。 呑んでの仕上げならお茶を注ぐスタイルで、こうしてひつまぶしの流れの中でいただくのであれば出汁で、というのが持論であります。 丸いお櫃から1/4づつを取る所作が通例で、茶漬け仕立てを啜ってもまだ1/4ほどがお櫃に残る。 で、その4杯目を2杯目と同様の薬味のっけにしてしまうのも通例パターンの四段活用。 ちょっぴり山椒を添えたりなんかして。miyataro07.jpgうん、この食べ口がやっぱり一番うまい。 そこを考えれば、茶漬けのない「並ひつまぶし」でという手もあるのかもしれないね。 大須観音に寄り添う、創業大正元年の老舗「宮田楼」。miyataro08.jpg買い物帰りのおばちゃんが慣れた様子で「うな丼」をと声を掛ける様子もまた似合っていて、何気なくも印象的な光景でありました。 口関連記事:名物ひつまぶし「あつた蓬莱軒」本店 でカリしっとりなひつまぶし(06年06月) 「宮田楼」 名古屋市中区大須2-21-31 [Map] 052-231-3815
column/02909 @2,500-

煮込みうどん「山本屋総本家」で 玉子入りカレーきしめんズニュっ

sohonke-ningyocho.jpg流石に冷えるようになってきたなぁと思いながら歩く人形町界隈。 と、鮮やかな緑色の暖簾が風に揺れているのが目に留まりました。 なんとなく見覚えのある緑色は、そうそう、名古屋名物味噌煮込みうどんの一方の雄、「山本屋総本家」の暖簾の色だ。 東京初上陸した秋葉原の店も確か、この緑の暖簾だったンじゃないかな。
sohonke-ningyocho01.jpg ここでもなぜか、「味噌煮込みうどん」と云わず、 「煮込みうどん」と表記したお品書き。 アチラとの差別化なのかなぁなどと勘繰りつつ、目線はその「煮込みうどん」を通り過ぎて、「きしめん」の章へ。 「玉子入りカレーきしめん」に目が止まりました。 壁に向かうカウンターで待っていると、「後ろ通りま~す」という声が聞こえ、「お熱いのでお気をつけください~」という注意喚起とともに、目の前に湯気の土鍋が据えられました。sohonke-ningyocho02.jpg 一見、濃厚赤味噌の鍋にも見えますが、漂う匂いは間違う事なきカレーのそれ。 箸できしめんを掴んで持ち上げようとすると、濃密なカレー汁を纏ったまま、箸からすり抜けようとするヤツがいる。sohonke-ningyocho03.jpgそしてそれが、カレー汁を撥ねさせる。 あ、あぶねぇ~(笑)。 慎重に啜らねばなりません。 ズニュ、ズル、ズニュっ。 素直に紙ナプキンをもらえばいいのだけどね。 カレー汁の塩っ辛さがやや強く、たおやかなきしめんが負けている感じ。 カレーに負けじと出汁の旨味もしっかと感じられるようなカレー汁だったらもっといいのになぁと思いつつ、ここに煮込みうどんの麺を入れたらいいのにとも思う。 きしめんより合うかもしれないし。 でも、一種のこだわりなのでしょうか、品書きにはそんなフレーズは見当たりません。 この夏あたりに開店したという、「山本屋総本家」人形町店。sohonke-ningyocho04.jpg暖簾の右下に「元大須」とあるのは、初代店主が「山本屋」という屋号を買い取って創業したのが、大須の地だからということらしい。 浅草・雷門通りにも出店していて、いつの間にか東京に三店舗を擁することになってます。 口関連記事:  煮込うどん「山本屋総本家」錦店で一半鍋三河地鶏入煮込玉子入(06年08月)  味噌煮込みうどん「山本屋総本家」で 親子煮込み東京初出店(04年11月) 「山本屋総本家」人形町店 中央区日本橋掘留町1-8-4 [Map] 03-5641-4448 http://yamamotoya.co.jp/
column/02908 @1,050-

鉄板焼き「銀座 響や」で 牡蠣鉄板焼に鉄板カキフライの香ばしさ

hibikiya.jpg晩秋の過日、 最上階ラウンジ「Peter」へとエレベーターに乗り込んだ夜。 その「ザ・ペニンシュラ東京」へと向かう前にお邪魔したのがこちら「銀座 響や」。 コリドー街の入口とも云えそうな、みゆき通りとの交差点近くのビル地階。 サントリー「響」を嗜む前に、「響や」で腹拵えと洒落込んだのは、鉄板焼きのお店だ。
hibikiya01.jpg 鉄板を囲むテーブルで、乾杯の「プレモル」。 どんな感じでお願いするのがいいのかぁとメニューを眺めたら、早速見つけちゃいました「牡蠣」の文字。 我儘を云って、その宮城・三陸産と謳う「牡蠣鉄板焼き」をいただきます。hibikiya02.jpg見るからにぷっくりとした牡蠣の身が、ぬらぬらと照りよく、そして控えめな焼き目。 軽く檸檬を絞って、そっと手元に引き寄せて咥え込めば、期待通りのぷりっとした歯触りで、生とはちょっと違うふくよかな魅力を伝えてくれます。 hibikiya03.jpg 調子に乗って(笑)、「鉄板カキフライ」も。 キッチンで調理され、アルミホイルに載ってきたのは、クリスピーにもみえる衣で挟んだ牡蠣。hibikiya04.jpgきっと、ちょっと多めの油を鉄板にひいて、パン粉で包んだ牡蠣を揚げ焼きするかのように、 そしてヘラで押すスタイルで両面から火を入れたんだね。 タルタルをたっぷり載せていただけば、水分の飛んだ牡蠣からは、 粉モン的香ばしい旨みがする。hibikiya05.jpgなるほど、鉄板焼きの店ならではの新しいカキフライだね。 hibikiya06.jpgやっぱりねと、「響」17年をハイボールにしてもらったり、 ロックグラスでお代わりしたり。 実は、ウイスキー「響」やダイナック系の「響 HIBIKI」とはまったく関係がないのが「銀座 響や」。 でも、ウイスキーといえば「響」を出してくれるのは、至極当然のノリでしょう。 口関連記事:ラウンジ「Peter」で 包む夜景沁みる歌声と響&ペリエの心地よさ(09年10月) 口オイスターパラダイスブログ:「カキタベ! ~牡蠣を食べよう!~」 「銀座 響や」 中央区銀座6-2-1 ダヴィンチ銀座B1 [Map] 03-3573-6383 http://hibikiya.net/
column/02907

喫茶「バロン」で ケチャップ官能ナポリタンとナポリタンなグラタン

baron.jpg新富町の「ほそ川」という居酒屋の脇を往くと、掠れた赤い文字で「営業中」と示す古びたスタンド看板が立っている。 その下の黒板的スペースには、「スパゲッティ」「グラタン」「ハンバーグ」「ビーフカレー」とあって、それはペンキ書き。 ずっと定番となっていることが窺えます。 そして一番下にある「バロン」というのが、 そのお店の名前。 狭い階段を上がったところが、喫茶「バロン」だ。
baron01.jpg 昭和な匂い漂うソファー席が奥へと並ぶ店内。 窓際の明るいテーブルに腰掛けて、眺めるメニューにスパゲッティが10種類。 その中でもやっぱり、「ナポリタン」が気になります。 baron03.jpg店内に早速響く炒め音。 テキパキ動き回るおかあさんが届けてくれたお皿は、 量感麗しいケチャップ色。baron02.jpg どれどれと、まずは粉チーズもタバスコも振らずにフォークの先を回してみる。 たっぷりと纏ったケチャップの甘さと酸味とともに、ちゅにゅちゅにゅと口元を滑る中太麺。 うん、いいね。 もっと炒めた感じも好みだけど、こうして濃度をちょと増したケチャップの官能も悪くない。baron04.jpgパルミジャーノレッジャーノなんかじゃなくて、いつもの粉チーズがまた似合うのだ。 そして、のむのむさんも気になっていたのが、「グラタン」の「イタリアン」。 木目のプレートの上にはホタテ型の深い耐熱皿と浅いサラダのお皿。 そしてそのふたつのお皿を跨ぐように厚切りのトーストがどんと載る。baron05.jpgなんかこのトーストが妙に嬉しいのは何故でしょう(笑)。 baron06.jpg関西で「イタリアン」といえば、云わずと知れたアレのこと。 やっぱりそふいふことなのかなぁと少し探るような気分でふつふつと焼け溶けたチーズとベシャメルの幕を捲ると、中からでてきたのは、うん、やっぱり。baron07.jpgイタリアンな「グラタン」は、ナポリタンなグラタンなのですよー。 ぬはは、溶けたチーズとホワイトソースを絡めたナポリタンというのも、一興であります。 今度ウチで作ってみようかな(笑)。 気がつけばサラリーマンで一杯になる、スパゲッティ&コーヒー「バロン」の正午。baron08.jpg「ビーフカレー」も「ハンバーグ」も素朴にイケそうな、そんな予感がいたします。 「バロン」 中央区新富2-11-1 井口ビル2F [Map] 03-3297-3763
column/02906 @700-

特級煮干そば「凪」西新宿店で 特級煮干と動物出汁巧みな融合

naginishishinjyuku.jpg新宿ゴールデン街の小さな小さな筐体で、 煮干しラーメンのひとつの基準軸を提供してくれている中華そば「凪」。 その「凪」が同じ新宿にもう一店、それも煮干しラーメンのお店を出したというので、それはもう行かなくちゃ(笑)と、突撃する機会を窺っていました。
ところは、「武蔵」が行列を作って以来、ラーメン激戦地のひとつと数えられるようになった小滝橋通りから常圓寺の裏手へと外れた静かな裏通り。 瑠璃色をベースに銀の文字がスポットライトに浮かび上がる。naginishishinjyuku01.jpg「中華そば」「特級煮干」「自家製麺」。 そして中央には亀甲で囲んだ「煮」の文字。 なにか、揺るぎない気概が伝わるようです。 そしてドア横の室外機の前にはどどどと積まれた段ボール箱。naginishishinjyuku09.jpgそのどれもが煮干しの箱のようで、ざっと見る限りでも愛媛・三島漁協のもの、鳥取・境港からのもの、房総・いづみ市からのものがある。 これもディスプレイのひとつだったりして(笑)。 そして、白い暖簾の柄をよく見ると「煮干」のふた文字をコラージュしていて、思わず微笑む。 頭上の青い看板もこの「煮干」が並ぶ暖簾もどちらも青木さんのデザインなんだね。 naginishishinjyuku02.jpg意外だったのは、カウンターの中にいるのがふたりとも女性だったこと。 煮干しで攻めるラーメンはなにも男ばかりが供するもんでもないのにね。 カウンターの立ち上がりに、「食器上げていただくと心温まるんだなぁ はるこ」と相田みつを調で書かれているところをみると、このはるこさんが女将なのでしょう。 メニューnaginishishinjyuku03.jpgは、「特級煮干そば」に「肉そば」「もりそば」。 「もりそば」の上に「売り切れ」の札が貼られています。 札が「特級煮干そば」の上にないことに安堵して、注文の声を掛けました。 昆布漬けの「味玉」もお願いしましょう。 「お待たせしましたー」。naginishishinjyuku04.jpgまたまた意外だったのは、ラーメンどんぶりに蓋がしてあること。 ははーん、煮干しの香りの衝撃を愉しんでねってな工夫とお見受けしました。 蓋の脇から早よ開けなはれと急かすようにスープが溢れ出て、そこからも煮干しの香りが漂い始めてる。 パカっ。 蓋を翻すと、鼻腔から脳裏へと抜けていく煮干しのにほい。naginishishinjyuku05.jpgそれがやがて全身を包んでくるような気分になって、高揚してくる。 早速、レンゲをスープを浸す。 スープ表面にたっぷりと浮かんだ煮干しの粒子がレンゲに集まってくる。 naginishishinjyuku06.jpgnaginishishinjyuku07.jpg 掬ったスープを恭しく、ひと口。 ぬおおおお。これはスゴい! 濃縮したかのような煮干し出汁の厚みある旨味と動物系のフルボディなエキスが高次元で仲良く結実している。 うひゃ~と思いながら(笑)、細目の麺を啜るとそれは、シャキサクと軽快な歯応えの中から粉の風味を芬々とさせるストレート。naginishishinjyuku08.jpg煮干し×脂動物系の強力特濃スープをすんなり受け止めて、自らも主張する。 自家製麺の自負と自信が窺えます。 改めて云おう、こりゃスゲぇ! もしかしたら東京随一の煮干しラーメン店と呼んでしまっていいのではないかとも思う、 「凪」西新宿店。naginishishinjyuku10.jpgストイックな印象の王子「伊藤」のドンブリに、巧みに動物系の厚みを融合した感じといえば伝わるでしょうか。 「凪」西新宿店 新宿区西新宿7-13-7 [Map] 03-3365-0296
column/02905 @850-