中華そば「井出商店」で 雑味なき豚骨スープに細麺中華そば

ideshoten.jpg初めて降り立つ和歌山駅。 駅前のロータリーから田中町という交差点目掛けて国体道路を進むと、辺りから漂う豚骨臭。 うっほほー。 まだお店まで距離がありそうなのに、早くも匂いで歓迎してくれるとは嬉しいでないの(笑)。 中華そば「井出商店」。 紅い暖簾を潜ると女性客が3人ほど。こじんまりした店内に、懸命に麺を啜る音だけがしています。デフォルト「中華そば」で。「特製中華そば」は、チャーシューの量が多いんだそうだ。
殻を剥いて用意していた玉子を投入した「中華そば」。ideshoten02.jpgまずはどんぶりを持ち上げて、スープをひと啜り。 ideshoten03.jpgへー。「天下一品」のようなドロッと具合を想像していたためか、意外に軽いとろみに少し驚く。豚骨スープの魅力を直球で煮出しながら、雑味なくすうっとしている感じ。若干強めの醤油が味わいに芯を作っている。 こんなスープには当然の細ストレート麺。ideshoten04.jpgやや柔めに思えたので、固めでお願いできればいいのかもしれません。 ideshoten05.jpg テーブルに置かれていた「早すし」を中途でカジりつつ、ぺろっと完食。 久々のスープ完飲ideshoten06.jpgであります。 ideshoten01.jpgああ、待望の「井出商店」にやっと出会えました。
「井出商店」 和歌山市田中町4-84 073-436-2941
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銀シャリ屋「ゲコ亭」

gekotei.jpgこの日は早めの朝から、阪堺電軌の路面電車がチンチンと鐘を鳴らしてゆっくりと走る、ひと気少なくのんびりとした紀州街道沿いのとあるビルの階上にいました。何気なく道路の向かい側を見下ろして目に留まった、トタン張り普請の建物に大きく書かれた「銀シャリ屋」の文字。「特撰米」「コシヒカリ」「ササニシキ」とも書いてある。お米屋さん?ご飯屋さん?などと思いながらも、まだシャッターが閉まっていて判然としない。昼前にもう一度様子をみると、既に軒先に暖簾が掛かり、何人もの人影がその暖簾を潜っていくではありませんか。どうやら、お食事処のようです。そそくさと足を運ぶと、店の周りだけ路上駐車が集まり、歩道にまで乗り上げて停められている。銀シャリ屋「ゲコ亭」。はてさて一体、どうなっているのでしょう。暖簾の先のガランとした倉庫っぽい店内には、チープなパイプの椅子とテーブルが並んでいる。骨太な業務用の冷蔵庫の中を硝子越しに覗くと幾つかの刺し盛りが準備されていて、その先のステンレスのテーブルには、惣菜のお皿がここぞ狭しと並べられていました。なるほど、ここから惣菜を選んでお好みの定食にしちゃいなさいよと、そういうことらしい。歪んだアルミのお盆に、肉厚具合が誘う「鰤の照り焼」、たっぷりした手作りな量感の「玉子焼」、そして「ひじきの煮物」に「ポテトサラダ」を載せ、お櫃の前で待ち構えるおばちゃんに一椀の御飯と味噌汁を貰って、本日の定食の出来上がり。脂ほどよい鰤照りを箸で崩し御飯とともに掻き込めば、おほ、なるほど御飯がほの甘くてなかなか旨い。“銀シャリ屋”を謳うだけのことはひとまずありそうだと思いながら、食べ進む。これできっと安いンだから人気になるわなと、何気に壁の値札を見てちょっと吃驚。おかずの四角いお皿が350~400円、丸いお皿が200~250円。御飯が150円でお椀が100円。お愛想してみたら1250円になっちゃった。図らずも決して安くない定食を食べたことに。だはは。当のビル管理人さんによると、「ゲコ亭」は時折テレビの取材も入る有名店なんだそう。なんだそーなんだ。店名の「ゲコ」はつまり「下戸」のことで、少々変わり者と云われるこちらの大将が「酒は出さん!」ということで店名に掲げたのだという。頑固親父の姿が絵に浮かぶなぁ。昼過ぎまでしか営業しないし週休二日で、夏や冬場に超長期のお休みをとりつつも営みとしては左団扇らしい。お店の左手を入ったところに旧来のお店があって、自家製の釜と井戸水で炊き上げるという御飯は、そっちから運んでくるンだ。振り向いて眺めて、も一度思う。なんて擽り処にツボで、素朴にキャッチーな店構えだことか(笑)。朝めしもいただけるようです。 「ゲコ亭」 堺市堺区新在家西1-1-30 072-238-0934
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BAR「哩哩」

milesmiles.jpg雑居ビルの2階にひっそりとあるバー「哩哩」。こう書いて、“MAILESMAILES”と読ませる。オーセンティックな要素とクラブチックな仕立てを掛け合わせたような装いの中に9席のカウンターが横たわる。バックバーには「The Scotch Malt Whisky Society」のエンブレム。永きバーテンダー歴を持つという、このバーの主人岩井さんが「なにになさいますか?」と告げながら、グラスをさらに磨く。「Glenfiddich」「Glenmorangie」とロックで舐めて、最後にエンブレムと同じ絵柄のラベルを纏ったSMWSのボトルの一杯をいただく。ラベルに蒸留所名を記載しないというのがSMWSのスタイルで、各蒸留所のイメージを守りながら、その一方で蒸留所名からくる先入観に囚われることなくスコッチを味わい楽しみたいという意図の現われなのだという。会員はリストにある醸造所のコードや地域名、解説からその蒸留所を類推しながらボトルを購入する、ということらしい。ふーん、なるほど。淡い色合いながら、芯にドンとした重さのある液体に、酩酊が深まりました。 「哩哩」 大阪市北区堂島1-1-20パールプラザ202 06-6345-1361
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すし「櫓鮨」

yagurasushi.jpg新地の新ダイビル近くの路地に静かに佇む鮨店に寄せてもらいました。積年を感じさせる設えも重々しいものではなくて、渋くて枯れた雰囲気が心地よいカウンター。ごつごつした石を幕板にしたその天板には大理石が流し置かれています。カウンター横の壁に掲げられた飾り皿に描かれているのが初代の大将だという。大阪出身ながら東京で修行し、のち大阪で独立。江戸前の寿司を供する店として繁盛し、そして今は京都出身の大将が三代目として店を継いでいるのだという。あっさりと炊いた明石の蛸、大葉とたたいた鰺で米焼酎の水割りをいただく。蛸にぎゅっと含む甘さに似たうま味がいい。「握りましょうか?」の大将の問いに、ご同席の御仁はうんそうねと頷き、「ここのは手毬だぞ」と囁く。江戸前の流れを汲む鮨店かと思えばまた予測は中らず、なんだかわくわくする(笑)。中トロに大トロ。なるほど確かにシャリがほぼ丸い。やや柔めのシャリに酢がキッと利いていて、えへへ、旨い。さよりに続いて白板に置かれた車海老の姿がまた美しい。コロンとシャリと身が一体となり、尻尾がピンと立っている。そして、艶かしい甘さ。炙った頭は外殻の香ばしさにミソのコクが色を注してくれる。引き割りした納豆と烏賊を和えて軍艦に載せたり、大トロに湯引きした長葱を海苔で巻いて「ねぎま」としたりと、ちょっとしたひと工夫が愉しい。穴子なんて、穴子の身を折り込んでシャリをすっかり包み込んでしまっているンだもの。ん?この青菜はナニ?と見ると、おー、かいわれ大根だ。ちょっと湯掻いてしなっとさせて握ることで、シャリがうまいこと緑を纏っている。こうして奇を衒わずひと仕事施すあたりは、江戸前的発想からきているのか、はたまた京出身の三代目の流儀なのか。今度また機会があれば、そのあたり伺ってみようと思います。 「櫓鮨」 大阪市北区堂島1-1-20 06-6341-7566
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ねぎ焼き・お好み焼き「福太郎」

fukutaro.jpg大阪に入って、さてどうしようかと思案して思いついたのが、久々大阪での粉もん屋さん。なんば駅から南海通りのアーケードを抜けた、千日前の有名店「福太郎」に突撃です。典型的なコの字カウンターが待ち受けていて、その正面が焼き物のメインステージ。ひとまずビールと「ずりの刺身」をいただいて、鉄板上で繰り出す所作を眺めながらぐびぐび。何枚ものお好み焼きを並べて、忙しなく動き回る手早さは、はっきり云って大胆かつ大雑把。わっさー、じゅっじゅっ、どりゃ、ほれっ、って感じ(笑)。大判な塵取りのような”シタジキ”に載せられて、出来上がったお好み焼きが運ばれていくのです。仕上げに檸檬1/4個をぎゅっと絞って、お願いししていた「すじねぎ焼き」が届きました。お好み焼きと違って、「ねぎ焼き」は基本醤油味。なかなか好みの味に仕上がっていそうなのが、ヘラで切り掬った姿から容易に伝わってきます。はぐはぐ。ねぎの甘さとスジの甘さが素朴に楽しめる一枚。上下の香ばしさがさらに食欲をそそります。お代わりしたビールを呑みながら、もしも叶うなら、蓮沼「福竹」のお好み焼きをここで食べ比べて、なにわな人たちがどんな反応を示すかみてみたい、なんて想ったりする。そして、「福竹」で瞠目した繊細で軽妙で完成度の高さを思わすお好みとはそもそも立ち位置が違うので比較しちゃいけないのかもね、と思い直す。さてさて、混んできたようなので席を譲りましょう。 「福太郎」 大阪市中央区千日前2-3-17 06-6634-2951 http://2951.jp/ 口related column:>お好み焼き「福竹」(過去記事)
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