蕎麦屋「にこら」で ほろほろしみじみ聖護院かぶらそば

nicolas.jpg二条城近くでほろっと簡単に酔った足で向かったのは、 西陣エリア。タクシーは、堀川通りから折れ入り、大宮通りという裏通りへ。 「吉祥」というラーメン店を探すも行き当ったのは、別のお店の名前でした。さすがにこの路地での営業はシンドかったということなのでしょうか。 すっと気持ちを切り替えて、一本西側の智恵光院通りへ。 暗がりに浮かぶは、蕎麦屋「にこら」の文字。 Soba cuisine nicolasとも謳っているね。
左手に厨房、打ち場に対面したカウンターが奥へ沿い、左手にテーブル席。 その奥の硝子越しにもテーブルが見つかります。 京町家を洒落たセンスで置き直した、そんな設えに包まれて不思議なほど落ち着いた気分だ。 「そば寿司」「蕎麦米の飯蒸し」、蕎麦粉を使った「蟹クリームコロッケ」「ざるそば」へと至る「おまかせ蕎麦コース」あたりで、きゅきゅっと燗酒やるのが本懐を知るところなのでしょうけど、ラーメン店不発から流れた今夜の目的は温かいお蕎麦。 「京鴨と九条葱の南ばんそば」「伝助穴子の天麩羅と堀川牛蒡のすり流しそば」なんてのも気になりますが、御願いしたのは、先の「蜂巣」での蕪のとろろとの連携が脳裏に閃いた「聖護院かぶらそば」です。 薄色の汁に浮かぶ蕪のみぞれ。nicolas01.jpg 少し解すようにしながら、潜む蕎麦と一緒にすくい上げ、啜ります。 しみじみとした出汁の滋味にかぶらの甘く切ない風味が相乗して、 うん、おいしい。 翠がかった蕎麦は、つなぎを控えた様子の蕎麦の粉ほろほろ系。nicolas02.jpg温かいお蕎麦だってこうして、蕎麦らしい風味を楽しめる、ってお手本のような気がします。 nicolas03.jpgどんぶりの底の底まで完食(笑)。 冷たいおそばも試したかったな。 店名の「にこら」とは、ロシア出身のフランス画家nicolas de staelに由来しているのだそう。 nicolas04.jpg そういえば、過日お邪魔した「鳥岩楼」もこの近く。 はんなりとほっこりと、粗挽きの十割蕎麦がいただける「にこら」で過ごした西陣の夜のひとときでありました。 口関連記事:   水炊き「鳥岩楼」 で小振りな親子丼一気喰い(07年11月)   おばんざい「蜂巣」 で有馬煮赤天南蛮漬竹筒蜂巣(08年02月)
「にこら」 京都市上京区智恵光院通五辻上ル五辻町69-3 075-431-7567 http://www.sobaya-nicolas.com/
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おばんざい「蜂巣」で 有馬煮赤天南蛮漬竹筒蜂巣

hachisu.jpg 二条城を向かいにする全日空ホテル、国際ホテル。 その裏手にこっそりした間口のお店があります。 おばんざい「蜂巣」。 風に揺れる枯れ色の暖簾を払うと、 柔和な表情の女性、そして店主が迎えてくれました。 割と新しい設えで、カウンターの奥にはテーブル席もあるようです。
hachisu01.jpgちょんと座ったカウンターの隅から、少し腰を浮かせながら眺めるは、 例によっておばんざいの大皿たち。 あ、ここにもお腹に「福」を記した猫がいる。 桃の枝を添えた三品のお通しと蕪のとろろ汁をいただきながら、お品書きを物色。 hachisu02.jpghachisu03.jpg hachisu04.jpg 目の前にあった「南蛮漬」は、真魚鰹の南蛮だ。 店の名の由来を思わせる京都の純米吟醸「蜂巣」をいただくと、凍らせた竹筒がやってきた。 hachisu05.jpg注げば時折つっかえるのは、お酒もきっちり凍りかけている証左。 きりりとしながら、甘さに似たとろみを感じさせるのは、 ぎゅっと冷やしてあればこそのお楽しみなのかもしれないね。 じっくり煮しめた表情の「鮪の有馬煮」。hachisu06.jpg有馬煮、というのは、有馬山椒を使って煮ているからだそう。 云われて気がつく、山椒の風味(笑)。 hachisu07.jpg「赤天」って、鹿児島・天文館でみたあれかな?と思いつつ、「赤天って、京都の、です?」と訊けば、「いえ、島根の、なんです」とのお応え。 ちょっと意外だなぁといただけば、ふわっと辛い赤いヤツ。 隣に来たオッチャンは、座るなり「おばんざい三つおまかせにご飯と汁物、くれへん?」と云う。 そんな気安さも違和感のないお店だよなぁと店主とのやりとりを微笑ましく眺めていたら、 ふと結構酔ってる自分に気がついた。 まだおばんざいしかいただいてないのに、どうしよう。 基本路線の「かぶらむし」「ひろうす」から、「蒸し豆腐」「すっぽんの小鍋仕立て」「もち小芋の唐揚げ」「白魚の柳川」「湯葉の揚げ出し」などなど気になる品があるのに、もうすっかりふわふわいい気分(笑)。 畏まらせるところのない、でも背筋の通ったおばんざいの店「蜂巣」。hachisu08.jpg 今日のところは退けましょう。きっとまたいつかお邪魔します。
「蜂巣」 京都市中京区二条油小路町289-2 075-213-1170
column/02526

名古屋の味「キッチン マツヤ」で 皇帝豚の豚トロ網焼き

matsuya.jpg御園座もほど近い広小路通りを歩けば、 古のホテルのエントランスに見られるような、 くすんだカマボコテントがみつかります。 そこに示されているのは、 「広小路に生まれた名古屋の味」。 店頭にさまざまなメニューが貼られ、 次から次へと今日のお昼を目指す客たちが吸い込まれていきます。
入ってみましょう。 ボックスに区切られたフロアは、懐かしい匂いのする設え。 と、二階へ上がるよう促されました。二階はもっと広く、大箱を思わせるキャパであります。 三角に回したアイランド型カウンターで、メニューを睨む。 ”名古屋の味”ってところを東京からの客人として素直に味わうなら、「あんかけ名古屋味噌かつ」とか「小エビのフライ」あたりを攻めとくのが順当なところ。 ただ、周囲を飛び交うオーダーの多くが、「とんテキ」なのですね。ここ「マツヤ」の名物らしく、つまりは、豚のステーキらしい。 matsuya01.jpgそんなことを考えているうちに別紙記載のメニューが目に留まった。 「創作限定料理」と書いてあって、なんと二年に一回の料理とも書いてある。おお。 「豚トロ網焼」。 皇帝豚の僅か貴重な部位の豚トロだという。そして、最高級です、大サービスです、150gの贅沢料理限定、とも書いてある。なんだか、プッシュプッシュであります(笑)。それだけ推すのならと、塩焼きでお願いしてみました。 まさに網焼きよろしく、網に載ってやってきた皇帝豚さん。 意外と薄切りなのは、希少部位ゆえでしょうか。matsuya03.jpg 意外と網にくっついていて、めりっと剥がしていただけば、 なるほどよく焼いた豚の香ばしさに脂の甘さが滲む。matsuya04.jpg ただ、”皇帝”らしさは判然とせず、もっと肉厚にしてくれれば醍醐味なのにぃとかそれをやると網の上にふた切れだけ!とかになったりしてぇとか、ブツブツ考える。 あれだけプッシュしてくれたのに申し訳ない感じの心持ちになりつつも、鉄板のタレで焼く「とんテキ」という選択肢に想いを馳せるのでありました。 広小路のランドマーク「マツヤ」の創業は、昭和37年。matsuya05.jpg 今日も明日もきっとどっしりとそこにある。オジサンも頑張らねば(笑)。
「マツヤ」 名古屋市中区錦1-20-22広小路YMDビル 052-201-2082 http://www.sanynet.ne.jp/~mty/
column/02525

丼呑倶樂部「金太郎」で しょうが焼き丼どんぶりモノを想う

kintaro.jpgずっと前からそこにあると知りながら、 何故かお邪魔する機会のないお店というのもあるもので。 丼呑倶樂部「金太郎」。 どんどんくらぶ、と読ませるのかな。 表札をよく読まないと、囲碁教室かなにかと思って素通りしてしまいそう。 見上げる看板には、斧を担いで熊に乗った金太郎のイラストが見つかります。やっぱりその”金太郎”なのですね。
丼呑な「金太郎」だけあって、お昼メニューは「どんぶり定食」でのラインナップkintaro01.jpg。 「ビーフシチュー丼」「しゃけとろ丼」「ねぎとろ丼」「ハンバーグ丼」「きじ焼き丼」に「カレー丼」。 加えて日替わりメニューがある。 本日日替わりの、「しょうが焼き丼」をお願いしてみました。 チケットを先に購入するシステムらしく、慌てて財布からお金を出す。 窓際でなにやら外の様子を窺うオヤジさんがもしかして、金太郎さんかなぁ。 kintaro03.jpgお膳がやってきました。 どんぶりから溢れ出さんとでもするように、豚生姜焼きの肉片が跳躍寸前。kintaro04.jpg周囲が多少丸まっているせいもあるけど、ぽってりと肉厚に窺えるそのフォルム。なはは。 徐に箸の先を肉に突き刺して齧る。うん、ほどほど生姜風味に辛目のタレが利いている。kintaro05.jpg 齧った肉の残りを置くところがないので、元あったあたりに戻して、ご飯を喰らおうとすると複数の肉に跨って敷き詰めてあるキャベツがご飯をブロック。持ち上げようとしたら、逆側のお肉がどんぶりからズリ落ちた。あ、いか~ん。 これはキャベツを先にやっつけないと、お肉→ご飯の繋がりが確保できない(笑)! ということで、キャベツを平らげ、お肉に戻る。 普通に生姜焼き定食でいいものを、そこは“丼呑”倶楽部の切なさか。 ああ、やっぱどんぶりに合うものとあわないモノはあるよね。 いつも思うのが海鮮丼。海鮮丼は、海鮮丼あたま定食(?)で食べたいもん。 八丁堀街角の「金太郎」。どうやら店主の父君が“金太郎”さんらしい。 「金太郎」 中央区八丁堀2-3-2 03-3551-5082
column/02524

西洋料理「杉山亭」で 赤黄褐色酸味ほの甘コク味オムライス

sugiyamatei例えば武蔵小山同様、 目黒線の地下化による様変わりで落ち着きのない、 そんな様子の西小山に降り立ちました。 辿るは最寄りの弁天通りと呼ぶ商店街。 照明の切れ具合が、一抹の哀愁を漂わせる商店街ゲートのすぐ脇にあるのが、 オムライスでも有名な「杉山亭」です。
sugiyamatei06.jpg ドアを押せば、すぐ厨房の匂いが伝わってくる。 こじんまりとした店内の光景に不思議な懐かしさを感じてなんだか安堵。 すっかりオープンなキッチン前へ案内されました。 カウンター横の壁には、開高健直筆らしき色紙sugiyamatei01.jpgが額に飾られている。 「明日、世界が滅びるとしても、今日、あなたはリンゴの木を植える」。 食にも造詣の深い冒険家のメッセージや如何に。 sugiyamatei02.jpgまずいただいたのが、「野菜コンソメスープ」。 黙々すっすと刻んだ野菜に向けて、温めたスープを目の前で注いで、出来上がり。 色の深いコンソメに、野菜の歯触りがリズムを生んで、ひと口またひと口と動かすスプーンが止まらない。 そしてやっぱり「杉山亭風オムライス」。sugiyamatei03.jpg トマトピューレをたっぷりと入れて作るチキンライスは、明快に赤い色。sugiyamatei04.jpgトマトの酸味と玉子のほの甘さ、そしてデミグラスのすっきりとしたコクが渾然となったあたりが一番いい。 さらっとしながら、落ち着いたコクのあるデミグラス。 実際どれほどの手間を掛けているか判らないけれど、sugiyamatei05.jpgこうなると「ジャンボハンバーグ フライエッグのせ」なんか試してみたくなるね。 メニューの「自慢料理」のページに何気に描かれた店主のイラストがいい感じ。 あ、「杉山亭」の「カレーライス」ってのも気なる気になる。 ひとり、またひと組と客の姿の絶えない街の洋食屋「杉山亭」。
sugiyamatei07.jpg また来なくっちゃ。
杉山亭」 品川区小山6-1-3 03-3712-6222
column/02523