酒肴処「うまいもん屋」で おまかせイタリアン鍋大将の心意気

umaimonya.jpgご無沙汰してしまっていた、築地「うまいもん屋」。 ただ、お昼どきに前を通る度、「今までに訪れたことがない人はお断り」を旨とする札が立て掛けられているのは目にしていて、観光スポット化してしまい、我慢ならない客がいたとか、普段使いの常連が入れなくなったとか、そんなことでもあったのかなぁと考えていました。 今夜は、その「うまいもん屋」で、「くにろくOFF」忘年会。 大将、元気かな。
今宵の同志は、総勢14名。 テーブル席を全部占拠して、一列の大テーブル状態。 そしてそのほぼ全員がデジカメを構えるという光景は、小上がりのお客さんからは奇異なものに映ったらしい。そりゃそうだ、ゴメンナサイ(笑)。 umaimonya02.jpg 里芋と人参の煮物とか炒め煮した蓮根とか青菜とか、 蒸かして塩した零余子(むかご)とか。umaimonya01.jpg素朴かつ真っ直ぐな酒肴たちで、宴のスタートだ。 umaimonya03.jpgこいつはいかんと(笑)、麦酒は早々に仕舞いにして、純米吟醸「笹祝」や純米「浦霞」に手を伸ばす。 umaimonya04.jpgそこへ大皿の到着です。 ひと皿4人前のお造りは、中央にまだぴくっと動く伊勢海老を、周囲に鮪、蛸、甘海老、雲丹を配してくれています。umaimonya05.jpgう~ん、伊勢海老の身の甘さが味蕾に沁みて、冷や酒にしみじみ。 と、そこへ、ひとりに半身の鯛の頭の煮付け。umaimonya06.jpg目の裏あたりをほじほじしては猪口をくぴっと、唇や頬あたりをほじほじしては猪口をくぷっと。 この調子で呑んでていいのだろうかと悩みながらも、ぐぴっとね(笑)。 ありゃありゃ、お次は鱶鰭のあんの載った茶碗蒸し。umaimonya07.jpg気がつけばぺろっと食べ終わっている、勿体なくもこれも気の利いた酒肴なのですな。 生牡蠣をちゅるんと啜って、純米「天狗舞」。 umaimonya16.jpgumaimonya17.jpg 抹茶風味にホイップしたクリームチーズを添えた南瓜をかぷっと咥えて、特別純米「酔鯨」。 umaimonya08.jpgそして、ここでテーブルを埋めていた大皿小皿に不要なグラス食器のお片づけ。 女将サンが届けてくれた鍋には、なにやら赤い液体がなみなみと注がれていて、そこへ蛤をドコドコと入れ、ぶつ切りにした伊勢海老を身も味噌もそのままワサっと入れる。umaimonya09.jpgumaimonya10.jpgumaimonya11.jpg さっと沸いて、蛤がパカリと口を開けたところで、トマトやオクラ、茄子を投入し、さらに大量のレタスを鍋を覆うようにのっけるのであります。umaimonya12.jpgumaimonya13.jpgumaimonya14.jpg レタスがしんなりしてきたところでお許し(笑)が出て、一斉に箸を伸ばす面々。 はー、もー、どうしてって考える間もなく、「うほうほ、うめー!」とよそい足す。 スープの赤の正体は、唐辛子系の赤というよりトマトの赤。 とっぷりと煮出した出汁にトマトの甘み酸味が否応なくマッチして、うほうほ。 空になった鍋を見詰めて、嗚呼一気に食べ終えちゃったじゃん、という寂しさも束の間。umaimonya15.jpg残された伊勢海老の殻の上にどさっと載せられた白子にニンマリ。 ところが実はここからがクライマックス。 残骸を綺麗に浚って再びわっと沸かした鍋の出汁。そこへご飯を投入し、玉子を追いかける。 鍋の仕上げにご飯投入は云わばお約束だけど、そこは「うまいもん屋」、ひと筋縄ではいかないよ。 そのまま杓文字を動かし続けなさい、と女将さんの指令が飛ぶ。 umaimonya18.jpgumaimonya19.jpgumaimonya20.jpg そして頃合をみて、大量に投入するは粉チーズ! さらに混ぜ混ぜする光景は、花畑牧場で生キャラメルを作っているみたいだ(笑)。 随分と水分が飛んで、固めのリゾット風になったところで仕上げの粉チーズを再投入、ひと巡り掻き混ぜて出来上がり。umaimonya21.jpg下地のトマトスープに、蛤、伊勢海老の身や殻、野菜たち、白子なぞなぞの旨味が凝縮したところへチーズの魅惑。 ズルいよな~、こういふの~。 あれだけ捏ねているのに、旨味をたっぷり纏ったご飯のひと粒一粒がヘタレず活きている。 最初の蛤投入からいろんなことがあったけど、だからこそこのクライマックスがあるのだね。 悶絶しそうになるのは、呑み過ぎてるからでは断じてないのだぁ(笑)。 女将さんは「トマト鍋よー」と仰るけれど、月島仮面さんが呼ぶ「イタリアン鍋」がぴったりくるね。 よくぞ名付けた、酒肴処「うまいもん屋」。umaimonya22.jpgお会計が嬉しいのもまた、大将の心意気なんだな。 今宵の同士は、主催の月島仮面さんと OFF会の主「くにろく 東京食べある記」のくにちゃん、Mikasaさん、「おいしい店・うまい店・安い店」のこうめさん、「コナモンこんなもん?」のどるふぃんさん、「あなさんの美しき日々」のあなさん、pochiさん、「ブログbyフードジャーナリスト はんつ遠藤」のはんつ遠藤さん、 『超らーめんナビ』の管ちゃんさん、「ワシ・ブロ」のワシ・ブロさん、「ワンコイン的食べ歩き生活。」のぎずもさん、まさぞうさん、 ちょんさん、の皆さんでした。 愉しい酒宴をありがとうございましたー。 口関連記事:   酒肴処「うまいもん屋」で あこう煮定食しみじみ夜予約しなくっちゃ(06年02月)   酒肴処「うまいもん屋」で のれそれ刺しにしろうお踊り鍋は鮪アラ(06年03月) 「うまいもん屋」 中央区築地2-10-5 寿ビル1F [Map] 03-3545-5455
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西洋御料理「小春軒」で かきフライにかきバタヤキ春さんの面影

koharuken.jpg「来福亭」の並び、「シェ・アンドレ」の向かいにある「小春軒」に久し振りのお邪魔です。 目当ては、店頭の品書きにみつけた「かきフライ」の文字。 いざいざと、白くてたっぷりとした暖簾をすっと潜ろうとしたら、何かが頭に引っ掛かった。 へ?と思って慌てて頭を上げると、どうやら暖簾の縁が解れて、輪っか状になってるところへ頭を突っ込んでしまったらしい。 恥ずかし混じりに改めて眺める暖簾。 そんな古いものではないだろうけど、数箇所見つかる継ぎ接ぎと半円を連ねた縁取りのデザインに、老舗の味わいを思ったりもします。
相席のテーブルへと手招きしてくれたおばちゃんに「カキフライ」をとお願いして、待つこと暫し。 届く簡潔なるお皿には、キャベツの千切りにポテトサラダにお約束の5片のフライ。koharuken01.jpgさっと檸檬を絞って、カプッと齧れば牡蠣の汁がひゃっと迸って、火傷の予感。 そのリスクと引き換えの、一瞬の旨味の迸りはマゾヒステックな歓びにも似て(?)。 koharuken02.jpgkoharuken03.jpg 揚げたてひと口めの醍醐味なのかもしれないね。 koharuken04.jpg「小春軒」には「来福亭」に同じく、牡蠣料理にもう一品「かきバタヤキライス」がある。 それを求めて今度は、奥のカウンター。 フロスト状の硝子越しにコックコートふたつが忙しなく動く様子を眺めつつ、再び待つこと暫し。 芳しくちょっと焦げたバターの香りと一緒にやってくるお皿。koharuken05.jpgこれをズルイと云わずしてなんと云おう。 koharuken06.jpgkoharuken07.jpg 頃合よくソテーした牡蠣は、牡蠣自身がひと廻り衣となって、自らの旨味を閉じ込める。 そこへ洋食の王道的味つけ風味づけをされちゃー、ご飯が進んで困るじゃんね(笑)。 koharuken08.jpg賽の目に刻んだ野菜が朗らかな「カツ丼」も人気という「小春軒」の創業は、明治四十五年。 「小春軒」の名は、創業した小島種三郎さんの奥様が”春”さんという名だったこと由来しているそう。 koharuken09.jpg そう云われてみるとふと、お店のホールで甲斐々々しく立ち振る舞う”小春”さんの姿が脳裏に浮かんだりしませんか(なんちゃって)。 口関連記事:   Cafe Bistro「CHEZ ANDRE」で シューファルシとママンの笑顔(08年11月)   西洋料理「来福亭」で カキバタヤキ最高のご飯の友(08年10月) 「小春軒」 中央区日本橋人形町1-7-9 [Map] 03-3661-8830
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甘味処「銀星」で 昔ながらの風情抹茶パフェにパインパフェ

ginsei.jpg中央通りと呼ぶ、荏原町の商店街。 ブラジル料理とフランス料理の店「コロンボ」の丁度向かいあたり。 駅へと抜ける路地の入口脇に甘味処があります。 左手に硝子ケースには、手作りな和菓子や赤飯・おいなりさんなどが並び、右手のケースにはおしるこ・ぜんざいに上下してパフェのサンプルが覗ける。 そう、今日は大井町線沿いの町角、荏原町で「パフェラッチ!」です。
昔ながら感が味な風情を醸しているファサード。 店内の空気もゆったりと枯れてる、そんな感じ。 パフェのメニューginsei01.jpgもシンプルそのもの。 「フルーツ」「バナナ」「ピーチ」「パイン」に「チョコレート」。 決して華美にコテコテなんかしていない。 壁に新メニューの貼紙を見つけました。 新メニュー「抹茶パフェ」。 新たなメニューにして、このスタンダード感。 そうでなくっちゃ(笑)。 年嵩のおばちゃんが奥の厨房に声を掛け、奥で応えるおっちゃんの声。 「銀星」の「抹茶パフェ」は、銀星特製の抹茶アイスとおしるこあんの合わせ業。ginsei02.jpg甘さ優しきホイップと抹茶、ホイップとあんこ、あんこと抹茶の取り合わせがこのグラスの本懐か。 ginsei03.jpgginsei04.jpg 底の方にいくとあんこが漉し餡になってたりする。 でも、これに缶詰パインは合わないかもね(笑)。 じゃ、その「パイン」はどうかと再び寄ってみました。 うんうん、すんなり納得のシンプルなつくり。ginsei05.jpg緑のシロップが洒落て映る。 荏原町商店街すんなり馴染む、甘味処「銀星」。ginsei06.jpg「銀星らーめん」「わんたんめん」「もやしそば」「餅入りらーめん」、 さらには「とんこつらーめん」「担々麺」と、実はらーめんのラインナップも充実している。 きっと、飾らない、どこか懐かしい感じのどんぶりなんだろなぁ。 口関連記事:ブラジル・フランス料理「コロンボ」で シュラスコとパルミットと(08年12月) 「銀星」 品川区中延5-2-6 [Map] 03-3786-0031
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銀座「三重ノ海」で ふぐ天丼と鯛かぶと御膳と敷居の高さ

mienoumi.jpg三原橋交差点の角、中華「黎花」や「銀座 十勝屋」の入るビルなぞの裏手を歩く。 歌舞伎座を眼前に望める裏通りで、 「ふぐ天丼」という文字mienoumi01.jpgを見つけました。 限定食、と小さく肩書きされた品書きの主は、 ご存じ「三重ノ海」。 宵闇以降に窺うお店の佇まいは如何にも敷居が高そうで、縁遠いなぁと思ったものです。 それが、何時からなのか、ずっとそうなのかは不明ながら、比較的安価なお昼どきメニューを提供している。早速寄ってみました。
mienoumi02.jpg案内されたのは、一階のカウンター。 壁には、どなたの手によるものか、銀杏を結わえた力士のポートレートmienoumi08.jpgが掛けられています。 階下に座敷などの客席があるようですね。 「ふぐ天丼」の膳がやってきました。mienoumi04.jpg フグは二尾。 はふっと噛めば、ふにゅんと応える独特の歯触り。 淡泊な白身の中から、およそ河豚らしい香気がほんのりと漂って面白い。 mienoumi05.jpgmienoumi06.jpgmienoumi07.jpg 大きさから考えてもきっと、ショウサイフグなんじゃないかなぁと思いながら尋ねると、如何にも角界上がりの方と思わす恰幅の御仁(横綱のご子息らしい)が答えてくれた。「はい、その通りです」。 もう一品と訪ねた後日は、「つくね味噌煮御膳」と迷って選んだ「鯛かぶと煮御膳」。mienoumi09.jpgちょっぴり甘め煮汁で、でもさらっとあっさりと炊かれた鯛かぶと。 mienoumi10.jpgmienoumi11.jpg そこここを箸の先で穿っては針生姜の風味と一緒に煮汁に浸して口へ、を繰り返していくとその動きが何故だかだんだん早くなる(笑)。 あんまり食べるところがなさそうにみえて、それが意外とそうでもない。 ちょっとしたオトナなお昼膳な感じもして、悪くない。 第57代横綱にして第10代武蔵川理事長、三重ノ海。 その名をそのまま冠した「三重ノ海」。 会席料理に「三重の馳走」とやっぱり夜の部は、敷居が高い。mienoumi12.jpg然すれば深川にあるという、ちゃんこな姉妹店へというのも一手のようで(笑)。 「三重ノ海」 中央区銀座5-14-17 アイデン銀座1F・B1F [Map] 03-3542-6633 http://www.mienoumi.com/
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つきじ「魚惣」で しみじみかき天ぷらエキスどぅわっと牡蠣味噌鍋

uosou.jpg土手鍋が喰いてぇ。 そんなリクエストに応えるべく、文献あれこれやWeb上を捜索するも、見つかるのは在京する広島牡蠣料理の大御所「かなわ」くらいのもの。 その「かなわ」でも確か、その名の通り”土手を作る鍋”ではなかったはず。 已むなく、味噌仕立ての牡蠣鍋の店に軌道修正して辿りついたのが、こちら築地の「魚惣」です。
夜ともなれば静かな通りは丁度、市場の海幸橋から真っ直ぐ聖路加の方へ抜ける筋。 「魚惣」の暖簾が、密やかに揺れていました。 手書き品書きuosou01.jpgから選ぶ、まずは、お造りから。 勿論肝も一緒だよねと尋ねてお願いした「かわはぎ」。uosou02.jpguosou03.jpguosou04.jpg 澄んだ白身で肝を包んで、ポン酢にちょんとつけていただけば、もうなんの文句もありません(笑)。 uosou06.jpg もう一丁、と「寒ぶり」。 エッジの立ったひと切れを醤油注しに触れさせると、ゆっくりと脂が滲む。uosou05.jpgでも、トロトロではなくって、脂のノリもこの位の頃合いよろしいようで。 金芋焼酎と書かれた「蘭」を舐めつつ、「煎り新銀杏」に「浅蜊大根」。 uosou07.jpguosou08.jpg 浅蜊を炊いた滋味の汁に、大根の甘さがゆるりと活きて、ほんわかとする。 uosou09.jpg これも外せないよねと「かき天ぷら」。uosou10.jpg軽妙な衣の先から、すっとレア気味に火の通った牡蠣がその魅力を訴える。 素っ気ないフリして、しみじみ旨いのだから、もう(笑)。 uosou11.jpg 「きぬかつぎ」をちゅるんと咥えたあたりで、卓上の真ん中あたりにスペースをつくる。 準備の整ったところへ、土鍋がやってきました。 予約時にお願いしていた、牡蠣鍋。 お品書きに「かき味噌雑炊」はあるけど、牡蠣鍋は見当たりません。 uosou12.jpguosou13.jpg 既に出来上がっているところへ春菊をON!して、いざいざ。 はふほふはふほふ、うほ~。uosou14.jpgぷりっとして身の量感豊かに、どぅわーっと牡蠣エキスが口一杯に広がる。 いーなー、はふー、いーなー、はふー(笑)。 慌て過ぎて、案の定口の中やや火傷気味ながら、そんなことお構いなしに食べ進む。 味噌の加減も出汁の具合も、染み入るような真っ当仕立て。 新たに投入の牡蠣たちも平らげて、お約束の雑炊へ。uosou15.jpguosou16.jpg牡蠣の滋味に野菜たちの甘み旨味が加わって、これがもう、美味しくない訳がない。 鍋底削っちゃうくらいの勢いが恥ずかしいほどに、綺麗に完食であります。
ふー、満足満足ぅ。 築地の裏手で、ひっそりと存在感を放つ、つきじ「魚惣」。uosou17.jpg今度は、「鮃小袖寿司」もいただかなくっちゃ。 口関連記事:つきじ「魚惣」で おっとり所作と上品仕立ての深川丼と(07年05月) 「魚惣」 中央区築地6-5-4 大哲木村ビル1F [Map] 03-5565-8652
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