「郷愁の武蔵野うどん」カテゴリーアーカイブ

うどん弥「根古坂」で肉汁糧うどん充実の糧と地粉うどん武蔵野うどんの正しき風景

府中街道という呼び名には子供の頃からの馴染みがある。
府中街道は、所沢駅付近というか、浅田飴の工場や山崎製パンの工場がある久米川町交差点で志木街道と接続する地点から遥々と、川崎駅付近を結ぶ道路の通称であるという。
そんな府中街道は、久米川辻、東村山駅東口、西武新宿線の踏切を横切って、野口橋で新青梅街道と交叉する。
東村山駅を過ぎた辺りから計画道路のためのネットフェンスに囲まれた敷地が道路脇に続く。
野口橋からは視界が開けて片側二車線になって、小平方面へと南下して行きます。

西武多摩湖線、西武拝島線の高架を潜り、
ブリジストンの技術センター前を通り抜け、
順調に直進していた府中街道は、
青梅街道に突き当たった処で突如として前方の道路を見失う。
府中街道は、左折して一瞬青梅街道の上をなぞり、
クランクするように右折して進むようになっているのです。

その青梅街道と交わる小川町西交差点脇に建てられた標識には、
新府中街道へ向けて直進するべく事業中である旨を告知がされている。
用地取得が斑に進んでいるようで、
交差点近くでは既に重機が稼動している様子が視認できました。

静かな住宅地にそんな動きがある一方で、
裏に回ればまだまだ農地も残されていて、
数年前には風に揺れる麦穂がみられたりなんかした。どうやら休耕対策のために植えていたライ麦のようで、
残念ながら今は開発の手に侵されてきているようです。

ライ麦畑からも事業中の幹線街路からもすぐの場所に、
立派な瓦屋根を頂いた日本家屋がある。入口と思しき引き戸に近づくと、黒板仕様の看板が立て掛けてある。
そこには「糧うどん」と手書きされています。

“うどん弥”と印された白い暖簾に導かれ、いざその中へ。引き戸の中がすぐに短い横手のカウンター。
厨房越しに家屋の庭先の明るさが覗きます。

ご註文は勿論「肉汁糧うどん」。あつもりも出来るとのことですが、冷たいうどんで所望します。

太くもなくかといって細くもない麺は、
ゴリゴリしない正しき武蔵野うどんの風情。
手打ちの証でもある、
俗に云う”はじっ娘”ないしは”一反木綿”が添えられています。 肉汁に豚肉も葱もたっぷりで出汁も利いていて、いい。
おウチ武蔵野うどんからの加減のいい洗練が窺えます。

所謂”糧”も充実していて、薬味の小皿に湯掻いたキャベツ。別の小皿にはこれまた定番の菠薐草。
さらには、ひじきの煮物なんかも添えてくれています。

カウンターの幕板に貼られた小さな紙に「たらしもち」。小麦粉ふすま入り焼きと説かれたお皿には、
ふっくらとしたテクスチャの薄焼きが載る。
ウチのオヤジが時々焼いてくれた名もないお好み焼きを思い出す。
甘すぎない”たらし”の蜜の塩梅も素朴にして嬉しい。

よかったら次回は庭先で召し上がれとお聞きして、
綺麗に芝生も刈られた庭先を覗かせてもらう。お日様の下いただく武蔵野うどんもきっと、
オツなものであることに違いありません。
柱の貼紙をみるに、ここでBBQもできるみたいです。

一度二度お邪魔してから間が空いてしまって、
ご無沙汰のこんにちは。
いつからお品書きに載っているのか、
まずはサイドメニューの「揚げもち」から。大根おろしに刻み海苔。
浸した汁で出汁の良さが確かめられたりなんかいたします。

やっぱり選んだ「肉汁糧うどん」には、
「ちくわの天ぷら」を加えてもらう。うむむ、うどんの色味が以前とまったく違う。
地粉の、ふすまを含んだと思しきうどんは、
赤褐色を帯びていて、ちょっと艶かしい。
ご無沙汰している裡になんだかもう一歩進化されたよな気がします。
二年前にはまだ農林61号を作っている農家さんがあって、
配合は違うけれど「小平ふるさと村」の粉と同じだと仰っていたけれど、
何か事情が変わった、のかもしれません。

小平は府中街道と青梅街道が交わる辺り。
立派な瓦屋根を頂いた日本家屋がうどん弥「根古坂」のその在り処。店名「根古坂(ねっこざか)」の由来を訊ねたならばそれは、
当家四代目が屋号にと据えたものだそう。
なだらかな坂の下、青梅街道との角に欅の根っこがあり、
この辺りを根古坂と呼ぶんだそうです。

「根古坂」
小平市小川町1-1104-1 [Map] 042-344-0007

column/03766

うどん小屋「アサイチ」で全粒粉と背脂使いの肉汁うどん築75年の古民家にて

住所で云えば、清瀬市中里。
直線距離で云えば、武蔵野線の東所沢駅が最寄りの駅になる。
西武線の清瀬駅北口からのバスがあって、下戸か台田というバス停が降車場になる。
都県境を流れる柳瀬川の緑地公園も程近いバス通りに風に棚引く「うどん」と示す幟が見付かります。

やや広めにとった駐車スペースの奥に、
越屋根を載せた平屋家屋。そこにも藍の暖簾に染め抜いた「うどん」の文字が見付かります。

暖簾を潜ると正面に数脚のカウンターがあり、
その右手に視線を移せば、
庭に面した廊下に沿って二間をぶち抜いた座敷が広がっています。なんだか郊外の叔父さんの家に上がり込んで、
お手製のうどんをいだたく気分になってきます。

最初のご註文は勿論「肉汁うどん」。人参と竹輪の天ぷらも添えてもらいます。

茹で立て〆立てを思わせる、
そしてツルンとしてモッチリとした食感を思わせる姿。よく見ると、小麦粉の表皮等が練り込まれていて、
全粒粉によるうどんなのかもねと考えつつ箸を伸ばします。

肉汁のツユも武蔵野うどんスタンダードな肉汁とはやや趣が違う。
所謂”背脂チャッチャ系”らーめん店のソレ程ではないものの、
明らかに意図して背脂を浮かべている。
成る程、こうすることでツユのコクが格段に増して、
旧来からの武蔵野うどんの麺に比べてモッチリ感の増したうどんと、
バランスをとろうとしているのだ。

揚げ立て天ぷらってやっぱり美味しい。人参の甘さや噛んで滲む竹輪の旨味も、
いい合いの手を演じてくれます。

またまたカラッと晴れたおひる時。
今度はふたつあるテーブル席のひとつに陣取って「カレー汁うどん」。小麦粉炒めた感たっぷりの、
蕎麦屋のカレーにも通じるカレー汁。
ちょっと醤油を垂らしたくなって、
旗の台「でら打ち」でいつもいただいていた時を思い出します(笑)。

お座敷を囲む障子の面数の多さなんかを数えつつ、
掻き揚げの揚げ立てに対峙する。玉葱の甘さを堪能するにも天麩羅が一番なのかもしれませんね。

清瀬市中里。
柳瀬川に沿って走るバス通りに武蔵野うどん「アサイチ」がある。店名「アサイチ」は、座卓に置かれていた冊子によれば、
母親のアサさんの名と父親のイチロウさんの名に因んでのもの。
なので、NHK「あさイチ」との協業ではない(笑)。
アサさんイチロウさんの子供たち兄弟が、
築75年の実家を改装して営むのが「アサイチ」なのです。

「アサイチ」
清瀬市中里5-11 [Map] 070-5594-9930

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手打「大助うどん」で肉もりうどんに肉うどんキツネ入り武蔵野うどんの正しき風景

daisuke大泉学園のうどん店と云えば、まず思い浮かべるのが、今は手打饂飩「長谷川」と名乗る英気盛んな店。
「エン座長谷川」から今は”エン座”の冠を外して、自らの名のままにて自立している。
そんな「長谷川」の店先の様子を想像しつつ立っていたのは、同じ北口のバス停前。
ちょっと整備されて綺麗になった小さなロータリーから乗り込んだのは、福祉センター行きの西武バス。
大泉学園通りを北上して北園の信号を抜けたバスは、関越道の処で左折して高架に沿って進む。
道に沿ってさらに左折したところで降車ボタンを押しました。


駅からは離れた住宅地の一角に年季の入った暖簾が揺れる。daisuke01木造モルタルの民家の物干し場の下に、
後から急造で設えたような囲いがある。
履き込んだデニムのような暖簾の脇には、
風雨に鍛えた表札が、
手打「大助うどん」であることを示してる。

両脇にある券売機の上には檜の板で誂えた品札の列。daisuke02まずはやっぱり品書き筆頭の「肉うどん」でありましょう。

店内はいい味に少し飴色帯びていて、
初めてなのに懐かしい。daisuke03ギュウギュウになるでもなく、
八割方の客入りの状態を維持しながら、
客の顔立ちがどんどん入れ替わっていく。
行列をつくるでもなく、
まるで示し合せたかのように回転していく様子に、
飲食店のひとつの理想を見たような気になりました(笑)。

テーブルの間を行き交ってくれるのは、
すべてベテラン顔のオバサマたち。daisuke04渡したチケットの行方と厨房の湯気を眺めつつ、
待っていたところへバラ肉をたっぷり浮かべたつけ汁の椀と、
皿に盛った手打ちのうどんがやってきました。

うどんを眺めては、
うむうむ、そうそうと思わず膝を打つ。daisuke05こうして茶褐色を帯びたうどんが、
正統な武蔵野うどんの証のひとつ。
このうどんなんでこんなにくすんだ色してるのと、
訝ってはなりません(笑)。

割り箸でひっ掴んだうどんを無造作につけ汁に突っ込んで、
それでも矢鱈撥ねないようにすっと引き上げる。daisuke06出汁の旨みと醤油の風味に、
豚バラから滲む滋味とコクを一身に纏った、
うどんが口の廻りで躍る。
うむうむ、そうそう、武蔵野うどんはこうでなくっちゃいけません。
美味いなぁ、どうして今まで知らなかったのでありましょう。

日を改めてふたたび同じバスに乗り、
やってきました関越道脇の住宅地。daisuke07空いていたテーブルの真ん中の椅子に腰掛けると、
正面に使い込まれた洗面台がある。
その脇の壁に表情のある文字で書かれた、
「うどん」と題する詩が貼られてる。

例によって入口両脇にある券売機でポチっとしたのは、
「肉うどん・肉もり・あつもりキツネかタヌキ入り」のチケット。daisuke08もりうどんではなく、
温かいの!キツネ入りで!とお願いすると、
はいよとばかりにオバサマがチケットの角を折り曲げる。
ここを折り曲げるのは、
大方のお客さんが註文するであろうもりうどんでなくて、
温かいどんぶりのサインなのかもしれません。

なんだか仄々した気分になっているところへ、
お願いしていたどんぶりが湯気を上げてやってくる。daisuke09daisuke10これでスタンダードな中盛りなんだもんな、
豚バラ肉もプラスオンのお揚げも、
加減することなく載っていて嬉しい。
ナルトの一片にまた仄々だ(笑)。

手打ちのうどんは勿論、
農林61号の地粉を思わせる明快な茶褐色。daisuke11うどんの、粉そのものから引き出した滋味。
豚バラ肉との相性の良さは、
一度このコンビネーションを憶えたら、
決して欠かせないものに思える程なのであります。

関越道抜けてゆく大泉学園の住宅地に、
正統派武蔵野うどんを想う「大助うどん」がある。daisuke12武蔵野うどんの中心エリアと思しき、
東村山や小平地域からはやや離れた大泉に、
こんなにも正しき風景のお店があったとは、
今まで知らずに御免なさい。
お代を渡した割烹着のオバサマに、
大助さんは何処にと訊ねると、
厨房の奥を指差して、
あれ?いないわねぇ、だって(笑)。

「大助うどん」
練馬区西大泉3-27-23 [Map] 03-3922-3028

column/03655

武蔵野うどん専門店「とこ井」で農林61号全粒粉の本手打ち極太麺を具沢山肉汁で

tokoi例えば、国分寺駅北口の再開発で移転してなお活躍中の「国分寺 甚五郎」。
そしてその流れを汲む「東小金井 甚五郎」はその名の通り東小金井駅南口にある。
東小金井といえば、駅北側方向には、拘り求道系のご自宅手打ちうどん「へそまがり」がある。
ご自宅系といえば、国分寺駅から離れたご自宅うどん処「七」を思い出す。
駅からずっと離れたといえば、地粉らしい麺の色が印象的な高円寺肉汁うどん「夕虹」がある。
そんな風に中央線沿線にも武蔵野うどんのお店が散在しているのです。

久々に降り立ったのは、高円寺駅南口。
パルPALというアーケードを初めて歩いてから脇に抜け、
裏道をきょろきょろしながら南下する(笑)。
渋い居酒屋や小料理屋、はたまたアジアンな印象的な店々がみつかって、
なかなか愉しい界隈なのですね。tokoi01そんな裏道の一角に浮かぶ提灯に灯が入る。
提灯が示しているのは、そう、”肉汁うどん”。
その先には”武蔵野うどん”の幟がはためいています。

開店早々の店内に忍び入って、
入口脇の券売機の前に立ち、
勿論これだよねと品書き筆頭の「肉汁つけうどん」の券を買う。tokoi02tokoi03武骨さを備えたカウンターから厨房を覗くと、
大き目の羽釜がゆらゆらと湯気を上げていました。

ややって、お願いしていた「肉汁つけうどん」の膳が、
カウンター越しに届く。tokoi04それ相応に時間が掛かるのは、
極太麺を註文を受けてから茹で上げているから。
おウチで食べる武蔵野うどんであると、
茹で置きなら茹で置きなりに美味しくいただけるのですけどね。

手打ちうどんの定番になってきた”はじっ娘”も載った、
太いうどんは当然ながらの茶褐色。tokoi05埼玉県産の農林61号を数種類ブレンドしているという。
入手の難しくなりつつある農林61号をブレンドしているなんて!
目の前のうどんは、農林61号の全粒粉で打ったが故の表情を、
忌憚なくみせてくれています。
なんだか燻んだ色味で美味しくなさそうだと思うのは早計で、
漂白したような真っ白いうどんよりは断然滋味深いのであります。

お揚げも豚バラ肉もたっぷりのつけ汁がいい。tokoi06tokoi07極太が故のぐわぐわっとした歯応え。
すいとんのような、という例えも間違いでない量感もする。
高円寺「夕虹」の麺に近いかな。
もう少し細めの方が粉の旨味をテンポよく味わえるような気もします。

毎度お願いする「肉増量」に加えて、
「きざみ(油揚げ)」や「茄子の素揚げ」といった、
トッピングも用意されている。tokoi08素揚げした茄子も大好物。
「がっつりのせ」や「いっぱいのせ」は、
茄子をはじめ、どのトッピングにも適用されるものなのかな?

「ダブル汁」を註文すると、先に肉汁でいただいて、
後半は「カレー汁」でいただく流れになる。tokoi09うどんも「あつもり」や「やわらかめ」が出来るよう。
もしかしたら、最初は「やわらかめ」オーダーがよいかもしれません。

高円寺南口に剛毅な装いの武蔵野うどん専門店「とこ井」がある。tokoi10木造りの看板の隅に示された「庄司グループ」の「庄司」は、
埼玉は川島町にある本手打ちうどん店「庄司」のことであるらしい。
ぜひ永く続いて欲しいとなぁ思っていたら、
下北沢にも店を開いて盛業中のようですよ。

「とこ井」高円寺本店
杉並区高円寺南4-7-5 久万乃ビル1F [Map] 03-5913-8809
http://udon-tokoi.com/

column/03645

地粉手打ちうどん「たべもの処 蔵」でつゆも麺も冷え切ったうどんにこりゃ酷い

kura小平駅の南側を走る都立狭山・境緑道。
のんびり散歩もよく似合うその緑道沿いにある、武蔵野うどんの店「指田屋」の女将さんに教えてもらったのが、その緑道の先にある「小平ふるさと村」でした。
小平の地がそもそも、玉川上水の開通に伴って開発が行われた新田村落であり、街道沿いに屋敷森に囲まれた農家が並び、その周囲に畑の広がる土地なのでありました。

そんな郷土の風土と文化を遺そうと、
設けられたのが「小平ふるさと村」。
小平ふるさと村では、
赤い円筒形ポストの建つ郵便局舎の奥にある旧き農家屋敷で、
小平糧うどんと称するうどんをいただけた。
それは、武蔵野手打ちうどん保存普及会会長にして、
“うどん博士”として知られた加藤有次さんが監修したうどん。
間違うことなき武蔵野うどんに秘かに感激したのをよく憶えています。

そして、街並みというか旧き良き建物たちを遺そうという、
そんな取り組みをしている施設が小金井公園の中にもあるらしい。
そして、そこにも武蔵野うどんの店があるらしいと知って、
足を運ぶ機会を窺っていました。

春先の或る週末のこと。
武蔵小金井駅から西武バスに乗って小金井公園へ。kura01kura02kura04広々とした公園内を横切っていくと、
木々の向うにSLのフォルムがみえる。
そして、芝生の連なりの先に、
歴史的建造物「旧光華殿」を改修したという建物が見えてきました。

総栂普請という造りの高橋是清邸の二階は、
是清の書斎や寝室として使われていたそう。kura05そこは、昭和11年の2・26事件の現場になった部屋だといいます。

場内には、強く懐かしさを誘う都電も電停にいたりする。kura06どうやら7500形であるらしいけれど、
それが正しいかとか、
このカナリアイエローが正当の塗装色であるかなどは、
グヤ父さんの見解を待ちたいところ(笑)。

その先のエリアに折れ入ると、
緑青に色付いた看板建築の建物の並ぶ街並みになる。kura07kura08正面にみえる大型の唐破風は、
「子宝湯」という千住にあった銭湯だという。

大開口の小寺醤油店の店先を眺めながらその奥へ進むと、
なんとはなしに見憶えのある暖簾が目に留まる。kura09kura10酒「鍵屋」。
あれ?ここに復元した居酒屋の建物があるってことは、
鶯谷の「鍵屋」がもうないってこと?!と急に動揺したりする。
もう10年も前に一度だけお邪魔したことのある、
根岸・下谷の居酒屋「鍵屋」は今もなお営業を続けている筈。
この建物は、1970年(昭和45年)頃の姿に復元したものだそうだけど、
するってぇと、現存する居酒屋「鍵屋」の建物については、
どう捉えておけばよいのでしょうね。

少しばかりモヤっとした気分になりながら、
踵を返して、園内東ゾーンの通りの真ん中辺りまで戻ってきた。
明治初期に創業した文具店「武居三省堂」の、
これまた看板建築の建物の並びに蔵風にくすんだ建物がある。kura11その二階にあるのが、
地粉手打ちうどんの店「たべもの処 蔵」だ。

金額からして量少な目の予感がしたので、
「武蔵野うどん」のチケットに「大盛り券」を添えて、
一番奥のテーブル席でしばしの待機です。

お品書きを改めて眺めると、
“冷たいうどん”の項に「武蔵野つけうどん」を含めて、
3種類のうどんが並ぶ。
“温かいうどん”の項には、
「武蔵野うどんかけ」を筆頭に7種類のうどんが並んでいます。

お姐さんがお待たせしましたと云いながら、
運んできてくれたお膳を眺める。kura12kura13地粉の色合いは余り感じさせない、
やや細身のうどんには、
成る程、手打ちらしい縒れがみられます。

小皿に載せた刻み葱や玉葱は、
すっかり水に晒したような、
辛味の抜けたもの。kura14それがしっかり冷えている。
これが”糧”だということであれば、
ほうれん草などの青みの野菜を少々、
添えて欲しいところ。

つけ汁には、武蔵野うどん定番の豚バラ肉どころか、
一切の具は、なし。

そんなつけ汁を注いだ器を手にした瞬間、
あれ?っと思う。kura15箸に載せたうどんをつけ汁に浸して、ひと啜り。

ああああああああ!
冷たい、冷た過ぎる!

なんもかもがさっきまで冷蔵庫に入っていたかのように、
キンキンに冷えている。
うどんが細めであることも相俟って、
なんだか冷麦を啜っている気分になる。

酷い、これは酷過ぎる。
誰がつけ汁を冷たいまま供することを思いついたのでしょうか。

お姐さんに、
これっていつもこうして冷たいまま?と訊くと、
なにも戸惑う様子もなく、ハイ、そうですけど、
との答えが返ってきた。
うどんは此処で打っている訳ではないですよね?
と続けて訊ねると、
ハイ、近くの方が打ってくれたものを運び込んで、
こちらで提供しています、と云う。
こんな提供の仕方を許している、
そんなうどん店は一体どこのお店なのだろうと、
更に訊ねると、それはお答えできないと云う。

ううむ。kura16「小平ふるさと村」で、
加藤有次さんが監修したうどんに感激した、
その反動も手伝って、
酷い落胆と妙な憤りに包まれてしまった、
たべもの処「蔵」でのひと時でありました。

都立小金井公園の江戸東京たてもの園に、
武蔵野うどんと称する手打ちうどんの「たべもの処 蔵」がある。kura17都内各所から移築し復元した味ある建物が並ぶ、
そんな園内にあって、
この「蔵」の入った建物は文化遺産でもなんでもなくて、
ただの蔵風建屋に過ぎないものらしい。
消防法あたりの法令への対処も必要なのだろうけど、
なんだかそこにも紛い物をみたような気分で、
とぼとぼと広い公園内をバス停へと戻り歩いたのでありました。
やれやれ。

「たべもの処 蔵」
東京都小金井市桜町3-7-1(都立小金井公園/江戸東京たてもの園内)
[Map] 042-387-3141  http://www.udonkura.com/

column/03618