手打「築地 布恒更科」

nunotsune2.jpgいよいよ年越しやね。年末年始連日出勤ゆえに八丁堀界隈で開けている蕎麦屋さんを探してみると、「布恒更科」が売切れ仕舞いで営業しいるそう。早速出掛けてみました。満席の店内。丁度入れ替わりでテーブルに着くことができました。気になる酒肴たちで、蕎麦前を軽く呑ってしまいたい衝動に駆られるもそこはぐぐっと我慢して、冷たいそばの「鴨汁」大をお願いします。筒切りの葱は1cmほどと短いのがふんだんに入った鴨汁は、布恒らしいたまり醤油を思わせる超濃い口。鴨肉も醤油色にすっかり染まっています。きめの細かい鴨肉のつくねがひとつ。やはり鴨の脂が漲るような仕立てにはなっていない。手繰った箸の下の半ばぐらいまで汁に浸しては啜る蕎麦は、しっかりとした歯応えと喉越しで、これはこれで悪くない。外二、だそうだ。残念だったのは、蕎麦湯が素っ気無くてほとんど風味がなかったこと。お店によっては、蕎麦湯をそれ用に改めて用意するところもあるらしいけど、締め括りの蕎麦湯でお店の印象が随分と違ってしまうこともあり得るので、その辺りひと工夫してみるというのはいかがでしょう、2代目。 「築地 布恒更科」 中央区築地2-15-20 03-3545-8170
column/01510再会

そば「上野藪蕎麦」

uenoyabu.jpg年の瀬のアメ横の賑わいが伝わる上野界隈は、普段に増して、やはりどこか落ち着かない雰囲気です。昼下がりの「上野藪蕎麦」もなかなかの盛況で、1階に唯一残っていたフロア中央の浮島のような席に案内されました。「牡蠣南ばん」に食指を動かされそうになるも、初志貫徹とばかりに「鴨せいろう」を所望する。へー、蕎麦から香る甘さが印象的だ。蕎麦そのものの甘さだとしたら唸るところだけれど、どうやら玉子でつないでいるらしく、それがうまく利いているのかもしれないね。脂を感じさせず、どちらかというとあっさりとした鴨汁には、多少臭みも残るほどにレアに温められた合鴨肉が浮かびます。上品な仕立てだ。どうも脂たっぷりのつけ汁をいつも求めてしまうので、一抹の物足りなさが残ってしまう。「並木藪」でのときめきと並べて比較はできないけれど、鴨のせいろってこのあたりが王道なのかなぁ。 「上野藪蕎麦」 台東区上野6-9-16 03-3831-4728
column/01719

鮨「あら輝」で 迷い鰹ぼら玉子手乗り白子大間鮪のグラデーション

araki.jpg中町4丁目の交叉点付近でタクシーを降りてみたものの、辺りにそれらしき店名を示す灯りも見当たらない。 少し交叉点の方へと戻ったところで、暖簾もなく照明を点すこともない店先に「鮨 あら輝」の表札を見つけました。 おずおずと扉を引くと、白木のカウンターと座面の椅子の真紅とが清々しいコントラストを見せる、ゆったりとした店内が見渡せました。
L字に、板場に向けて3層を織り成す白木のカウンターの中央に、「あら輝」店主荒木さんのがっちりとした体躯と笑顔がある。 わずか12席の、左隅へ。 口開きは、自身の肝を巻き込んだ平目。araki01.jpgとろっとした縁側も添えられてきます。 araki02.jpg 続いて絶妙な柔ら かさに煮られた鮑。 別皿で肝が届いたところで、これは堪らんと「神亀」のお銚子を。araki03.jpg 太平洋側から日本海へと迷い込み、博多沖で揚げられたという「迷い鰹」は、ねっとりとした味わいで、カツオとは思えない品格だ。araki04.jpg 雲丹といくら、塩味で炙った墨烏賊のゲソに続いて、ぼらの玉子。 araki05.jpgaraki06.jpgaraki07.jpg からすみと違って、西京味噌に漬け込んだものをスライス、炙ったもの。 ねっとりすっきりとして、ああ、お酒が進んでしまう。 そして握り。 いきなり大間の鮪が4連続だ。 araki10.jpgaraki11.jpgaraki12.jpgaraki13.jpg お腹部分からカマ下に向ってグラデーションをなすようにだんだんと脂が強くなっていくんだ。 なんて綺麗なサシの入り具合なんだろう。 赤酢を使っているという少し茶色味を帯びたシャリがはらりと解けてネタと一体となって蕩けていく。 小ぶりなサイズがまた、いい。 旨くて頭を抱えてしまうなんて初めてだよ。 一転して、目の前には立派なサイズの白子が。 なんの白子だろう。 はい、手を出して。 周囲を軽く炙ったその白子を輪切りにし、切り口を上下にしてシャリの上にのせ煮詰めを塗り、そのまま手渡ししてくれる。araki14.jpgああぁ。 これまたとろんとしてねっとりとして、でも一点の曇りもなくすっきりとしてそしてあっと云う間に消えてしまう。 切ないぐらいの旨さに今度は、天を仰いでしまう。 解答は、とらふぐの白子だ。 こはだ、鯖、墨烏賊、鮪のヅケと続いて、 araki15.jpgaraki17.jpgaraki16.jpgaraki18.jpgaraki19.jpg 立派なサイズの煮蛤、炙りたての穴子。 口に運ぶ度に、ううむ、おおぉ、はっはぁ~、などと一々図らずも唸り、嘆息を漏らしてしまうんだ。 12席それぞれの席から絶賛を込めた声が荒木さんに投げられ、それが次第に店全体の一体感になっていく、そんな鮨「あら輝」。araki00.jpg旨いものを共有した喜びから意気投合してしまうんだね。 いやぁ参った。 お隣さんが追加注文したネギトロも見るからに贅沢な逸品。 でもそれは今度のお楽しみにとっておこう。 毎週日曜に焼き上げるという「伊達巻玉子」も気がかりだ。 滅多に来れる訳ではないけれど、 思わず「また来ます!」と云ってしまったしね(笑)。


「鮨 あら輝」 世田谷区中町4-27-1上野毛リトルタウン102[Map] 03-3705-2256 [銀座へ移転] 
column/01718

鳥料理「浅草 鳥多古」

toritako.jpgフランスパンを持って来てね、というお店は世の中広しと云えどもそう多くはないだろね。3週間ほど前に4名での予約を入れた際の最後にその旨のひとことがありました。浅草寺の東側にある「二天門」の前から路地を北に進んだところに、「鳥多古」の提灯が見つかります。昭和初期創業だというその佇まいにいやがうえにも期待を高めつつ、縄暖簾を払いました。あれれ?引き戸が開きません。そう、完全予約制を敷く「鳥多古」さんは、入口の鍵を閉めているのです。硝子をとんとんと叩いて、入れてくれ!と訴えました(笑)。古の雰囲気ある店内をぐるりと見回してから小上がりへ。まずは、3種ある地ビールからドイツの「ヴァイシュテファン」を。深みのある味わいだ。その小瓶をすっと呑み干す頃、「つくね」「レバー」「正肉」の串が順番に届きます。山梨の健見地鶏という鶏を使っているそう。大ぶりにたっぷりとしたサイズの肉からは、それぞれの滋味が伝わって、いい。ベタつかず、きりっとしたタレもまた然り。長期熟成カメ貯蔵とラベルに謳われている球磨焼酎「甕の醒(かめのめざめ)」に切り替え、透明感のある「鳥わさ」を。そして、慌てて高島屋地階で買い込んだ短めのバゲットが活躍するのはここからです。壁の額に在りし日の姿が掲げられている3代目が考案したという「鶏の酒蒸し」は、鶏のソテーとエノキ、シメジや玉葱のスライスなどを炒めて、タルタル風のソースと絡め、パンにのせていただくという寸法になっている。ホールの女性が忙しい中、鶏をばらし、ソースとまぜまぜしてくれる。純和風の情緒の中にあって、洋風の匂いのする逸品だ。「これでバゲット温めてくれたりしたらもっといいよね」と我儘を云うと、そうは思っているんだけれど応対し切れないのよごめんなさいね、と実直なるお応え。ふむ。さらにメインの「たたき鍋」へと宴は進みます。「これは必ず最後にしてくださいね、出汁でますから」と真っ先に鍋の隅に入れてくれたのが手羽先。玉子の黄身をつなぎにした肉団子が赤めの味噌仕立ての割り下に投入され、鍋の定番たちが続きます。ぐつぐつ。肉団子がやっぱり旨い。後半になって、ムシャムシャ食べてしまった「鶏の酒蒸し」でバゲットがお腹にドンと効いてきて、満腹状態に。でも〆の饂飩も折角だからと、投入してひと啜り。ううむ、満足でありました。残しちゃってごめんなさい。いろいろと小難しいところがあるといった噂もあったようだけれど、そんなところは微塵も感じさせない温かい応対にも充たされました。すぐ近くへの移転が予定されているそうだけれど、同様の味と雰囲気を守ってほしいなと思います。そうそう、「鶏の酒蒸し」は、3名さま以上のコースのものだそうですよ。 「浅草 鳥多古」 03-3844-2756 東京都台東区浅草2-32-2
column/01717

江戸前「岩佐寿司」

iwasa.jpg相変わらずの賑わいだなぁと場内の行列を横目にしつつ、1号館へ。暖簾を払って「岩佐寿司」の店内を覗き込むと、おねえさんが指を1本立てた仕草を示すのでこっくりと頭を縦に振る。外からは窺い知れない空席にすんなりと収まることができました。「貝づくし、をお願いします!」。鳥貝に赤貝に海松貝、帆立の軍艦などの貝類七かんに巻物、お椀がついて3,300円というものです。ひとつひとつ食感や香りが違うものの、朝食ヌキだった所為かそれぞれをじっくり味わう間もなくバクバク一気に食べてしまう。旨いというよりただ満腹という食べ方になっちまったな。ひとつ、硬めの食感で小ぶりなおせんべいサイズのネタで海苔の帯をしたもの(=たいらがい)があったのだけれど、あれってなんだろ。白身ほどではないにせよ、貝類も判んないものがまだまだ多いやね。 「岩佐寿司」 中央区築地5-2-1魚がし横丁1号棟 03-3544-1755
column/01716