大衆酒場「魚三」

uosan.jpg生憎の曇天で花弁の仄かな桜色もいまひとつ冴えないものの、降られることなく楽しめた葛西臨海公園でのお花見。昼前からのビールと濁り酒とワインによる酔っ払いが思いついたのは、ずっとずっと気になっていながら、噂に聞く混雑具合から暖簾を潜る機会のなかった門仲「魚三」でありました。16時を幾らか過ぎたあたりか。大きな暖簾の前には数人の空席待ちがあり、そこから覗く店内は当然満席だ。「おこさんづれおことわりします」の貼紙越しに中の様子を窺おうとすると、鼻先を「くさや」の芳しき薫りがむわんと襲う。おお。既に時間の概念が相当怪しいものの、15分ほどで1階カウンターへ収まることができた(気がする)。「魚三」ビギナーさんは、壁一面に貼られた品書きに圧倒されつつも見上げる。百円台、二百円台、比較的値が張っても五百円台か。なるほど、この値段設定が「魚三」なんだね。例えば、「いさきさし」が瑞々しい厚切りの身がたっぷりと載って450円だもんね。常連には常連それぞれ、この肴から入ってこういって、あーいって、最後はこれで〆るみたいな流れが出来上がっているんだろうなぁ、などと朧げに思いつつも、昼間の酒が効いちゃっているのがなんとも口惜しい。はぁ。お腹空かせた素面でまたお邪魔したいと思いまふ。 「魚三」 江東区富岡1-5-4 03-3641-8071
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甘味「茂助だんご」

mosuke.jpg昨春同様、花見酒のアテを仕込みに築地まで。まずは腹拵えにと寄ったのが、かつて一世を風靡した童謡「だんご3兄弟」のモデルになったということでも有名な「茂助だんご」。何度も店頭でお団子を買ったことはあるけど、店内のテーブルに座ったことはなかったのです。でも、お団子何本も食べて朝食代わりにしよーってワケじゃなくって、お目当てはこの「玉子ぞうに」です。澄んだ汁を啜ると、この一杯のためだけにひいたような濃い味の出汁が迎えてくれる。とじた玉子やお麩の陰から覗いたお餅は小さめな一片だけだけど、小腹を満たしつつ温めてくれる感じがちょうどいい。次から次へと売れていく店頭の忙しさを余所に、奥のテーブルでまったりしみじみしていると、なんだか河岸の男衆になったかのような錯覚が一瞬過ぎったりして面白い。一応、こしあん、つぶしあん一本づつもいただいて、さあ買出しです。 「茂助だんご」 中央区築地5-2-1魚がし横丁1号館 03-3541-8730
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おそば「堀留 尾張屋」

owariya.jpg京都や浅草のそば屋をはじめ、いったい日本中に何軒の「尾張屋」さんがあるのでしょう。こちら堀留は人形町通り沿いにあるおそば屋さん「尾張屋」。如何にも町場のおそばやさんの風情ですが、そのお味たるや如何でしょうか。あまり考えずに暖簾を押したものだから、すぐさま食券を買わなければいけないシチュエーションに慌てて、目に留まった「かき揚げおろし」と口走る。オバチャンは「冷たいンじゃなくて、温かいの?」と訊く。あ、そっか、基本、冷たいそば用のメニューだ。ただ、頭の中はすっかり温かいおそばモード。「あ、温かいので」。先に届いたかき揚げは、こんもりとしながらボテっとしたところの感じられない、意外や軽妙な仕立て。そこへかけそばが添えられてくる。折角のサクサクがもったいない気がして、お皿の上でかき揚げを適当なところで千切っては、そばと一緒に口へ。う~ん。大変失礼ながら、駅そばと比較したら上品で美味しいかぁと思ってしまった。すんません。よくある、どんぶりとのセットものメニューを横目に改めてお品書きを見たら、ひとつだけ気になるメニューがありました。ありそでなさそな「豚角煮うどん」。冷たいうどんと豚角煮との取り合わせや果たして。 「尾張屋」 中央区日本橋堀留町1-11-7 03-3661-4488
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旬の肴と旨い酒「海」

umi.jpg茅場町の路地。「明火」という小料理屋だったところが、新しいお店に変わっていました。格子戸から覗く店内は、コの字にカウンターの廻っていた以前の景色から一変して、素直にテーブルを配した明るいお店になっている。期末の打ち上げにと席を確保してみました。時季の「そら豆塩茹で」「新じゃがいも明太チーズ焼き」「フルーツトマト」あたりでビールをいただき、「にぎわいおから」「薬味温豆腐」「〆鯖炙り青ネギ胡麻醤油」あたりをアテに、店名に同じ芋、「海」を啜る。同行の女史が目聡く他のテーブルに見つけた厚揚げが、旨い。コース料理のみ設定のメニューを無理やり出してもらった厚揚げは、先の豆腐料理同様、松戸にある「中島商店」というお店謹製なのだという。その厚い身に大豆の濃い味たっぷりでかりっとさせた外周との合わせ技がいい。気がつけば満席の「海」はこの3月上旬のオープン。ただいま張り切って調理に接客にと奮闘中です。 「海」 中央区日本橋茅場町3-8-3 03-5640-8178
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スープカリィ厨房「ガネー舎」

ganesha.jpgスープカレーの元祖と云われる薬膳カリィ本舗「アジャンタ」。その札幌の老舗の流れを汲むという新橋の「ガネー舎」に行ってみました。オフホワイトのテント地の庇を潜り、地下への階段を進むと、正面の踊り場に象顔の像が据え置かれている。これが象頭人身の「ガネーシャ」で、商業の神、学問の神、障害を克服して成功をもたらす神として信仰されているンだそうです。カウンターに案内されて、メニューを睨む。「とりやさいカリィ」「カシミールやさいカリィ」など5種類が並んだ中から「とりなすカリィ」を選んでみました。ピーマンの緑、茄子の紫、南瓜の橙が鮮やかなコントラストを魅せる器がやってきます。早速、淡い檸檬色をしたサフランライスをスプーンに掬って、スープに浸し、啜ります。むはは、やっぱスープカレーっていいね~。30種類のスパイスと15種類の漢方とをじっくり煮込んだというスープカリィ。辛味と滋味がじわじわじわっと、そして鮮やかに味わえるのね。野菜たちに隠れるようにしていたチキンが意外にしっかりサイズで、その身を骨から削ぎ落としてスープに浸せば、また違う旨味が楽しめるのです。うんうん。火照ったお口には、杏仁豆腐。ふと頭上を見上げたら、「海山カリィ」「ラムカリィ」「なすフランクカリィ」なんてディナーメニューが貼ってある。あ、「揚げもち、あります」「カキカリィ、はじめました」とも。夜にもまた来なくっちゃだ。 「ガネー舎」 港区新橋5-12-2鴻盟社ビルB1 03-3433-0309
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