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レストラン「たいめいけん」でコンソメスープハヤシライスボルシチコールスロー

既設の1、2、3に昨年グランドオープンしたテラス、と室町エリアでの拡充が目覚ましい商業施設コレド。
ただ、ご存じの通りコレドCOREDOが初めて日本橋地区に登場したのは、中央通りと永代通りの交叉する日本橋一丁目のビルにおいてでありました。
コレド日本橋のある日本橋一丁目ビルが建つ前に、あの広い区画に何があったのか、今となってはすぐに思い出せない……。
あ、そうですね、元白木屋であるところの、東急百貨店の日本橋店があったのでした。

COREDO日本橋は一丁目ビルの裏側北側の別棟ANNEXには、
スペイン料理のレストラン「サンパウSANT PAU」があったものの、
平河町のホテル内へと既に移転している。
中央通りに面した寝具専門店 日本橋西川も既に、
コレド日本橋の地階に一時移転して営業している。
以前から何度もお世話になった「九州じゃんがら」日本橋店も閉店し、
同じ裏通り沿いにあった京都銀閣寺「ますたにラーメン」日本橋本店も、
移転先を昭和通り沿いに決めて一時閉店している。

一体全体なにが起きているのか!
そうとなれば真っ先に気になるのが、
「ますたに」向かいの「たいめいけん」。9月の或る週末に嫌な噂を携えつつ、
お久し振りにお邪魔しました。

ホールのお姐さんに訊ねれば、
まだ広く公表はしていないけれど、
10月の中旬以降に閉店することになっているという。
中央通りから昭和通りまで、
そして野村證券の旧館・新館を含む日本橋川までと、
現状の区画を大きく跨いだ大規模な再開発が実行に移されるらしい。

そんな風にバッサリと旧来の町並みをぶっ壊す、
阿漕な発想を最初に抱いたのは、一体どこのどいつだ?
そう憤慨しつつ、こちらでどうかしらと案内された席に着く。椅子の背に刻んだ「たいめいけん」マークや、
天井近くに設えた棚の道具たち。
カトラリーで時刻を飾った時計や配膳台を囲んだサブウェイタイル等々。
遠からずなくなってしまうと思うと勝手なもので、
今までなんとなく眺めていた店内のあれこれが新鮮に目に映ります。

「たいめいけん」と云えばやっぱり、
ご存じ「タンポポオムライス(伊丹十三風)」。
ハムライスの上にこんもりと載せられたオムレツの背に、
一直線にナイフの先を引き入れる儀式がひとつの見せ場。
ただそれは、薄い膜で包まれた玉子のトロトロとハムライスとを
バランスよく混然と美味しく味わうための手法でもある。ただ、もうひとつのタンポポオムライス「ビーフ」は、
同じ所作でオムレツを割き開いてもあんまり美しくはありません(笑)。

「たいめいけん」での飲み物は、瓶や生の麦酒やギネスもあれば、
レモンやライムの「チューハイ」という選択肢もある。
グラスに刻まれた”三代目”の文字に、
松崎しげるバリのガン黒シェフの尊顔を思い浮かべつつ、
当のグラスを傾けます。レバーのコク味が愉しめる「レバーフライ」には、
グラスの赤ワインや黒ビールを合わせてもよいけれど、
下町チックにチューハイでやるのが好みであります。

小瓶なギネスのお相手に「玉子サラダ」は如何でしょう。ひと心地ついてのメインディッシュは「昭和の紙カツカレー」。
叩いて伸ばしたのであろう薄手のカツにチープさなんて、なし。
サクサクと軽快な歯触りの紙カツ。
コックリとした何気に手の込んだカレー。
いいね、いいね。

「たいめいけん」のザ・名物と云えばそれはご存じ、
お代それぞれ50円の「コールスロー」に「ボルシチ」だ。加減よく乳化して酸味ほど良いマリネのコールスロー。
さらっと優しい味付けで料理をそっと支えるボルシチ。
ふわっと柔らかな「ビーフコロッケ」にも勿論よく似合います。

洋食店の矜持が垣間見れる料理のひとつが「ハヤシライス」。例えば、まったりと濃いぃ印象もあった、
丸善~MARUZEN caféのハヤシライスに比べると、
旨味とコク味と酸味の三位一体なバランスが心地よい。

お邪魔するのはいつも一階フロアばかりで、
敷居の高そうな二階は訪れたことがありませんでした。
一階の定休日にノコノコやってきてしまったと或る月曜日。
これを機会と二階への階段を昇りました。お値段も違うお二階は、やっぱり、シックな装い(笑)。
真っ白なクロスが各テーブルを覆っています。

「たいめいけん」が用意するウイスキーが何かと問えば、
その答えは、サントリーオールド。
長くそうしてきたからこその、シブさであります。割り材が、ポッカサッポロの業務用リターナブル瓶、
「Ribbon タンサン」であるところもまた、シブい(笑)。
一階では見掛けることのなかったコースターには、
カラフルなデザインがなされている。
「コールスロー」も二階用にと特製されたものだ。

「ハヤシライス」以上に洋食店の矜持が窺えると思うのが、
本格なる「コンソメスープ」1,500円也だ。浮かべてもらったポーチドエッグの白にコンソメの褐色が映える。
あくまでも穏やかな、それでいて複雑な滋味をゆっくりと味わいます。

お二階の「スパゲッティナポリ風(海老)」もまた、
一階のそれとは格式が異なってくる。残念ながら、ノーモアアルデンテの精神からは外れる、
シャツに飛ぶかも系ではありますが、
個別に用意された粉チーズをふんだんに振り掛けて、
美味しくいただきます。

数ある「たいめいけん」の名物のひとつが、これまたご存じ、
「たいめいけん 特製ラーメン」であります。縁をピンクに染めたチャーシューも、
ピンクがかった煮玉子も特製の証。
コンソメスープとは勿論異なるものの、
大きな寸胴から汲み上げられたであろうスープには、
洋食店の手法と感性が生み出す魅力がやっぱり宿っている。
麺の形状は変わったような気がするなぁと、
ラーメンコーナーで立ち喰いしたあの頃を思い浮かべます。

10月になったならばコレも食べておかねばなりますまい(笑)。猛暑による海水温の高さの影響か、
今年は真牡蠣の身入りがまだ良くない模様。
ともあれ、駆け込みで食べられたことを倖せに思いましょう。

老舗洋食店「たいめいけん」ここにあり。「たいめいけん」の創業は、1931年(昭和6年)、新川でのことという。
「たいめいけん」のルーツは、京橋にあった西支御料理処「泰明軒」。
1948年(昭和23年)に日本橋に移転した際に、
「たいめいけん」とその名を改めたらしい。
つまりは、70年以上もここ日本橋一丁目にあることになる。
そんな「たいめいけん」が、
この地区の大規模な再開発により一時休業する事態となった。
再開発ということは、単なる休業では勿論、ない。
嗚呼、また、老舗の一軒が取り壊されようとしています。

「たいめいけん」
中央区日本橋1-12-10[Map]03-3271-2465
https://www.taimeiken.co.jp/

column/03824

定食「美松」で菜種油の牡蠣フライ鰆の味噌焼立田揚げ池袋駅前大通りでこの風情

東京芸術劇場のリニューアルに続いて、そのアプローチともなる公園にも改修の手が入った池袋西口界隈。
愛称とされる「グローバルリンク」はピンと来ないけれど、浮浪者や酔客の姿が目に留まり、切なくも複雑な心境を齎す光景もみられたエリアの様子も変わってきているように映ります。
舞台棟では演奏音を50%だけ反射する反射板などを用いて、屋外では難しいとされるクラシックの生コンサートを可能にした、というのは本当にそう機能するのでしょうか。

そんな西口公園から西口五差路を渡って、
立教通りとの二又を過ぎた辺り。
植栽の陰で何気なく「ごはん」と示す木札のサインが見付かります。池袋駅前と云ってしまってもいいような大通り沿いの舗道にあって、
水盤にも似た睡蓮鉢が涼しさを誘う。
木札の裏側には、「ふくはうち」とあるのが微笑ましい。

ちょうど満席ゆえ、入口の暖簾の裏でしばし待つ。ふと右手の棚を眺めれば、雑誌・書籍が並んでいる。
熊谷守「虫時雨」、水上勉「精進百撰」「折々の散歩道」、
NHK「江戸の食・現代の食」などのタイトルに、
「山手線ひとり夜ごはん」「dancyu」といった文字も並ぶ。

カウンターの頭上を見上げれば、下がり壁に沿って張り出す小屋根。
竹天井には千社札が処狭しと貼られている。これまたふと奥の壁に目を遣れば、器の図画とともに、
「Teishoku MIMATSU」と標す銘板が何気なく、ある。

開け放った扉の暖簾の向こうは池袋の大通り。
焙じたお茶の湯呑みにも何気ない味がある。

カウンターから正面に見据える竹編みの壁に、
その日の品書きを白墨で整然と書き留めた黒板が掛かる。
晩秋に訪れれば、品書きの筆頭はカキフライ。
既に横線一閃で消されてしまっている行もあって、
急に気が急いてくる(笑)。使用している菜種油が国産100%であること。
使っている卵が、白州の平飼いのものであること。
そのことが味のある文字で木札に示されている。
そして、茶碗に盛り込むごはんは、
雑穀米、玄米、白米から選べる。

品書き黒板の縦長な二枚目には、
単品のお惣菜メニューが並んでいる。何気なく「やっこ」を註文すれば、この風情。
右手の先あたりにお猪口がないのが不思議でなりません(笑)。

やっぱり註文んでた「カキフライ」は、
大き過ぎないサイズがジャストフィット。
カラッとした軽やかな揚げ口の衣の中から、
牡蠣の滋味が素直に零れてくる。「美松」の牡蠣フライの特徴は、その揚げ口に留まらず。
ホロホロしっとりと甘いカボチャのフライなんぞを、
合いの手を入れるように用意してくれるのが粋じゃぁありませんか。

別のおひる時には「サワラのみそ焼き」の定食をいただく。西京チックに味噌に包まれて味の沁みた鰆が美味しい。

雑穀米に潜む甘さを探す感じがなんだか妙に嬉しい。味噌汁はと云えば、「カキのみそ汁」への変更が出来たりするのです。

おひるのザ定食的「鶏の立田揚げ」なんて選択もいい。ピュアな菜種油の恩恵をたっぷりと受けているような端正さがある。
菠薐草の小鉢を添えたりするのも秘かな贅沢でありますね。

池袋西口の大通りに面して、粋な定食屋「美松」はある。いや、あった、というべきか。
今度こそは、空席を待つ人にたとえ白い目でみられようとも、
此処のカウンターでひるから呑んでやるんだ!と、
そう思っていたのに、この春、店を閉めてしまった。
今は、3年程前から「美松はなれ」として営業していた、
裏通りの店へと移って、
コロナ禍の最中ながらも盛業中です。

「美松」
豊島区池袋2-18-1 タムラ第一ビル1F(移転前)
https://teishokumimatsu.wixsite.com/teishokumimatsu

column/03816

人形町「かつ好」でロースにヒレ牡蠣にしゃぶ巻き武骨系カウンターでゆったりと

いつの間に名代「富士そば」が四叉路の代表的アイコンとなってしまっている人形町交叉点。
ひる時の行列がひと際目を惹く鳥料理「おが和」の様子を今日もまた覗いてみようかなぁと思って足を向けかけてふと、逆の方向へ行ってみようと踵を返します。
鰻蒲焼の「人形町 梅田」があるのはどの筋だったかなとか、油そばの人形町組は健在だななどと思いつつ、目的地のある路地へと潜入します。

路地の目印は、居酒屋「ポンちゃん」の突出看板。「ポンちゃん」の店前を通り過ぎ、下町ックな路地を往くと、
風景に馴染みつつも凛とした気配も漂わせる建物に辿り着きます。

なかなかな料理屋の風格に一瞬躊躇した後、店内のひととなる。店内の造作の基調は、古民家から排出されたであろう武骨系の古材。
油殿の頭上に置いた排気フードも赤銅色の個性を魅せています。

厨房に正対する1階のカウンターは、6名様限定。
肉厚でガッシリとした天板が迎えてくれる。厨房をちらと覗けば、
恐らく温度の違うであろうふたつの油殿が待機しています。
例えば、豚肉と牡蠣や海老などと、
食材によって鍋を替えているのかもしれません。

まずは、メニューの中心にあるであろう、
「ロースかつ200g」をお食事セットでいただきます。丸く編んだステンンレスのとんかつ網に鎮座したかつは、
肉厚にして端正な佇まいであります。

火を入れ過ぎない、絶妙な揚げ具合であることが断面から判る。まずは塩でいただけば、うん、
期待通りの歯触りと旨味、脂の甘さが口腔に溢れる。
醤油差しをいただいて、山葵醤油でいただくのも好みであります。

一階のカウンターが満席につき、二階へと案内されることもある。二階の造作もまた古材による武骨系を漂わせています。

ひるの限定を謳うメニューに「キャベツメンチ&カレーライス」がある。
二階のテーブル席に陣取って膳を受け取ります。「キャベツメンチ」の”キャベツ” って、
盛り合わせてくれた千切りキャベツのことではないよなぁと、
断面をじっとみる(笑)。
成る程、例えば玉葱の微塵切りとかではなく、
キャベツのシャキシャキっとした歯触りを活かした、
そんなメンチなのであります。

ヒレかつ150gはおのずと四角いフォルムになる。やっぱりカツはロースだよなと、
ちょっと若ぶって自分に言い聞かせるのが常なのだけれど、
段々と大き過ぎない、かつ、ヒレがいい、
というのがしっくりくるようになって参りました(笑)。

「かつ好」のおひるのメニューには「正味一貫」と題した行がある。
車海老に並んで、神帰月~花見月の時季と注釈のあるのが「牡蠣」。とんかつ網の上に末広がりに配された大振りの牡蠣フライ3つ。
やや厚めの衣でしっかりと包み込んで、
牡蠣エキスを閉じ込めた端正な逸品。
火傷しないようにそっと嚙り付けば忽ち三陸の牡蠣が、
正に牡蠣が溢れ出すのもお約束(笑)。
ちなみに神帰月というのは、神無月の翌月、陰暦11月の異称で、
花見月は陰暦3月の異称であります。

「かつ好」には、ロース、ヒレ以外にも創作的お品書きがある。
それは例えば「しゃぶ巻きかつ」。ご想像通り、薄めにスライスした豚肉をそれ相応のサイズに巻いて、
ミルフィーユ状のとんかつに仕立てたヤツ。
いつものロースやヒレとも違う柔らかな食感と溢るる脂がいい。

武骨なるカウンターのセンターやや右寄りに陣取れば、
大将がカツをカツに仕立てる一連の所作が眼前にて眺められる。大事そうに乾かぬように布巾で包んだ肉塊から、
必要な量に相当する厚さに豚肉を切り出し、
竹串の先で引っかけるように保持した肉を玉子液にさっと浸し、
パン粉のベッドへとその身を投げ出す。
決して強からず必要最小限の圧力で全身をパン粉で包み込む。
透かさず油殿へとそっと滑り込ませる。
単純なようでいて、幾つもの手練を含んでいそうだ。

揚げ上がったのは「かろみかつ」。幅のやや控えめなカツにおろし山葵やおろし大根を載せていただく。
こうして軽やかにいただくカツが似合うお年頃に、
いよいよなって参りました(笑)。
そうそう、搾る檸檬は不織布で包んでくれている。
種が落ちなくて、嬉しいひと手間だ。

ちょっと驕って「すっぽんカレールー」を導入するという手もある。そうとなれば、器のご飯にカツを載せて、
カツカレーにしてしまうことをどうかお赦しください(笑)。

人形町の路地裏に凛とした気配のとんかつ屋「かつ好」がある。例えば何れかの「檍」の行列に並ぶのではなく、
ゆっくりとゆったりと旨いトンカツの膳をいただきたい。
「かつ好」はそんな気分によく似合います。

「かつ好」
中央区日本橋人形町3-4-11 [Map] 03-6231-0641
http://katuyoshi.com/

column/03810

かつれつの老舗「勝烈庵」馬車道総本店で弾ける旨味牡蠣フライ勝烈定食棟方志功

関内駅の北側、吉田橋からJRのガードを潜って進み、尾上町通りを渡り横切れば、そこが馬車道。
通りの名前”馬車道”の由来は、幕末に横浜港が開港し、外国人居留地が関内に置かれたことに遡る。
その関内地域と横浜港とを結ぶ道路として開通したこの道を外国人は、馬車で往来していたという。
当時の人々にとってその姿は非常に珍しくて、「異人馬車」等と呼んでおり、いつしかこの道を「馬車道」と呼ぶようになったらしい。

そんな馬車道から一本東側の筋と常盤町通りの角に立つ。石標には「六道の辻通り」と刻まれている。
「関内新聞」の考察によると、仏教用語でいうところの”六道”とは、
迷いのあるものが輪廻転生する世界、
「天上道、人間道、修羅道、畜生道、餓鬼道、地獄道」の六つを云うが、
開港以来このあたりに寺院が建っていた記録もなく、
六地蔵など仏教とは無関係であり、
明治から大正にかけて、実際に六差路が近隣に存在し、
“六道の辻=六叉路”から名付けられたものであるという。
六叉路は、1923年の関東大震災後の区画整理により廃止されたが、
その六叉路があったのは、この石標が立つ交叉点ではなく、
今の博物館通りと入船通りの交差するところにあったのではないか、
とある。

へーそうなんだ(笑)と思いつつ、
その石標の交叉点角地に佇む建物を見遣る。厚みのある梁を意匠に取り込んで、
目地を通した白い外装に木のルーバーを配したモダンな造り。
そこへ大きな提灯を吊り下げているのが、
かつれつの老舗、浜の味の「勝烈庵」だ。

冬場に此方にお邪魔したならばやっぱり、
牡蠣フライと註文の声を挙げない訳には参りません。牡蠣のエキスをひと雫も逃すまいと包み込んだ衣は深い狐色。

火傷に気をつけつつそっと齧れば、
待ち構えていたように弾ける牡蠣の旨味、風味。なははは、堪りません(笑)。
刻んだ青菜(?)を混ぜる、自家製タルタルマヨネーズも面白い。

さてさて「勝烈庵」通年の定番といえば例えば、
「勝烈庵定食 ヒレカツ」120g。
誘惑に抗えずに単品の牡蠣フライを添えてしまいます(笑)。油鍋に向き合う白木のカウンターでは、
串を刺して揚げている様子が見られるヒレカツ。
ハムカツのような四角いフォルムが面白い。
ヒレらしく、さらっとした軽い食べ口で口福を満たしてくれます。

二階席への階段の踊り場の壁には、
棟方志功と勝烈庵と題する一文が額装されている。Webサイトによると、勝烈庵の先々代当主が棟方画伯と交流があり、
その縁で暖簾にある店名書体を揮毫したのが画伯であり、
度々カツレツを召し上がりに勝烈庵にいらっしゃった棟方画伯は、
横浜にちなんだ作品もたくさん残しているという。
棟方志功の揮毫は、箸袋にも力強くかつ軽快に店名を躍らせています。

「ロースかつ定食」「上ロースかつ定食」や「一口かつ定食」、
「海老フライ定食」「盛り合わせ定食」といった定番定食以外に、
“こだわりのロースメニュー”と冠した一群がメニューにある。「山形の銘柄豚 金華豚」のお皿は、実に率直なひと皿。
成る程、脂身の甘さが嫌味なく解けて旨い。

方や「やまゆりポーク」は地元神奈川県の銘柄豚であるという。横浜市内や藤沢、平塚辺りに生産者がある模様。
蒲田の「丸一」や「檍」のように大胆に厚切りにすることもないので、
目を瞠るようなものではないけれど、じわじわ旨いとんかつだ。
卓上の「勝烈庵ポン酢」が案外よく似合います。

馬車道近く六道の辻の石標の交叉点に、
浜の味にしてかつれつの老舗「勝烈庵」馬車道総本店ある。1927年(昭和2年)創業の「勝烈庵」の発祥もやはり、
横浜が開港し関内に外国人居留地が置かれたことが源泉であるらしい。
Webサイトには、外国人コックが居留地関内にもたらしたカツレツを、
初代庵主の工夫で独特の和風カツレツとして完成させました、とある。
カツレツに勝烈の文字を充てた庵主のセンスを微笑ましく思います(笑)。

「勝烈庵」馬車道総本店
横浜市中区常盤町5-58-2 [Map] 045-681-4411
http://www.katsuretsuan.co.jp

column/03808

厚岸「藪蕎麦」で厚岸湖の牡蠣と厚岸の琥珀な蒸溜酒牡蠣丼次回は牡蠣蕎麦を

いつぞやの釧路の夜。
繁華街は例によって、JR釧路駅周辺ではなく、釧路川も程近い末広町・栄町界隈。
炉ばた発祥の店と謳う、その名もずばり「炉ばた」の古色然とした佇まいを路上からしばし見遣る。
炉端を囲むカウンターの一席にて、ゆるゆるっと地のもの地の酒を堪能いたした。

そんな暖簾を払い出て、辺りをふらふらっと徘徊した足取りはほんの少し千鳥足でありました(笑)。

上機嫌なままゆっくり歩くその視界に、
“BAR”と小さく示すスタンドサインが目に留まる。 勢いで飛び込んだのは、BAR「ST.ANDREWS」のカウンター。
そこで女性オーナーバーテンダー氏から耳寄りな情報を聞くことになる。
隣町とも云える厚岸にはなんと、
2016年から蒸溜を開始したばかりの蒸溜所があるという。
そして更に直近の2018年2月には、
厚岸蒸溜所の初商品となるボトルをリリースしたというではないですか。

そんなこんなでその翌日、快速ノサップ号に乗り一路厚岸へ。
小さな駅を背にしてまずは海岸線へと足を向ける。まだ浅い春にして、陽射しが穏やかな空気を孕んでくる。
北海道の牡蠣の産地として真っ先に思い浮かべる厚岸だもの、
牡蠣筏が眼前に広がる様子を想像してのだけれど、
極々普通の湾がそこにあるのでした。
厚岸大橋を潜った奥の厚岸湖が漁場なのかしれません。

銀座は並木通り沿いの雑居ビルで一念発起、
「牡蠣BAR」を営んでいる祥子女史に訊いていた通り、
駅の反対側にある、道の駅にして厚岸グルメパークの「コンキリエ」へ。「コンキリエ」2Fにあるオイスターバール、
「Pitreskピトレスク」の窓際に陣取ります。

早速お願いしたのは、
厚岸のブランド牡蠣「弁天かき」「カキえもん」「マルえもん」と、
注目のウイスキー「厚岸 NEW BORN FOUNDATIONS 1」との、
マリアージュが愉しめるプレート。決して大き過ぎないサイズ感が望ましい牡蠣たちに、
生まれたばかりであろう厚岸の琥珀を数滴垂らす。
するっといただくその牡蠣の濁りなき旨味たるや。
嗚呼、なんて贅沢なひと時でしょう。

そもそもの生産量が充分な訳もなく、
残念ながらその時には既に売り切れているとのことで、
新しい厚岸のウイスキーのボトルを手に入れるは叶わなかったけれど、
いつの日か手にしたいと思いつつ「コンキリエ」を後にする。

厚岸蒸溜所からはその後、
「2」「3」「4」とブレンドやバッティングしたウイスキーが商品化
未だ手に入れられていないのは、その稀少性からか、
なかなかのお値段だからという点も一因であります(笑)。

暖かな陽射しとまだまだ冷たい風の中、
ふたたび駅前通りを海岸方向へと歩く。厚岸停車場選とのT字路角で風に揺れる暖簾。
厚岸まで来て「藪蕎麦」の名に出会うとは、
いやー、思ってもいませんでした。

突然の僥倖に微妙にたじろぎつつ、
当の暖簾を払い入ると暖房の熱気と湿気で眼鏡が曇る。
半分曇った眼鏡のまま眺めるお品書き。
牡蠣天麩羅の笊蕎麦かなんかがいいなぁと思うも、
そんな行は見当たらず、
何故か思わず註文したが「かき丼」でありました。
「藪蕎麦」なのに(笑)!

しかも軽く甘辛っぽく煮付けた牡蠣たちを勝手に想像していたら、
それは、カキフライが外連味なくゴロゴロっと載った玉子とじ。でもでも、フライにしてなお、すっと濁りなき旨味の牡蠣がいい。
広島あたりの人口的に富栄養の海による牡蠣は旨味が強い一方で、
旺盛に海水を取り込む牡蠣は余計なものも漉し採っている。
対して厚岸の牡蠣は、澄んだ河などによる栄養のためか、
濁りなき美味しさなのですね。

牡蠣ラバーの誰もが知ってる厚岸になんと「藪蕎麦」があった。Web上には、浅草「並木藪」で永く修行されたご主人が、
故郷の厚岸に開業し、創業来30年以上、との情報が散見される。
これからも引き続き、末長く盛業されますように。
今度また厚岸に伺って「かきそば」をいただく時までは(笑)。

「藪蕎麦」
北海道厚岸郡厚岸町宮園町1-6 [Map] 0153-52-7755

column/03806