「饂飩はズルっといこう」カテゴリーアーカイブ

自家製麺無添加「うど吉」で灰褐色が旨い肉汁うどん研鑽が生むハイブリッド麺なぞ

西武池袋線が新宿線と交叉する所沢駅から3駅先にあるのが、狭山ヶ丘駅。
まるで狭山丘陵を代表するかのような駅名ではあるものの、何があるでもない長閑な環境の住宅地であります。
西口を出てそのまま所沢バイパス方向へと西進する。
八百屋の店先に置いた椅子にいつも座っているオッちゃんの姿を確かめればもう、目的地は目と鼻の先であります。

見上げたワインレッドな看板には、
「自家製麺無添加」「うど吉」の文字と共に、
「笑所福来」「一団和気」「一日一麺」の四字三行が並んでいます。ぱっと見で二階にはきっとスナックがありそうな、
そんな雑居ビルの並び(笑)。
うどんと標した幟はためく「うど吉」の暖簾をいざいざ、払いましょう。

カウンターではふっくらした座布団の上に、
猫がのんびりと横になっている。看板にもしっかり描いている通り
間違いなくネコ好きさんによるお店なのであります。

とるものもとりあえず註文したのは勿論「肉汁うどん」。武蔵野うどん的地粉の色気をあっけらかんと表現した、
“もち麺”と謳う灰褐色の麺がまず目を惹きます。

少々これでもか感は滲みますが(笑)、
業界で、はじっ娘とも一反木綿とも呼ばれる幅広部分は勿論、
手打ち麺の証左であると歓迎しましょう。ただ硬いばかりの麺ではなく、
独特の弾力に粉の甘みをフフンと湛えたところに、
腕組み大感心(笑)。

つけ汁は甘さを引き出した葱とお揚げがたっぷりで、
メインの具であるはずのお肉が隠れてる。でもでもその下からはたっぷりめの豚バラ肉が顔を出す。
サービス精神をも滲むつけ汁にふと感謝の念すら湧き起こってきます。

入口近くの窓辺を振り返るとそこには、
ひとつのポットが置かれてる。貼紙を読めば、二番出汁です。
つけ麺店のスープ割りよろしく、
つけ汁を割っていただくに加減よく。
これもまた気持ちの伝わるサービスであります。

また足を運んだ五月晴れのおひる時。
今度のご註文は、その名も「磯香る塩肉汁うどん」。煎り胡麻をたっぷり利かせた塩つけ汁には、
これまた塩出汁によく似合うもみ海苔も、
たっぷりと添えられています。

例によってうどんそのものは間違いなく灰褐色を帯びている。
掴んだお箸で引き上げれば、
想定外に長い長いうどんであるのもまた、
自家製ならではのサプライズでありましょう。

武蔵野うどんファン向けにと、
麦香る硬い麺と副題に謳う数量限定の、
「田舎うどん」に変更する手もあるようです。
こんなことから、硬い麺=武蔵野うどん、
という一種の誤解が生じるのではないかなぁ(笑)。

そうそう、卓上には「おうどんの話」と題する手作り冊子が置いてある。埼玉県のうどん生産量が、
香川県に次いで全国第二位であることに始まり、
諸説あって定義が定まらないながら、
武蔵野うどんを代表するのが「肉汁うどん」であること。
武蔵野うどんに使われる地粉の話から、
小麦の外側や全粒粉を含んでいるが故に、
黒っぽいうどんとなること等々、
「うど吉」のうどんが美味しい秘密や背景を丁寧に解説しています。

試行錯誤の中から生まれくるであろうメニューも様々で、
例えばこの日のお題は「ハイブリッド麺肉汁」。カカオでも練り込んじゃったのかとも訝る麺はと云えば、
最高級のうどん粉になんとかん水を加えて全粒粉を追加したもの。
ハイブリッドと謳うのは、
うどんとつけ麺の麺との二面性を併せ持つからなのですね。

もちっとしつつさくっと歯切れる芳ばしき麺に負けじと、
添えたつけ汁も力強い仕立て。たっぷりの魚粉で濁らせて、
背脂でぐぐっとコクを増したつけ汁だ。

狭山ヶ丘駅を最寄とする静かな住宅地の一角に、
弛まぬ研鑽の昇華した稀有な武蔵野うどん店「うど吉」がある。きっと、どこかのラーメン店・つけ麺店のように、
折りに付け繰り出してくる限定麺を常に追い掛けている、
「うど吉マニア」がいるに違いないと目論んでいる。
そんな「うど吉」は、16年11月に近くの新店舗に移転してなお、
盛業にして鋭意営業中のようです。

「うど吉」
所沢市和ヶ原1-41-8(移転前)
所沢市和ヶ原1-691-62(移転後)[Map] 04-2947-0500

column/03711

生そば「丸長」で冷たい雨の康生通り具沢山なお雑煮の土鍋にぬくぬく温まる

marucho何度か見聞きする土地や街の名前。
ざっくりあの辺りであろうとは思ってはいても、用事もないとそのはっきりした所在を知らないままという場所というのも少なくないものでありますね。
この冬にお邪魔した岡崎もそのひとつ。
岡崎市の位置は、浜松と名古屋のちょうど中間あたり。
豊橋や蒲郡と豊田や知立との真ん中あたりでもある。
時間的にはちょっと近い、名古屋から戻るルートで岡崎入りしました。

どちらかと云うと街の中心は、
岡崎駅ではなくて東岡崎駅の方であるらしく、
乙川の向こうにあるのが、岡崎城の城址を囲む岡崎公園。marucho01ああ、岡崎と云えば家康だと今更のように気づきつつ、
でも家康とどんな縁の城だったかは詳らかでない不見識(笑)。
おひる処を求めて冷たい雨の降る中、
康生通りと名付けられた通りを往けば、
岡崎が家康公生誕の地であることを知らせる時計塔が見付かりました。

それは、時計塔近く舗道から向かい側を眺めて認めた佇まい。marucho02左右に駐車場のスパースが空き、
背後にやや高めのビルが建つ。
地上げに抗い続けたとも思わせる空間にぽつねんと、
小さな蕎麦店が建っていました。

寒さに両手を擦りながら通りを渡り、
向こう側の舗道に立つ。marucho03生そばと黒抜いた縄暖簾がいい。
そして、硝子窓を守る木の桟に結わえた額縁には、
二行だけの季節の品書き。
「なべ焼うどん」に「おぞう煮」。
どちらも温まりそうだ。

ガラガラっと戸を引くと、
外観で想像した通りの設えが迎えてくれる。marucho04ふと、池上の「蓮月」を思い出しつつ、
店の中に、特に厨房との仕切り部分に庇を作るのは、
いつ頃の流行だったのかなぁなんて考える。
右手の壁には「人生は七十才より」と心得を示す額があったり、
“高いつもりで低いのが教養”といった十行を示す、
「つもりちがい十ヵ条」が掲げられたりしています。

お品書きは左手の壁に。marucho05そばにうどんが当然の充実具合。
中華そばもあるのかと思いつつ改めて見回すと、
「親子南波」に「鳥なんば」という札がある。
こちらでは、南蛮のことを南波と呼ぶみたいです。

お願いしていた「おぞう煮」がやってきました。marucho06ありそうでなさそうなメニューと思う「おぞう煮」が、
熱々の土鍋で届いて、温かな湯気を上げてくれています。

お野菜あれこれに占地椎茸榎茸、
蒲鉾に飾り麩も浮かぶ具沢山。marucho07ふーふーしてから啜った汁がこっくりと旨く、
寒さに悴んでいた肩先がふっと解れる感じのする。

鶏の身をつまみ、いよいよお餅に箸の先を伸ばす。marucho08土鍋に炊かれて、とろーんとしつつ、
煮崩れない加減のお餅の甘さにまた気持ちが和らぐのでありました。
はー、温まった温まった。

家康公生誕の地、岡崎の康生通りに生そば「丸長」の小さな店がある。marucho09おばぁちゃん、ぬくぬく温かなひと時をありがとう。
もしも今度があったなら「カレー南波」あたりをいただこうかな。

「丸長」
岡崎市康生通東2-5 [Map] 0564-22-2415

column/03673

北野上七軒「ふた葉」でたぬきうどんお揚げとあんとおろし生姜のトリオがズルい

futaba上七軒、と聞けば真っ先に思い浮かべるのが、北野天満宮の菅原道真公の御歌を掲げた楼門脇の梅の花でも、天満宮の鳥居前で行列をつくる「とようけ茶屋」でもなく、軒と軒とが鍔競り合うような上七軒の路地に潜む廣東料理の店「糸仙」。
五つ団子の紅い提灯やきりっとした藍色の暖簾。
京都の中華料理の個性の片鱗を垣間見させてくれるようなお皿たち。
その「糸仙」へ向かう上七軒通りにもう一軒、ずっと気になる佇まいの店がありました。

久し振りに天満宮にお参りしてから境内の奥から横手に出る。futaba01東門を背にして二岐を右手に往けば、それが上七軒通り。
目当ての店は、過日と変わらぬ佇まいを魅せていました。

小上がり席にひとつだけ空いている卓を得て、
配膳口の上にずらっと並べ掛けられた品札を見上げます。futaba02京都でうどんなら、
祇をん「萬屋」の「ねぎうどん」に代表される、
九条葱のおうどんがいい。
ところがまだその時季(冬季)に至っておらず、
恐らくひっくり返っている品札が「ねぎうどん」のそれなのでしょう。

ならばお揚げさんで参りましょうかと、
改めて黒の品札の並びを見定める。futaba03届いたどんぶりには、
しっかりとしたあんの湖面が張られてる。
半透明のあんの下に刻んだお揚げの並びが窺えます。

京都で”たぬき”といえば、
“お揚げにあんかけ”であるらしい。futaba04futaba05甘辛く炊いたお揚げに、
片栗粉でとろみをつけた出汁が妖艶に滲みる。
そこへおろし生姜の辛味風味が色を挿す。
うどんそのものに特段の妙味はないものの、
この、お揚げとあんとおろし生姜のトリオは、
九条葱のおうどんに負けないズルさがあるのです。

京都北野、上七軒通りに京のうどんの店「ふた葉」がある。futaba06「おぼろ」に「のっぺい」、「けいらん」に「肉カレーうどん」。
「にしんそば」に「中華そば」までもが気になるけれど、
次回の機会があるならぜひやっぱり、
「ねぎうどん」をいただきとう御座います。

「ふた葉」
京都市上京区真盛町719 [Map] 075-461-4573
http://www.futaba-kami7ken.com/

column/03661

手打「大助うどん」で肉もりうどんに肉うどんキツネ入り武蔵野うどんの正しき風景

daisuke大泉学園のうどん店と云えば、まず思い浮かべるのが、今は手打饂飩「長谷川」と名乗る英気盛んな店。
「エン座長谷川」から今は”エン座”の冠を外して、自らの名のままにて自立している。
そんな「長谷川」の店先の様子を想像しつつ立っていたのは、同じ北口のバス停前。
ちょっと整備されて綺麗になった小さなロータリーから乗り込んだのは、福祉センター行きの西武バス。
大泉学園通りを北上して北園の信号を抜けたバスは、関越道の処で左折して高架に沿って進む。
道に沿ってさらに左折したところで降車ボタンを押しました。


駅からは離れた住宅地の一角に年季の入った暖簾が揺れる。daisuke01木造モルタルの民家の物干し場の下に、
後から急造で設えたような囲いがある。
履き込んだデニムのような暖簾の脇には、
風雨に鍛えた表札が、
手打「大助うどん」であることを示してる。

両脇にある券売機の上には檜の板で誂えた品札の列。daisuke02まずはやっぱり品書き筆頭の「肉うどん」でありましょう。

店内はいい味に少し飴色帯びていて、
初めてなのに懐かしい。daisuke03ギュウギュウになるでもなく、
八割方の客入りの状態を維持しながら、
客の顔立ちがどんどん入れ替わっていく。
行列をつくるでもなく、
まるで示し合せたかのように回転していく様子に、
飲食店のひとつの理想を見たような気になりました(笑)。

テーブルの間を行き交ってくれるのは、
すべてベテラン顔のオバサマたち。daisuke04渡したチケットの行方と厨房の湯気を眺めつつ、
待っていたところへバラ肉をたっぷり浮かべたつけ汁の椀と、
皿に盛った手打ちのうどんがやってきました。

うどんを眺めては、
うむうむ、そうそうと思わず膝を打つ。daisuke05こうして茶褐色を帯びたうどんが、
正統な武蔵野うどんの証のひとつ。
このうどんなんでこんなにくすんだ色してるのと、
訝ってはなりません(笑)。

割り箸でひっ掴んだうどんを無造作につけ汁に突っ込んで、
それでも矢鱈撥ねないようにすっと引き上げる。daisuke06出汁の旨みと醤油の風味に、
豚バラから滲む滋味とコクを一身に纏った、
うどんが口の廻りで躍る。
うむうむ、そうそう、武蔵野うどんはこうでなくっちゃいけません。
美味いなぁ、どうして今まで知らなかったのでありましょう。

日を改めてふたたび同じバスに乗り、
やってきました関越道脇の住宅地。daisuke07空いていたテーブルの真ん中の椅子に腰掛けると、
正面に使い込まれた洗面台がある。
その脇の壁に表情のある文字で書かれた、
「うどん」と題する詩が貼られてる。

例によって入口両脇にある券売機でポチっとしたのは、
「肉うどん・肉もり・あつもりキツネかタヌキ入り」のチケット。daisuke08もりうどんではなく、
温かいの!キツネ入りで!とお願いすると、
はいよとばかりにオバサマがチケットの角を折り曲げる。
ここを折り曲げるのは、
大方のお客さんが註文するであろうもりうどんでなくて、
温かいどんぶりのサインなのかもしれません。

なんだか仄々した気分になっているところへ、
お願いしていたどんぶりが湯気を上げてやってくる。daisuke09daisuke10これでスタンダードな中盛りなんだもんな、
豚バラ肉もプラスオンのお揚げも、
加減することなく載っていて嬉しい。
ナルトの一片にまた仄々だ(笑)。

手打ちのうどんは勿論、
農林61号の地粉を思わせる明快な茶褐色。daisuke11うどんの、粉そのものから引き出した滋味。
豚バラ肉との相性の良さは、
一度このコンビネーションを憶えたら、
決して欠かせないものに思える程なのであります。

関越道抜けてゆく大泉学園の住宅地に、
正統派武蔵野うどんを想う「大助うどん」がある。daisuke12武蔵野うどんの中心エリアと思しき、
東村山や小平地域からはやや離れた大泉に、
こんなにも正しき風景のお店があったとは、
今まで知らずに御免なさい。
お代を渡した割烹着のオバサマに、
大助さんは何処にと訊ねると、
厨房の奥を指差して、
あれ?いないわねぇ、だって(笑)。

「大助うどん」
練馬区西大泉3-27-23 [Map] 03-3922-3028

column/03655

武蔵野うどん専門店「とこ井」で農林61号全粒粉の本手打ち極太麺を具沢山肉汁で

tokoi例えば、国分寺駅北口の再開発で移転してなお活躍中の「国分寺 甚五郎」。
そしてその流れを汲む「東小金井 甚五郎」はその名の通り東小金井駅南口にある。
東小金井といえば、駅北側方向には、拘り求道系のご自宅手打ちうどん「へそまがり」がある。
ご自宅系といえば、国分寺駅から離れたご自宅うどん処「七」を思い出す。
駅からずっと離れたといえば、地粉らしい麺の色が印象的な高円寺肉汁うどん「夕虹」がある。
そんな風に中央線沿線にも武蔵野うどんのお店が散在しているのです。

久々に降り立ったのは、高円寺駅南口。
パルPALというアーケードを初めて歩いてから脇に抜け、
裏道をきょろきょろしながら南下する(笑)。
渋い居酒屋や小料理屋、はたまたアジアンな印象的な店々がみつかって、
なかなか愉しい界隈なのですね。tokoi01そんな裏道の一角に浮かぶ提灯に灯が入る。
提灯が示しているのは、そう、”肉汁うどん”。
その先には”武蔵野うどん”の幟がはためいています。

開店早々の店内に忍び入って、
入口脇の券売機の前に立ち、
勿論これだよねと品書き筆頭の「肉汁つけうどん」の券を買う。tokoi02tokoi03武骨さを備えたカウンターから厨房を覗くと、
大き目の羽釜がゆらゆらと湯気を上げていました。

ややって、お願いしていた「肉汁つけうどん」の膳が、
カウンター越しに届く。tokoi04それ相応に時間が掛かるのは、
極太麺を註文を受けてから茹で上げているから。
おウチで食べる武蔵野うどんであると、
茹で置きなら茹で置きなりに美味しくいただけるのですけどね。

手打ちうどんの定番になってきた”はじっ娘”も載った、
太いうどんは当然ながらの茶褐色。tokoi05埼玉県産の農林61号を数種類ブレンドしているという。
入手の難しくなりつつある農林61号をブレンドしているなんて!
目の前のうどんは、農林61号の全粒粉で打ったが故の表情を、
忌憚なくみせてくれています。
なんだか燻んだ色味で美味しくなさそうだと思うのは早計で、
漂白したような真っ白いうどんよりは断然滋味深いのであります。

お揚げも豚バラ肉もたっぷりのつけ汁がいい。tokoi06tokoi07極太が故のぐわぐわっとした歯応え。
すいとんのような、という例えも間違いでない量感もする。
高円寺「夕虹」の麺に近いかな。
もう少し細めの方が粉の旨味をテンポよく味わえるような気もします。

毎度お願いする「肉増量」に加えて、
「きざみ(油揚げ)」や「茄子の素揚げ」といった、
トッピングも用意されている。tokoi08素揚げした茄子も大好物。
「がっつりのせ」や「いっぱいのせ」は、
茄子をはじめ、どのトッピングにも適用されるものなのかな?

「ダブル汁」を註文すると、先に肉汁でいただいて、
後半は「カレー汁」でいただく流れになる。tokoi09うどんも「あつもり」や「やわらかめ」が出来るよう。
もしかしたら、最初は「やわらかめ」オーダーがよいかもしれません。

高円寺南口に剛毅な装いの武蔵野うどん専門店「とこ井」がある。tokoi10木造りの看板の隅に示された「庄司グループ」の「庄司」は、
埼玉は川島町にある本手打ちうどん店「庄司」のことであるらしい。
ぜひ永く続いて欲しいとなぁ思っていたら、
下北沢にも店を開いて盛業中のようですよ。

「とこ井」高円寺本店
杉並区高円寺南4-7-5 久万乃ビル1F [Map] 03-5913-8809
http://udon-tokoi.com/

column/03645