「するする蕎麦の粋」カテゴリーアーカイブ

手打そば「風月庵」で三色の出雲そば滋味濃いぃ蕎麦の美味しさは何気なき出色哉

fugetsuan何度思い返してみても、山陰に出掛けた時のシーンが思い出せない。
やっぱり今まで山陰に赴いたことがなかったと知って、自分で自分を驚いてしまったりする。
山陰両県といえば、島根県、鳥取県を指すと知っていても、広義では、京都北部から兵庫の北部、島根県、鳥取県、そして山口県の北部までをも含むエリアを山陰地方とする場合もあるらしいとは知らんかった。
そして、東京から山陰に飛ぶ空港はと自分に問いて、ちょと思案。
そうそう、島根と云えば出雲の空港があるじゃないですか。

やっとこ出雲にまで思考が繋がれば、
愛ちゃんに訊ねるべし!と膝を打つように思い付く。fugetsuan01晴れて出雲のお店のネタを仕込んでから、
機上のひととなったのでありました。

宍道湖西岸にある出雲縁結び空港から、
連絡バスで出雲市駅に到着。
駅北側に広がる飲み屋街が気になりつつも(笑)、
まずは出雲そばをお店に足を向けたい。
そんな気分になりました。

駅周辺にも勿論、出雲そばを供するお店はあるものの、
一番気になったのは、駅からはちょっと離れた、
島根大学医学部方面に南下した辺りにある手打ちそばの店。fugetsuan02タクシーを降りた目の前に、
板塀のアプローチで迎える「風月庵」の佇まいがありました。

奥に暖簾の入口を見定めてからふと、
その脇に建つ小屋のような家屋に回り込むと、
その板壁にには「そば工房 風月庵」の文字。fugetsuan03此処で製粉までしてるのか、
はたまた蕎麦打ち教室が営まれているのかと、
そんなことを考えながら臙脂色の暖簾を払います。

店内は、そう遠くない頃に改装を済ませましたと、
そう想像するよな設えになっていて、
テーブル席に小上がりにカウンター席と、
そんな配分がされている。
席を埋めているのはどうやら、
地元の方々がほとんどではとお見受けします。fugetsuan04fugetsuan05カウンター席の前は、硝子越しに覗ける蕎麦打ち部屋。
篩いの向こうには漆塗りの捏ね鉢ではなくて、
陶器のがっしりした鉢が置かれています。

お願いしたのは「三色割子」。fugetsuan08届いた膳には朱塗りの丸い器が4つ。
ひとつには、刻んだ浅葱や紅葉おろし、
花かつおなどの薬味が載っています。

まずは大根おろしをちょんと載せたお蕎麦から。
薬味を加えたところにツユを軽く注いで、いざいざ。fugetsuan06あれま、想定以上に滋味濃いぃというのが第一印象。
香り高い蕎麦と思いたいことは沢山あっても、
それを満たしてくれる蕎麦にはなかなか出会えないものだけど、
味わいの、旨味の濃いぃ蕎麦をはっきり思うのもまた、
なかなかに珍しいことではありませんか。

鶉の卵に揚げ玉を頂いたお蕎麦にも、
急くように箸を伸ばす。fugetsuan07注いだツユは、鰹の旨味と香りが明確に、
そして濁りなく煮出されていて潔い。
派手さは勿論ないれど、
実に美味しいお蕎麦であると云えましょう。

そうとなればきっと蕎麦湯も美味い筈と、
ハードル上げてツユに溶く。
fugetsuan09うんうん、含む旨味は今さっき手繰った蕎麦の延長線上にあるもので、
それもわざわざ拵えた風でないのが嬉しいですね。

ご当地出雲でいただく出雲そば。
出雲そば供するお店の中でもきっと、
地元にも根強い人気の手打そば「風月庵」。fugetsuan10お品書きには「割子そば」と並んで「釜揚げそば」が、
出雲そばを代表する品であるとある。
その「釜揚げそば」も気になる一方で、
地元のひと達が注文している「らーめん」や「うどん・らいす」、
そして「カツ丼」までもが気掛かりなのは何より、
いただいたお蕎麦が美味しかった所為なのでしょう。

「風月庵」
出雲市塩冶町揚765-2 [Map] 0853-21-1597
http://fugetsuan.web.fc2.com/

column/03686

生そば「丸長」で冷たい雨の康生通り具沢山なお雑煮の土鍋にぬくぬく温まる

marucho何度か見聞きする土地や街の名前。
ざっくりあの辺りであろうとは思ってはいても、用事もないとそのはっきりした所在を知らないままという場所というのも少なくないものでありますね。
この冬にお邪魔した岡崎もそのひとつ。
岡崎市の位置は、浜松と名古屋のちょうど中間あたり。
豊橋や蒲郡と豊田や知立との真ん中あたりでもある。
時間的にはちょっと近い、名古屋から戻るルートで岡崎入りしました。

どちらかと云うと街の中心は、
岡崎駅ではなくて東岡崎駅の方であるらしく、
乙川の向こうにあるのが、岡崎城の城址を囲む岡崎公園。marucho01ああ、岡崎と云えば家康だと今更のように気づきつつ、
でも家康とどんな縁の城だったかは詳らかでない不見識(笑)。
おひる処を求めて冷たい雨の降る中、
康生通りと名付けられた通りを往けば、
岡崎が家康公生誕の地であることを知らせる時計塔が見付かりました。

それは、時計塔近く舗道から向かい側を眺めて認めた佇まい。marucho02左右に駐車場のスパースが空き、
背後にやや高めのビルが建つ。
地上げに抗い続けたとも思わせる空間にぽつねんと、
小さな蕎麦店が建っていました。

寒さに両手を擦りながら通りを渡り、
向こう側の舗道に立つ。marucho03生そばと黒抜いた縄暖簾がいい。
そして、硝子窓を守る木の桟に結わえた額縁には、
二行だけの季節の品書き。
「なべ焼うどん」に「おぞう煮」。
どちらも温まりそうだ。

ガラガラっと戸を引くと、
外観で想像した通りの設えが迎えてくれる。marucho04ふと、池上の「蓮月」を思い出しつつ、
店の中に、特に厨房との仕切り部分に庇を作るのは、
いつ頃の流行だったのかなぁなんて考える。
右手の壁には「人生は七十才より」と心得を示す額があったり、
“高いつもりで低いのが教養”といった十行を示す、
「つもりちがい十ヵ条」が掲げられたりしています。

お品書きは左手の壁に。marucho05そばにうどんが当然の充実具合。
中華そばもあるのかと思いつつ改めて見回すと、
「親子南波」に「鳥なんば」という札がある。
こちらでは、南蛮のことを南波と呼ぶみたいです。

お願いしていた「おぞう煮」がやってきました。marucho06ありそうでなさそうなメニューと思う「おぞう煮」が、
熱々の土鍋で届いて、温かな湯気を上げてくれています。

お野菜あれこれに占地椎茸榎茸、
蒲鉾に飾り麩も浮かぶ具沢山。marucho07ふーふーしてから啜った汁がこっくりと旨く、
寒さに悴んでいた肩先がふっと解れる感じのする。

鶏の身をつまみ、いよいよお餅に箸の先を伸ばす。marucho08土鍋に炊かれて、とろーんとしつつ、
煮崩れない加減のお餅の甘さにまた気持ちが和らぐのでありました。
はー、温まった温まった。

家康公生誕の地、岡崎の康生通りに生そば「丸長」の小さな店がある。marucho09おばぁちゃん、ぬくぬく温かなひと時をありがとう。
もしも今度があったなら「カレー南波」あたりをいただこうかな。

「丸長」
岡崎市康生通東2-5 [Map] 0564-22-2415

column/03673

桜蕎麦「正乃家」で桜の借景と桜蕎麦大人のポテサラ月見韮お浸し鴨せいろもいい

masanoya大崎駅を新西口から出て、百反坂を漫ろ歩きすることがある。
坂のどこかに寄り道した後には、そこから大崎駅には引き返さずに、迷路のような裏道を大崎広小路駅を目指して探索する。
家々がみっしり詰まった住宅地の途中、南北に交叉する道を北進すれば、古式ゆかしい中華料理店「平和軒」のある、立正大学キャンパスの正門前に至る。
偶には逆方向へと進路を南にとると、これまた家々がみしみしっと詰まっていて、次第に方角を怪しく思う瞬間が増えてくる。

そんな道中の、戸越銀座の通りに到達するちょっと手前。
そこだけスポットライトを浴びたように華やいだ場所に、
偶然にも初めて出会したのが、
今からちょうど一年前の春のことでありました。

今度は、戸越銀座駅から戸越銀座商店街を真っ直ぐ進み、
第二京浜を突っ切って更に往く。
大東京信金の角でここ辺りと振り向くと、
その先に何時ぞやの桜の木の枝振りが望めました。masanoya01曇天の下ながら、凡そ満開の咲きっぷりを眺め上げ、
ちょうど客を送って扉を開けていた女将さんに小さく会釈します。

お品書きには、冷たい蕎麦うどんに温かい蕎麦うどん。
丼ものに牡蠣フライを含む各種定食。
唐揚げ野菜炒めなんぞの肉料理に江戸前天麩羅。
そして何故だかオムライス。
中華、と題したラーメン5品までもがラインナップしています。

酒肴系と思しき品書きもなかなかの粒揃い。
その中からちょっとだけよとまず選んだのが、
「大人のポテトサラダ」。masanoya02どの辺りが”大人の”なのかと思ったら、
糸唐辛子以外にもちょっと辛味を含んでいて、
その按配もジャガ芋マッシュのまったり具合もちょうど良い。

お蕎麦屋さんですものと蕎麦湯割りをお願いしたら、
ちょっと意外にもそれはグラスでやってきた。masanoya03とろーんとした蕎麦湯の風味の後ろから、
ぐいっと焼酎のボディが届く。
お品書きを読み返したら、
蕎麦湯割りオーダーは、もれなくダブルになるようです(笑)。

もうひと品で蕎麦湯割をやっつけちまおうと、
お願いしたのが「ニラのお浸し月見仕立て」。masanoya04韮の鮮やかな翠色が麗しい。
しゃくしゃきとした歯応えと明瞭な風味。
いい按配に湯掻いた韮に玉子の黄身のコクを添えると、
これまた魅力が増してくる。
シンプルにして粋な酒肴でありますね。

そろそろお蕎麦をと女将さんに声を掛けると、
今は期間限定の「桜蕎麦」がおススメだと仰る。masanoya05蒸篭に載ってやってきたそれはやっぱり仄かな桜色。

蕎麦の表情をよくよく拝むとそこには、
緑色の粒子が織り込んである。masanoya06桜の葉を細かく刻んで蕎麦粉に混ぜているそうで、
仄かな桜色は、桜の花弁を混ぜ込んでいる、
のではなくて、食紅を少々垂らした成果であるとのこと。
しゃきっとした歯触り喉越しのお蕎麦で、
するっと美味しくいただきました。

裏を返したおひるどき。
「鴨せいろ蕎麦」とともにお願いした、
江戸前「野菜天ぷら」がやってきた。masanoya07厚く切った南瓜に茄子、人参に隠元豆。
パプリカ(黄ピーマン?)の天麩羅もなかなかオツなもの。

蒸篭の蕎麦は、信州の丸抜き粉を使った手打ちの二八蕎麦。masanoya08脂の加減も柔らかな噛み応えもいい感じの鴨の肉。
辛汁とのバランスも特段の文句なし。
今度は「地鶏せいろ」を試してみようかなぁなんて考え始めます(笑)。

後日「地鶏せいろ」を試すつもりが何故だか、
「ラーメン」を註文んだら、これは大失敗。
お蕎麦屋さんでは基本、お蕎麦をいただくのがよろしいようです(笑)。

戸越銀座の横丁に”桜蕎麦”と謳う蕎麦店「正乃家」がある。masanoya09よくよく眺めるとその桜の木は、
お隣の和菓子屋さんの敷地から育っている様子。
借景というか、お隣の木一本で、
こうにも雰囲気を醸している事例も珍しいのではないでしょか。

「正乃家」
品川区戸越1-19-24 [Map] 03-3787-4835

column/03668

純手打ちそば「奥村本店」で登美の丘ワイナリーの葡萄畑そこがゆえの日本ワインたち

okumura中央本線の特急に乗って何処かへ出掛けるなんてことは、うン十年なんとか生きてきてほとんど機会がなかったのだけれど、ここ数年で何度も特急列車に乗っている。
とっ始めは恐らく、初めて白州蒸溜所へお誘いいただいたことなのかもしれないなぁと思いつき、その時のことを思い出す。
昨年二度目の白州に訪れた時は、甲府まで特急に乗り、そこからレンタカーで小淵沢方面へ向かうルートをとった。
その際考えたプランのひとつが、甲斐市にある「登美の丘ワイナリー」に寄り道しての見学。
でもね、レンタカーで行ったら試飲できないじゃん!ということで(笑)、見送ることにしたりなんかしたのでありました。

そんな風に気掛かりだった「登美の丘ワイナー」に、
冬晴れの休日にやって来た。okumura01甲府駅からタクシーで30分弱くらいの、
まさに丘を背にした醸造所のゲートが迎えてくれました。

スイッチバックを含んだ坂道を案内いただいて、
丘の上の見晴台から晴々とした葡萄畑を心地よく眺める。okumura02okumura04春を待ち兼ねた様子の葡萄の木の列の先に、
甲府盆地の市街がみえる。
そのずっと向こうにはまだ真っ白な富士山のフォルムが望めます。

剪定されたメルロの樹からは、
丘の斜面から吸い上げた水分が、
雫となって滴ろうとしてる。okumura05陽当たりの良い、南向きの斜面の連なる高台の丘は、
標高が高いがゆえに冷涼で、それがワイン用の葡萄に好適地。
収穫時期の昼と夜の寒暖差が、葡萄の糖度熟度を高めてくれる。
一見すると作業性が悪そうな斜面や尾根を葡萄畑とするのは、
水捌けの良さを考慮してのことでもあるという。

石積みのセラーが格好いい。okumura06okumura07区画毎の葡萄を可能な限り別々に醸造を行うという。
ウイスキーのシングルバレルではないけれど、
同じ品種の葡萄であっても、条件等が少しづつでも異なることで、
それぞれに微妙に異なる表情を見せてくれるのでしょう。

何処かに続くトンネルにも思える薄暗がりの空間が、瓶熟庫。okumura08okumura09金網の閉じた棚がずらっと並んでいて、
栽培している品種それぞれの、それぞれの年次の、
早摘み遅摘みなどといった特長を湛えたボトルが、
整然と並べられています。
登美の丘が醸す貴腐ワインを大事そうに保管した棚も見付かります。

「登美の丘ワイナリー」は、
1890年(明治23年)に六代目川上善兵衛が開いた、
「岩之原葡萄園」がその起源。
後に「マスカット・ベーリーA」を生み出した善兵衛は、
“日本のワイン葡萄の父”と呼ばれているという。okumura30ただ、岩之原葡萄園のワインの販売は広がらず、
経営に窮した葡萄園の危機を救ったのが、
当時「赤玉ポートワイン」で甘味ワインのブームを作り出していた、
ご存知、サントリー創業者の鳥井信治郎氏であったという。
その後ふたりが、
ドイツのラインガウに似ていると評された「登美農園」と出会い、
今の「登美の丘ワイナリー」へと繋がっていく。
紆余曲折や停滞時期を含みつつも百数十年に亘って、
日本の気候風土にあった品種への改良・研究が、
積み重ねられてきているのですね。

瓶熟庫から引き返してご案内いただいたのは、
これまた葡萄畑や甲府市街、そして富士山を見晴らす、
その名も「眺富荘」。okumura10okumura12okumura11窓には葡萄の房や葉をモチーフにしたステンドグラス。
アプローチの階段には、もうひとつのシンボルツリーのような桜の木。
時季には最高の花見場所となることでしょう。

富士見ホールと名付けられた一室のテーブルには、
「登美の丘ワイナリー」が誇る、
主要銘柄のワインボトルが並べられました。okumura17白からロゼ、そして赤。
まさにワイナリーのバラエティを感じさせる光景です。

青柚子の一片を噛んだ時のような香りの、
「ジャパンプレミアム<甲州>」のグラス。okumura13-1グラス越しに富士山が望めるなんて、
なんて素敵なシチュエーションなのでしょうと、
小さくときめきます(笑)。
成る程、青魚や酢の物にさえ似合いそうな、
香りと酸味の<JP甲州>に対して、
遅摘みした葡萄を用いるという「登美の丘 <甲州>」は、
酸味が比較的柔らかで、
ゆったりとした中に仄かに渋みを感じる印象がします。

ずっとずっと昔、
勝沼あたりの某ワイナリーを訪れた時に試飲した白ワインは、
薄っぺらくて硬い酸味がするだけとしか思えなかったのだけれど、
きっと今は、山梨のワイナリー全体で、
味わいの底上げがされてきているかもと、
そんなことを思ったりもする。
此処「登美の丘」でも営まれている、
ワインに適したこの丘、この風土が醸す魅力を、
十二分に引き出そうとする努力とこだわりが、
“ここがゆえ”のワインを生み出しているのですね。

そして、兎にも角にもイチオシなのが、
花見の季節も連想させる穏やかにして艶やかな色合いのロゼ、
「マスカット・ベーリーA <ロゼ>」。okumura15-1仄かな甘みが華やかなベールとなって、
鼻腔や味蕾をそっと包む。
単独で呑むのも勿論のこと、
揚げ物や脂を含む和食系に添えても邪魔をしない気がする。
オールマイティに美味しいワインだと思います。

試飲させていただいのは他に、
柔らかな余韻がすーーっと続く「登美の丘 <シャルドネ>」に、
ロゼ同様、冷やしていただくのが美味しい「マスカット・ベーリーA」。
焼き鳥にイメージするような醤油を使った、
タレ味にも似合う「塩尻マスカット・ベーリーA」に、
程よい渋みを含む「登美の丘 <赤>」。
日本固有品種でありながら、
どこか欧州系品種のようにも響く「マスカット・ベーリー」には、
和名の愛称があってもいいのではなんてことも思います。

少し冷えてきたワイナリーを後にして、
やってきたのはやや遠く見下ろしていた甲府の市役所近く。okumura18問屋街入口という交叉点近くの蕎麦店「奥村 本店」。
なんと、江戸・寛文年間の頃に創業したという。
16代360年に及ぶ老舗の風格が今の佇まいにも滲み出ています。

使い込んだ木箱の積まれた麺打ち場。okumura19okumura20“登美の丘 ジャパンプレミアム”を刻印した樽が迎えてくれました。

テーブルにはふたたび、
「登美の丘 <シャルドネ>」をはじめとするボトルたち。okumura21それらが居並ぶ立ち姿は、
老舗蕎麦店が紡ぎ出す料理たちとの出会いを、
待ち侘びているようにも映ります。

繊細な白髪葱をいただいたオクラの和え物には、
「登美の丘 <甲州>」が良く似合う。okumura22自然と頭の中で日本酒との呑み比べをしてみたりするけれど(笑)、
これはこれでいい、ということに変わりはありません。

味噌ダレを添えた皮に包んだまま蒸し焼いた若筍に、
これまた春を思わせる蛍烏賊には酢味噌の風味。okumura23味噌の風味には例えば、
「登美の丘 <シャルドネ>」も嬉しい組み合わせ。
そしてそれは、魚介の滋味や貝類の風味ともすんなりと、
互いを盛り立てるようにしてくれます。

山葵の花をあしらった鯛や鮪、烏賊のたたきは、
卵の黄身に若布に刻んだ茗荷と一緒になって、
口に含めば色々な風味香気が小さく弾ける。okumura24「登美の丘 <甲州>」「登美の丘 <シャルドネ>」は勿論のこと、
オールマイティな「マスカット・ベーリーA <ロゼ>」の、
すっきりとほの甘い華やぎもまた、
面白い程の相性の良さを魅せてくれます。

「マスカット・ベーリーA <ロゼ>」の八方美人っぷり(笑)は、
こってりめに味噌ダレに包まれた牡蠣にだって如才なし。okumura25牡蠣には兎に角専ら白だとばっかり思い込んでいると、
ちょっと間違っちゃうこともあるのかもしれません。

鴨は鴨でもローストなどとは趣の異なるその仕立ては、
ふっくらとした治部煮の器。okumura26出汁に醤油を用いた和仕立ての鴨料理には、
登美の丘の葡萄と長野県は塩尻の葡萄とを合わせた、
「ジャパンプレミアム 塩尻マスカット・ベーリーA」もいい。
やや紫色がかった滴が成る程、
醤油ダレで焼いた焼き鳥にも似合いそうです。

料理の皿たちでも十分に思わせてくれた、
老舗蕎麦店としての地力を確信に仕上げてくれたのが、
漆の鉢に盛られたお蕎麦。okumura28程よく張りのある歯触りから滋味の滲む蕎麦が、
美味しくて小さく唸ってしまいました(笑)。

甲府の街の中心に、
江戸・寛文年間に創業の純手打ちそば「奥村 本店」がある。okumura29初代当主が”山奥の村から来た”からと、
「奥村」と名付けたという蕎麦店は、
16代360年に及ぶ老舗の風格堂々とした料理店として今に至る。

これからは、甲府の街を見下ろす「登美の丘」の葡萄畑と、
ワイナリーの様子を思い起こしながら、
“そこがゆえ”の日本ワインを愉しみたいなと、
帰路の特急に揺られながら思うのでありました。

そんなサントリーの日本ワインに詳しくは、
コチラ”日本ワイン サントリー”
手っ取り早く日本ワインを手に入れるには、
amazonのサントリー 日本ワイン特集 のサイトがいいみたい。

「奥村 本店」
甲府市中央4-8-16 [Map] 055-233-3340
http://www.okumura-honten.jp/

column/03666

石臼碾きそば「つきじ 文化人」で雲丹の冷かけ牡蠣せいろ豆腐蕎麦に芹蕎麦もいい

bunkajin何時誰がそう呼び始めたのかは不明ながら、裏築地と呼ばれるエリアがある。
表通りからは離れた裏っ側なイメージは、築地七丁目辺りがその呼び名に一番相応しいかもしれません。
そんな裏築地・築地七丁目。
魚料理「はなふさ」と同じブロックにあったのが、石臼挽き二八蕎麦「土星庵」。
手挽きの旨い「もり」や綺麗にひかれた出汁の「冷やかけ」がイケていた「土星庵」の蕎麦。
ちょこちょこ通おうと思いつつ暫くしたら、いつの間にかなくなってしまっていた、それは幻の蕎麦店なのでありました。

そんな「土星庵」が名前を変えて、
築地の別の場所で営んでいると知る。bunkajin01「布常更科」の暖簾も程近い、
松竹スクエアとコンワビルの間の道の歩道に、
「手打ちそば」と謳うスタンド看板が見付かりました。

潜った暖簾の右手には、
大きくてがっしりした捏ね鉢を据えたテーブルがある。bunkajin02その脇に綿棒が纏められているところをみると、
この場所で蕎麦を打っているのでありましょう。

お好きな処へどうぞと促されつつ、
正面のカウンターの一席へ。bunkajin03頭上の下がり壁には、
その日打った蕎麦の産地が掲示されています。

陽射しギラッとしたある真夏のおひる時。
いただいたのはなんとも贅沢な「雲丹の冷やかけ」。bunkajin04bunkajin05冷やかけの汁に「土星庵」のあの夏の日を思い出す。

明礬の気配なき雲丹の甘さと滋味漂う手打ちの蕎麦の風雅に、
細やかに刻んだ海苔の香りが追い掛ける。bunkajin06bunkajin07どっしりした器にも何気ない拘りを感じさせて、
美味しさを更に後押ししてくれます。

季節は移ろい深まった秋の或る日のこと。
店先の品書きでお薦めの「旬のそば」には”牡蠣”の二文字。bunkajin08お願いしていた「牡蠣せいろ」のお膳が目の前に届きました。

頭上に貼られた短冊を見上げると、
富山県南砺産の秋新そば十割とある。
仄かに翠がかった端正な蕎麦が美しくも美味しそう。bunkajin09bunkajin10雅にして高貴な鉄色の椀には、
自慢の出汁の汁に浮かべたぷるふるの牡蠣。
さあ目を閉じて味わいましょう(笑)。

年明け早々、4日のひるに築地に行ってみた。
休場の明けない築地は当然のように閑散としていて、
営業している店がほとんどない。bunkajin11試しにと「文化人」の前の道を覗くと、
「新そば」の幟が新年の風にはためいてる。
なんだか救世主がここに!みたいな心持ちになりました(笑)。

その時にいただいたのは、
こちらのスペシャリテのひとつ「とうふそば」。bunkajin14緩くあんのかかった汁の上に浮かんだ、
お豆腐は自家製のものだという。
硬めにニガリを打ったお豆腐は、
北海道産の大豆の魅力がそのまんま活きている感じのする。
途中から添えてくれた黒七味で風味を増してみる。
これもまたお供にして呑めそうな、
そんなお蕎麦の器で御座います。

そして、春の気配も忍び寄り始めた今日この頃。
これまた旬の蕎麦をいただきに足を向けました。bunkajin15bunkajin16例のお椀の蓋を外せば目に映るのは、鮮やかな緑色。

一面にそして綺麗に載せられたのはそう、芹の緑色。bunkajin17「芹そば」と云えば、
ご存じ「泰明庵」の根っこ入り「せりそば」が有名処。
野趣の押し出し具合ではやっぱり「泰明庵」のそれにやや軍配なるも、
此処でもたっぷり春の息吹を感じさせてくれました。

裏築地の「土星庵」から転じて「文化人」と名乗る、
石臼碾き蕎麦の店が築地の一角にある。bunkajin18Webページによると、
店名”文化人”の由来は、「文化と人が集まる場所」。
ここで云う”文化”とは、
“そばという食文化、和の文化”のことを指すという。
頑なな求道系蕎麦店ではなく、
拘りの加減が粋にしてちょうどよい、そんな安心感がいい。
旬のつまみとお酒、そして旬の蕎麦。
そんな愉しみ方も勿論、ですね。

「つきじ 文化人」
中央区築地1-12-16 プレミアム銀座イースト1F [Map] 03-6228-4293
http://www.bizserver1.com/bunkajin/

column/03660