居酒屋「北龍」で はもちり下足やきぐじみそづけいわし煮路地情緒

hokuryu.jpgここにも再開発の手が忍び寄る、お初天神脇の路地。 「北サンボア」の並びには、新しいビルが建ってしまった。 ずっと気になっている酒肆「門」は、今夜も満席。 ならばとその界隈で、店先の表情を眺めて回ります。 そんな広いエリアではないので、すぐにひと廻り。 鼻を利かせて、一軒の白い暖簾へと突入を試みます。 「北龍」というお店です。
窺うようにしながら人数を知らせるサインを送ると、 白髪のおばちゃんが、ニンと笑顔で入口側のカウンターに誘ってくれます。hokuryu01.jpghokuryu02.jpg麦酒をお願いして眺めるは、塩ビのケースに入った扇型のお品書き。 よく見ると、赤鉛筆で描いた赤蜻蛉が飛んでいる。 こっそりと季節のあしらいがするあたりが、いじらしいではありませんか。 達筆に読めないところを想像するのも愉しいかも、なんて云いながらまず選んだのが「はもちり」。hokuryu03.jpgもう、名残りの品なのかもしれないなぁと思いながら、そのふんわりと繊細な味わいに一気に和む。 続けて、「けんいか下足やき」。hokuryu04.jpgまだ活きている剣先烏賊をさっと捌き、じわじわっと焼けば、嗚呼ゲソってこんなにイケるのねって、再確認をする思い。 ちゃっと振った塩が烏賊の甘さと滋味を引き出すのだね。 「北龍」で燗酒といえば、「白鹿」のみ。 冷酒は、富山の純米吟醸。 酒肴につられて呑んでベロベロになってもいかんしなぁと自重して(笑)、「白波」ロックをもらいます。 「ぐじみそづけ」は、例によって、味噌漬けとか粕漬けとかってなんだかズルい!をそのまま体現してくれている。hokuryu05.jpgお酒にも勿論、白いご飯も欲しくなるヤツだよね。 ほっこりと甘い白身と皮目の魅力に、なぜかうんうん頷いている(笑)。 ご飯のおかずにもいいよなーという点では、「いわし煮」も負けてない。 おかあさんの素朴な酒肴に和みつつ、またグラスの焼酎をくぴくぴと。 hokuryu06.jpghokuryu07.jpg 西を訪れれば、南蛮にも鱧なんだねと「はも穴子南蛮」。 玉葱と酸っぱめ汁でさっぱりといただく、衣に揚げた鱧、穴子。 うんうん(笑)。 擂り胡麻を振ったいりこや沢庵をおまけにもらって、残りの焼酎舐めながら訊くと、奥さんが壁の写真のご主人を継いで数年になるという。 BGMがジャズなのは、ご主人が好きで流していたからなんだ。 お初天神東門の路地情緒によく馴染む、居酒屋「北龍」。hokuryu08.jpg店の創業来46年、当地に来て36年になるのだそうです。 「北龍」 大阪市北区曾根崎2-5-37 [Map] 06-6311-5212
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Bar「Tony’s Bar」で 酩酊の帳に訊く埼玉モルトIchiro’s Malt

tonysbar.jpgずっとずっと気になっていたバーの一軒、 「Tony’s Bar」。 銀座界隈に古くから続く止まり木にお邪魔する機会はないものかと、頭の隅っこにひっかかっていたのです。 かつて十仁病院があった外堀通りの角からアマンドを折れてその裏手に回り込み、確かこの辺りだったはず、ときょろきょろ。 そうして、やや暗がりに浮かぶ「Tony’s Bar」の看板を見つけます。 どなたのデザインか、往時を忍ばせるような味のある、いいロゴ・タイプだ。
tonysbar01.jpg 地下への階段を下りると、 板張りに円い窓の覗く、船室の扉のようなドアが迎えます。 ドアを引き開けるとすぐに、ずらっと並んだ酒瓶の壁。 その壁はそのまま左にずっと続いていて、 その手前で曲線を描くカウンターに沿って奥へと。 一番奥の止まり木に収まって、林立するボトルを眺める。tonysbar02.jpgどこか雑然として、 ほんの少し濃い空気が滓のように澱んでいる感じが不思議な心地良さ。

目の前に「BRUICHLADDICH」を見つけて、そのボトルを手に取る。 やや若いバーテンダーが、確か、 その10年とClassic との呑み口の違いが面白い、 というようなことを説明してくれたと思う。tonysbar03.jpgアイラでありながらピートが控えめなのが「ブルイックラディ」の特徴で、なんて話を訊いて、 あ、そうか、先日池袋「もるとや」で舐めたのも「ブルイックラディ」だったと、 やっとこさ思い出す(笑)。 穏やかなピートであっても、ククっと甘く骨太なボディが顔を出す。 そんな感じ。

お次はなににしようかな、 とふたたびボトルの林から引き上げた一本が「カリラCAOL ILA」。 ラベルには、「CONNOISSEUR CHOICE」とあるボトラーズの1972。tonysbar04.jpgかつてそれなりに含んでいたピートの棘が今は円く角の取れている、そんな感じ。

きっと酩酊の帳が降り始めた表情で(笑)、 もう一杯なんかないかなぁという顔をしていたら、 「これなんかいかがでしょう」と差し出してくれたボトルのラベルには、 「Ichiro’s Malt」と書いてある。tonysbar05.jpgへー、かのイチローはそんなオリジナルボトルを出すほどのモルトラヴァーだとは知らなんだ! と思ってしまった酔っ払い。 「イチローはイチローでも、肥土伊知郎、なんです」。 我が意を得たりと、秘かにほくそ笑むバーテンダーに口惜しいけれど、 へ?という反応をしてしまう。 あー、そう云えば、 どこかでカードを描いたラベルのボトルを舐めたことがあったような気もする。 それがどこだったかは、まったく思い出せそうもないけれど(笑)。

この「Ichiro’s Malt」は、 その肥土氏が埼玉・羽生にあった蒸溜所のモルトをベースにブレンドしたものだという。 ラベルの「MWR」は、”ミズナラ・ウッド・リザーブ”を表すもので、 ミズナラの樽を熟成に使ったことを示してる。 そして氏が興した「ベンチャー・ウイスキー」は、秩父に蒸溜所を設け、 08年になってウイスキーの製造許可が降り、稼動を開始したらしい。 秩父でウイスキーが作られているなんて知らなかったなぁー。

「Tony’s Bar」のコースターが創業を示す、1952。tonysbar06.jpg往時、バーテンダー松下安東仁(トニー)さんの店として、名を馳せていたという。 主人を亡くしたカウンターを今は、 かなりお歳を召された姉ベッティさんと若いバーテンダーとで守っている。 叶わないことなれどやっぱり、 トニーさんのいる「Tony’s Bar」の空気にも触れたかったと思います。

口 関連記事:   SHOT BAR「もるとや」で カウンター眺めBRUICHLADDICH(09年09月)


「Tony’s Bar」  港区新橋1-4-3 芝ビルB1F [Map] 03-3571-0990
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豆腐 家庭料理「鉄砲洲 双葉」で とうふ生揚げ肉豆冨に麻婆豆腐

futaba.jpgふた月ほど前のお昼どき、 湊の洋食「キッチン トキワ」からの道すがら。 のんびりとした空気の路上で、OLさんたち数人が、 空席を待つかのようにしている光景に出会しました。 どんなお店だろうと眺めると、 暖簾には「築地 鉄砲洲 双葉」とある。 どこかで聞き覚えがあるような気もするなぁなどと考えながら、看板を覗くと「豆腐 家庭料理」とも書いてある。
そして、何気なくその右隣を眺めて合点がいく。 お豆腐屋さんが併設した料理屋さんなんだね。futaba01.jpg まずはやっぱり、当店自慢のと謳っている「とうふ定食」から。 futaba02.jpgお豆腐は、絹ごしか木綿かが選べます。 絹ごしでお願いすると、待ってましたと膳がやってきました。 きっとこれで、一丁なんだろうなぁという量感でデンと横たわる、お豆腐。 高さ4cmはある厚みを横から眺めながら、薬味を載せ、醤油をかけ回す。futaba03.jpgへー、透明感のある大豆の風味に素直なコクが備わって、なかなかいい。 futaba05.jpg昼から冷や奴を口いっぱいに頬張ることって意外とないことに気がついて、 さらに頬張る(笑)。 絹ごしだからってこともあるだろうけど、滑らかにしっとりと解けていって、 大豆の仄かな香りと素朴な旨味がやってきては、すっと消えるンだ。 「生揚げ定食」もまた、素敵(笑)。 「とうふ定食」のお豆腐同様、厚みと量感のある生揚げが揚げ立てでやってくる。futaba04.jpgサクサクとした衣の品のいい香ばしさとお豆腐のはんなりを大根おろしとおろし生姜で。 動物性タンパク質を直接ガツガツ摂るような主菜でないと、なんだかヘルシーな気分になってくる。 女性のお客さんが多いのは、そんなことが理由にあるのじゃないかな。 futaba06.jpg そしてお豆腐と云えば、「肉豆富定食」もまた嬉しからずや。 あっさりした味付けに、焼き目をつけた豆腐と豚バラ肉にしらたきが絡まって。futaba07.jpgここ「双葉」を賄っているのは、厨房を守っているオバチャンをはじめとする女性三人組なのだけど、なるほど男の料理とはどこか違う、丁寧な仕立てが気配に帯びる。 4本立てお昼メニューfutaba08.jpgの最後にあるのが、「おたのしみ定食」。 いわゆる日替わりメニューは、ロールキャベツだったり、鶏と大根の煮付けだったり。 そして勿論、お豆腐メニューになることもあって、それが例えば、「麻婆豆腐」。 お豆腐屋さんの「麻婆豆腐」というのは、意外と食べる機会がないンじゃないかな。futaba09.jpgややヒリヒリの辛さ加減で、家庭的な味わい。 でもそれが何故だか、不思議とあったかーい気持ちにさせてくれる。 豆腐そのものの甘さが引き立って、愉しめるンだね。 湊の裏通りに健気な情緒で佇む、豆腐料理の店「鉄砲洲 双葉」。futaba10.jpgどうやら、人形町・甘酒横丁の「双葉 本店」の流れを汲む店らしい。 ずっと以前、ちょっと一杯と飛び込んだ新橋のあの店も同じ、豆腐の「双葉」だったなぁと思い出す。 ここでも、あれこれ豆腐料理でちょっと一杯するのもきっと乙だねと訊ねたら、夜の営業はずっとお休みしているのだそうです。 うーん、残念(笑)。 口関連記事:下町洋食「キッチン トキワ」で ウィンブル丼に海老フライカレーに(09年07月) 「鉄砲洲 双葉」 中央区湊2-11-5 [Map] 03-3555-1028
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中華料理「中華シブヤ」で 鳥バンバンとキノコ炒めとオバチャンと

shibuya.jpg昔ここには、暖簾がシブい中華料理屋があったンじゃなかったかなぁ。 いや、もう一本手前の角だったかなぁ。 そんなことを思いながらも、その記憶は曖昧なまま。 記憶の断片を辿れないものかと、壁に掲げられたMENUを眺めていたら、すいんとドアが開いて、「はい、いらっしゃい!」とおばちゃんに声を掛けられちゃった。 その威勢の良さと、シャキシャキとした調子に乗せられ、そのままこじんまりした店内のテーブルへ。
shibuya01.jpg厨房の前の下がり壁に並べられた、 紅い品札を改めて眺めて選んだのが「鳥バンバン」。 品札にあるのは単品で、それにご飯とスープのセットをつけてもらいます。 「鳥バンバン」の「バンバン」ってなんだ?と考えれば、まぁ、棒々鶏の「バンバン」だろうことは容易に想像がつくところ。 棒で叩いて柔らかくしたから「棒々鶏」と呼んだのであれば、「鳥バンバン」の方がイメージにより近い気もするし(笑)。 そして届いたお皿は、なんだかとっても潔い。shibuya02.jpgボイルした鶏をもうそのまんま、やや酸っぱ辛いタレで、胡瓜の千切りと一緒に食べちゃってよ、 というモノ。 胡麻ペーストでやっつける棒々鶏もいいけど、こうしてみると酸っぱ辛いタレでいくのがホントのようにも思えてくる。shibuya03.jpg鶏そのものがそこそこに脂を含みんでパサつかず、ウヘヘと旨味を伝えてる。 こんなお昼ご飯も、あると思います(笑)。 数日あとのお昼にいただいたのも、素朴な一品「キノコ炒め」。shibuya04.jpgそれなりの量感を主張するエリンギをメインに、しいたけ、しめじあたりと豚、青梗菜をチャーっと炒めたモノ。 なんてことのない炒め物なのだけど、やっぱりこふいふお昼ご飯もありだと思うのね。 鍛冶橋通りが首都高を渡る、その橋の脇にある赤い看板が「中華シブヤ」の目印。shibuya05.jpg硝子越しに店内を覗けばきっと、屈託のない笑顔でオバチャンが迎えにでてくれると思います(笑)。 口関連記事:中華料理「宝来軒」で 昔ながらの中華料理店広東麺に炒飯に(03年05月) 「中華シブヤ」 中央区八丁堀3丁目2-4 [Map] 03-3551-9021
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LIVE HOUSE「STAR PINE’S CAFE」で 村田とパフェラッチ!

starpinescafe.jpg長い沈黙から覚醒するように、 ライブの本数を増やしている村田和人。 昨年の「Now Recording」に引き続き、この夏には14年振りの書き下ろし新譜まで出しちゃった。 そのタイトルは、「ずーーっと、夏。」。 横浜の「MILlIONS of Tastes DELI-CARTE」でも数曲聴かせてくれていたけど、今夜は村田バンドによるレコ発記念ライブだ。 starpinescafe01.jpg 久し振りの吉祥寺。 近鉄百貨店が三越&大川家具になったと聞いたのいつのことだったっけ。 今はそこがヨドバシカメラになっている。 今夜のライブスポット「STAR PINE’S CAFE」は、そのすぐ横手にあるんだ。 B1フロアはその下のフロアからの吹き抜けを囲むようになっていて、そこから階段を降りたところがB2のメインフロア。 もう既に満席に近く、最後方の椅子を探して座り込みます。 バーでギネスをもらって、何気なく丸テーブルのメニューを眺めていたら、お、ありましたよ、なにがって、パフェが(笑)。 そうとなれば、今夜は急遽、吉祥寺で「パフェラッチ!」だ。 開演前に食べちゃわなきゃと、慌てて再びバーカウンターの前に立って、「パフェできます?」と訊く。 それがなんだかちょっと、気恥ずかしい(笑)。 その名もそのまま、「スターパインズ・パフェ」。 そしてそれは、案の定というかやっぱりというか。starpinescafe02.jpgスターパインズ手作りらしい、星型のクッキーがキーとなるアテンション。 バニラアイスにベタっと甘いチョコレートソースがかかり、その下にはフレークが嵩を稼ぐという、今やもうレトロとも呼べそうな仕立てであります。 そのむこうのは、開演を待ちわびるステージ。starpinescafe03.jpgん~、このシチュエーションで「パフェラッチ!」できるとは思わなかったな(笑)。 さあ、アルバムのオープニング曲「JUMP INTO THE SUMMER」で幕開けだ。starpinescafe04.jpg 「STAR PINE’S CAFE」は、入口頭上のサインに「MANADA-LA5」と添えてあるように、老舗ライブハウス「曼荼羅」のグループ店。starpinescafe05.jpgずっと昔、井の頭通り沿いの「曼荼羅」に出掛けたことを思い出します。 口関連記事:CAFE「MILlIONS DELI-CARTE」で村田の夏とアボカドバーガー(09年07月) 「STAR PINE’S CAFE」 武蔵野市吉祥寺本町1-20-16 B1 [Map] 0422-23-2251 http://www.mandala.gr.jp/spc.html
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