てげてげ料理「極楽亭」

gokurakutei.jpg以前その前を通りかかって気になっていた「極楽亭」へ。東急ストアの横手からさらに、抜け道のような狭い通路に面しています。暖簾越しに横手に広がるカウンターを覗き込むと、常連サンらしい雰囲気の客たちでなかなかの賑わいだ。席を得るのは無理かなと思ったものの、「お待ちくださ~い」の声に待っていると、気をきかせてくれたらしい数人の客が席を立っていく。あ、いや、そんなツモリじゃないんですが、すいません。びしっとお化粧を整えた女将さんは、鹿児島・加治木のご出身。メニューにもところどころそんなエッセンスが感じられます。さつま揚げの「てげてげ天」を揚げ立てで、そして黒豚のモツを使ったという「白モツ煮込み」あたりから。「手造りポテトコロッケ」には、オリバーどろソース、という辛味しっかり旨味しっかりのソースをかけていただく。ソースタンクの1番下のどろどろとした部分で原料の野菜の旨み甘味を抱え込んだ、神戸発のちょいレアのソースだと云う。「ぎんなん包み揚げ」ってナニ?と注文んだら、ワンタン皮に銀杏の実を包んで揚げたものにゆかりがふりかけたものがやってきた。噛むとほんのり香るカレー風味が意外で面白い。あ。気が付いたら、今日からなのよと云う「おでん」も「熊本直送極上馬刺」も「人気のカレー」も食べなかったな。”てげてげ”というのは、宮崎・鹿児島方面で”適当に”とか”ほどほどに”といった意味だそうです。 「極楽亭」 目黒区自由が丘1-7-5-103 03-5701-1050
column/01667

天ぷら「いしい」

ishii.jpg「昔ぁ、この辺りを小田原町って呼んでたの、ご存知で?」。厨房の大将は、多少手元も疎かに、聴き入る三人客に向けて界隈の文化歴史を繙いては披露も忙しい。時間がかかりそうだなぁとは思いつつ、下町情緒の一端に触れた気になってそのままゆっくり天ぷらの揚がりを待つことにします。「穴子」と云いかけたところをぐっと堪えてお願いしていたのは、「かき揚げ定食」。ぼんやりと塩で食べるつもりでいたものの、女将さんがドンと天つゆを出してくれた勢いで天つゆたぷたぷで食べ始めてしまった。こうやって食べると、衣と身がバラバラグズグズになって、なんともジャンクな代物になりかけてしまう。幾度となく後悔したことがあるのに、またやってしまった。塩で食べるにしても、箸で割ろうとするとなんだかんだグズグズになるし、かといってそのまま齧るってのもなんだし。なんだか難しいや(笑)。今度は「穴子天丼」にしーよぉっと。 「いしい」 中央区築地6-3-8 03-3541-8474
column/01666

居酒屋「伊勢藤」

iseto.jpg戦火を逃れ、古くからそこにあったんだろうと思わせる昔乍らの日本家屋、古民家は、この一軒だけで神楽坂の風情を雅なものにしているような気にさえさせてくれます。開店すぐの時間帯しか予約を受けないとのことなので、神楽坂下から空席を確認を得てから、縄暖簾を潜ります。囲炉裏をL字に囲んだカウンターへ。奥に座敷もあるけれど、ふたり客だし、なにより大将がお燗をつける様子を眺めながらお酒を啜れるここの方が特等席だ。その脇には「白鷹」の樽がでんと鎮座。最初は常温でお願いして、いわばお通しというべき一汁四菜をアテにします。ここでいきなりお味噌汁というのどうかとは思うものの、ま、いろんな解釈がありましょう。あとはぬる燗にお願いして、経木に書かれた11品の酒肴の中から「豆腐」「皮はぎ」「くさや」「丸干」「いかの黒作」をいただく。四角い陶器に詰められた豆腐は少々食べ難い。もう湯豆腐でもよかったね。お造りに類するような生ものは一切なく、加工の施された日本酒の肴に実直に適うものを揃えた様は心憎いばかりだ。お銚子を載せた敷ものからお銚子を前にずらしておくのが、空になってます、の合図。その合図を何度繰り返しただろうか。声が大きい方ではないと思っていたのに、いつの間に話し声が弾んでいたのか、声のトーンを落とすよう2回も叱られてしまいました(笑)。ガハハっと豪快に盃を酌み交わし、放歌高吟したいオヤジたちは、相当なる修行を積んでからでないと、「伊勢藤」の敷居は跨げません。すっと行って、お銚子二本ほどに追加の肴ふた品ぐらい。小一時間ですっと退く。そんな呑み方が粋なようです。 「伊勢藤」 新宿区神楽坂4-2 03-3260-6363
column/01665

SEAFOOD「TOKYO OYSTER BAR」

oysterbar.jpgかつて予約もせずにノコノコ出掛けていったら満席の店内の様子に驚かされてしまった。そんな学習をした今回は、あらかじめ予約をして。入ってすぐのカウンター席へ案内されました。硝子ケースの中にも上にも牡蠣がずらりと並べられ、なかなかに壮観です。早速やっぱり生牡蠣から。まずは宮城の女川、浜市に三重の的矢と国内産のものをワインビネガーっぽい酸味のソースを垂らして。続けて食べてみると、的矢のものが比較的味わいが濃厚でいいかも、と思う。米国産の”幻のクマモト”は、意外に小ぶりだ。どうやら熊本の種が逆輸入されたカタチになっているらしい。ミュスカデの辛口白をお供にしつつ、生牡蠣にひと区切りつけたら、フランス直輸入ヴロンをノルマンディ風クリームソースで包んだという焼き牡蠣「サン・ミッシェル」やソースに包まれた半生の牡蠣の身がにゅるんとして、旨い「カキのホワイトソースグラタン」をいただく。ソテーした牡蠣も欲しいなとメニューを捲って見つけた「カキのステーキ鉄板焼」は、それ用の牡蠣の用意がないのか残念ながらNG。然らばと、ちょっと変化球ではと、「カキのギョーザ」。豚肉とカキのミンチを包んだ餃子からは、ジューシーに脂が溢れ、ほのかな牡蠣の香り。濃い目の味つけのサーモンとのネギマ、「カキのピンチョス エスパニョーラ」を食べ終える頃には満足な腹持ちになってきました。「ジャンボのカキフライ」や「カキのリゾット」はオアズケです。2階の席もすべて満席。予約のないヒト達は謝られて帰っていきます。やっぱりなかなかの人気のようですね。近くに「Links Oyster Bar」というセカンドショップもあるそうだけど、これからの国産ものの最盛期にはもっと混み合うに違いない。日本が夏を向える頃には、その頃に最盛期となるオーストラリアから直輸入の「アクアマリン」が楽しめるようです。 「TOKYO OYSTER BAR」 品川区東五反田1-11-17 03-3280-3336 http://www.oysterbar.jp/
column/01664

うなぎ「五代目 野田岩」麻布飯倉本店

nodaiwa.jpg以前勇んで足を運んだら間の悪いことに夏期休暇中。改めて、老舗有名店「野田岩」にお邪魔してみました。一階のテーブル席へ。真紅の布地で張られた椅子・ソファーの座面が店内全体にどこか艶めかしい雰囲気も加味させています。そうするヒトは少なくないとも思える下から二番目の「鰻重 菊」をお願いします。それなりに時間もかかるのだろうと雑誌を捲って待つことしばし。待つ間ホールのおばさまに訊いてみると、メニューにあるのはやはり天然ものではなくて、厨房に確認して仕入れがあるときのみ天然ものの僥倖に浴することができるらしい。お値段もやはり思わず溜息を漏らしてしまうような額らしい。ただし、「志ら焼」は天然ものだそうだ。そうこうするうちに、肝吸いの椀や香の物、箸休めの小鉢とともにお重がやってきました。お重に綺麗に収まった蒲焼は端正な表情をみせています。左隅あたりから箸を入れて挟むと、すっと切れる。意外なほど身が薄くて一瞬寂しく思うも、上品な感じではある。食めばふんわりと柔らかく、きりりとしつつ芳醇な秘伝のタレも、悪くない。しっかりと蒸しているんだろうね。CPも含めて”蒸さない”「ひょうたん屋」の鰻が最近のイチオシだけれど、悔しいかなこれはこれで旨かったりするんだ。創業百六十余年の老舗ったって…、と穿ってみてやろうというちょっと意地悪な心持ちがなかった訳じゃないけど、ひとまずそっちの方向へは気分が傾倒せずに済みました。「志ら焼」が課題だね。そうそう、「野田岩」では昼間っから10%の奉仕料が必要です。 「五代目 野田岩」麻布飯倉本店 港区東麻布1-5-4 03-3583-7852
column/01663