ころうどん「でら打ち」で 梅干しめかぶズズズ肉とろろズズズズズ

derauchi.jpg旗の台「でら打ち」には、昼に夜にとお世話になってます。 それなりに混んでいながらも、すうっと入れる頃合もまたいいのだな。 笊を独特のポーズで湯切りする大将。 フォローする兄ちゃんは、いつもやや仏頂面ながら(笑)、頼もしさを増してきた。 いつもは決まって、「ころハーフ」と「カレーハーフ」の「ころセットハーフ」に「小ライス」。 たまには、違うところも啜ってみようかな。
早速ぶっかけから選ぶは「梅干しめかぶ」。derauchi01.jpg 果肉のたっぷりとした梅干をちょこまかと箸の先で解してから、叩くように刻まれためかぶと浅葱とをぐわぐわっと呷るように廻し混ぜます。 めかぶが粘りを発揮してきて、例のたまり醤油系のたれと渾然となる。 derauchi02.jpg紀州といえば南高梅の酸っぱさとたまりの濃いぃ味わいとめかぶの滑りと。 ズズズズズと大きな音を立てて啜るのが似合うヤツ(笑)。 切干大根や胡瓜のまぜご飯「大根めし」をサイドオーダーでね。 日を改め、「肉とろろ」。derauchi04.jpgderauchi03.jpg玉子の黄身目掛けて端の先を挿し入れて、濃ゆく煮つけた豚バラ肉とトロロやら薬味やらを再びぐわぐらっとなぜか急くように混ぜ廻します。 トロロがやや泡立つようになったところで、これまた一気に啜り込む。derauchi05.jpgやっぱり、ズズズズズズと大きな音を立てるのが醍醐味。 力強いのにたおやかだという背反するあたりを五感で愉しむかのような瞬間だ。 うん、うまひ。 もうとっくに旗の台を代表する飲食店のひとつ「でら打ち」。derauchi06.jpg これからもお世話になります。 口関連記事:ころうどん「でら打ち」で ころセットハーフ堪能の仕方と釜揚うどん(07年05月) 「でら打ち」 品川区旗の台2-7-3 [Map] 03-3787-0591
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手打ち蕎麦「かね井」で 透明感と野生の荒挽きそば

kanei.jpg粋な蕎麦がいただけるお店があると聞き、 降り立ったのは烏丸通り沿いの鞍馬口駅。 烏丸通りと交叉する鞍馬口通りと呼ぶ狭い筋をずっと西に辿って堀川通りのさらに向こうへ行ったあたりが目的地。 だけれど、歩くには遠すぎる。 タクシーを拾うも、その道は一方通行でぐるっと廻る必要がある。 お蕎麦の「かね井」さんご存知ないです?と運転手のオッチャンに訊くと、知らないという。 思わず東京ノリで住所を告げると、お客さんどちらから?と逆質問。 つまり、京都で所在を伝えるのに住所を云っても通じないよって、そうでしたそうでした。 タクシーは北大路通りの大徳寺あたりから智恵光院通りという細い筋に入り込む。 お客さんここだね、と四辻で降ろしてくれたタクシーを見送る。 そして、その建物の佇まいを暫らく眺めることになります。 kanei01.jpg祇園界隈にありそうな、如何にも京町家を店舗にしましたという風情とは違う。 広く開いた引き戸から中のたたきが窺える。 元は街角の商店だったのでしょうか、それとも民家だったのか。 店の名を示す看板は見当たらず、その引き戸の隅に立て掛けるように「手打ち蕎麦」と筆書きされた木札が唯一の目印です。 閉店間際ということもあってか、足回りのよくない所為か、たたきの先の板の間には先客の姿はなし。 片付けられるのを待つ食器たちが、さっきまでの賑わいの残り香のようにそっとしています。 kanei02.jpg奥の座卓に座ると、竹垣に囲まれた坪庭の手前に濡れ縁に臨め、金魚鉢と縄を十字に結んだ丸石が置かれている。 頭上で涼しく鳴る風鈴。 関守石というのは、茶道の作法において「これより中に入ることは遠慮されたし」という意味らしく、そうすると文字でそれを示すことがどんなに無粋かと思えてしまう。 またひとつ勉強になりました(笑)。 「できますもの」と書かれた品書きkanei11.jpgを拝見して、ここはやっぱりお酒でしょうと「鷹勇なかだれ」に酒肴をふた品ほどお願いします。 きりっとして力強い呑み口の片口と添えられた小皿の山葵の醤油漬けがさりげなくもいい。 kanei03.jpgkanei04.jpgkanei05.jpg ふくよかに出汁を含んでふるふるとした「だし巻き」。 「焼みそ」の白味噌主体の甘い風味と柚子の香り、炙った香ばしさ。 kanei06.jpgゆるゆるとお酒が進みます。 kanei08.jpg 片口を搾るように呑み干したところへお願いしていた「荒挽きそば」が届きました。 まずはお塩でどうぞ、ということで小皿の粗塩をちょっと塗すようにして啜る蕎麦。 日向くさい風貌と甘さが交叉して、今はなき「虚無蕎望 なかじん」の一枚を思い出します。 ほんのり翠かかったようでどこか透明感があり荒挽きらしい野生を含む細き一本一本を見詰めたりしながら、今度はお猪口の辛汁にちょんと漬けて啜る。kanei09.jpgくくっと出汁の利いた汁に出会ってまた違う甘さ風味を発揮して、いい。 決して量をケチっていない気持ちいい盛りの笊なのに、 早くもなくなってしまうのがなんだか口惜しい。 西陣の裏通りにそっと佇む手打ち蕎麦「かね井」。kanei10.jpgご馳走さまでした。 今度はぐっと寒い夜に人肌のお燗で、そして温かいお蕎麦もいただきたいな。 口関連記事:素料理「虚無蕎望 なかじん」で 穀物としての蕎麦を識る(07年08月) 「かね井」 京都市北区紫野東藤ノ森町11-1 [Map] 075-441-8283
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蕎麦うどん「ぎをん権兵衛」で そば汁利かせた親子丼底まで旨い

gonbei.jpg四条通りを八坂さんに向かって進み、 切り通しの筋をちょっと上ルと見つかる赤い提灯。 3、4人が白い暖簾の前に佇んでいるのは、お昼どきをすっかり過ぎた時間でもまだ混んでいるからのよう。 お店の額には「権兵衛」とある。 暖簾の向こうから招き入れられたひと達にくっついて、はい、こんにちは(笑)。 狭い通路右側の、衝立に挟まれた小上がりの座卓に案内されました。 後ろから続いて入った老夫婦とご相席です。
舌代gonbei01.jpgには、「釜揚げうどん」「のっぺ」「けいらん」「志っぽく」といったどちらかというとうどん系のお品とそば類、そして七種類のどんぶりモノが示されています。 「親子丼、お願いします!」。 実はお店に入るずっと前からオーダーするものは決まっていて、どんなかなぁと想像しながら四条通りを歩いてきたのです。 ところが、お兄さんの口から出た台詞は、「申し訳ありません、ご注文が集中してご飯を切らしてしまい、これから炊くところで45分ほど時間が掛かってしまうのですが……」。 うえ~ん(泣)、であります。 でもまあ、半端な時間に来ておいてご飯もないのかと詰るのも粋じゃないやねと、「待てばできます?」と訊いてみた。 通しの営業のようなので、「では、お待ちいただけますか?」となった。 うん、のんびり雑誌でも捲りながら待つことにいたしましょう。 gonbei02.jpg 想定よりも早くどんぶりがやってきました。 白熱球に照らされて滑るようにテカる溶き玉子の表情がいい。 色合いから見てもやや濃いめのタレを使っているのが判る。gonbei03.jpg真ん中あたりに山椒の粉が軽く盛られていて、そこらを掠めるように箸を動かします。 おほほ(笑)。 はんなりと旨味が広がる、なんて感じではなくて、しっかりとしたタレがリードする味わいの輪郭がはっきりした美味しさ。 出汁の利いたそばの辛汁を使っているようで、 なるほど、うどん・そばのお店ならではの歓びなのだね。 gonbei05.jpggonbei04.jpg 柔らかでありながらしっかとした地鶏の滋味に山椒の香りがふわんとくればまた、嬉しからずや、であります。 硬めに炊いたご飯にさっと辛汁が包むようにして、どんぶりの底まで旨いのんよ。 切り通しのそばうどん、そして親子丼処「ぎをん権兵衛」。gonbei06.jpg帰り際、ホールの皆さんがそれぞれに「大変お待たせしまして~」と声を掛けてくれる。 そんな気配りの一貫性も嬉しくてつい笑顔になる。 いえいえ、炊き立てをいただけましたからぁ(笑)。 「ぎをん権兵衛」 京都市東山区祇園町北側254 [Map] 075-561-3350
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餃子専門店「東京餃子楼」で実直な焼き餃子水餃子もやし大ヒット

gyozaro.jpg小雨そぼ降る三茶の世田谷通りのアーケードを辿り、 向かい側に見つけた、両脇に紅い幕板を配したお店。 そこが寄り道する機会をずっと狙っていた「東京餃子楼」。 硝子越しに覗く店内は満席で、ちょうど席を立ってくれた女性陣と入れ替わるようにカウンターの中央へ。 ほけーっと口を開けながら(笑)、 頭上のこれまた紅い品札gyozaro01.jpgを探ります。 専門店らしく、「焼き餃子」「水餃子」がもちろんメイン。 それぞれに「ニラにんにく入り」と「ニラにんにくなし」が用意されてるね。
まず、”なし”の「焼き餃子」「水餃子」と、やっぱりビール。それとサイドメニューのひと品を。 真っ先に届けられた「もやし」が大ヒット。gyozaro02.jpg湯掻いたモヤシにジャージャーな肉味噌あんをのっけただけなのだけれど、 モヤシの歯応えのシャキシャキが活き活きとして、温かな肉味噌に詰まった旨味をがっしり受け止めて心地いい。お代わりしよーかなぁ(笑)。 そしてまずは焼き餃子。gyozaro03.jpg 羽根がついてたり、隣同士の境目がアヤフヤな系統ではなくて、 焼き目も端正でソリッドな印象が、また美しい。 gyozaro04.jpggyozaro05.jpggyozaro06.jpg 噛めば、これまた実直な感じ。 脂迸る訳でもなく、挽き肉と野菜のバランスや練りの硬さ加減よく、落ち着いた風情が貫禄を思わせます。ふむふむ。 水餃子はどうかというと、なにより皮のちゅるん!が真骨頂。gyozaro07.jpg艶めかしくも官能的なちゅるん!を追っかけて火傷しそうになる(笑)。 はふはふ。 う~む、こちらも奇をテラうことなく、真っ直ぐなのだね。 忙しなく立ち回るスタッフの様子を眺めながらビールを呑み干して、一瞬手の空いたところで”入り”の「焼き餃子」をと声を掛けます。スープつきのご飯の小盛りを添えてね。 なはは~、やっぱりどっち?と訊かれたら「入ってる方」と答えちゃう。gyozaro08.jpggyozaro09.jpg入ってる方のお皿は、お皿の縁に記した「東京餃子楼」が赤で、さっきの“なし”は黒い文字だったね。 決して過度にならない、加減の利いた韮と大蒜の香りがふんと鼻腔を抜けていく。 それとシロ飯と澄んだスープの組み合わせの倖せ。 周囲のざわめきもまた不思議な心地よさ。 代わる代わるお客さんが訪れる「東京餃子楼」。 エキセントリックな餃子でないことに、妙に安心しちゃったのは何故(笑)?gyozaro10.jpgあ、辺銀さんの石垣島ラー油で食べたいな。生冷凍モノをお持ち帰りすればいいンだね。 口関連記事:NUCHIGUSHI CUISINE「辺銀食堂」で五色餃子島食材の宴(07年09月) 「東京餃子楼」三軒茶屋本店 世田谷区太子堂4-4-2 ラウスパレス三軒茶屋 03-5433-2451 http://www.puzzle-fs.co.jp/ [Map]
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Cucina Italiana「La Fenice」で 青森食材の宴いざいざ青森

lafenice.jpg青森の郷土料理に取り組むうちにとうとう青森に居を移してしまったtakapu。 「津軽料理遺産」に取り組むそのtakapuから「青森県産品試食会あるです」と耳打ちされたのは盛夏の頃だったか。 改めてご案内をいただいて馳せ参じたのが、小舟町にあるイタリアン「La Fenice」。 店頭のスタンドには、「ぐるなびBEST OF MENU 2008」に優勝したとある。 どんな食材のお皿たちと出会えるのか、いざいざ。
今回で二回目になるという試食会の主題は青森食材の「肉」。 なぜに会場がこちらになったかというと、シェフが青森ご出身で、青森食材を取り込んだイタリアンを供しているからだという。 ビールをいただいての前菜その一が「青森県十和田湖ヘライファーム産ダチョウのカルパッチョ、大西ハーブ農園の香草サラダ添え、青森県八戸町産にんにくとバルサミコソース」。lafenice01.jpgすっきりとしてクセのない、すうっとトロケ解れる味わいがいい。 ダチョウの生肉って初めて口にしたのだと思うけど(どこかで食べたかも)、ジビエっぽさ漂うのに、濁ったようなクセはなし。 これなら他のイタリアンで採り入れるところがでてきても不思議じゃないね。 県産の食材を盛り込んでいることが趣旨なので、メニュー名が妙に長くて説明調なのはご容赦いただくとして(笑)。 大西ハーブ農園発の香草として、ルッコラ、山葵水菜や蒲公英なんぞがトッピングされてます。 前菜その二が「純国産バルバリー鴨『銀の鴨』の自家製スモーク サラダ仕立て、真っ黒フルーツにんにくのドレッシング」。 lafenice02.jpglafenice03.jpg 元はフランス鴨の最初のバルバリ種だという『銀の鴨』。 心地よい歯応えの先に滋味~な味わいが広がって、いい。 そして、まさに真っ黒いにんにくを使ったドレッシングが醸す風味がその広がりをそっと煽る(笑)。 ガツッと匂うノリではなくて、柔らかな甘み風味。 そんな品種の大蒜があるのかと思ったら、海洋深層水に漬け込んで長期熟成させた結果黒くなったものなんだそう。 やきとり屋で、真っ黒いニンニクの串焼きってのもちょっと異様でいいかも(笑)。 すっかり焦げちゃった!みたいな(笑)。 パスタその一が、「青森県十三湖産天然『大和しじみ』と初雪茸の七戸町長芋の自家製ニョッキ、阿房宮菊と海鮮キャビア添え」。lafenice04.jpg長いものニョッキってのもありそでなさそなレアアイテム。 滲み出る旨味とほんのり磯風味が魅力の蜆のソースにスルッとムニンとしたニョッキがよく馴染んで、粋な口触り。 十三湖というのは、日本海に接しているのだね。 ちょっと微妙なのがとんぶり?って思った海鮮キャビア。 キャビアンヌと呼ぶアルギン酸を包んだ人工物だという。海産物から抽出したエキスを使っているようだけど、ややイジリ過ぎ感があるもんなぁ(笑)。 パスタその二は、「青森県脇野沢産猪豚の自家製ベーコンを使ったブカティーニ・アマトリチャーナ、パルミジャーノのフォンドゥータソース」。lafenice05.jpg猪と豚を掛け合わせた猪豚猪らに猪を掛け合わせた、つまりは猪寄りのクオーターな猪豚ということらしく、パルミジャーノのまったりソースと相俟って力強い食べ口を供してくれています。 lafenice06.jpg サンジョベーゼの「MONTE BELLO」をクピクピいただきつつ迎えたお皿、メインその一の「青森県産3種ブランド豚『長谷川自然豚』『奥入瀬ガーリックポーク』『南部赤豚』の炭火焼、青森野菜の炭火焼を添えて」。lafenice08.jpglafenice07.jpglafenice09.jpglafenice10.jpg どちらもダラシない脂の豚ではなくって、肌理のしっかりした、旨味に深みのある豚さんたち。 こんな三種の食べ比べは贅沢かも~。 そし二のメインその2が「青森短角牛『八甲田牛』のタリアータ、赤ワインとジョミ『ガマズミ』のソース、嶽きみと大西ハーブ農園のルーコラ、インカトマト添え」。lafenice11.jpgご存じ短角牛が魅せる妖艶な紅。 lafenice12.jpg八甲田山麓で育った短角牛で、赤身肉の魅力に目覚めちゃうヒト少なくなさそー。 お皿に敷いたソースも妖しい朱で、意表をつく酸味がする。 ガマズミという実のジュースを使ったソースだそうで、それがスイカズラ科ガマズミ属の落葉低木に生る赤い山の実の果汁、三戸町の「ジョミ」だ。 ポリフェノールポリフェノールと呟きながらソースを舐めたりして(笑)。 〆にデザート3連発の「青森県産ブルーベリーのレアチーズ」「青森県産『シャイニーアップルジュース』のグラニータ添え」「『緑の一番星』のクレームブリュレ」。 lafenice13.jpglafenice14.jpglafenice15.jpg lafenice16.jpg薄緑色をした不思議な玉子から繰り出されたクレームブリュレ。 青い卵を産む南米チリの「アロウカナ」という鳥の品種と茶褐色の卵を産む「ロードアイランドレッド」をかけ合わせて開発された玉子が、「緑の一番星」だという。 見るからに怪しい殻の薄緑色がマジカルであります。 普通に玉子かけご飯もしてみたい感じ(笑)。 lafenice17.jpgグラッパどうです?的に届いたボトルには、イタリアンにあって「大吟醸・吟醸」の文字。 「稲本屋利右衛門」のラベルには、地酒・八甲田おろしの酒粕だけを原料とした粕取り焼酎で、グラッパのように食後酒にどうぞ、とあるんだ。 小舟町の愛らしきトリコローレ、「ラ・フェニーチェ」。lafenice18.jpg種と餌と環境に向き合いつつ、培い育てるというお肉系もハーブや野菜たちも実直に仕立ててくれました。 海のイメージの強かった青森には、地上のそこここにも個性ある食材があるのだね。 やっぱりまずは一度青森へ。 そう思わせてくれた小舟町の夜。 主催の皆さん、ご同席の皆さん、ありがとうございましたー。 「La Fenice」 中央区日本橋小舟町15-17 協栄ビル1F [Map] 03-5651-7023
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