「和食割烹小料理あれこれ」カテゴリーアーカイブ

地酒おでん肴「フクロウ」でご存知肉吸い上品版に生姜の利いた豚汁に温まる

市場通りと鍜治橋通りが交わる八丁堀駅前交叉点。
いつの間にか、信号機にそんな名前が掲げられるようになりました。
その交叉点の角のひとつに古びた雑居ビルがある。
銀行のATMコーナーが廃止されたかと思っていたら、いつしか改修工事が始まっていました。

工事の養生が取り払われた後に姿を現したのは、
雑居ビルとしてはちょっと不思議な表示物。どなたかのサインがあるのをみると何処かのイラストレーターか、
デザイナーの手による描画なのでしょう。
そして壁面には、WISE OWL HOSTELS TOKYOとの文字。
ビルの隅切り部分に開口があって、
そこがカフェにしてホステルのロビーとなっているらしい。
コンセプチュアルなお宿が出現していました。

カフェの入口に向かって右手に回り込むようにすると今度は、
壁にモスグリーンで描いた梟の図柄が現れる。楽しいお酒で酔いませんか?と、
真っ昼間っから呑兵衛呼ばわりしてくれる(笑)。
横丁側には群青色の暖簾が風に揺れていました。

「フクロウ」の店内は、
入って右手に厨房を両側から囲むカウンターがあり、
中央にテーブル席、酒棚に向かって左手にも、
カウンターの連なりが配置されています。店内の場所場所でちょっとずつ趣の異なるレイアウト。
その随所に大振りな真鍮の薬缶が置かれています。

そんな「フクロウ」のおひるのお品書きは、
三品の定番が季節に応じてアレンジされている模様。

その品書きの筆頭にいつも掲げられているのが、
知ってるひとはよく知っている「肉吸い」であります。「肉吸い」と云えば、吉本新喜劇の舞台でもある、
「なんばグランド花月」の近くにある「千とせ」を思い出す。

澄んだ旨味をしっかり煮出した出汁が、
薄口の醤油に色づけ風味づけされたツユ。
そこへ大きめ角切りの豆腐に豚バラ肉、
おとし玉子を浮かべた器。
「千とせ」の「肉吸い」の思い出よりも断然品の良い(笑)。
気忙しい仕事の間をほっこりさせてくれるような、
そんな優しい味わいに癒されます。

決して珍しいことではありませんが、
「フクロウ」のおひるのゴハンは、
「白米」か「玄米」かを選べる。炊き加減よろしき玄米ゴハンを、
たっぷりトッピングしてくれた削り節と一緒に掻き込むのもまた、
オツなものでありますね。

時には路地側に眺めた群青の暖簾のところにも潜んでみる。「肉吸い」用にたっぷりと出汁を湛えた真鍮の鍋とか、
もうふた品ほどの大鍋が眼前に据えられています。

そんなカウンターでいただいたのが、
「生姜たっぷりの豚汁」。豚汁定番の具材に加えて、
小松菜にブロッコリーとか丸十(薩摩芋)とか長芋が参戦してくれる。
その名の通り、たっぷりのおろし生姜を頂いて、
それを様子をみながら解しつついただきます。
いやはや、温まる温まる。
ひきかけの風邪なんて忽ち治ってしまいそう(笑)。
そして、「フクロウ」の椀は、見掛け以上の大容量。
満腹満足で温まってしまうランチとなるのです。

更にもうひと品欲しいという紳士淑女におかれましては、
追加小鉢のご註文も宜しいかと存じます。揚げ立ての鶏唐揚げ二個とか、
奥久慈玉子とかね。
唐揚げは、慌てて食べると勿論火傷します(笑)。

八丁堀駅前交叉点に出現したWISE OWL HOSTELS TOKYOの一角に、
地酒おでん肴と謳う「フクロウ」がある。スタッフの応対も温かで柔らかで、なかなかどうして悪くない。
夜の止まり木としてもきっと、
その魅力を発揮してくれるものと期待しています。

「フクロウ」
中央区八丁堀3-22-9 WISE OWL HOSTELS TOKYO 1F [Map]
03-6222-8453
http://izakayafukuro.com/
https://www.wiseowlhostels.com/

column/03716

居酒屋「ゆき椿」で栗渋皮揚げ桃白和え秋刀魚肝醤油四面道に大人の居酒屋がある

yukitsubaki高円寺、阿佐ヶ谷に荻窪ニシオギ吉祥寺。
中央線各駅停車は、運行系統の通称でいうところの”中央・総武緩行線”の一部であるらしい。
中央線というとどうもまず、新宿から三鷹辺りまで間を思うのだけれど、そこにおよそ共通するイメージとして、駅前に闇市の名残りのようなエリアがあって、それが魅力のひとつとなっている街々が中央線沿線だと思ったりもする。

ニシオギ南口の「戎」の一軒で一杯ひっかけてから、
ひと駅乗って荻窪駅を北口へ出る。
青梅街道を四面道方向へと向かい、
杉並公会堂の先辺り。
行き過ぎ戻りつして折れ入った横筋に、
「商い中」と示す木札を見付ける。
恐る恐る軋む階段を上がったところが、
今宵の止まり木「ゆき椿」なのでありました。

先陣のおふたりに遅れを詫びつつテーブルへ。yukitsubaki01夏が往くのがまだまだ惜しい頃ゆえに、
口開きにいただいたお酒は、
胴ラベルにかき氷の幟よろしく”氷”の文字を示した、
吟醸原酒「まんさくの花」。

銀座松屋裏の「野の花」を思い出しつつ、
「みずの実のお浸し」の滋味と歯触りを愉しんで。yukitsubaki02yukitsubaki03かち割り的ロックで呑る「まんさくの花」と合わせて、
夏から秋への季節の狭間を感じます。

ありそでなさそな一品が、
あの皮目の模様もくっきりの「小肌のフライ」。yukitsubaki04yukitsubaki05柴漬刻んだピンクのタルタルをちょいと載せていただけば、
酢〆に思う繊細で独特な風味がフライでも儚く過ぎる。
むほほ、小肌はフライでも美味いのね。

これまたありそでなさそなお皿が、
「桃と海老の白和え」。yukitsubaki06桃を酒肴に仕立てようと思案すると、
成る程、白和えに辿り着くんだという感心のする。

刺し盛りの三種盛りをお願いすると、
今宵の出座は、めじ鮪に太刀魚に鱸。yukitsubaki07太刀魚の皮の際の歯応えなんてのも、
なかなかオツなものなのでありますなぁ(笑)。

フレッシュな一升瓶には「栓が飛びます」なんて、
赤文字で示した札が下がってる。yukitsubaki08yukitsubaki09鯵ならぬ「新秋刀魚のなめろう」が、
そんなお酒に似合わぬ訳がありません。

届いた春巻をよく見ると、
巻き込んだ皮の端っこ辺りから葉のようなものが食み出てる。yukitsubaki10yukitsubaki11包丁の断面を開いてみれば顔を出す、
「イカとニラの春巻」の中身。
火傷に気をつけつつ韮の風味たっぷりをバリッと喰らう。
烏賊の身の部分の変化も愉しからずや。

お酒をお代わりして、
「イカ丸干し」のお皿を迎えた日にゃぁ、
呑兵衛気分が最高潮に(笑)。yukitsubaki14血圧気になるお年頃には、
余りに塩辛過ぎて思わず顔を顰めちゃう場合もある中で、
塩っ気の塩梅もよく、甘さすら感じさせる食べ口。
素晴らしき哉。

これまた秋口ならではの逸品が「栗の渋皮揚げ」。yukitsubaki15決して渋皮を剥ぐ手間を惜しんだ訳ではなくて(笑)、
渋皮が素揚げするにちょうどいい、
芳ばしき衣になるってぇ寸法なのであります。

今さっき、なめろうで堪能させてくれた秋刀魚くんが、
よりぐっと呑み助寄りに仕立てられてやってきた。yukitsubaki16その名も「秋刀魚肝醤油漬け焼き」。
“肝醤油”というフレーズにぴくりと反応してしまう方々と、
テーブルを囲むのって仕合せなことだと思うのです(笑)。

どこか似た様な色合いの酒肴が続いていたけれど、
それぞれが何気にちょっとした変化と工夫を織り交ぜていて、
それが愉しくも興味を唆る。yukitsubaki17「かつおの竜田揚げ」なんてのも、
ありそうでいてなかなか巡り合えない料理ではありますまいか。
それがきちんと仕上がっているのがニクイところなのだ。

荻窪は四面道近く、青梅街道からちょと外れた町筋に、
隠れ家の如く潜む大人の居酒屋「ゆき椿」がある。yukitsubaki18テーブルから見遣るカウンターの右手には、
料理人然とした大将の姿。
逆手にやや距離を置いて比較的若い職人がいる。
のむちゃんによると、左手の息子さんは中華の心得もあるらしい。
今度はそんなカウンターに陣取って、
春に雪解けが始まってやっとその姿を現すという雪椿を
店の名に冠したその訳を訊ねてみよう。

「ゆき椿」
杉並区天沼3-12-1 2F [Map] 03-6279-9850

column/03703

おでん一品料理「三幸」で梅貝春菊わかめの美味おでん白海老唐揚蓮根団子を菊姫で

miyuki香林坊交叉点近くの柿木畠商店街にある老舗おでん処と云えば「一寸一パイ」と暖簾に標した「高砂」。
味噌だれでいただく「牛すじ」とか「しのだ巻き」「ねぎま」、そして冬の時季の「かに面」等々、魅力溢るる酒肴で堪能させてくれました。
国道を挟んで対面には、カラフルな看板が誘う「菊一」があり、犀川寄りに下った片町の信号近くにある「赤玉 本店」は、創業昭和2年の老舗おでん店。
そして、観光客には実に便利な金沢駅構内の金沢百番街「あんと」にある、季節料理・おでんの「黒百合」も知られた存在であるらしい。

「赤玉 本店」が”金澤おでんの代表店”と、
自らを謳っているように、
金沢のおでんはそのまま”金沢おでん”と一般に称されている。
ただ、”金沢おでん”には、明確な定義や約束事がある訳ではなく、
特有のおでんの具を供することがある一方で、
つゆも関西風であったり関東風であったりと、
画一的なものでないというのもその特徴でありましょう。

とある地元の方が発した、
私はあそこが一番スキだという謂いに従って足を向けたのは、
片町エリアの外れ、犀川通りの大工町の信号近く。miyuki01通りから横丁を入るとすぐに見付かる赤提灯。
そこには”おでん”の文字がくっきりと浮かんでいました。

開店早々に窺うも店内は既にほぼ満席状態。miyuki02幸運にも一席だけ空いていたカウンターの隅にするりと収って、
すぐに穏やかに賑やかなざわめきの中のひととなる。

まずは「おでん」からとずらっと並んだ定番のあれこれから、
「車麩」に「ふかし」「梅貝」を註文んでみる。miyuki03大きな麩がたっぷりと出汁を吸っていい塩梅。
「ふかし」とは、浅く揚げたはんぺんのようなもの。
ふわふわっとして、するんと胃の腑に滑り込んでゆきます。
そして、正直びっくりしたのが「梅貝」の美味しさ。
肝の部分にも磯のエグ味なんて微塵もなく、
スカッと突き抜けるような滋味が外連味なく弾ける。
いやはや、こりゃ旨いウマい。

カウンターの中の黒板には、
本日のおすすめ品がこれまたズラっと書き留めてある。miyuki04miyuki05miyuki08その黒板の下に貼られた品札のひとつにあったのが、
「加賀丸葉春菊」と「わかめ」。
どちらもあっさりとおでん出汁に潜らすようにしたお皿なのだけど、
その火入れの加減が絶妙で、
繊細なテクスチャを感じさせつつ、兎に角美味しい。
特に加賀の春菊の美味しさときたら、
思わず絶句しちゃう愕きを含んでいます。

そんな、イケてるおでんと一緒にいただいていたのが、
「菊姫」の純米酒「先一杯」。miyuki06アルミのたんぽから、加賀菊酒との銘のあるコップへと燗酒を注ぐ。
ふーふーしてから啜るようにグラスを傾けて、
またおでんに手を伸ばします。

「加賀丸葉春菊」の品札の隣で何気なく、
その名を示していたのが「れんこん団子」。miyuki07ちょっと粗めに下ろした蓮根を丸めて炊いた、
その歯触りが素晴らしい。
ひいたお出汁も勿論美味い。
割烹料理の井出達で御座います。

朗らかに賑やかなカウンターの上を眺めると、
幾つかの大皿料理の存在も目に留まる。miyuki09miyuki10その中から「ポテトサラダ」をいただけば、
これまた記憶に残るポテサラの。
こりゃ、芋自体が美味いヤツじゃないかと目を瞠る。
細かくねっとりとさせた中に、
ざっくりほっくり食感が時々顔を出す。
塩梅や酸味の織り交ぜ方もお上手で、
思わず拍手しそうになりました(笑)。

黒板メニューからもお願いせねばと「白えび唐揚げ」を。miyuki11それは丁寧な薄衣。
儚げなその身をそっと噛めば、期待以上の甘さと芳ばしさ。
嗚呼、これもひとつの冬場の贅沢なのでありましょう。

「菊姫」の御燗のお代わりをいただいて、
それに合わせてと改めて定番メニューを捲ってみつけた、
金沢名物の糟漬けです、の文字。miyuki12「こんかいわし」「こんかさば」「こんか皮はぎ」とある中から、
どれも気になりつつ、やっぱりこれかと選ぶは鯖のヤツ。
凝集した鯖の旨味と香りがもろみの風味に曳かれて大活躍(笑)。
呑兵衛御用達の酒肴でありますね。

〆るでもないけれど、既に大満足ゆえ、
今宵の仕舞いとしたいと最後に選んだのが、
「とろろの鉄板焼き」。miyuki13miyuki14和風と洋風の二種類があって、
ハーフハーフにもできるというので、その様に。
花かつおのかかったサイドが和風でしょうね。
木の匙でひと口づつこそげるようにしながらハフホフと食べ進めば、
あっと云う間にするんと平らげてしまう軽やかさ。
名物と謳われる理由に合点がいった気がします。

金沢は片町エリア隅の大工町信号近くに、
おでんと一品料理で大人気の「三幸(みゆき)」がある。miyuki15定番の最右翼「みゆき揚げ」を食べ損なったと、
ふたたび訪れたらその夜はもう、店先から溢れる空席待ちの影。
偶然見付けた姉妹店も満席札止め。
夏でもおでんをいただくという金沢では、
四季を通じて人気のお店なのかもしれません。

「三幸」
金沢市片町1-10-3 [Map] 076-222-6117

column/03682

すみ処「寺田屋」でぽてサラごまサバあじフライにウチワエビ美味じゃありませんか

teradaya赤坂の居酒屋「さきと」もその日はお休みという日曜日の博多のひる下がり。
天神の地下街”てんちか”を右へ左へと徘徊すれば、それは成る程なかなかの規模。
全長600メートル、150を超えるテナントがあるという。
地上に出て警固公園を通り抜け、岩田屋本店の脇を往き、親不孝通りを漫ろに歩く。
ひと息入れてから今度は、けやき通り近くの知人宅をこっそり眺めたり(笑)、警固の信号近くのスペインバルの止まり木で0次会。
開店時間を見計らうようにして、大名地区の裏通りにあるすみ処「寺田屋」へとお邪魔しました。

行燈点る格子戸の白暖簾を払って靴を置く。
板廊下をずいっと進んだ奥のカウンターへとご案内。teradaya01teradaya02掘り炬燵式に足を延ばして座り、
視線を右に振れば小上がり風の座敷が窺える。
正面には硝子ケースがでんと構えて、
その中にはぎっしりと食材が出番を待っています。

硝子ケースの中身を眺めつつ、
麦酒と一緒に「ぽてサラ」をご註文。teradaya03ほっこりとしっとりのテクスチャのバランスが絶妙で、
過ぎないコクに旨味をそつなく湛えてる。
ポテトサラダの出来映えで、
その店の手腕を測るなんて云い回しがあるけれど、
そんな意味からは、期待を高めてくれる逸品と云えましょう。

この日のお刺身ラインナップから、
目敏く「ごまサバ」を見付ける。teradaya04大分空港に降り立った時から頭の片隅にあった、
関さばへの思慕(笑)がまたまた頭を擡げてくる。
周囲を固めるは、たっぷりと摩り下ろした白胡麻に、
細やかな刻み海苔、醤油タレに山葵、浅葱。
でも中央のスターの存在感は揺ぎない。
脂の甘さとともに鯖独特の香り旨味が真っ直ぐ届く。
美味しいじゃありませんか。

「かきフライ」をと思いつつも選んだのは「あじフライ」。teradaya05それは開きではなくて、半身を二片とした揚げスタイル。
関鯵とは謳っていませんが、
今度は鯵らしい香りが揚げ立ての細やかな衣の中から、
ふわんと湯気を上げて華開く。
美味しいじゃありませんか。

舐めてるのは、芋焼酎「坊の津」。
硝子ケースの中からのご対面は、ウチワエビ。teradaya06teradaya07ゾウリエビでもセミエビでもなくてウチワエビ。
ゾウリエビはぺったんこで、
あまり食べる身がなかった記憶があるけど、
焼いてくれたコイツは身のつまりもよく、
しかもその身が甘くて旨い。
あれま、美味しいじゃありませんか。

店の名に冠たる炭焼きモノは、
黒毛和牛に豚に鶏などなど。
品書きに豚も鶏も”やきとり”と呼んでいるらしきところを見付けて、
東松山を思い出す(笑)。teradaya08鶏の「四つ身」に「砂ずり」をいただい後、
こんなん如何と受け取ったお皿には、こんな串。
お手間をお掛けして申し訳ない気分も交錯しながら、
炙り立ての一粒ひと粒を口に含めば、
期待以上の甘い弾ける芳ばしさ。
なはは、美味しいじゃありませんか。

右目の隅でずっと気になっていたのが、おでんの湯殿。teradaya09teradaya10teradaya11選んだ具は「大根」に「ぎょうざ」。
水餃子みたいなことかと思った「ぎょうざ」は、
コロコロした丸天の中に餃子がインしちゃった感じで面白い。
そして、おでんにレタスと柚子胡椒。
うんうん、美味しいじゃありませんか。
いただいていた日本酒「寒北斗」にもよく似合います。

勢いあまって〆ちゃおうと「牛ねぎやきめし」。teradaya12刻んだソバは入っていないけど、
三宮の春日野道駅の高架下にある、
お好みハウス「ひかりや」の「そばめし」をちょっと上品にした感じ。
美味しいじゃありませんか。
ご馳走さま。

福岡は大名の裏通りに、
炭火焼と行燈に点した居酒屋、すみ処「寺田屋」がある。teradaya13すみ処「寺田屋」は、
狭い路地の奥にあって、
まさに”隠れ家”と謳われる本家「寺田屋」の新店であるらしい。
「寺田屋」と云えば「寺田屋事件」。
ただ、寺田屋騒動も坂本龍馬襲撃事件も舞台は京都。
此方の店名が、その「寺田屋」由来なのか、
それとはまったく関係のない、
寺田さんちの居酒屋、なのかの謎解きは、また今度。
この後、余裕をかまし過ぎて、
飛行機にギリギリで飛び乗ったことは内緒です(笑)。

「寺田屋 炭処」
福岡市中央区大名1-4-22-101 ドリーム大名 [Map] 092-714-4886

column/03679

純手打ちそば「奥村本店」で登美の丘ワイナリーの葡萄畑そこがゆえの日本ワインたち

okumura中央本線の特急に乗って何処かへ出掛けるなんてことは、うン十年なんとか生きてきてほとんど機会がなかったのだけれど、ここ数年で何度も特急列車に乗っている。
とっ始めは恐らく、初めて白州蒸溜所へお誘いいただいたことなのかもしれないなぁと思いつき、その時のことを思い出す。
昨年二度目の白州に訪れた時は、甲府まで特急に乗り、そこからレンタカーで小淵沢方面へ向かうルートをとった。
その際考えたプランのひとつが、甲斐市にある「登美の丘ワイナリー」に寄り道しての見学。
でもね、レンタカーで行ったら試飲できないじゃん!ということで(笑)、見送ることにしたりなんかしたのでありました。

そんな風に気掛かりだった「登美の丘ワイナー」に、
冬晴れの休日にやって来た。okumura01甲府駅からタクシーで30分弱くらいの、
まさに丘を背にした醸造所のゲートが迎えてくれました。

スイッチバックを含んだ坂道を案内いただいて、
丘の上の見晴台から晴々とした葡萄畑を心地よく眺める。okumura02okumura04春を待ち兼ねた様子の葡萄の木の列の先に、
甲府盆地の市街がみえる。
そのずっと向こうにはまだ真っ白な富士山のフォルムが望めます。

剪定されたメルロの樹からは、
丘の斜面から吸い上げた水分が、
雫となって滴ろうとしてる。okumura05陽当たりの良い、南向きの斜面の連なる高台の丘は、
標高が高いがゆえに冷涼で、それがワイン用の葡萄に好適地。
収穫時期の昼と夜の寒暖差が、葡萄の糖度熟度を高めてくれる。
一見すると作業性が悪そうな斜面や尾根を葡萄畑とするのは、
水捌けの良さを考慮してのことでもあるという。

石積みのセラーが格好いい。okumura06okumura07区画毎の葡萄を可能な限り別々に醸造を行うという。
ウイスキーのシングルバレルではないけれど、
同じ品種の葡萄であっても、条件等が少しづつでも異なることで、
それぞれに微妙に異なる表情を見せてくれるのでしょう。

何処かに続くトンネルにも思える薄暗がりの空間が、瓶熟庫。okumura08okumura09金網の閉じた棚がずらっと並んでいて、
栽培している品種それぞれの、それぞれの年次の、
早摘み遅摘みなどといった特長を湛えたボトルが、
整然と並べられています。
登美の丘が醸す貴腐ワインを大事そうに保管した棚も見付かります。

「登美の丘ワイナリー」は、
1890年(明治23年)に六代目川上善兵衛が開いた、
「岩之原葡萄園」がその起源。
後に「マスカット・ベーリーA」を生み出した善兵衛は、
“日本のワイン葡萄の父”と呼ばれているという。okumura30ただ、岩之原葡萄園のワインの販売は広がらず、
経営に窮した葡萄園の危機を救ったのが、
当時「赤玉ポートワイン」で甘味ワインのブームを作り出していた、
ご存知、サントリー創業者の鳥井信治郎氏であったという。
その後ふたりが、
ドイツのラインガウに似ていると評された「登美農園」と出会い、
今の「登美の丘ワイナリー」へと繋がっていく。
紆余曲折や停滞時期を含みつつも百数十年に亘って、
日本の気候風土にあった品種への改良・研究が、
積み重ねられてきているのですね。

瓶熟庫から引き返してご案内いただいたのは、
これまた葡萄畑や甲府市街、そして富士山を見晴らす、
その名も「眺富荘」。okumura10okumura12okumura11窓には葡萄の房や葉をモチーフにしたステンドグラス。
アプローチの階段には、もうひとつのシンボルツリーのような桜の木。
時季には最高の花見場所となることでしょう。

富士見ホールと名付けられた一室のテーブルには、
「登美の丘ワイナリー」が誇る、
主要銘柄のワインボトルが並べられました。okumura17白からロゼ、そして赤。
まさにワイナリーのバラエティを感じさせる光景です。

青柚子の一片を噛んだ時のような香りの、
「ジャパンプレミアム<甲州>」のグラス。okumura13-1グラス越しに富士山が望めるなんて、
なんて素敵なシチュエーションなのでしょうと、
小さくときめきます(笑)。
成る程、青魚や酢の物にさえ似合いそうな、
香りと酸味の<JP甲州>に対して、
遅摘みした葡萄を用いるという「登美の丘 <甲州>」は、
酸味が比較的柔らかで、
ゆったりとした中に仄かに渋みを感じる印象がします。

ずっとずっと昔、
勝沼あたりの某ワイナリーを訪れた時に試飲した白ワインは、
薄っぺらくて硬い酸味がするだけとしか思えなかったのだけれど、
きっと今は、山梨のワイナリー全体で、
味わいの底上げがされてきているかもと、
そんなことを思ったりもする。
此処「登美の丘」でも営まれている、
ワインに適したこの丘、この風土が醸す魅力を、
十二分に引き出そうとする努力とこだわりが、
“ここがゆえ”のワインを生み出しているのですね。

そして、兎にも角にもイチオシなのが、
花見の季節も連想させる穏やかにして艶やかな色合いのロゼ、
「マスカット・ベーリーA <ロゼ>」。okumura15-1仄かな甘みが華やかなベールとなって、
鼻腔や味蕾をそっと包む。
単独で呑むのも勿論のこと、
揚げ物や脂を含む和食系に添えても邪魔をしない気がする。
オールマイティに美味しいワインだと思います。

試飲させていただいのは他に、
柔らかな余韻がすーーっと続く「登美の丘 <シャルドネ>」に、
ロゼ同様、冷やしていただくのが美味しい「マスカット・ベーリーA」。
焼き鳥にイメージするような醤油を使った、
タレ味にも似合う「塩尻マスカット・ベーリーA」に、
程よい渋みを含む「登美の丘 <赤>」。
日本固有品種でありながら、
どこか欧州系品種のようにも響く「マスカット・ベーリー」には、
和名の愛称があってもいいのではなんてことも思います。

少し冷えてきたワイナリーを後にして、
やってきたのはやや遠く見下ろしていた甲府の市役所近く。okumura18問屋街入口という交叉点近くの蕎麦店「奥村 本店」。
なんと、江戸・寛文年間の頃に創業したという。
16代360年に及ぶ老舗の風格が今の佇まいにも滲み出ています。

使い込んだ木箱の積まれた麺打ち場。okumura19okumura20“登美の丘 ジャパンプレミアム”を刻印した樽が迎えてくれました。

テーブルにはふたたび、
「登美の丘 <シャルドネ>」をはじめとするボトルたち。okumura21それらが居並ぶ立ち姿は、
老舗蕎麦店が紡ぎ出す料理たちとの出会いを、
待ち侘びているようにも映ります。

繊細な白髪葱をいただいたオクラの和え物には、
「登美の丘 <甲州>」が良く似合う。okumura22自然と頭の中で日本酒との呑み比べをしてみたりするけれど(笑)、
これはこれでいい、ということに変わりはありません。

味噌ダレを添えた皮に包んだまま蒸し焼いた若筍に、
これまた春を思わせる蛍烏賊には酢味噌の風味。okumura23味噌の風味には例えば、
「登美の丘 <シャルドネ>」も嬉しい組み合わせ。
そしてそれは、魚介の滋味や貝類の風味ともすんなりと、
互いを盛り立てるようにしてくれます。

山葵の花をあしらった鯛や鮪、烏賊のたたきは、
卵の黄身に若布に刻んだ茗荷と一緒になって、
口に含めば色々な風味香気が小さく弾ける。okumura24「登美の丘 <甲州>」「登美の丘 <シャルドネ>」は勿論のこと、
オールマイティな「マスカット・ベーリーA <ロゼ>」の、
すっきりとほの甘い華やぎもまた、
面白い程の相性の良さを魅せてくれます。

「マスカット・ベーリーA <ロゼ>」の八方美人っぷり(笑)は、
こってりめに味噌ダレに包まれた牡蠣にだって如才なし。okumura25牡蠣には兎に角専ら白だとばっかり思い込んでいると、
ちょっと間違っちゃうこともあるのかもしれません。

鴨は鴨でもローストなどとは趣の異なるその仕立ては、
ふっくらとした治部煮の器。okumura26出汁に醤油を用いた和仕立ての鴨料理には、
登美の丘の葡萄と長野県は塩尻の葡萄とを合わせた、
「ジャパンプレミアム 塩尻マスカット・ベーリーA」もいい。
やや紫色がかった滴が成る程、
醤油ダレで焼いた焼き鳥にも似合いそうです。

料理の皿たちでも十分に思わせてくれた、
老舗蕎麦店としての地力を確信に仕上げてくれたのが、
漆の鉢に盛られたお蕎麦。okumura28程よく張りのある歯触りから滋味の滲む蕎麦が、
美味しくて小さく唸ってしまいました(笑)。

甲府の街の中心に、
江戸・寛文年間に創業の純手打ちそば「奥村 本店」がある。okumura29初代当主が”山奥の村から来た”からと、
「奥村」と名付けたという蕎麦店は、
16代360年に及ぶ老舗の風格堂々とした料理店として今に至る。

これからは、甲府の街を見下ろす「登美の丘」の葡萄畑と、
ワイナリーの様子を思い起こしながら、
“そこがゆえ”の日本ワインを愉しみたいなと、
帰路の特急に揺られながら思うのでありました。

そんなサントリーの日本ワインに詳しくは、
コチラ”日本ワイン サントリー”
手っ取り早く日本ワインを手に入れるには、
amazonのサントリー 日本ワイン特集 のサイトがいいみたい。

「奥村 本店」
甲府市中央4-8-16 [Map] 055-233-3340
http://www.okumura-honten.jp/

column/03666