osteria e wine bar「incanto」でルカーニカからエトフェに至る

incanto.jpg広尾から天現寺交叉点を目指す。 真っ直ぐ渡れば、「LA BISBOCCIA」が懐かしい慶応幼稚舎の辺り。 恵比寿寄りの一角には、 「ACCA」や山田シェフの「MARCHE AUX VINS」。 でも明治通りを古川橋の方向へ折れて、レストランへと向かうのは初めてだ。 すっかり通り過ぎてから気がついた、お店の所在は「天現寺カフェ」の階上。 硝子に浮かべた「incanto」の文字が見つかりました。
クロークと通路を挟んでバー・カウンターはあるものの、お店の装いはワイン・バーにイメージするそれとは違って、メインダイニングがしっかりある。 そのホールと厨房の間に天井までの量感あるセラーが構える、そんなレストランです。incanto01.jpg 軽めのスプマンテを舐めながら、赤い表紙の片観音折りメニューを開いてちょとびっくり。 前菜にしても、パスタにしても、そしてメインもそのラインナップがたっぷり。 そしてさらに手書きメニューが挿んである。 ううむ、さては客をあれこれ迷い悩ます作法だなと笑いながら、その術にずぼっと嵌るかのように目線を上へ下へ右往左往させる。 コースでいくか、アラカルトにするか。 前菜とパスタとメインとデザートと、に相当するコース「incanto」をお願いすることにして、再びメニューと睨めっこ。 悩んだ挙句に前菜にと、なんだか分からないのに決め打ちしていた(笑)、その一節について一応訊いてみる。「ルカーニカ、ってなんです?」「ソーセージですね」。 ひと品めは、「唐辛子風味とフェンネル風味 2つの味のルカーニカ サルシッチャの発祥地から」。 イタリアンのソーセージかぁと考えながら、何故かサラダ&ソーセージ的お皿を思い浮かべていたら然にあらず。 ありゃ~。 思わず口をついてでた言葉に自分でも愕いた(笑)。 ズ太いソーセージが、ドンドンと二本。 前菜ですよね、一人前ですよねと苦笑いしつつ、手前の太いのから紐の部分を削ぐようにし、その胴にズリッとナイフを入れ、口へ運ぶ。 うん、こっちは、所謂ウイキョウの香りがする。 もう一方の少し長いヤツは、つまりはジューシーなチョリソー。 気分は、ドイツビール持ってきて、な感じでもある(笑)。 パスタのサンプルをあれこれ眺めながら、意外なヤツでいってみちゃおうとprimiから選んだのが「東リヴィエラのスタンプ型コルツェッティ バッカラとオリーブ、ケッパー、プチトマト」。 おひょ~。 ホタテよりひと回り大きいくらいの円形で厚さ2ミリほどのパスタの上に、鱈の塩漬け(らしい)やトマトをカルパッチョ風に盛り付けてある。 確かにサンプルで見ていたものではあるけれど、なんだか大根スライスのサラダを眺めるようでもあるその不思議。 落とさぬようにフォークの上に載せて、大口開けて咥えた食感は、妙にあっさりしていて愛想のない感じ。 ワインはグラスで、「Renosu」あたりをいただく。 Secondには、やっぱビジエかなぁなんてことで、ウサギ、鴨、蝦夷鹿などある中から選んだ「仔鳩(エトフェ)のロースト 葡萄と赤ワインのソース ウンブリア風」。 久々の鳩だなぁなんて思いながら、お皿を受け取った。 うむむ~。 お皿に薄く敷かれた紅いソースの上に見るからにレアレアな鳩さんの身が横たわる。 ナイフを入れるとやっぱりレアレア。 臭みがある訳ではないけれど、身肉の生っぽさと妙に酸味の強い真っ赤なソースに少々オドロオドロシイ表情を覚えて、今宵ご同席多謝さんの様子をみるとカトラリーを持つ両の手が止まってる(笑)。 どうしてこうスプラッタにも映る仕立てなのだろね。そして、折角の葡萄の甘さはいずこに。 久々にドルチェを食べきれない満腹状態。 メニューの選択ミスかも~の反省とともに「でもなんだかtoo much」との感想に激しく同意して天現寺を後にする。心地よく食べ進められる、味わいと量感とのバランスに欠けているよな、そんな印象なンだ。 あ、いや、4時間半も居座っていて呟く台詞じゃないか(笑)。 オーナーソムリエがイタリアの伝統的な郷土料理とイタリア周辺のワインを供するお店として開いたという「incanto」の、その店名の意味は“魅力”。 ハーフポーションのお皿を手元にカウンターでグラスを傾ける、そんな使い方の方がその魅力が判るのかもしれません。 なお、「incanto」では写真撮影NGとなっています。 口関連記事:   RISTOTANTE「LA BISBOCCIA」で 4種のチーズのリゾット(00年08月)   RISTORANTE「ACCA」で黒鮑のリゾットこのこのフェットチーネ(07年04月)   ビストロ「MARCH AUX VINS」でフォアグラポアレに目を閉じる(05年02月) 「incanto」 港区南麻布4-12-2 ピュアーレ広尾2F [Map] 03-3473-0567  http://www.incanto.jp/
column/02716 @12,500-

dining cafe「SERAPiSⅡ」で 昼下がりのナポリタンパスタ

serapis2.jpg都立大学駅方向から八雲のパーシモンホールへアプローチする柿の木坂通り。 飲食店が並ぶ中に、パステルなオレンジ色が目を引くカフェがありました。 「SERAPiSⅡ」というのがその店名らしい。 店頭のメニューには、サラダ、ピザ、パスタにサンドウィッチ、ハンバーグなどなど。 明るく、木の風合いが心地いい店内です。
「オムライス」もいいかなぁと思いながら選んだのは、「ナポリタンパスタ」。 まず、粉チーズとアラビアータが仲良く小さなタンブラーでやってきました。 届いたナポリタンは、路メスパ的炒め炒め系ではなくて、如何にものカジュアルイタリアン的カフェ風の仕立て。serapis2_01.jpgほど良いトマトの酸味の中にベーコンのほの薫香が醸されていて、悪くない。 serapis2_02.jpgserapis2_03.jpg たっぷりとチーズを振り、加減を見ながら辛味を存分に加えて、それもまたよろし。 温かな陽射しの中を行き交うひと達の光景を開け放った入口からぼんやり眺めながら、淹れ立ての珈琲を啜る。 そんな昼下がりもいいもんだと思いながら振り返るカフェのファサード。serapis2_04.jpgエジプト神話の冥界の神がその意味か、Ⅱに対するⅠははてどこに。 「SERAPiSⅡ」 目黒区八雲1-2-5-105 [Map] 03-3723-4419
column/02715 @1,400-

琉球料理乃「山本彩香」で 琉球料理の本懐あんまーの心意気

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沖縄料理の本懐を知りたくて、ずっとずっと気になっていた「山本彩香」。沖縄への旅程が決まった早々に、予約の電話を入れていました。 指折り数えて待つうちに、お邪魔する人数がころころ変わって迷惑をかけてしまったけれど、いよいよその日がやってきた。 慶良間でのダイビングの後、シャワーを浴びて、タクシーで駆けつける。 国際通り界隈とはやや距離のある、西消防署通り近くに「山本彩香」はあります。
紺鼠の暖簾から、枯れた味わいを含むすっきりとした印象の板の間へ。 食前酒的に用意してくれているのが、艶やかな縁取りのお猪口に注がれたクスんだ黒褐色の液体。yamamotoayaka01.jpg山本彩香さんお手製の「もろみ酢」だそうで、柔らかな酸味のあとから酒粕のような風味がする。 これだけで、山本彩香の世界へ一気に引き込まれます。 yamamotoayaka02.jpg 香呂のような球形の器を開けるとそこには「豆腐よう」。 初めて沖縄を訪れた際に、そうとは知らずにぱっくりと口にして、その角の立った強さにびっくりしたことが急に思い出されたけど、この豆腐ようは優しい食べ口で紅麹がすんなりと香る。 泡盛を途中で抜いている、らしい。yamamotoayaka03.jpgこれに合わすにゃやっぱり泡盛もらわなくちゃとあらかじめ用意されてたテーブル中央の瓶から掬うは、「春雨」の5年もの。もうとっくに古酒、だね。 さて、朱塗りの盆に載ってきた前菜が、ミヌダル、ターンム(田芋)、カステラかまぼこ。 ミヌダルは、漬け汁に漬けた豚肉を蒸して、甘辛くした胡麻のペーストを載せたもの。yamamotoayaka04.jpg胡麻のコク味風味とあっさりさせた豚とが絶妙の取り合わせ。 下に敷いたフィファチの葉の色が鮮やかだ。 アーサ、梅肉を頂いた「ゆし豆腐」のお椀。yamamotoayaka05.jpgyamamotoayaka06.jpg出汁の加減もひたひたと、ゆるゆるとした気持ちにさせてくれる味わい。 あおさの磯っぽさも粋な仕立てで、うーん、しやわせ~(笑)。 コーレーグスで辛みを風味づけ程度に使ってもいい。 よくみる泡盛漬けではなくて、塩蔵の赤色鮮やかなコーレーグスだ。 ダイビング談義にざわざわとなっているところをひと呼吸待って、供するお料理の説明をしてくれる。 続いて、「まんぶの刺身」。 まんぶとはベラのこと。 長命草というハーブでひと切れづつ挟んであり、そこへ酢味噌がかけてある。 ハーブの香りがまんぶのほの甘さを引き出すようにして、角のない柔らかな酢味噌が奥行きを与えてくれている。 酢味噌にはジーマーミも入っているのかな。 お造りに、すっごく計算された味の構成を思うのはそうあることじゃないよね。 yamamotoayaka07.jpgyamamotoayaka08.jpg 黒豚あぐーんの塩漬け「スーチキー」。 余分な脂が落ちて、旨味が凝縮しているようで、それでいて塩辛くなんかない。 振り掛けたフィファチがいい香りづけになっています。 地味なのに、何故だか妙に印象深いのが「どぅるわかしー」。yamamotoayaka09.jpgターンム(田芋)をベースに、細かく刻んだ具材たちを和えたものだという。 うーん、いいなぁ。 白と鮮やかな発色の緑のコントラストが目を引くのが「びらがらまち」。 「びら」は葱のことだそうで、白いのは、蒲鉾だ。 yamamotoayaka10.jpgyamamotoayaka11.jpg ミミガーは、むでーくにーと呼ぶ人参を含む千切りの野菜たちと和えてある。 胡麻(ジーマーミ?)風味のタレがはっとするくらいにあっさりした仕立てで、でも水っぽくなんてない。 しゃきっとこりっとした歯応えも大事にされていて、感心しちゃう。 「ラフテー」はジーマーミを含ませた白みそですうっと包んだ器。 トッピングのグリーンは、うりずん豆だ。yamamotoayaka12.jpg 「イカの黒墨和え」の真っ黒いのに透明感のあるコクと甘さが忘れ難い。 yamamotoayaka13.jpgyamamotoayaka14.jpg 「ソーミンたしやー」は、島らっきょと鰹節のコンビが満ち足りた風味を添える。 強過ぎた余計な味付けは、如何に不要か教えてくれてるかのようだ。 かつおだしに浮かべた「ジーマーミ豆腐」。yamamotoayaka15.jpgyamamotoayaka16.jpgyamamotoayaka17.jpgyamamotoayaka18.jpg そして〆るは、宮古小豆&黒小豆+粟のお強と白味噌仕立ての豚の汁「いなむるち」、真紅の西洋蕪(ビーツ)。 そしてデザートがまた美味しい。 「西国米」と書いて「しーくーびー」。yamamotoayaka19.jpg活き活きとしたタピオカが生姜が粋に利いた黒砂糖蜜に浮かんでいるのです。 まさにめくるめく琉球料理の本懐にとぷと浸った気分。 お腹は存分に満ちているのに、どこかそよ風に吹かれているかのような清々しい食後感。 沖縄の料理のイメージをそっと根っこから翻えさせられた気にもなる。 いやはや。やるなぁ、山本彩香(笑)。 気負わず、飾らず、手をかけ、工夫を施すを厭わない。 そんな、あんまーの心意気にすっかり惹かれてしまいます。 また季節を変えた頃にお邪魔したい、な。 「山本彩香」 那覇市久米1-16-13 [Map] 098-868-3456
column/02714 @9,500-

五色ギョーザ「こぺんぎん食堂」でカラフル島餃子スーチキーすば

kopenguin.jpgおひとりさま1本の「石垣島ラー油」を求めて、何度も通った「辺銀食堂」。 石垣島の夏の日の余韻がまだ褪めやらぬ頃。 その「辺銀食堂」の子分が那覇に出来てると知りました。 ただ、このところ那覇空港素通りで石垣に行ってしまうパターンが続いていて、寄ることはないかなぁと。 そう思っていたところへ、ひょんなことから那覇滞在の契機に恵まれました。この機会を逃さず、「こぺんぎん食堂」にもお邪魔しちゃいましょう。
ところは、「ゆいレール」の安里という駅から程なく。 公設市場あたりからでものんびり歩いてこれそうな栄町です。 8席のL字カウンターが廻るだけの小さな、すっきりとした店内。 kopenguin01.jpg券売機でチケットをゲットして、Tシャツにもなっているペンギンのイラストを横目にカウンターの隅に。 ここでもやっぱり「石垣島ラー油」は、おひとりさま1本だ。 石垣でのカラフルなお皿がフラッシュバックするよな「島餃子」。kopenguin02.jpgkopenguin03.jpg緑は小松菜の皮にウイキョウの中身、白は島ラッキョウの中身、赤(橙)はパプリカの皮に葉にんにくの中身、黄は秋ウコンの皮に島にんじんの中身、そして、黒はイカ墨の皮にイカ墨&にがなの中身というバラエティ。 もちっとした厚手の皮に、ほらほら、葉にんにくの食感風味が嬉し愉し旨し。 小皿に用意してくれるタレは遠慮して、やっぱり「石垣島ラー油」だけでいただくのがおススメであります。 そこへ添えたどんぶりが「スーチキーすば」。kopenguin04.jpg豚の塩漬けスーチキーを塩抜きして、薄くスライスしてトッピングしたすばは、メニューにもあるように、ありそでなかった沖縄初の組み合わせだという。 啜るスープが澄んで出汁の深い、ニクイほどにイケるお味。 スーチキーで麺を包むようにしながら、口へ運ぶ。 そのスーチキーは、ハーブ、ライム、レモンでじっくり漬け込み寝かせた藻塩仕立てのオリジナルだという。 麺はといえば、八重山そばのそれとは明らかに違うし、沖縄そばのポソポソ麺ともまた違う。kopenguin05.jpgエッジの利いた白い麺は、アルデンテな湯掻きっぷりがよく判る仕立てだ。 訊けば、「辺銀食堂」と同じ、石垣から運んでいる麺で、かん水を使っていないンだと云う。 スープとスーチキーと麺とで、透明感が一致してるよな、そんな気がします。 最後のところで、シークヮーサーをちょっと搾ってね。 夜ともなれば妖しい空気が漂いそうな界隈に、くっきりと浮かぶ真紅の筐体「こぺんぎん食堂」。kopenguin06.jpg石垣まで足を伸ばせない時は、栄町のラー油色(?)のお店に寄ってみたらいかがでしょう。 口関連記事:NUCHIGUSHI CUISINE「辺銀食堂」で五色餃子島食材の宴(07年09月) 「こぺんぎん食堂」 那覇市安里388-150 [Map] 098-887-4645  http://kopengin.ti-da.net/
column/02713 @1,300-

沖縄のごちそう「道頓堀」で いか墨汁と中味イリチーの朝ごはん

dotonbori.jpg牧志公設市場の二階がこんな風情あるフロアだったとは、実は知りませんでした。 そのまま露天も似合うような、古びていて活気あるアジアの食堂のような空気感がいいンだね。 一階で魚介を仕込んでそれを二階で調理してもらえるってのは、市場でよくあるパターンだけど、やったことはない。 開場時間と聞いた朝10時過ぎに行ってみると、一階の市場にあれこれよりどりに並べられていた魚介たちの姿はまだなくて、ちょうど準備を始めたところのよう。 ハリセンボン、なんか食べちゃおーと目論んでいたのになぁと思いながら、二階にあがると「きらく」「次郎坊」といったお店もまだ開店前。 ならばとエスカレーターを上がってすぐ正面の「道頓堀」で遅めの朝ご飯をいただくことにしました。
調理場前の垂れ壁に構えた看板下の端から端までに貼り下げられた品札。 こりゃ迷うよなぁと呟きながら(笑)、右へ左へと視線を泳がせて選んだのは、「いか墨汁」。 そして、「中味イリチー」だ。 しっかり塗り上げたお化粧のオバチャンが「服に撥ねかせると落ちないから気をつけてね」と届けてくれたどんぶりは真っ黒な海。dotonbori01.jpgステンレスのレンゲで、ひと口目はちょっぴり恐る恐る、その黒い滴を啜る。 とろみはなく、さらっとした中に烏賊墨のコクと風味がすんなりと溶け込んでいて、下地のスープのしっかりした旨味を支えてる。 うほほ、なぁんだ、うめぇじゃん(笑)。 烏賊の身は甘く柔らかく歯の先に馴染み、フーチバがいい合いの手になっている。 「中味イリチー」の”中味”は、つまりは豚の中味、ホルモン。 “イリチー”は、炒めもの、炒め煮、といった意味らしい。dotonbori02.jpgdotonbori03.jpgクセなく、何気なく柔らかな、あじくーたー。 なにも考えずに、オリオンに、泡盛に、そしてご飯のお供にしちゃえばいい。 そんなお皿であります。 まちぐゎーの食堂、「道頓堀」。dotonbori04.jpg沖縄本島のヘソで「道頓堀」とは、やや違和感も覚えるけれど、きっと大阪・道頓堀に縁のある店主・創業者であったのでしょうね。


「道頓堀」  沖縄県那覇市松尾2-10-1牧志公設市場2階[Map] 098-866-0557
column/02713 @1,500-