手打ちつけ麺「欣家」で 目ひかり使ったらあめんに帰路遠く

kinya.jpg ふと気が向いて、三田線で北上して西台へ。 高島通りを渡って、以前お邪魔した「戎」の店頭廻りの様子がちょっと変わったなぁと思いながらその先を左へ折れ入る。 すっかり暗い住宅地の一角にあるのが「欣家」です。 暖簾に小さく「手打ちつけ麺」と記されているね。
そうか、つけ麺のお店なのねと腕組しながら、気分は温かいものが欲してる。 欲求に素直に従って、「肉入りらあめん」に「のり」「味付け玉子」をと声をかけます。 湯気の上がる厨房をぼんやり眺めながら、今さっき見たメニューの「竹の子」という字面が再び気になってきたのは、この時季の「竹の子」ってもしかして、ちょと違うかも?ってなあたりから。 腰を浮かせて追加トッピングをお願いします。 届いたどんぶりは、素朴さとはまた違うどこか愛想のない表情をしてる。kinya01.jpgスープを啜って少し眉を細めたのは、そこに苦手な家系と同じ風味(臭み)を感じたからで、それならいっそガッツリ家系であればまだしも、全体には出汁が弱い、薄い印象だ。う~む。 カウンターの幕板には、深海魚の「目ひかり」をスープに活かしてこく(脂)と旨み(甘み)を出している、とあるkinya03.jpg。果たして“コク=脂”、“旨味=甘み”なのか、そう簡単なことでもないよに思うのだけどどうだろう。 手打ちつけ麺のお店とあれば、麺にはぐっとくるものがきっとあるのねと啜れば、またまた疑問符が脳裏に浮かぶ。kinya02.jpg自家製麺の、さらには手打ち麺らしい魅力がなぜだか窺えません。ううう(噎泣)。 「らあめん」は手打ち麺じゃない、ってことではないですよね。 もしやと思った「竹の子」は、ちょっと太目の普通のシナチクで、踊った自分が残念な肩透かし。 きっと「つけ麺」はイケルに違いないと思うことにして、振り返る「欣家」の暖簾。kinya04.jpgそれでも駅まで辿るは、切ない気分の足取りで。西台からの帰路が遠く思えちゃったのでありました。 関連記事:中華そば専門店「戎」 でじゃこの載る和歌山系磯中華サバ寿司(07年04月)
「欣家」 板橋区高島平1-62-6 101 03-3934-3016
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フランス料理「グランメール山王」で 鮭リエット桜ブランマンジェ

grandmeresanno000.jpg久々に環七辿るバスの旅。 行けば至近な山王二丁目で下車して、山王小学校通りという小学校に面した生活道路を歩きます。 まるで初夏の陽射しにゆったりとして、のんびりと。 道が左へすっと折れるその右手角にあるのが、今日のランチにと訪れた「グランメール山王」です。 白い壁に浮かぶは、 少し色褪せた青い文字「Grand-mere Sanno」。 フレンチベースのレストランのようです。
「本日のランチ」は、アミューズの盛り合わせにスープ、メイン、デザート、コーヒーの組み合わせ。 メインは5種類の用意があって、この日は、「帆立貝のフライ・サラダ添え」「サワラのバルサミコ酢ソース」「鯛のパイ包み焼き」「地鶏のソテー・赤ワイン風味」「サーロインステーキ」。 サワラ、をお願いしましょう。 一杯だけぇ(笑)、と白をグラスでいただいて、grandmeresanno01.jpg入口脇のテーブルで生花を拵えるマダムの様子を眺めつつ、リラックス。 アミューズの盛り合わせが、ちょうどいいワインのお供になってくれる三品。 コゴミを載せたサーモンのリエットに蕗のムース、そしてホタルイカ。 grandmeresanno02.jpggrandmeresanno03.jpg リエットというと、豚のものあたりが思い浮かぶところに、魚肉のリエットって面白い。 それが空気を十分に含んだような軽~い仕立てになってるんだ。 メインの鰆のプレートが届く。grandmeresanno04.jpggrandmeresanno05.jpgたっぷりとした身肉にはほどよく脂がのり、特に皮目のあたりがなかなかイケる。 バルサミコのソースが自然に馴染み、フリットにしたフキノトウのほの苦みがアクセントを添えてくれます。 デザートは、「桜のブランマンジェ」。grandmeresanno06.jpg明るいピンクのグラスの中央に桜の花弁が浮かんでいます。 grandmeresanno09.jpgスプーンの先をそおっと挿し込めば、なはは、意外や小倉餡が顔を出す。 控えめな甘さながら、小豆の風味がブランマンジェの円い涼味と重なって、いい。 桜の葉はないけど、桜餅のような組み合わせだもんね。 陽射しに映える白い壁の「グランメール山王」。grandmeresanno07.jpg“グランメール”は、“おばあさん”の意だそう。 静かな住宅地にアットホームな、そしてプチおフランスな空気を運んでくれています。
「グランメール山王」 大田区山王1-24-12  03-3777-0693
column/02589

うどん「sugita」で のりぶっかけもっちり海苔風味が口一杯

sugita.jpg中目黒駅から高架に沿って祐天寺方向へ進むと、 高架下に並んでいた店たちの前には、工事用の仮囲いがされている。 予約殺到で結局新館にしか行くことのなかったもつ鍋「鳥小屋 本店」もちょっと不思議なBARだった「Grande Fine」も蕎麦処「喜道庵」、炭火焼「尋」も既に営業を終えてしまっています。 なんだかんだお世話になってるこの通り。 耐震工事後の高架下がどうなるにせよ、往時とは趣が変わってしまうだろうことにふっと寂しい気持ちにもなりますね。 sugita07.jpgそしてその先、看板のない店としても話題だった「豚鍋研究室」「村上製作所」跡を横目にさらに進んでひっそりとした住宅地に潜り込みます。 この先にお店あるのかな?間違えたかな?と思わせるところで見つかるのが、 うどん「sugita」です。 如何にもご自宅を改装した装いで、ドアを開けながら「ごめんください~」と云いそうになる(笑)。 壁の貼紙に、「店主による100%手打ちうどんです」「タピオカ粉など麺のこしを強くする添加物等を一切使用していません」とあって、オヤジさんの控えめなでも一本芯の通った自負を想わせます。 「のりぶっかけ」は、限定7食。 5でも10でもない、微妙な限定数は不思議ながら、思わずお願いしてしまうのね。 sugita01.jpg おやおやおや~(笑)。 覗き込んで笑っちゃっていいンだと思うよ。sugita02.jpg細かく刻んだ海苔が、これでもかとばかりにこんもりと盛られ、中央に温泉たまごが載せられているのです。 sugita03.jpgこの黒と黄と白のコントラストたるや。ね。 脇っちょからちら見するうどんは、薄い若草色をしてる。 四万十川の青海苔を練り込んだ変わりうどんですってことで、ご指南の通り、醤油に近いのでかけ過ぎないでねという辛汁をちょんちょんと振って、ちょっと廻してぐいっと、まさにぐいっと啜ります。sugita04.jpgコシつきの量感が嬉しくて、刻み海苔&川海苔の風味が口一杯に迫る。 うん、食べ易くはないけど(苦笑)、他に代え難いうどんは、温泉玉子を解いて混ぜたあたりが、シズルであります。 サイドメニューにお願いした「かきあげ」は、所謂“かき揚げ”とは一線を画する仕立て。sugita05.jpg薄くスライスした牛蒡、人参、南瓜、薩摩芋の素揚げの組み合わせといった趣で、一片一片手掴みで食べ易く、藻塩をちょん。ビールのお供に最高ぉって感じ。 きっとそれなりの重労働を経て、むっちりとしたうどんを供してくれているのだろうと思う「sugita」さん。きっと温かいうどんもいいんじゃないかな。sugita06.jpg冬のシーズンになったら「カキうどん」いただきにまた来なくっちゃ。きっとお酒も呑んじゃうな(笑)。 口関連記事:   BAR「Grande Fine」 で愉しむ高架下の静謐(05年11月)   博多もつ鍋「鳥小屋」新館 で手羽ぎょうざもつ鍋そして店主キャラ(05年11月)   蕎麦処「喜道庵」中目黒店 で胡麻だれそば往く夏を惜しむ(04年09月)   炭火焼「尋」 で自家製めふんアピオス福豚バラ肉焼きさつま美人(04年02月)   看板のない店「豚鍋研究室」でやんばる島豚寿豚そして夏の豚鍋(04年07月)
「sugita」 目黒区上目黒2-47-5 03-3719-0699
column/02588

チュニジアレストラン「イリッサ」武蔵小山店で ブリックとキフタ

illissa.jpg例によって、「Again」での村田Only One Liveを楽しんだあと、武蔵小山駅前の横丁に潜り込む。 日曜日の夜とあって、閉めているお店も少なくないけど、 それでもなんだかワクワクするのはなぜなのでしょう。 駅前で煙もくもくさせている立ち喰いやきとりで有名な「鳥勇」の裏手角で、”TUNISIA”という文字を見つけました。 先日の洋食亭「いし井」や麺屋「兜」もすぐ近く。 こんなところにチュニジア料理のお店があったとは、なんだか大発見な気分(うふ)。 元はラーメン屋?的普請が味であります。早速、お邪魔してみましょー。
入れ替わりにカウンターを離れた先客のおふたりが、 「うーん!おいしかったよ、またくるね!」と告げながらドアを出て行く。 「ありがとね~」とそれを追うニコヤカな表情に迎えられました。 「ええっと」。 illissa01.jpgどう攻めればいいのかなぁと相談しながら、決めたメニューがまず「ブリック」。 じゃがいも、玉子、ツナ、パセリをクレープ生地で包んで挙げた料理で、手で持って食べてねと云う。 仰せの通り、レモンを絞ってから両端を持って真ん中に齧り付くと、なはは、今にもとろんと零れ落ちそうな玉子の黄身が顔を出した。illissa02.jpg垂らすと勿体ない(笑)と、そっと啜るように口に収めて、軽妙な生地の歯応えとじゃが芋&ツナのしっとりしたあんと玉子との合奏を残さず味わう。 食べ終えて気がついた。これって食べたことある!って。 そうだ、大久保の「ハンニバル」ってチュニジアレストランだもんね。 そして、マトンが食べたいと云うと、クスクスかハンバーグがおススメだという。 うん、ならばとトマトソースのマトンのハンバーグ「キフタ」をお願いする。 少々辛味のついたトマトソースにしっとり煮込まれたハンバーグを齧れば、マトンの風味が妙にそそる。illissa03.jpgおほほ~、うまい旨い。 熱々にしてくれたパンには、黒い種のようなものが織り込まれていて、パプリカやコリアンダーなどのペースト「ハリサ」をつけていただくスタイル。 illissa04.jpgillissa05.jpg 一見コチュジャンのようにも見えるけど、恐る恐る咥えると、辛味は程々で、パンに塗っても違和感のなく、ハンバーグのソースともよく調和してくれます。 「たまたま、大久保のチュニジア料理のお店に行ったことがあるのだけれど…」と話すと、「あ、ハンニバル!」。「そうそう、ハンニバル、きっとチュニジア料理のお店ってそう多くないですもんね」と返すと、「ワタシ、ハンニバルにいたのよ」と云う。おお、なんと、そうですかぁ。 訊けば、静岡の花博に際して来日して、「ハンニバル」を経て、「イリッサ」を開いたのだという。 なるほどね。 チュニジアはどこにあるかというと、アフリカ大陸の北の中央にある。 アフリカの料理と聞くと直球エスニックなものと思いがちだけれど、ちょと違う。 対岸のイタリアを含めた地中海地域の料理と考える方が、イメージが近いものになるかもしれないね。 やっぱり、こんなところに!のチュンジアレストラン「イリッサ」。illissa06.jpg「長原の方にもお店あるのよ」。了解しました(笑)。
口関連記事:   チュニジア料理「ハンニバル」 でブリッククスクスケリビアソース(06年01月)   洋食亭「いし井」 でご飯の友ビーフジンジャーぶわんと生姜風味(08年03月)   麺屋「兜」 で求道的淡麗スープのチャーシューめんかぶとめし(08年04月) 「イリッサ」武蔵小山店 品川区小山3-19-5 03-3786-5332 http://illissa.web.fc2.com/
column/02587

麺香房「天照」で しっかりボディきりっと醤油スープに開化楼麺

tensho.jpgふと気が向いて、日頃割と縁遠いぃ葛飾区は堀切菖蒲園までやってきました。 なんとなく漂う下町な空気に和みながら目指すは、 駅からも程近いラーメン店「天照」です。 通りの向かいに見える「糀や」と書いた暖簾を眺め、「ラーメン 大」と大きく記した黄色い看板を目にして「蒲田のそれと同じかなぁ」などと考えているうちに、角の信号まで来てしまった。
あれ?通り過ぎちゃった?と引き返すと、あったありました。 お店のファサードが醸す雰囲気が所謂ラーメン店のそれとは微妙に違っていて、アジアンな装いであることも通り過ぎちゃった理由なのかもしれません。 店内も外観と同じトーンで、黒褐色が基調。tensho01.jpg幕板に竹を使っていたり、テーブルトップにはタイルを埋め込んだりと、そんな装飾が施されています。 開くメニューに「トムヤムらー麺」「タイカレー」「タイ風春雨サラダ」などとあることから、タイ風エッセンスを織り込んだお店のようですね。 オーダーは素直に、「天照らー麺」。そこへ「天然塩の味玉子」「三味ネギ」トッピング。 初見で印象的なのは、スープの醤油色がなかなか濃いぃこと。tensho02.jpgそのスープを蓮華で啜ると、見た目ほどの塩辛さはなくて、しっかりしたボディと魚介系出汁の風味、その後を追うように醤油の酸味風味が届いてくる。 ほほ~、いいかもしんない。 三味ネギは、長葱と浅葱と玉葱の三種ネギで、玉葱のみじん切りと深い醤油味のスープの組み合わせに、かつての「醤屋」を思い出す。 引き揚げた麺は、ゆるいちぢれに太さの割に力強い量感を湛えてる。tensho03.jpgスープによ~く馴染みながら、麺自身の旨味を伝えてきて、いいなぁと思ったら開化楼謹製だという。やっぱやるなぁ、開化楼。 tensho04.jpg太く柔らかい大判なめんまも、いい。 どんぶりの中でのバランスも取れてるしね。 うん、満足、「つけ麺」も気になるなぁと思う「天照」。 どうやら、かつて「二郎」だったお向かいの「ラーメン 大」、そして並びのうどん・麺処「糀や」の店主が展開した別ブランドなのだそう。 饂飩とラーメンスープのコラボ的どんぶりもあるという「糀や」tensho06.jpgまでも気になっちゃうじゃん、困るなぁ(笑)。 口関連記事:らーめん「醤屋」 で黒紫白からうすくち醤油の白玉葱みじん切り(02年11月) 「天照」 葛飾区堀切5-3-1 03-5680-3328
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