庚申塚「御代家」で めぬけかぶと煮かんはつもと都電のホーム

miyoke.jpgチンチーン。 ひと気なく、のんびりした雑司が谷の短いホームにベルの音が聞こえた。 やってきた都電の車両は見覚えのある配色とは違って、レトロなテイストを帯びたツートンカラー。 荒川線に乗るのは随分と久し振りだ。 大塚駅前で一瞬、路面電車らしい風景を車窓から見せるけれど、走る軌道はほとんどが住宅街。 下車駅はその先の庚申塚駅。 すっと降りたホームのその場所にあるのが今宵の酔い処なのです。
ホームを抜ける風に揺れる暖簾を払うとそこは、落ち着いた風情の居酒屋たる佇まい。miyoke01.jpgすぐ右手の小振りなテーブルに腰を降ろして視線を上げると、今潜ってきた暖簾の向こうに電車の走る姿を覗けます。 miyoke02.jpg 気の利いた烏賊のわた和えをお通しにビールを呷って、お品書きmiyoke03.jpgmiyoke04.jpgの品定め。 熱々の「ゆであげ だだちゃ豆」でまたまたビールをぐいっとね。 「新さんま炭火焼」とあるのだけど、お刺身にはなりません?と訊くと、できますよっと即答いただいて、おろし生姜と一緒に。miyoke05.jpgああ、甘いほどに蕩けるようにする秋刀魚は、焼くのも勿論、刺身も旨い。 品書きにある「チャンバラ貝 塩ゆで」のチャンバラ貝ってなんでしたっけとふたたび訊ねると、マガキガイですね、というお応え。 ああ、マガキガイかぁ。 マガキガイは、今部屋で飼っている海水魚たちの水槽で、毎日せっせとコケや残留物の掃除をしてくれている巻貝のことでもある。 それを喰っちゃうのはなんか忍びないなぁと悩んでいると、じゃそれ!とこの夜の相棒のひとり。miyoke06.jpgああ、神妙な顔をしつつも結局、試しにひとつ、食べちゃうンであります(笑)。 すでに舐めている焼酎は、「青酎」。 伊豆諸島の一角、東京都青ヶ島で醸す島酒だ。 三つ葉もこうすると沢山食べられるねーと「鶏とみつばの和え物」を平らげて、串焼きあれこれをお願いします。 食道あたりの部位だという「かん」は、まさに管状な部位を集めた串で、「はつもと」は、レバーとハツの繋ぎ目あたり。miyoke07.jpgむにっとしてでも歯切れよく、なかなかイケる。 滋味とほの苦味と甘過ぎないタレの妙味と焼き加減と。 ぱりぱりと「皮」の食感を愉しんで、「砂肝」「うずらベーコン巻き」。 miyoke08.jpgmiyoke09.jpgmiyoke10.jpg しっとりほっこりした「つくね」に至る。 すでに替えていた焼酎は、「八丈鬼ころし」。 今度は八丈島産の島酒。 芋焼酎に麦焼酎をブレンドした焼酎らしく、すっきりした呑み口だ。 黒板メニューに「めぬけ かぶと煮」。 これがまた、旨い。miyoke11.jpgmiyoke12.jpg頭の周りについた肉を解して、こそげて、しゃぶって、舐める。 脂の甘さに品が備わっているようで、ぬる燗をきゅっといきたくなるような、ご飯が欲しくなるような。 以前、赤坂の「築地 奈可嶋」でいただいた「きんきの煮付け」をふと思い出し、これもかぶと煮じゃなくて身がしっかりついていたら、もっと醍醐味だったろうになと遠い目になる。 ま、もっとも、かぶと煮だからお安く愉しめるのだろうけどね。 ちょっとシメっぽくなにか、ということでいただいたのが「鶏のひつまぶし」。miyoke13.jpg所謂鰻のひつまぶしの、薬味のっけの二杯目あたりをイメージしたのか、鶏の出汁で炊いたご飯に刻み海苔刻み葱が載っている。 うんうん、悪くない。 何気ないけど、あって嬉しいシメメニューでありますね。 ご馳走さまをして暖簾を潜れば、そこはやっぱり都電のホーム。 そんなロケーションに癒されつつも、いつしか「御代家」の酒、酒肴にも癒される。miyoke14.jpgこのまままた、やってきた一輌に乗り込んで、池袋あたりにハシゴしようかな。 チンチーン。 口関連記事:肴と酒の和味処「築地 奈可嶋」で のどぐろ一汐干しきんきの煮付(06年10月) 「御代家」 豊島区西巣鴨2-32-10 神宮ビル1F [Map] 03-3918-0084 http://miyoke.ume2001.com/
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