ステーキ「カウベル」で ご飯に合うポークジンジャー商店街の隅

cowbell.jpg何度かお世話になっている旗の台のインド料理「ポカラ」。 そのお隣にあるのがステーキの「COWBELL」です。 プールで泳いだ後に店先の表情を眺めては、 気になるのだけれどどこか入り難い雰囲気なのだよなぁといつも思う。 硝子越しの細い縁のパネルに書いたメニューは煤けて判読し難く、その分その横に貼られた格闘技系のポスターが目立ってる。 でも何故か、雨上がりの夜にふと、その扉を押してみる気分になりました。
cowbell01.jpg店頭の雰囲気そのままに、どこか雑然とした店内。 おそらくご夫婦であろうオッチャンオバチャンが、揃って見入っていたテレビから目線を外して、腰を上げる。 お寛ぎのところ、お邪魔だったかな(笑)。 左手のテーブルに収まって、正面の板壁に目を凝らす。 オレンジや黄色の紙にメニューが書かれていて、左側はランチメニューだ。 ランチメニューに書かれた「牛肉の生姜焼き」と右側に書かれた「ビーフジンジャー」とはどう違うのかなぁと首を傾げながら、「ポークジンジャー」をお願いするへそ曲がり(笑)。 早速厨房から盛大な炒め音が聞こえて、生姜なタレの匂いが漂ってくる。 あちちの鉄板にのってやってきたのは、大振り厚めの豚肉が4枚。cowbell02.jpgcowbell03.jpg噛めば脂と旨味を滲ます肉片に、絡めたタレがたっぷりと濃いめ。 完全にご飯に合わせた味付けが頼もしく思えてくる。 添えてくれたのは、スープでなくてお味噌汁。やや塩辛い。 ステーキハウスでステーキ食べなきゃ失礼かと、再訪した夜。 店の名を冠した「カウベルステーキ」をお願いしました。 長細い形状のステーキ。 cowbell05.jpg 夜の部のステーキでは一番お安いメニューなのだけど、どこの部位なのかな。 ゴリゴリとナイフを入れてもすんなりとは切れてくれないのは、ナイフの具合かお肉の加減か。 cowbell04.jpgcowbell06.jpgcowbell07.jpg なかなか手強い噛み応え。噛むほどに旨味が沸いてくればいいのだけれど、添えられた醤油系のソースを使ってもそれが叶わないのがもどかしい。んんん。 「カウベル」には、洋食系メニューもあって、ピラフにオムライス、そしてスパゲティもの「ミートソース」「カルボナーラ」に合わせ業の「ダブルスパ」。ナポリタンもできるって(笑)。 商店街の隅、町場のステーキハウス「カウベル」。cowbell08.jpgご夫婦にはきっと見慣れ馴染んでしまった店頭の、そして店内のくすみなのだろうけど、気をつけて磨いてあげるだけで、古さが味のあるお店になるンじゃないかな。そんな気がします。 そしてやっぱり、ドアには“カウベル”が欲しい、なんてね。 「カウベル」 品川区旗の台3-14-10 03-3786-1378
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居酒屋「一八」で すいとんで〆る裏道民家のカウンターの寛ぎ

ippachi.jpg所沢駅西口から西武の脇を真っ直ぐ抜けて、 旧町の住宅街になった辺り。 その裏道に、前を通る度に気になる民家がありました。 ブロック塀で囲んで、既製の門扉が構える木造二階建ての一軒家。 何気ない住宅地の裏通りの風景をやや特異なものしているのは、そのブロック塀越しに示された「居酒屋 一八」の文字。 昼間しかそこを通る機会がなく、営業しているのか名残りなのかずっと謎のままだったのです。 ippachi11.jpg ネット上の微かな情報を頼りに探るように連絡を入れてみると、「あいよっ」てな調子の大将の声。 「日曜以外はね、だいたいやってるよっ」。 いざ、仲間を連れ立っての探検です(笑)。 忙しなく降る雨の中を進み、暗がりに灯る看板を見定める。 今は、玄関に枯茶色の暖簾が掛かっています。 ガラリと玄関を入るとそこがもう店内。6~7人で一杯のカウンターが大将の舞台だ。 そこへ横並び4名で腰掛け、四方をきょろきょろ。 常連さんらしき女性のひとり客と話し込んでいたのが、女将さんらしい。 入って右手に焼き台があるけど、もう焼き鳥は焼いてないんだとか。 暖簾の真ん中に「鳥」と白抜かれているのも、いまはご愛嬌ってことになるね。 お通しのマカロニサラダで、まず乾杯。 ビールのサーバーは稼働させていなくって、ビールは瓶になる。 素朴なメニューの並ぶホワイトボードippachi02.jpgから、「八戸いか開き」に「鯨竜田揚げ」。 ippachi03.jpgippachi04.jpg 世代に当てはまるヒトには懐かしい給食メニューも、ここでは賽子状に刻んだ鯨肉を揚げている。 そこへペロペロと「自家製梅ロック」。 以前は10数年ものとか古いものがあったけど今はねと大将。呑めばなくなるのは当たり前。 トイレがどこかと尋ねたら、一旦外へ出た脇にあるという。小雨の中小走りです(笑)。 冷蔵ケースに唯一収められていたゴーヤを指さして、「それでなんかできません?オマカセしますので」と訊くと、「ほいきた」ってなノリで、掴み出す。 テフロンのフライパンで作ってくれたのは、素直なメニュー、チャンプルー。ippachi05.jpg 家庭的メニュー「ぴりからなすいため」の後には、インターバルを上手に繋いでくれる溶き玉子のお椀を挟んでくれた。 ippachi06.jpgippachi07.jpgippachi08.jpg 「カキフライ」は冷凍モノだというので、「若どりからあげ」。ちょっと油の温度が高すぎたかな。 その間、「黒霧島」のロックをちびちびぐびちび。 〆にと選んだのが、「すいとん」。ippachi09.jpgアルミの手鍋でことことっと汁の下地を炊いて、女将さんが練った粉を抓まんで入れる。 ふうと和む味わい。 そもそもこういうものだとはいえ、ちょっと芯の残る感じだったので、もう少しゆるく練った生地の方がより美味しくいただけるかもしれません。 ippachi10.jpg「一八」の大将は、マンボウの絵柄がプリントされた和装なシャツに、捻り鉢巻が似合いそうな髪型。額の上のところだけ長く残した髪を「かあちゃんに借りてやるんだ」と金髪に染めている。 ん~、鯔背だねぇ(笑)。 大将の名前からそのまま名づけたという、裏道の民家居酒屋「一八」。 趣味が高じるかたちで自宅を焼鳥屋にしてもう随分経つという。ippachi01.jpg裏手に住むご隠居さんあたりが、一日おきにひょいっと訪れては寛いで、云いたいこと喋ってすっと帰っていく。ふとそんな光景が浮かんだりした。 こんな風に今も営業しているンだと、なんだか長年のもやもやの晴れたような気分です(笑)。 「一八」 所沢市日吉町28-18 04-2922-3819
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手打ちうどん「一長」で 幻の柳久保小麦うどん6玉ぶずずず

icchou.jpg武蔵野うどんの佳店が一軒あるという。 ところは、東久留米の西口から程なく。 駅をこちら側に出るのは初めてじゃないかなぁと考えながら、例によってあまり個性があるとは云い難い駅前のロータリーを横切ります。 随分と昔のことだけれど、教習所に通っていた頃はまだ、こっちに出口はなかったもんな。 徐々に強まる雨足に急かされるように足を運ぶ。 「一長」の白い暖簾はもうすぐです。
プレハブ的仮設な印象のファサードには、お持ち帰り用の窓が設えてあります。 カウンターに沿って進んで、空いていた奥の椅子に腰掛ける。 「おしながき」から選んだのは、勿論「肉汁うどん」。 温かい汁に、かき揚げ、きざみのり付きにして、「大盛り男性向き」と示された6玉でお願いします。 特盛り10玉だと、さすがに最後がシンドいかなぁと。 ここで、市販のうどんの1個が1玉だと考えてはいけません。 ひと玉って、そうだなぁ、素麺を束ねるように、片手で軽く麺を摘み上げて纏めた感じの量。 icchou07.jpg そして、毎週金曜日と土曜日は、”柳久保小麦うどん”の発売日。 柳久保という小麦は、今の東久留米柳窪の奥住又右衛門という人物が嘉永4年(1851年)に旅先から持ち帰った一穂の麦から生まれた、と卓上の資料icchou01.jpgにある。 量産のし難さから一時途絶えるも、保管されている種から又右衛門の子孫が柳窪で育成し、市内の農家がそれに協力しているのだという。 そんな幻でもあった地の粉は一定量しか穫れないから、金土限定なのだね。 誰がみても、恰幅のいい大将は、大きな鍋の前のご担当。 オーダーを聞くと、さっとうどんを湯気の中に入れて、腕組み。鍋の噴き上がりと会話でもするようにじっと見据えては、注し水を入れる。当たり前のことだけど、麺を打ち終えればあとは、どう湯掻くかが大事だものね。 どーんと大きな漆塗り風のコネ鉢のような器にゆったりと盛られたうどん。 頂に載せた掻き揚げとその周りを覆う刻み海苔。 icchou03.jpg icchou02.jpg竹を輪切りにした器につけ汁が注がれ、そこには勿論豚肉が浮かぶ。 いいなぁ(笑)。 徐ら箸で掴んで、肉汁にとぷと浸して乱暴に啜る。ぶずずず。 icchou04.jpgicchou06.jpg 野卑とは違う力強さが食感と粉の味わいから伝わってくる。 如何にも地粉っぽい風味とはちょと違う洗練も含む感じ。icchou05.jpg 石神井台の「エン座」、上荻の「豚や」をはじめ、地粉の魅力を見極めるように表現したうどんたちと比較しちゃうと、ハッとするようなときめきはないけれど、ここも身近にしたい一軒だ。 肉汁がもっとダラシナく脂ぎってて、かき揚げが揚げ立てだったらもっといいかもね。 東久留米の駅近くに、何気なく佇む手打ちうどん「一長」。icchou08.jpgこちらもまた、武蔵野うどんの一翼を担うお店です。 口関連記事:   武蔵野本手打うどん房 「エン座」 でむほほーの季節の霙糧もり(07年10月)   手打ちうどん「豚や」 で粉ぶわわんの豚肉汁の黒うどん(07年11月) 「一長」 東久留米市本町1-4-28 042-475-5306
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CURRY&NOODLE「パンチマハル」でスープカレー米麺の僥倖

panchmahal.jpg以前「メーヤウ」を再訪した時のこと。 やっぱ辛かったぁと汗掻き顔で店を背にしたところで、 そのほぼ正面に気になるお店があるのを目に留めました。 エスニック カレー&ヌードルって?と近づいてメニューを見ると、「スープカレーライス」に並んで「スープカレーヌードル」というタイトルもある。 ほー面白い今度覗いてみ~よぉっと思うも、すっかり間が空いてしまいました。
「カーマ」の前を通り過ぎ、「メーヤウ」の前へと改め錦華通りをアプローチ。 天井には極彩色の旗が連ねて吊られ、壁には民族楽器が飾られと、 panchmahal01.jpg エスニックな彼の地の文化に対する店主の嗜好が素直に発露された店内です。 チキン、キーマ、やさいとある中で、チキンは既に仕舞いになってるとのことで、ならばとスープカレーヌードル「キーマ麺」を「温泉たまご」のせでお願いしました。 基本”5”まで選べる辛さは、普通の辛さオススメ、とある”1辛”にして。 panchmahal02.jpg スープ状のキーマなカレーを絡めるように浮かぶ平打ちな麺は、タイ製のお米の麺。panchmahal03.jpg 所謂フォーと同じ仲間の麺ということになるね。 うんうん、スープカレーに米麺という組み合わせはありそでなさそな、 でもすんなりマッチする取り合わせ。 panchmahal04.jpgpanchmahal05.jpg 挽き肉を纏い上げて啜る米の麺は、フォーよりはやや幅広のイメージか。 思いつきでのせたものだけど、温泉たまごもついでによく似合う。 お約束のパクチー?と思わせて水菜だったりするンだとズズ、ズズ、ツルリ。 サービスでつけてくれるミニライスをどうするかというと、やっぱり投入!する(笑)。 panchmahal06.jpgはしたなくも一気に喰っちゃう感じになるのね。 できればスープカレーのところにもうひと押し、旨味を抽出してくれたらいいかな。 アジアンでエスニック、神保町「PANCHIMAHAL」。 その名の縁は、インドの地名か宮殿か。panchmahal07.jpg「インドカレー」や「和風ポークカレー」はたまた「石焼ドライカレー」といったスペシャルカレーも気になります。 口関連記事:   エスニックカリー「メーヤウ」神保町店 でしっかり辛いポークカリー(04年11月)   インドカレー「カーマ」で さらさらスープのチキンカレーうん旨い(06年08月) 「パンチマハル」 千代田区神田神保町1-64-2 野間ビル 03-3292-6439
column/02674

旬菜と地酒「萬屋 おかげさん」で 日本人に生まれてよかったー

okagesan.jpg四谷界隈と云うと、 しんみち通りか荒木町の狭い通りが思い浮かぶ。 今夜のほろ酔い処は、そのちょうど中間地点。 裏通りではなく、天下の大通り、新宿通りに面したビルの地階にあるという。 なんとはなしに、建物の風化と歩調を合わせて澱が溜まるようにただ古びている、そんなお店の様子をイメージしたりして。
駅に着けば、このところの異常な雷雨が迎える。待てども落ち着く気配がない。 傘に身を縮めて辿り着いたのは、松本館というやや草臥れたビル。 先のイメージにも一致する寂しげな階段を下りる。 「萬屋 おかげさん」。 格子戸に掛けられた額の筆文字でお店を確認して、店内に入るとそこは、先のイメージを吹き飛ばすような静かな熱気と快活さに満ちている。 あれぇ?なんかとっても良さそう(笑)。 奥の待ち合わせのテーブルに合流して、まず麦酒で乾杯。 okagesan01.jpg茶色いラベルのビールは、舞浜地ビール工房「HARVESTMOON」。 シュバルツ、とあるようにドイツでいうところの黒ビール。ご当地ビールにありがちな、やや不思議な香り付けがされてる感じ。 ん?その下に”IKSPiARI”とあるのは、どこかで見聞きしたことのあるフレーズ。 あ、舞浜のディズニー・リゾートの一角にあるイクスピアリ発のビールってことなのか。 okagesan03.jpg ビールに合わせるように、 黒板メニューokagesan02.jpgから鶴岡の「農家直送だだちゃ豆」。
そして、自然な飼料と放育39日とある、つくば鶏の「ハツ焦がし醤油焼き」。 大きく刻んだハツの身の、ハリのいい歯応えとゆったり熟した味わいが香ばしい醤油でぐいとひきだされている。 okagesan04.jpgokagesan05.jpg ハツに負けじと「マグロなかおち生姜焼き」。 口にするそばからふわっと消えるよな食べ口に鮪独特の風味と脂が余韻する。濃い目の生姜たれが味わいに輪郭を添えているンだ。 籠から選んだのは、猫の背中が愛らしい絵柄の小さめお猪口。 okagesan06.jpgokagesan07.jpgokagesan08.jpg 仕込み水「夢心」を脇に、福島の特別純米生原酒中垂れ「奈良萬」。 「十四代」のラベルに赤字で「酒未来」とあるのは、かの高木酒造が自ら開発した酒造好適米で成す純米吟醸であるから。 大きな角皿に一緒盛りしてくれたのは、五島の「活〆いさき刺身」、厚岸の初物「秋刀魚の刺身肝合え」、気仙沼の「鰹わらあぶり刺」、常盤「真子鰈刺身」。 うお~、と合唱してしまうのは、どっかの宴会場でみるような船盛りとは志向が違うのだもの。 たれ醤油にひたひたとして、白胡麻とおろし山葵を背にしたいさき。okagesan09.jpgともすれば、半端な味わいにもなるイサキの身を、滋味にまで高めていて、いい。 フレーク状の唐墨をまぶしているのが真子鰈。okagesan10.jpg唐墨の風味と乾いた食感がどちらかというと無彩色な味わいに彩りを添えてくれて、いい。 妖艶な紅く澄んだ身に香ばしそうな皮目の縁取りを魅せる鰹。okagesan11.jpg身肉そのものの魅力に、「すきやばし次郎」よろしく藁炙りが風雅を添えて、いい。 たっぷりと肝を含んだタレで和えた秋刀魚。okagesan12.jpg早くも脂ののった秋刀魚の身が酒呑み心に訴える肝の風味をしっかと纏って、 堪まらんほどに、いい。 刺身にするだけでもイケるタネに手を入れてさらに昇華させる手管は、ニクイじゃありませんか。 okagesan13.jpg 空いたお猪口にと茨城の「来福」をとお願いすると、愛山という酒米の「純米大吟醸 斗瓶囲い生原酒」。 微発泡にも思える白濁した滴は、清らかにフルーティ、そしてキレのいい深み。 おっと忘れちゃいけないと、右へ左へ軽快に立ち回るホールの姐さんに声を掛けて届いたのが、 「塩だけの贅沢なおむすび」。okagesan14.jpg”おいしいごはん”とは、長野で指定した田んぼが実らせた稲のものだそうで、舎利を握るかのような崩れず固めずふわっとしたむすび具合と小笠原の塩のミネラルがきらきらと粒だったお米の甘さ風味を余すとこなく引き立てていて、こいつぁ旨い。いや、うめぇ(笑)。 味わいふくよかなお酒たちとその呑兵衛心にすんなり応える酒肴、そしておむすび。 日本人に生まれてよかったー!と右手拳を突き上げたくさせる旬菜と地酒の店「萬屋 おかげさん」。 okagesan15.jpgおかげさんで佳い酒いただけましたと、帰りがけの客の台詞を拾った店名かもしれないな。 今宵のご同席多謝は、「くにろく 東京食べある記」のくにさん「岡部敬史の編集記」の岡部さん「Tokyo Diary」のromyさん、の皆さんでした。また呑みましょーっ♪ 「萬屋 おかげさん」 新宿区四谷2-10 松本館B1 03-3355-8100 http://www.okagesan.net/
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