らーめん「六本木 黒兵衛」

kurobe.jpg手元の小さな七厘で自らチャーシューを炙ってトロトロになったところをいただく、という切り口で話題になっている「黒兵衛」に寄り道です。六本木交差点近くのビル地階。店内に入ると立ち込める煙が視界に入ります。炙ってるぞ。当店の柱和風醤油、とある「黒兵衛らーめん」にのり、たまごトッピングをお願いします。思わず「チャーシューついてますよね」と確認してしまった(笑)。ひとまず七厘とトッピング具材が届いて、チャーシューと葱をジリジリと炙り始めます。間もなく煙が立ち始め、脂が滲んでくる。ひっくりかえそうとすると既にトロロンとした状態になっている。おお。そして届いたらーめんのスープは黒い。このあたりが店名の由来なのかしらん、醤油ダレで塩辛いんだろうねぇ、などと思いながら啜ると、これが思いのほかすっきりとした旨味が膨らんで、あれあれウマイでないの。しゃっきりした麺とのバランスもいい。網から移したチャーシューは当然のごとくすすっと蕩ける。正直云うと、らーめんそのものは大した事ないのじゃないのと思っていたところ。想定外の満足でありました。 「六本木 黒兵衛」 港区六本木7-14-11六永ビルB1F 03-5412-7373 [店名変更]
column/01755

海鮮酒処「ほていさん」で てんこ盛りあん肝逆説的美味しさの方向

hoteisan.jpg忙しさに紛れて叶わなかった忘年会。
年明けの新年会で果たそうと予約の電話を入れました。
日付を告げる度に、その日は無理だわねぇと云われる。
うむむ、いつなら大丈夫ですかと訊ねると、
その人数だと月末だわねとのお応えでありました。
3週間近く先じゃんね。
やっぱり鮟鱇のシーズンは混み合っているようです。

月島は西仲通りの交番近く。
路地を覗き込むと暗がりにぼんやりと「ほていさん」の看板が見つかります。

「上だよ」。
店から一端出て、右脇の階段から「あんこう鍋セット」の待つ3階の宴会部屋へ。

テーブル中央に、鰤、帆立、鮪赤味、中トロ、雲丹、蝦蛄、蛸などが盛られた大皿がデンと据えられます。

鮪や鰤にはいまひとつの印象も、雲丹や帆立は悪くない。
食べ始めてみると見た目以上のなかなかのボリュームだ。
刺身って意外と量が食べられないものなのね。

なんとか食べ終えたテーブルの上にカセットコントが持ち込まれます。
そのコンロの上に量感のある鍋が据えられ、蓋を外すと…。
うわぁ~、あん肝のみじん切りがてんこ盛りだぁぁ。
すげぇ量だねぇと思わずお互いに顔を見合わせます。

中国出身で片言日本語のホール担当をいじったりしながら煮えるのを待つ。
おいおい、吹き零れてるぞ。
中国のあんちゃんは多少零れようがお構いなく、
大雑把に掻き回して各自の器に取り分けてくれます。

汁をひと口。
まったりとしたコクのあとにそのコクをさらに押し退けるような甘さがやってきます。
白菜やら葱やらの甘さとも思えますが、あん肝が放つ甘さなのかもしれません

最初は、独特のコク味にハフハフムシャムシャと貪るように喰らいますが、
圧倒的な鍋の量としつこく感じ始めた甘さに満腹感が増してきます。

でも鍋といったら雑炊。
具をほとんど食べずして雑炊へと展開できそうもないので、
頑張って食べ進みます。
うう。
結局雑炊の味はよう分からん状態に。
量を減らしてくれた方が美味しくいただけるんではないかという、
逆説的なお話に相成りました

「ほていさん」
中央区月島3-9-7 [Map] 03-3531-5200

column/01754

焼とり・釜めし「鳥治」

toriharu.jpg昼時に新大橋通り沿いの歩道上に置かれていているスタンド看板の自信ありげな唯一メニューが以前から気になっていました。「鳥治」のランチタイムは、「特製そぼろご飯に温泉卵のせ 焼き鳥定食」なのです。如何にも焼鳥屋然とした店構え。時間がちょっと早いせいか先客はおひとりです。これまた如何にも下町の、といった風情のオバチャンに正対するカウンターの左隅へ。「お待たせぇ」とどんぶりが届きました。ほど良く盛られたご飯の上に鶏そぼろ、そしてレアな火通りの温泉卵がのっています。クチュッと温たまを崩して、そぼろと少し和えるようにしていただくと、ほう、悪くない。余計な水ッ気が飛んでカラリとしたそぼろなんだ。別皿に焼鳥が4本。串を咥え引き抜いてはご飯を口へ。こうしてみてもやっぱりご飯と焼鳥の組み合わせにどこか違和感を感じてしまう。焼鳥は酒が似合うと思い込み過ぎているかなのかなぁ。 「鳥治」 中央区築地3-8-7 03-3542-8029
column/01753

手打ちそばと旨酒「山久」

thankyou.jpg夕刻に初めて訪ねて満席で涙を呑んで以来、満席やら蕎麦切れやら不意の臨時休業やらで幾度となく訪問叶わずの状態でした。予約のできないお昼時におずおずと再訪してみると、相席ながら奥の掘り炬燵様式の席が運良く空いていました。蕎麦の具合を確かめようと単品での注文を考えるものの、ランチセットがなにやら良さげだ。蕎麦ののった笊とは別に大根などの野菜の煮物に湯葉の揚げ物、オクラとモロヘイヤの和え物、それに赤米と思しき赤いお米の稲荷寿司2貫などののったお盆がやってきます。まずお蕎麦の方から食べて欲しいと云う。例によって2、3本を啜ってみる。しっとりと滑らかな口当たり。仄かな香りと甘味がすっと抜けていく。なるほど。今度は鴨汁あたりを試してみたいなぁ。お盆の品々をみていると酒肴の方もイケるかもしれないしね。また昼からハートランドを呑んでしまいました(笑)。 「山久(さんきゅう)」 目黒区緑が丘2-25-17 03-5701-1180
column/01752

Restaurant「(S2) s-deux」

s2.jpg南麻布のマンションの一室「1102号室」。ホストとシェフとソムリエと、何役をもこなすウメさんなる「ちょい不良」オヤジ風な主人のご自宅にこっそり招かれたような粋な食事と時間が楽しめるのだという。電話ではなくドコモのアドレスが連絡予約の手段だというのも、どこかベールに包まれた装いで心憎い。予約の趣旨を含めてメールを入れる。ところが、厨房設備の故障で去る「1102号室」で営業できなくなり、別の箱で営業をしているのだという。それが外苑東通りから星条旗通りへと折れたところにある「S2」です。その以前はフレンチのお店だったそうで、想像に違い、照明を絞ったりしない明るくゆったりとした印象の店内です。おまかせコースの口開きは、未だ国内ではほとんど流通にのっていないというスプマンテ「MONTENISA」から。芳醇ですっきりした余韻の残る呑み口だ。前菜には水牛のミルクと豆乳を合わせたプディングに柚子風味のコンソメジュレとイクラがのったもの。そして炙ったパイナップルにししゃも、さらにハムのスライスをのせたもの。はたまた、トマトを香ばしい焼きなすとモッツァレラチーズのスモークで挟んだもの。それぞれに食感も味わいも違うものを重ね合わせていて、それがなんら違和感のない妙味を生んでいて自ずとニヤついてしまう。パンはウメさん自家製。イチジクを練り込んだものもある。ワインはシャルドネの「PLANETA」からサンジョヴェーゼの「Prunaio」へ。濃いルビー色とは裏腹な澄んだ後味がいい。カッペリーニと云われて覗き込んだプレートには白髪葱が盛られている。え~?。よく見るとその下に極細麺が隠れているんだ。葱にからめられた、云わばタレが絶妙じゃん。さらに一味を加減しながら振りかけていただきます。だんだんとウメさんワールドの深遠に嵌まり込んでいくような気分になってくる。続くペンネはゴルゴンゾーラソースに空豆、やっとカジュアルなイタリアンかとも思わせつつ、真ん中にのっているのはなんと京の柴漬けだ。酸味を添えてひと皿に格段の広がりを持たせている。オイスターのリゾットには青海苔、メインの牛肉のフリットには青梗菜が添えてある。デザート後には、珈琲でも食後酒でもなくてほうじ茶が出てきて和む和む。いやはや、身近な和の食材を奇を衒うことなく取り込んでいるところにさり気無いサプライズがあって、美味しい上に楽しいね 。こんなオヤジになりたいもんだなぁと眺めるウメさんの名刺の写真は、篠山紀信によるものだそうだ。ウメさんはまた別のペントハウスでのよりプライベートな雰囲気と構成のスペースを構想・計画そして準備中とのこと。そう云えば、「(S2)」という店名はかつて小山薫堂氏が名づけたものだそうです。 「(S2)」 港区六本木7-4-4 龍土町ビル
column/01751