「我らが居酒屋大衆食堂」カテゴリーアーカイブ

親子丼鳥めし「鳥藤 場内店」で迫る築地閉場しゃも親子丼鳥めしチキンキーマ親子カレー

いよいよ閉場・移転の期日の迫ってきた築地市場。
つきじろう師匠のように早朝より訪れることはなかなか出来なかったけれど、おひる時には時折足を運んで、今日はどこへ顔を出そうかと思案を巡らす。
思えばそんなことをずっと繰り返していました。

築地最大の組合と云われる東京魚市場協同組合、
東卸会館の壁の文字。なくなってしまうとなると、
こんな積年を思わせる風景もひとつの情景になる。

魚河岸横丁8号館と9号館の間の横丁。改めて眺めると雨避けのテント地はすっかりなくなっていて、
その上からポリカの波板を載せている。
老朽に対処しつつ、
食堂機能を維持し続けてくれていたことが偲ばれる。
その一角、元「たけだ」の場所にあるのが、
親子丼に鳥めし、
また場外の分店でもお馴染みの「鳥藤 場内店」だ。

2016年当時の壁のお品書き。「水炊き定食」を筆頭に11時までの「朝定食」、
追加の品々が並んでた。

そんなある日のおひるには「しゃも親子丼 もつ入り」。軍鶏肉の弾力と滋味。
半熟具合も絶妙な旨味の濃い玉子との掛け合わせに、
モツ独特の風味が輪を掛ける。

これぞ「鳥藤」の本懐だ!と叫びつつ(笑)、
「水炊き定食」をいただいた後暫くして、
やっとこ11時前に訪れてびっくり。「朝定食」2品の上に白い貼紙がされてしまっている。
そして、店頭にはイーゼルに載せた写真つきメニューが、
掲示されるようになる。
休止メニューがある一方で新たなメニューが加わったのは、
場外に開設された「築地魚河岸」の店舗との兼ね合いが、
あれこれあったのだろうと想像しています。

「鳥藤」のアジアめしシリーズのひとつ「チキンキーマカレー」には、
澄んだ旨味の蒸し鶏の身がたっぷり。「とり竜田揚げ定食」の竜田揚げは、
揚げたてのところを齧りつく醍醐味が存分に愉しめる。
例によって火傷に気をつけながらね(笑)。

皮目も旨い漬け焼きの鶏の身に、
そぼろにぼんじりなぞの身との贅沢な三色丼が、
「鳥藤」の推す「鳥めし」。温玉の黄身のコクとともにぼんじりを堪能したい時には、
「ぼんじり温玉丼」なんて手もある。

2017年のいつ頃からか、
店内には額装新たな品書きが掲げられた。此処での「朝定食」の復活は、
最早ないのだとそう宣言しているようにも映ります。

半熟の親子丼をシャバシャバのカレーに浮かべるなんて、
これまたそりゃズルい「親子カレー」。カレーソースにしっかりと鶏スープの出汁が湛えられているのは、
云うまでもありません。

そんな自信漲るスープを用いた新機軸が「鳥藤」の麺類。
その名も「水炊きそば」のデフォルトは当然、塩仕立て。
美しくも滋味たっぷりの一杯だ。肉増し可能な「水炊き担々麺」や「水炊きカレーそば」、
「親子そば」なんてのもラインナップしております。

創業明治四十年、鶏肉鴨肉を扱う卸専門店 鳥藤が営む、
親子丼鳥めしの店「鳥藤 場内店」が間もなく暖簾を下ろす。「こころのこりの親子丼」が心残り。
でも、場外には「分店」もあれば「魚河岸食堂店」もある。
豊洲新市場の水産仲卸売場棟3階の飲食店舗フロアにも、
出店が予定されているようです。

「鳥藤 場内店」
中央区築地5-2-1 魚河岸横丁8号館 [Map] 03-3542-7016
http://www.toritoh.com/

column/03755

酒肴炭焼「ととや」で弘道館の梅と梅水晶金目鯛しゃぶしゃぶ納豆きつね焼地酒一品

まだまだ風の肌寒い2月中旬のこと。
大船から東海道線で品川に上り、品川駅で乗り換えたのは、特急ひたち号。
上野からというイメージだったひたち号が、上野東京ラインの開業によっていつの間にか品川駅発着が主体となっています。
西に位置する大船からそのままずずっと東の水戸まで、その距離およそ170km。
なかなか乗り出がありました(笑)。

2年前に訪れたのは、
かの「偕楽園」の梅も盛りをすっかり過ぎた頃でした。
今度は中咲きの梅の開花を告げる頃。水戸城址近くにある「弘道館」では、
ちらほらと花咲かせた梅ノ木が愛でられました。

弘道館中千樹梅
清香馥郁十分開
好文豈謂無威武
雪裡占春天下魁
敷地内の木札には、徳川景山(けいざん)の銘がある。「弘道館」は徳川景山つまりは斉昭が、
旧水戸藩の藩政改革の重要施策のひとつして開設した藩校。
梅が春の魁として清らかな花を咲かせ、
実は梅干にして非常食となる。
実用を重んじた斉昭は梅を愛して、
領内に広く植樹することを奨めたという。
「弘道館」の梅の樹は、約60品種800本に及ぶそうです。

日が落ちてきたところで向かったのは、
駅の南側、桜川を渡った城南地区。これまた二年振りにお邪魔したのが、
酒肴炭焼きの「ととや」であります。

同ビルお二階の「田吾作」なら、
鮟鱇鍋なんぞもある模様ながら、
此処では「あん肝の味噌漬け」辺りにまず手を伸ばす。味噌の風味とともにあん肝の旨味が凝集して、
それを大根のスライスがいい塩梅にしてくれる。
こいつぁいけねぇやと思わず早速(笑)、
水戸の地酒「一品」の純米吟醸を所望します。

その晩のおすすめ品書きを見返したら、
「金目鯛のしゃぶしゃぶ」を見落としていた。ふつふつと沸いた出汁にさっと潜らせて、
霜降り状態にした金目を口に含む。
すすーっと甘さがやってきてそっと目を閉じる(笑)。

やっぱり水戸だものねと呟きつつ、
6つ並んだ納豆料理から「納豆きつね焼」。炙って芳ばしい油揚げの中から、
混ぜに混ぜた様子の納豆が食み出してくる。
豆腐と大豆の共同作業にほくそ笑むこと必至です(笑)。

次には大洗の純米「月の井」をいただいて、
鹿島産「はまぐりの酒蒸し」。澄んだ磯の香りと蛤の滋味。
汁がそのままいい酒肴となります。

梅繋がり連想から選んでみたのが「梅水晶」。千切りにした鮫の軟骨を水晶に見立てて、
鮫の軟骨の梅肉和えをそう呼ぶもの。
千切り胡瓜もいい働きをしていくれています。

しゃぶしゃぶした後の出汁が勿体なくて、
訊ねてみれば雑炊にしてくれた。ゆるっとしてお腹すっかり温まり。
いい〆となりました。

艶の深い小豆色の天井は煤竹でしょうか。見上げて気がつく粋な意匠でありますね。

桜川を超えた水戸城南地区に酒肴炭焼き「ととや」がある。階上の「田吾作」が気になりつつも、
いつもこちらの提灯に引き寄せられるのは何故でしょう(笑)。
今度お邪魔した時こそは、
店名「ととや」の由来を訊ねたいと思います。

「ととや」
水戸市城南2-7-1 常磐第2ビル1F [Map] 029-227-8323

column/03744

食堂「まこと」で旧き港町宿毛の風情と中華そば焼めしに和む

とてもお久し振りの高知空港に降り立って早速、空港近くのレンタカー店にてクルマを借りる。
嗚呼、初めて高知を訪れて、はりまや橋の事実に衝撃を受けたのは果たして、いつのことだったのだろうか。
そんなこともふと思いながら、愚図ついた空の下、高知自動車道を西へ西へと走らせました。

土佐、須崎、四万十町、黒崎、
そして四万十を経て、一路やって来たのは、
高知南西端の町のひとつ、宿毛(すくも)です。

静かな港の防波堤の脇にクルマを停め、
港に面した、民泊でお世話になる部屋に荷物を降ろして、
遅いぃおひるへと近くを散策します。ひと気のない海辺の路上の空気に、
営っているお店なんてありそうもないなぁと半ば諦めつつ、
すぐご近所の様子から探りを入れる。
硝子越しに覗き込んで、ひとの姿がないのを確かめて、
その先へと歩き始めたその時、
当の食堂へと入っていくひとのあるのを目に留めました。

営ってるのですよね?とおずおずと入り込み、
真ん中のテーブルに席を得る。
「乾いた喉に染みわたる」。
目の前の柱に貼られていた貼紙がなかなかいい。店内を見渡しながら、
そうだそうそう、早速ビールをいただかなければと、
急に急いた気持ちになります(笑)。

店奥に置かれた木臼のようなフォルムのコンロに載せられた、
如何にも使い込まれた風情の鍋が目に留まる。鍋の中にはセルフサービスのおでんがお待ち兼ね。
此処でおでんお供に麦酒が呑めるとは、
なんと幸せなことでしょう(笑)。

麦酒のグラスを傾けながら壁の品札を改めて眺める。丸っこい文字がなんだかよい。
「中華そば」に「焼めし」をお願いしましょう。

届いたどんぶりは期待に違わぬ素朴な佇まい。ふわんと甘いスープに柔茹での細麺が揺蕩う。
トッピングは、ピンクに縁取った蒲鉾にモヤシ、木耳。
チャーシューというよりは、
炙った豚バラであるというのも特徴でありましょう。
ああ、なんとも和む味わいです。

北京鍋を煽って煽ってしたチャーハンとは、
明らかに路線の違う「焼めし」もいい。中華そばのスープとの相性頗るよろしく、
一心同体となって和ませてくれます。
ご馳走さまでした。

宿毛・片島港に面して佇む食堂「まこと」に情緒あり。映画のロケにそのまま使えそうな、
そんな、旧き港町の風情がいい。
営っててよかった(笑)。

「まこと」
宿毛市片島4-46 [Map] 0880-65-8211

column/03738

食堂&呑み「ボン花火」で厩橋にスカイツリー心地よき隅田川の川床にて

晩夏のある日、銀座での所用を済ませて浅草線に乗る。
向かったのは浅草のひとつ手前の駅、蔵前でありました。
偶に浅草を徘徊することはあっても、蔵前界隈をウロウロする機会はなかなかない。
改札を抜けて地上に上がり、江戸通りを浅草方向へと進むとすぐに春日通りとの交叉点に至ります。

その交叉点に立つ信号機の標識は、厩橋。
視界の抜けている隅田川の方へと、
自然と足が向かいます。ステンドグラスを収めた楕円の柱からそのまま、
優美な曲線を描く鉄橋が今の厩橋だ。
橋の名は、蔵前の米蔵の荷駄馬用の厩であるところの、
「御厩河岸」が西岸にあったことに因んでいるらしい。
ずっと下流を渡る永代橋のアーチのフォルムにも、
間近にしてその量感に目を惹かれたのを思い出します。

そんな厩橋の欄干を横目にするように、
隅田川に沿って伸びる裏通りを往くと、
“かわてらす”とルビをふった「川床」と書いた、
オレンジ色のキューブが目に留まる。店先のオレンジの箱の下には、
花開くように花火を描いた黄色い箱がある。
食堂&呑み「ボン花火」には、川床もあるようです。

促されるまま左手にカウンターの続く店内を抜け、
そのまま戸外へと出る。鋼製の階段下から蒼空を見上げます。

隅田川の岸辺を程良い高みから眺めるテラス。
すーっと風が抜けて気持ちいい。
「川床」と認めた提灯の向こうには、
今しがた眺めた厩橋のアーチの連なりが見渡せます。ぐっとひと息に傾けたビールを手に、
川上方向を見遣ればスカイツリー。
係留している屋形船の向こうを定期運航船が行き交います。

ランチに選んだのは「牛ステーキ定食」。
高菜を載せたやっこといい、
たっぷりのフライドポテトといい、
昼呑みのツマミにしながらの食事に相応しい。
噛み締める度に旨味の伝わるサイコロステーキだ。

夜の帳が降りる頃に訪ねれば、
ライトアップされたスカイツリーもまた、
卓上のキャンドル代わり。この夜のクラフトビールの中から選んだのは、
「GARGERYガージェリー・スタウト」。
スタウトの代表的銘柄ギネスと比べて、
柔らかで軽やかな印象を受けます。

ビールのお代わりを註文して、
定番のつまみの中から幾つかを。ニラのおひたしに若鶏の柚子胡椒焼き。
とん平焼きなんてのもある。
お初天神に至る曾根崎のアーケードをふと、
思い出したりなんかいたします。

テラスを囲む手摺のすぐ下をネオン色に飾った船たちが、
なかなかの頻度で頻繁に滑り往く。ハイボールのグラスの向こうにも、
やっぱり、スカイツリー(笑)。
広く視界の開けたオープンエアで呑るハイボールは、
旨いものですね。

右手に厩橋、左手にスカイツリーを見渡す、
隅田川の岸辺に食堂&呑み「ボン花火」の川床がある。隅田川の花火大会の夜にはきっと、
間近に”ボン”が体感できて、最高の見物場所になるに違ない。
対岸の高速道からも距離があって、案外と静か。
空が広くていつでも川面を眺められる。
この辺りの川沿いの一室で暮らすのもいいと、
忽ちそんな気分にさせてくれます。

「ボン花火」
台東区駒形2-1-7 MKビル1・2F [Map] 050-5590-3224
http://www.bonhanabi.jp/

column/03737

独酌「三四郎」で名物新子焼き牡丹海老〆秋刀魚に生鯨落葉おろしで独酌す

札幌、小樽にニセコのゲレンデ。
五稜郭のタワーに登った記憶があるので函館にも行っている。
道東方面のパックツアーかなにかで女満別空港へ飛んだことは憶えているものの、その後何処へ行ったか憶えていない。
生まれて此の方ウン十年経つものの(笑)、道内で訪れたことのある街は今のところそんなもの。
そんな中、旭川へ初めて訪れる機会がありました。

真新しさと硝子張りの偉容を誇る旭川駅へと、
空港からの連絡バスを降りる。
ホテルに荷を降ろして、昭和通りを渡り向かったのは、
創業来70余年と聞く居酒屋の前であります。梔子色の壁に囲んだ二階建て。
縦格子に飾った窓には葦の外掛け簾。
炉燗酒洞、四季の肴と謳う独酌「三四郎」の戸口に、
白い暖簾が掛っていました。

修繕の手を入れてはいても、
積年の艶を思わす設えのカウンターにも、
同じく炉燗酒洞独酌三四郎と染め抜いた座布団が待つ。どっしりした座卓を配した、
背中越しにある小上がりもいい感じです。

この日のお通しは、女将さんが拵えた酢大豆。四角く切った経木をクリップで留めて、
そこにその日の酒肴が手書きされている。
定番メニューはそれとは別に用意されています。

お造りに天売産「ぼたんえび」と「〆さんま」。期待通り通りの官能的な甘さの牡丹海老。
天売島(てうりとう)というのは、
北海道西岸の羽幌町という港の沖合に浮かぶ島。
今季記録的な不漁と聞く秋刀魚はやはり、
脂のノリに物足りなさを否めないものの、
オツな食べ口に仕上がっています。

「落葉(らくよう)おろし」とは何ですかと女将さんに訊くと、
落葉松(からまつ)の下なぞに生えるキノコ、
落葉きのこのおろし和えとのこと。多少のぬめりとともにいただけば、
癖のないキノコの滋味がそっと伝わります。

カウンターから正面を見据えれば、
木札にお酒の銘柄が数の加減もよく並ぶ。やはりご当地のお酒をいただきたいと、
女将さんのお薦めを所望する。
髙砂酒造の「風のささやき」。
夢民村という農業者集団の産した酒造好適米を用いた純米酒。
淡麗にして旨口という印象がいたします。

大判の絵本のように製本された定番メニューを開くと、
その見開いた右下に「新子やき」。
若鶏の柔らかな肉を創業以来のタレで、とある。
お願いすると早速、
炭火の上の網へと漬け込んだであろう肉塊が載せられました。おひとりさまにはなかなかのボリューム。
たまり醬油を思わせる黒褐色のタレをたっぷり纏っている若鶏。
どれどれと口に含んで吃驚!
想定を大きく上回る身肉の柔らかさ。
決してレアなのではなく、火は程よく通っていて、
甘めのタレに引き出されるように若鶏の旨味が弾け出す。
こりゃ旨い。
成る程、「三四郎」に「新子やき」ありと謳われるはずだ。

〆にと経木メニューで気になっていた「きのこ汁」をいただく。愛別産とあるところの愛別町とは、
旭川の北西に位置し、周囲を山に囲まれ石狩川や愛別川が流れる、
そして、北海道一の「きのこの里」として知られるそう。
まさに滋味深い汁でゆるっと仕舞うのもオツなものです。

裏を返すように同じカウンターを訪ねると、
前日にはなかった「生くじら」がある。新鮮なミンククジラの身に、
おろし生姜をちょんと載せていただけば、
一点の濁りなき香りと旨味のする。

卓上には、女将手作りのお惣菜四品のご案内。そこから「魚貝酢味噌(ぬた)」をいただく。
色々入ってます!というぬたには、
貝のヒモやら海老の端っこやら魚の身の隅やらが、
酢味噌に導かれていい味出している。
調理から出る半端な部分も立派に働いてくれています。

「風のささやき」と同じ、
地元髙砂酒造の「国士無双 烈」をぬる燗にしてもらう。徳利を置いたコースターには独酌「三四郎」の刻みがある。
嗚呼まさに「三四郎」で独酌しております(笑)。

ありそでなさそな「干しさば焼き」は、
刷毛塗りしたであろう醤油タレも芳ばしくて美味。女将さんが漬けた「季節のおつけもの」で、
お猪口の最後をやっつけます。

旭川に老舗居酒屋、独酌「三四郎」あり。その創業は、1946(昭和21)年という「三四郎」の看板には、
“炉燗酒洞”の文字もある。
カウンター越しに眺める燗付け器にも年季を感じるところ。
雪の多いと聞く真冬にもきっと、
いい情緒を醸してくれるに違いありません。

「三四郎」
旭川市2条通5丁目左7号 [Map] 0166-22-6751

column/03734