とんかつ「河金」

kawakin.jpg入谷のとんかつ「河金」は、駅に極近くも、通り掛かりにふらりと入ることはそうそうありそうもない、そんな路地にあります。先客は、右手の小上がりにおふたりさま。新聞や雑誌が散らばっていて、どこか雑然とした印象のする中、奥のテーブルまで進みます。隣の座卓の座布団の脇には、黒い猫がすやすやと就寝中。そんな情景を微笑ましく眺めながらお願いしたのは、店名を冠した「河金丼」です。何気なく卓上のスポーツ新聞の文字を目で追っていると、背中の方からジジと油に揚げる音。そして、どんぶりが届けられました。「河金丼」というのは、つまりは、カツカレー丼。濃い色に揚げられたカツに、如何にも小麦粉をたっぷり使った見映えのカレーがどろんとかけられています。揚げ立ての衣の香ばしさがうどん屋的カレーと素朴にマッチ。カツもカレーも特にどうということもないものの、なんだか下町ックな魅力があると思いたくなってくるのが不思議だ。見上げた壁の上部に、「あさくさ河金 支店」の文字。大正の頃、屋台を牽いていた初代が発案し、浅草に開いた洋食のお店「河金」から分家したのがここ入谷「河金」ということらしい。元祖カツカレーは「河金」の、ということなのか。「トンカツ」の品書きをよく見ると、50“匁”とか200“匁”とかという表記になっている。一匁が3.75g。あれ? ってことは、200匁は、750gのトンカツってこと!? 見間違いかな(笑)? 「河金」 台東区下谷2-3-15 03-3873-5312
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魚豆根菜「やまもと」

yamamoto.jpg以前から気になっていた恵比寿のバス通り沿いにある「やまもと」にお邪魔してきました。藍色の暖簾を払うと、飛び石のアプローチが迎え、その先には半円に低くした潜り戸風な扉が控えるという設えになっています。頭をぶつけないようにひょいと潜って送る視線の先には、すっと端正な白木のカウンター。すっきりとした舞台が待っていました。差し出されたお手拭きは、「魚豆根菜やまもと」と染め抜かれている。麦酒で喉を湿らせつつ、まずいただいたのが「野菜のスープ」。お猪口を濃緑色が満たし、花びらが浮かんでいる。青汁的様相だけど、啜れば臭みなく、すっきりしたあと味が印象的。身体の中が綺麗に洗われちゃいそうな擂り流しな緑の正体はモロヘイヤだそう。朱のお皿に盛られた付き出しは、トマトの酢漬け、金糸瓜をゼリーに寄せたもの、オクラに寄り添うのはバナナピーマン、鰯、そして花豆。「そうめんかぼかちゃ」とも呼ばれるという金糸瓜の柔らかな繊維質が面白い。バナナピーマンは、味はピーマンで、姿が確かにバナナっぽいンだ。“魚豆根菜”がひたひたとアプローチしてきてる感じ。並べられた九つのお猪口からひとつを選らんでいただく一本目は、甕貯蔵純米酒「鍋島 徴古」。純米らしい懐のある呑み口だ。続くお皿は、刺し盛り。〆た鯵もなにより燻した金目鯛が絶品であります。上等な鴨肉のようなその一片を自家製の柚子胡椒をほんのちょっと載せていただく。滑るようなきんめの脂が薫香で昇華。そこへ柚子の風味を纏った爽やかな辛味がふんと挿す。うへへ。うみゃい~。青唐辛子を使ったどこかザラッとした柚子胡椒が巷多いけど、これからはこの柚子唐辛子を基準にしていこう、かなんか思ってしまう。カウンターの中を行き交うお三方は、ともに短髪に捻り鉢巻。そのうちのひとりが続いて届けてくれたのが、「夏野菜のお椀」。濃厚にひかれた出汁に茗荷やオクラ、庄内・鶴岡の特産といわれる民田茄子などを含み、ビーツの赤が挿し色になっている。う~ん、しみじみ。二本目のお酒は、無濾過純米中取り「南」。一本目と比べて、ふわっとした華やぎとキレのよさを思う。焼き物は、鮎。茴香(フェンネル)と鮎の香りの競演を初めて正面から味わった。「沖田茄子の味噌漬け」「らっきょの酢漬け」「烏賊の正油漬け」でお酒をさらにくぴくぴ。今度は土鍋がやってきた。ふつふつと炊かれているのは、シチリア茄子、ミニトマト、粟麩、車麩、三尺隠元、苦瓜、白瓜、夕顔に麦、大豆、レッドチコリとこだわり野菜の具沢山。ティンカーベルという小さなピーマンが可愛い。三本目にと山田錦と雄町の「凱陣 攻めブレンド」。ボディがしっかり攻めてきて、コクある一本だ。「大根の正油漬け」「蛸の肝の塩辛」「白瓜味噌漬け」でさらにくぴくぴくぴ。「そろそろよろしいでしょうか」(笑)。といことで、「湯葉と玄米の冷たい茶粥」をいただく。まだまだ暑気の残るこの時季に冷たいお粥で〆る涼味がいい。和三盆の黒蜜。桃、ネクタリン、ブルーベリーの水菓子をいただいてさらに和む。ふ~、いいなぁ。市場を通さず仕入れるという野菜たち。その背中をそっと押すような、過不足のないそして濁りのない仕立てに安らいでしまうのです。フレンチでめくるめくのも悪くないけど、こうして和食でめくるめくのもいいものです。 「やまもと」 渋谷区恵比寿2-12-16 03-3280-6630
column/02346

KOREAN CUISINE「梨の家」で 藻塩ちょんのもち豚カルビランチ

nashinoya2.jpg茶そばでも啜ってお昼を済まそうかと通りを歩いていたら、こんな懸垂幕を目にしてしまった。 「本日29の日」。 ソレデドウシタ?という興味というよりも、ただただ、ニクタベタイ、という気分になってしまった。 その手に簡単にのってしまう。 単純なのであります(笑)。
単純ついでに、15食限定というショルダーフレーズに素直に反応して、 「もち豚カルビランチ」をいただくことにしました。 例によって、キムチ、ナムル、サラダ、茄子の小鉢、 そしてスープにライスとお皿に囲まれる感じは悪くない。 ガスに火が入って、もち豚のお皿が届きました。nashinoya2_02.jpg 「こちらかこちらでどうぞ」と云って、小皿の藻塩か辛味タレを指差してくれる。 ほぉ。 nashinoya2_03.jpgnashinoya2_05.jpg 既に熱くなっている石に脂が十分に挿している豚肉を載せ、ジジと少し焦げ、その脂が浮いてきたあたりで藻塩をちょんとつけ、口へ。 にゃはは。 脂が甘くって笑っちゃうぞ。 旨いうまい。 塩が脂の魅力をグイっと引き立ててくれている。nashinoya2_04.jpgやっぱり、ミネラルな塩と豚肉の脂は相性抜群なんだね。 どんどん食べれてしまうじゃん。

満足したところで、柚子のシャーベットでお口直し。 ホールスタッフの動きもきびきびとして、 居心地のいい「梨の家」での久々ランチでありました。nashinoya2_01.jpg 次回は、「石焼薬膳クッパ」だな。 口関連記事:  「梨の家」八丁堀店の「カルビ焼肉ランチ」(過去記事)


「梨の家」八丁堀店 中央区八丁堀2-21-6 八丁堀NFビル1F 03-5541-5219 http://www.a-team.co.jp/nashinoya/
column/01562再会

インド式カレー「夢民」で ポークトマトcurry卵のせ素直においしー

mumin.jpg以前、当てずっぽうにお店に向かって、 結局辿り着けなかった「夢民」に再び向かいます。 諏訪通りを明治通り近くまで。 明るい店内が暗い通りを照らすお店が、 今度はちゃんと見つかりました(笑)。 鮮やかに華やいだ壁のペイントを横目に、 案内されたカウンターへ。
「ポパイcurry」「グリーンcurry」に始まる17種ほどの夢民ラインナップをぐるぐる眺めては、 あれこれ迷ってみる。 茄子が主役の「サマーカレー」「サマーエッグカレー」という夏野菜の季節モノもある。 ん~、ぐるぐる。

お願いしたのは「ポークトマトcurry」に「卵」のトッピング。 選べる辛さは、まずは「夢民」の基準だという「マイルド」から。

白いお皿の白いライスのおよそ真ん中辺にちょっと遠慮した感じにカレーが載せられている。 一瞬、こんだけ?と思うも、別途ソースパンが運ばれてきてひと安心(笑)。 こういう盛り方ってなんだか新鮮。 面白いなぁ。

さらさらとしたソースにほぼ原型を留めたトマトにサイコロ状の豚肉がコロコロと。 そのソースがかかっているところ目掛けてスプーンを差し入れて、 多少掻き回すように掬う。

トマトの心地いい酸味に続いて、 カレー汁に滲みた出汁の旨味がしみじみと伝わってくる。 おー、うまいのねん。
マイルドゆえ辛さはおよそ控えめ乍ら、スパイスの風味が柔らかくも多層に思える。 ソースパンの中身をライスの上に注いで、さらに。 要所要所で溶かれ馴染んだ玉子の部分が甘い変化を加えてくれて、いい。 ソースを改めてしげしげ見ると、融け残った玉葱がそこここに見つかる。 きっと沢山の玉葱を使っているンだろうね。

そうそう、「夢民」で使う玉子は那須高原の「山麓」、トマトはトルコ産、らしい。 いやー、なんかこー、素直においしいなー。

明け透けなくらいにオープンな厨房には、 朗らかな空気が流れている「夢民」。 そんな快活さも分けもらえそうな雰囲気もいい。 遠からず、日本橋や汐留の姉妹店にも行ってみよう。


「夢民」高田馬場本店 新宿区大久保3-13-1 [Map] 03-3203-3306 http://www.mumin.jp/ [閉店]
column/02345

鶏料理 婆っちゃんの料理「鳥珍」茅場町店

chochin.jpg霊岸橋の袂、亀島川沿いに建つ建物。軒下に提燈の赤い球を並べているのが炭火焼鶏料理の店「鳥珍」です。入口の左手にはオープンエアなテーブル席もあって、屋台ノリも楽しめそうな設えになっています。お昼のメニューはというと、「具たくさん豚汁定食」「じゃがいもカレー定食」「まぐろづけ丼定食」など。鶏料理のお店ならやっぱり鶏料理のランチを食べたいところですが、そんな要請に応えてくれそうなメニューは「つくねと野菜のスープ煮定食」ぐらいでしょうか。えーと、「婆っちゃんのとんかつ定食」をお願いしてみましょう。先会計をしてくれたレジのおねーさんと奥で席を采配して接客しているおっさんとの呼吸が合わずに右往左往。結局2階へと廻ることになって川辺の窓脇へ。さて、あまり待たずして届どいたとんかつ。むむむ。断面を見るに、結構パサパサしていそうな予感がする。卓上の塩を貰って、とりあえず恒例の塩でいただいてみる。うむむ、もそもそしちゃって甘さを引き出すようには塩が活きないね。今度は醤油を回しかけてみる。これなら辛子をちょんする感じでもいい。後半になって添えられた特製なソースで。口の中がほぼこのソースの味で満たされることにはなるけど、なるほどこのとんかつにはこのソースが一番合っているのかもしれません。最近、“揚げ物は塩で”って決めつけちゃってるところがあったけど、場合によってはそれ以外のものが合うことがあると気づかせてくれました。「鳥珍」のメニューには、およそ600度の炎で一気に焼き上げるという「親どり鳥珍焼き」を筆頭にする炭火焼きから、婆っちゃん手作りをショルダーフレーズにした「メンチかつ」「ぬけ漬け盛り」などなどの酒肴が並んでいます。あ、「婆っちゃんの酒」に焼酎用の「婆っちゃんの梅干」なんてものあるぞ。「鳥珍」は、新亀島橋の近くにも「元祖串八珍」を展開してる豊創フーズのグループ店です。 「鳥珍」茅場町店 中央区新川1-3-2 03-3523-9400 http://www.hoso-foods.co.jp/
column/02344