シンガポール料理「Singapore Seafood Emporium」で肉骨茶

emporium.jpg入船交差点から鉄砲洲方向に進むと見えてくる紅い旗。
三日月に星5つは、シンガポールの国旗だ。
植木で囲んだ店先はなんだろうと見上げると、吊り下げた横板に「Singapore Seafood Emporium」。
さっと眺めるメニューには、「ナシゴレン」「トムヤム」といった見慣れたフレーズと馴染みのないフレーズとが混在しています。

右手の通路から中へと入ると、オープンなキッチンの雑然とした臨場感が迎えます。
ドア枠を潜る道路側エリアは透明なシートで区切ったテラスになっていて、アジアの食堂的雰囲気をさらに醸出しています。emporium01.jpg

ランチメニューはバラエティ豊か。
「飯精選」emporium02.jpgと括ったご飯モノが、炒飯、リゾット、カレーまでのトータル15種類。
「麺精選」emporium03.jpgには、炒麺から湯麺、トムヤムスープまでの14種類。

emporium04.jpgまずは、ご飯モノの筆頭、「海南鶏飯」からいただいてみます。

「夢飯」や「海南鶏飯食堂」でお馴染みのお皿も、どこかぶっきらぼうに映る盛り付けが反ってアジアっぽい。
手羽先をちょこんと上に載せ、浅い色合いのスープ炊きライスは勿論長粒米。
emporium05.jpgemporium06.jpg 茹でるのではなくて蒸し上げるのかなぁと当てずっぽうに考えながら、ぶつ切りの一片を例のソースでいただきます。
しっとりとした肉の味わいは、素朴な風情。
何かが足りないような、いやいやこれでいいような。
このソースは、バリで買って帰ってきたことのある甘口な醤油「KECAP MANIS(ケチャップマニス)」と同じ系統のものみたいだ。

emporium07.jpg日を変えて今度は、「肉骨茶」。
こう書いて「バクテー」と呼ぶらしい。
ポークスペアリブを浮かべた薬膳スープで、そのスープが黒褐色に迫る。emporium08.jpg薬膳だから甘いってことはないよなぁとおそるおそる啜ると、それー!とばかりに如何にも薬膳な風味が襲う。
丁子(クローブ)や桂皮(ニッキ)あたりの薬膳素材を想像しながら、織りなす辛味に汗が滲んでくる。
そこへ角肉を浮かべた、これまたシンプルなご飯なのだけど、ふと目を閉じれば華僑住むアジアの島の食堂にいるような錯覚が一瞬過ぎる(笑)。

emporium09.jpgあれこれ気になる麺モノから選んでみたのが、「チャオ クァイ ティオ」。
幅広のビーフンを海老、貝柱、しめじ、もやし、玉子なんかと一緒に炒めてある。emporium10.jpg全体を茶褐色が覆っているのはきっと、例の甘口の醤油で味付けしているから。
添えてくれている辛味を塗すようにしながらぴろぴろと啜るとオツな感じになる。
ま、こふいふのもたまには面白いね。

かつて、新橋、そして八重洲にあったという「シンガポール・シーフード・エンポーリアム」。emporium11.jpg夜ともなれば、”魚介市場”的なメニュー構成になるのかしらん?

「Singapore Seafood Emporium」
中央区入船1-7-9 [Map] 03-3206-1537

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らーめん「はやし」で 焼き豚らーめん多層な深みと洗練塩もあり

hayashi.jpgそれはおそらく、5年以上も前のこと。 多分、どこかで昼メシ摂った帰り道。 246の南平台辺りからマークシティの脇へ抜けようと歩いていて目に留めた白い暖簾。 粋な和食処のそれのような潔さで、中央に「はやし」とだけ標してある。 頭上には、湯気を上げるドンブリと雷紋のシルエット。 「へー、洒落たラーメン屋だ、今度来てみよっと」と思って通り過ぎたのでありました。
それ以来、思いついてはマークシティ脇の急坂を登っては、営業していない様子の店先を眺めること幾度か。 どうやら午後三時過ぎまでしか営業していないと知って、ハードルが上がったままとなっていました。 この日は、野暮用で渋谷に11時半。 あっ!と思い出して足を例の坂道に向ける。 おひとりさま待ちの後ろについて、しばし待機。 暖簾の裏の券売機hayashi01.jpgにはボタンがいくつもあるけれど、メニューの表示があるのは潔くも「らーめん」「味玉らーめん」「焼き豚らーめん」の三つだけ。 味付玉子入りとある「焼き豚らーめん」を選んで、ダークブラウンを基調としたダイニングっぽいカウンターの奥へと進む。 落ち着いた清潔感は、悪くない。 やや径の小さなドンブリを覗き込むと、半切にした味付け玉子の向こうに焼き豚ならぬ煮豚が揃って並び、その先に海苔が一枚。 太目のメンマが脇を固めています。hayashi02.jpgスープを啜って真っ先に浮かんだのが、最近は云われなくなった「青葉インスパイア」の文字。 「青葉」を多層な深みと共にすっきりと洗練させた感じは、とうに「青葉」を凌駕している。 hayashi03.jpgじっくりとコクのある要素と魚介出汁のバランスに仕立ての良さを思ってニヤリとする(笑)。 そう云えばと、はんつさんの「無化調ラーメンMap」を読み返すと、ゲンコツなども使っているもののスープの基盤は国産鶏で、じっくり時間をかけて作り、一晩冷蔵庫で寝かす、とある。 なるほど、すっきりと深い滋味はそんな工夫からきているのですね。 麺はエッジの利いたストレート。hayashi04.jpg低加水で、粉の味わいを素直に愉しめる仕様になっている。 もっとシャキシャキと食べたかったら、硬めにお願いする手もありますね。 ご馳走さま!と告げて帰ろうとしたところで、客のひとりがチケットをカウンターに置きながら「塩でお願いします」と言ったのが肩越しに聞こえた。 へ?塩もあるんだ。 どうやら、券売機や店頭の品書きにはないけれど、醤油でなく、塩仕立てでも供してくれるらしいと知って、改めてとある土曜日の昼(笑)。 先日と同じ「焼き豚らーめん」のチケットを「塩で」と差し出します。 hayashi05.jpghayashi06.jpg 塩であっても、スープは褐色。 さまざまな材料のエキスが煮出されて、この繊細な表情のスープになっているのだねー、なんて思ったりする。hayashi07.jpg味わいは醤油の方が輪郭がしっかりしている代わりに、 スープそのものの奥行きは塩の方が断然判る。 hayashi08.jpgドンブリの底に小海老が残るのは、塩ダレに含んでいるからなのかな。 そもそもタレで食べさすラーメンじゃないので、醤油でも塩でも極端に味の印象が変わることはないけど、塩も試してみたらいいかもね。 らーめん「はやし」で、落ち着いた雰囲気と丁寧な仕立てのドンブリと。hayashi09.jpgセンター街や道玄坂沿いは似合わない、立地の妙を思います。 「はやし」 渋谷区道玄坂1-14-9 ソシアル道玄坂1F [Map] 03-3770-9029
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信州戸隠そば「百々亭」で 一寸一杯おろし浅間にざる戸隠に

momotei.jpg長原~旗の台界隈で、蕎麦屋といえば思い浮かぶのは、長原駅前にあって残念ながらなくなってしまった「ちしま」か、中原街道沿い「長寿庵」か、旗の台駅裏の「笛家」か。 そしてもう一軒が、こちら「百々亭」。 江戸流のそばではなくて、信州戸隠そばを謳っています。 以前より、ちょこちょこお世話になってるんだ。
momotei01.jpg一寸一杯と生ビールをたのむと、突き出しに出てくるのが、そばせんべい。 ポリポリと素朴で軽快な口触り。
ひとまずその揚げたそばを齧りながら眺める品書きは、どうだとばかりに筆文字が迫る。 酒肴の品揃えもあれこれとバラエティがあって、例えば焼きものの中から選ぶ「うずらピョコピョコ焼」一串180円を二本ほど貰って、小さな玉子一個を口にしてはビールをくいっとして、また次の玉子でぐいっとする(笑)。momotei02.jpg燻製玉子のうずら版のような香ばしさがいいンだ。 そばを使ったつまみも幾つかあって、 「そば豆腐」は豆腐とそばがきと豆乳プリンの間にあるよな一品。 田楽風にタレが載せてあって、胡麻をふって。これはまぁ、ふ~ん、って感じ(笑)。 momotei03.jpgmomotei04.jpg 「そばコロッケ」ってのもあって、それは一見するに普通のコロッケ。 箸の先を割り入れると、中はやや鴬色がかったそばペースト。 もっちりまったりした、ちょっと不思議なコロッケなのです。 焼酎呑むなら、名物「そば湯割」かな。 さて、「百々亭」のおそばというと、品書きmomotei05.jpgには「戸隠」「真田」「小布施」「信濃路」「田毎」などといった信州の地名などに因んだざる・かけに「鴨葱」「天婦羅」「山菜」などが織り込まれています。 例えば、揚げ茄子を頂いた冷やかけの「茄子」。 時には、大根おろしを山頂の雪に擬えているという「浅間」という手もある。momotei06.jpg momotei07.jpgでもまぁ、素直に基本形の「戸隠」をざるでいただくのがよろしいようで。 ぼっち盛りと呼ぶ盛り付けをした笊から、盛り付けのままのひと束をつゆに浸して一気に啜る。momotei08.jpgズ、ズズ、ズズズー。 つゆの甘さやほのかに残るエグみがちょっぴり気になるものの、 そばそのものの喉越し風味は悪くない。 うんうんと頷いて、ズズ、ズズズー。 ちょいと信州に小旅行しちゃってる気分が味わえるかも、の戸隠そば「百々亭」。momotei09.jpg外気が気持ちいい時季には、店先のテーブルで冷たいお酒をやっつけるのも、きっとオツなんだな。 大井町のお店については、ゆきむらさんのレポートでどうぞ。 口関連記事:   手打ち蕎麦「ちしま」で おろし生姜がなんともオツなかきたまそば(06年06月)   総本家「長寿庵 くり田」で 有頭海老の天もり長寿庵の潮流(07年09月)   手打蕎麦「笛家」で 曇りなき牡蠣の魅力蕎麦打つ音を聴き乍ら(09年02月) 「百々亭」旗の台本店 品川区西中延2-15-19 [Map] 03-3783-0801
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たん「助六」で たんは焼かずにしゃぶに佳し唐揚げつくねに角煮

sukeroku2.jpgランチでちょこちょこお世話になっている、たん「助六」。 そういえば、夜の部にお邪魔したことがあったような気がするのは、移転する前の店でのことかもしれない。 ランチの後、店先でしげしげ眺めた夜メニュー。 そこにある「たんしゃぶしゃぶ」の文字に、「要予約かぁ」と呟いてみたりしていた。 と、そこへ、なんともジャストなタイミングの「たんしゃぶってのも乙かもー」とお誘いが。 行からいでか、行からいでか(笑)。
二階に上がるのも初めてなのでは?と思いながら、促されるまま座敷の隅へ。 今宵のテーブルは、築地王さんワシ・ブロさんromyさんとの4名さまご一行。 まずは勿論ビールをいただいて、 「たんしゃぶ」前にやっぱりアレコレ欲しいと品書きsukeroku2_01.jpgsukeroku2_02.jpgsukeroku2_03.jpgsukeroku2_04.jpgを物色します。 流石たん料理専門店と云うべきか、「たん」の文字がアチコチに踊る見開きから、「牛たん唐揚げ」「牛たんつくね」を。 「牛たん唐揚げ」は、パリパリと硬めの衣が薄いたんのスライスを包んでいる。sukeroku2_05.jpgなんというか、そうと知らずに何気に口にしたらちょっと変わったハムカツ齧ったような、そんな感じ。 「牛たんつくね」の方は、なかなかイケる妙味。sukeroku2_06.jpg粗くタタいたたんを丸めて、カラっとしたつくねにしてあって、齧れば間違うことなきたんの風味。 甘酢風のタレもまたいいんでないでしょうか。 sukeroku2_07.jpg 予約に対するサービスとして提供してれた「たん助六」と筆文字で大きく記す徳利の焼酎は、あっと云う間に空いてしまって、同じモノをお代わり。 さらには、「ゆでたん」と「牛たん角煮」を注文む。 最初に届いた小皿を見て、どう見ても「ゆでたん」ではないので、これが「角煮」であるのかと一同でちょっと訝る顔になる。sukeroku2_08.jpgランチで食べた煮込みとは仕立てが違うけど、これはもしや「牛たん煮込み」ではあるまいか。 多分お願いしたものとは違うけど、ま、いっか(笑)。 続いて届いたお皿の、なるほどこれは角煮だぁねの「牛たん角煮」も、悪くない。sukeroku2_09.jpg厚切りゆえの柔らかな噛み応えと一緒に、酒肴にもご飯のお供にも適う魅力があるね。 sukeroku2_10.jpgそろそろご用意いたしますか、ということでコンロがテーブルの真ん中へ。 野菜たちと一緒に届いた大皿にピンクに鮮やかなたん、たん、たん。 1ミリちょいの切り厚といったところでしょうか。 湯気を立てる湯殿にひたっと浸してうっすら霜降りになったところをポン酢系のタレにちょいとつけて、いただきまっす。sukeroku2_11.jpg焼いたたんに感じる噛み切れない時の遣る瀬なさなんて、なんのこと? 軟らかく歯の先を受け止めたかと思ったら、 たん独得の風味を残しつつ、するーんと胃の腑へと落ちる。 と、もう次の一枚へと箸の先が伸びている、ってな状況になる(笑)。 たんは焼かずにしゃぶに佳し。 どうやらそふいふことのようであります。 八丁堀のたん料理専門店「助六」。 女将さんによると、今の場所に移転したのは、もう13年も前のこと、なんですと。sukeroku2_12.jpg食べ損ねた「ゆでたん」が気がかりです。厚切りなのかなぁ(笑)。 口関連記事:たん「助六」で 牛タン焼きはたまた牛タン煮込み牛タンシチュー(09年05月) 「助六」 中央区八丁堀3-20-6 [Map] 03-3551-9705
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品達「伝説のすた丼屋」で特すた丼肉増しすた丼ニンニク増し増し

sutadon.jpgラーメン七人衆を集結した品達ラーメンに引き続いて、どんぶりモノの品達が開業したのはいつのことだったかな。 品川駅でお食事処を思案していて、 ハタと思い付いた高架下。 品達ラーメンを越えて、さらに北品川寄りへと歩みを進めます。 幟の並んだ階段を下りて、券売機の前に立てばもう、大蒜メインの匂いに包まれ始める。
sutadon01.jpgドアを入ればそこはもう、同じ匂いを共有する同志たちが蠢くようにする世界。 そんな状況にあって、若い女性客が少なくないのがまた奇妙な光景だ。
オーダーは、「特すた丼」。sutadon02.jpgフライパンで豪快に煽って炒めた豚バラ肉の上にこれまたたっぷりの白髪葱が載っている。 そしてその頂には玉子の黄身がスポットライトを浴びるように、艶めく。 sutadon03.jpgsutadon04.jpg その下のご飯の一部とともに大口開けて肉を噛めば、当然というか然るべきというか、辛さを伴うほどに多量の大蒜が利かせてある。 突き抜けるようにここまでしちゃうのが、すた丼、なんでしょうね。 よしゃーいいのに(?)再び、高架下。 前回にも増して女性が多いことにある種こっそり圧倒されつつ、店のおねえさんに渡したチケットは、「すた丼」と「肉増し」sutadon05.jpg。 焼肉デートのカップルは、なんて勘繰りはどうやら遠い昔の情緒のようでと思いつつ(笑)。 過日の「特すた丼」にあった白髪目葱のあしらいもなく、ただただ直球のニンニクタレ炒めの豚肉盛りには、潔さすらある。 sutadon06.jpgsutadon07.jpg 玉子を真ん中に乗っけてみると、急に表情を現してきて、 食べ口の面からもまさに画竜点睛をみる思い。 sutadon08.jpg疑うことなき確信犯ではあるのだけど、脂含みの豚バラ×ニンニク塗し攻撃はやっぱりズルい。 突如「二郎」したくなるのと同じ症状が自分を襲うかもしれないことが、心配だったりして。 ま、また食べに行けばいいだけのことなンだけど。 分倍河原の本店で35年に亘って”一丼相伝”で守られてきた絶対の味を惜しげもなく口々に伝える品達どんぶり「伝説のすた丼屋」。 お家でもできそうな、決してそうではないような、そんなニンニク増し増しがいただけます(笑)。 「伝説のすた丼屋」 港区高輪3-26-21 品達どんぶり内 [Map] 03-5475-7020 http://www.shinatatsu.com/
column/02815 @770-