「中華韓流アジアン系」カテゴリーアーカイブ

もんじゃ焼参鶏湯「あゆむ」で冷麺プルコギ豚チゲ参鶏湯韓国料理のランチタイム

築地駅の4番出口を背にして、聖ルカ通りを行く道程は、歩き馴れた経路のひとつ。
築地川公園を右脇にし乍ら進んで、あかつき公園冒険広場の中を突っ切って「つきじ治作」を見据える裏道へ入る。
そうそれは、左手にある築地「たぬきや」本店へ向かう道。
その道すがらに、その都度横目で眺めていたのが、「あゆむ」の暖簾でありました。

絶賛日照りの盛夏に訪れたなら、
Tシャツ姿も羨ましい男子を含むお三人が店内を物色中。月島から居留地中央通り沿い、
そして現在地へと居場所を変えた「あゆむ」は、
夏でも藍の暖簾であります。

真夏にはやっぱりこれでしょうと、
ランチメニューから「冷麺セット」を選ぶ。みずから炊いたものかそうでないかは不明ながら、
牛骨ベースであろうスープに遜色なく、するする呑める。
つるつるなばかりでない麺には、麺そのものにも旨味が潜む。
すっと汗がひいていくよな夏に渇望の一杯であります。

フレンチもんじゃか参鶏湯の店かと思いきや、
ランチタイムともなれば韓国料理が目白押しの「あゆむ」。
季節を問わない定番のひとつ「プルコギ」も勿論、ある。熱したお皿に盛ってくれるのが「あゆむ」流。
牛肉な炒め気分だったならこれがいい。

豚肉な炒め気分だったなら「豚キムチ野菜炒め」がいい。一日でどのくらいの量の豚ばら肉を使うのかなぁなんて思いつつ、
カウンターの眼前に掛けられた暖簾の下から、
ふたり稼動の厨房の中を観察してしまいます(笑)。

季節が秋ともなればだんだんと石焼鍋が恋しくなってくる。熱々のうちに鍋の底の方からひっくり返すように、
半ば炒めるように混ぜ合わせるひと時がいい。
玉子の黄身もコチュジャンも必要なエレメント。
おこげの芳ばしさもまた然り。

どうしてやっぱり冬場も人気となるようで、
タイミングによっては満員御礼しばしお待ちくださいと、
そうなることが増えているような気がします。それはきっとちょっと辛いめグツグツ系のアイテムが、
そこに控えているからなのかもしれません。

まずはお店の冠メニューのひとつ「参鶏湯」。
一羽まるごとでもいただけますが、
きっとほとんどのひとがハーフを註文するのでしょう。ふーふーふー。
ひるからサムゲタンをいただくことなんて、
割とまぁ珍しいことなんじゃないかと思うところ。
どこまで本格派かの議論はあるやもしれないけれど、
啜るスープに滋味を思えば、
それだけで効験明らかとなるやしれません。

ぐつぐつぐつ。
「豚チゲ」の鍋が煮え滾ったまま、
厨房のコンロの上から目の前に直行してくる。熱々の、辛過ぎず何処かに甘さを含んだスープがいい。
業務用らしきペットボトルから器に注ぎ込むのが見えてしまうけれど、
だからといって咎めるようなものでは勿論ない。
ふーふーふー。
器の底の方に潜むのは、熱にもへたらないうどんだったり、
追加でお願いしたトッポギだったりします。

築地は居留地中央通りから「治作」へ向かう裏通り。
移転したもんじゃ焼&参鶏湯、韓国料理の「あゆむ」が佇む。或る日修学旅行の高校生らしきグループのひとりが、
入口の扉を開けてこう訊いた。
もんじゃ焼き、食べられませんか?
ほぼ満席の状況からか一旦断った店のお姐さん、
折角わざわざ来たのに可哀そうねと改めて招き入れて二階席へ。
ランチタイムにはもんじゃ焼きは食べられないのかと、
勝手にそう思っていたけれど、
場合によってはいただけるのかもしれません。
そう云えば、移転前のお店でのフレンチもんじゃ体験は、
果たしていつのことだったのだろうと、
みずからの記事を振り返ったらなんとそれは、
13年程も前の2006年のことでありました(笑)。

「あゆむ」
中央区築地7-14-3 [Map] 050-5869-9017
http://frenchmonjaayumu.jp/

column/03777

中国料理「紅蘭」で焼売叉焼盛合せに叉焼葱ラーメン野菜炒め築地二丁目の路地で

ずっと秘かに不思議に思っていたことがありました。
それは、割りと至近に思う日比谷線築地駅と有楽町線新富町駅が接続駅となっていないこと。
築地駅の4番出口と新富町駅の4番出口の距離は、およそ100m。
築地駅開業から17年後の1980年(昭和55年)に有楽町線新富町駅が開業した際に、築地駅を乗り換え可能な接続駅として扱っていても可笑しなことではなかったのではなかったか。
それが、どふいふ事情か、新富町駅の開業以来40年近くも接続駅ではなかったのであります。

2018年(平成30年)3月、人形町駅-水天宮駅と同時に、
築地駅-新富町駅が接続駅となったことが、
小さな話題となった築地一丁目・二丁目界隈のこと。

市場通りの築地三丁目信号から、
「魚竹」「一凛」「新三浦」の方向へと足を向け、
海苔弁専門店「刷毛じょうゆ 海苔弁山登り」の角をひょいと折れる。路地らしく道の狭まるところに、
紅地に白抜きの突出看板が目に留まる。
近くを通り掛ればふらっと寄りたくなる、
そんな一軒がそこにあるのです。

此方のランチメニューはずっと前から、
潔くも三種のみのご提供。此方で麦酒をいただいたことは、まだありません(笑)。

三種のうちのひとつが「盛り合わせ定食」。
シューマイみっつに寄り添うチャーシュウとが主題であります。如何にもお手製の肉々しい量感の焼売が、
兎にも角にも妙に嬉しい(笑)。
叉焼と書き記すに相応しく思うチャーシュウは、
一般的なラーメン屋のそれとは違うあのタイプだ。

「紅蘭」のスペシャリテは、
1コからサイドオーダーできるので、
「チャーシュウネギラーメン」をいただく際にも勿論、
追加註文を発動する。ラーメンはと云えば、
如何にも丁寧に煮出した様子の優しいスープ。
タレを控えた、塩らーめんと呼びそうになる仕立てがいい。
水に晒した様子の葱の辛過ぎない香りがいい。
そう、優しい甘さのスープにはこんなストレート麺が似合います。

もうひとつのメニューが「野菜炒め定食」。厨房の隅でオヤジさんが泰然と鍋を振るって纏め上げた野菜炒めは、
野菜炒めのクセしてどこか優しげで端正でやがる。
そこへシュウマイひとつを添えるは、そう、お約束(笑)。

築地二丁目の路地に中国料理「紅蘭」はある。寡黙な風情のオヤジさんと柔和な物腰の女将さん。
そして娘さんと思しき快活なる女性とのコンビネーションや良し。
まだ一度も上がったことのない二階席で、
小さな宴会をお願いするのもきっと良案であるに違いない。

「紅蘭」
中央区築地2丁目8-8 [Map] 03-3546-6007

column/03773

餃子の店「福みつ」で餃子定食中に餃子20個麦酒とともに浜松餃子の人気店のひとつ

浜松が王者として君臨してきた宇都宮を下して年間消費量第1位になったとか。
いやいや、宇都宮が負けじと発奮してふたたびその座を奪還したとか。
そんなことも時に話題となる餃子の街の双璧、宇都宮と浜松。
ただ、統計から算出される消費量は、ふたり世帯以上の家庭内でのもの中心のようで、専門店や中華料理店での消費などはカウントに含まれていないらしい。

どっちも美味しければそれでええやんかーと思いつつ(笑)、
宇都宮の代表店「みんみん本店」でいただいた餃子は、
紛れもなく素直に旨かったことを思い出す。
そのご近所の「正嗣 宮島本店」にもお邪魔せねばと思いつつ、
行列もあってなかなか果たせていないことにも思い至る。

一方、浜松では駅ビル内の「石松」とか、南口の「むつぎく」、
隣駅高松最寄りの「喜慕里」あたりぐらいしか訪ねたことがない。
軽やかな感じが確かに美味しいし、沢山食べられそう。
ただ、それは幾分かの物足りなさと背中合わせであるような、
そんな感慨も含んでいました。

気になる餃子の店がひとつ、
浜松駅からちょっと離れた住宅地にある。
ふたたび浜松にいたおひる時をよい機会と遠鉄バスに乗る。
辿り着いたのは、煉瓦色の総タイル張り三階建ての建物。今時珍しくも、袖看板にネオン管を使っている。
宵闇の様子も眺めてみたいような気分が一瞬過ぎります。

人気店ゆえ、空席を暫し待つ。外壁と同じタイル張りの壁に留められたお品書きには、
餃子10個から5個刻みに50個まで。
餃子専門店としての矜持を垣間見るような気がします。

ご案内いただいたテーブルの上には、ラー油の容器も勿論ある。その周辺 がどうにもベタつくのが常だけれど、
入れ子にすることでそれを避けていて、いい。
単純なことだけど、案外この配慮を他で見ないもンね。

餃子15個の「定食(中)」の膳がやってきた。雲形と呼べばいいのか、
特異なフォルムのお皿は使い込まれて、
店名が少し擦れてきています。

浜松餃子の特色として挙げられるモヤシの姿はない。
そして、半ば揚げたかのような焼き目の表情にふと、
沼津餃子「中央亭」を思い出す。「中央亭」の餃子は、そこから湯を注いで茹でることで、
独特の食べ口を実現しているけれど、
此処ではそのまま、
揚げ焼きの芳ばしき皮の歯触りが魅力のひとつとなっています。

そんな皮に包まれたあんは、刻みキャベツが主体のようで、
肉々しく肉汁溢れる、というノリとはやはり逆方向の、
野菜の甘さを軽やかに呈してくれる餃子だ。

季節が移ろう中で、
餃子はやっぱり麦酒と一緒にいただきたいよね、
との願いが叶う日がやってきた。餃子20個に瓶麦酒。
ご飯も味噌汁もいらない。
ただただ、餃子、麦酒、餃子、麦酒を繰り返す正午前(笑)。
待っているひと達には申し訳ないけれど、
餃子が冷めないうちに、でもゆったりと。
なかなか悪くないひと時でありました。

浜松の人気餃子専門店「福みつ」は、
駅からやや離れた住宅地にある。満腹のお腹を擦りながらしばし眺めていると、
店の向かいに用意された駐車場にどんどん車がやって来る。
地元民にしっかり支持されているのだろうと思われて、
好感度がより増してくる。
なのに、宇都宮餃子ももっと知らなければと思ったりもするのは、
天邪鬼な所為に他なりません(笑)。

「福みつ」
浜松市中区佐藤1-25-8 [Map] 053-461-6501

column/03759

純北京料理「東華菜館」本店で川床の麦酒と炸春捲五色炒飯独特な異国情緒と存在感は

八坂神社を背にして四条通りを歩き、先斗町や河原町へと鴨川を渡る。
橋の左手の欄干に沿って往き、視線をその先に送れば自ずと目に留まるその威容。
京都のど真ん中にあって、この異国情緒とは何ぞや。
四条大橋を渡る度に、その建物を含めた存在がずっと気に掛かっていました。

団栗橋との交叉点前にある、
おでん「蛸長」の佇まいをお久し振りに眺めてから、
川端通りの舗道に沿って遡上する。焼肉「天壇」祇園本店の向かいを過ぎ、
南座を背にする位置に立ち止まり、改めてその姿を眺める。
鴨川沿いに建ち、そのファサードをすっかり晒していることが、
建物の魅力の直截な発露にひと役買っているのだなぁと思わせます。

そんな「東華菜館」のエントランスは、四条通り沿いにある。
設計者は、米国生まれの建築家にして、
メンソレータムで知られる近江兄弟社の創業者のひとりでもある、
ウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏であるという。

Webサイトでは、ヴォーリズの設計や造形について、
玄関ファサードで印象的な海の幸・山の幸等食材のモチーフは、
館内にちりばめられており、目を楽しませてくれます。と、
解説しています。緑青色の銘板の脇からも鴨川納涼床の舞台が見下ろせる。
約120席の納涼床は例年、
5月の始めから9月末日まで催されているようです。

心配していた天気も愚図つくこともなく、
心配していた強い陽射しも、
川の西側に建物が建つという立地に助けられ、
川面を渡るそよ風の中でいただく口開きのプレモルが、
これまた美味しい(笑)。前菜の盛り合わせ「冷葷」のお皿には、
若鶏の蒸し物、焼き豚、湯葉に海月の酢の物等が載る。

そしてとっても気になっていたのが、
「炸春捲」つまりはハルマキ。
それは、上七軒の「糸仙」でいただいた「春花捲」や、
河原町通りの「ハマムラ」でいただいた「焼鰕捲」に似た、
独特の皮が包む。
太目の千切りにした筍をメインにそれを束ねるようにした具が、
スッパリと包丁を入れた断面から綺麗に覗く点も同系統だ。
実はこの手のハルマキが好きなんだ(笑)。「干烹大蝦」はその名の通り、
大きな海老の揚げ物が主題。
大口開けてガブリと齧り付けば海老の甘さが一気に弾ける。
うん、これも悪くない(笑)。

ひと心地ついたところで何気なく頭上を見上げる。
壁にもタツノオトシゴや蛸などをモチーフとしたレリーフが、
所々に配されているらしい。夜の帳が鴨川の縁にも下りてきました。

お会計を済ませたところで、
建物内部やエレベーターなぞを見学したいと申し出る。
ぜひぜひと快諾してくれて早速、
みんなでエントランスホールのエレベーター前へ。

「東華菜館」のエレベーターは、Webサイトによると、
1924年米国で製造、輸入されたOTIS製。
現存する日本最古のエレベーター、であるという。三枚の硝子扉の中にある格子形の蛇腹式内扉がいい。
運転手のオジ様が操作盤を操作するとゆっくりと昇っていく。
四角い箱ではなく、
当時からしてL字の二面に扉があるカゴの形状であったなんて、
何気に凄い。
扉の頭上に備えた時計針式のフロアインジケーターが、
兎に角いい味出してます。

いい味といえば、上階の宴会場の設えも調度も遜色がない。
長椅子やサイドテーブルなど、
2階の個室にはヴォーリズ設計の家具が配されているそう。テラスから眼下を見下ろせば、
さっきまで佇んでいた川床のデッキがみえる。

そう云えば丁度一年位前にも此処にお邪魔したことがありました。その時はビアガーデンとなる屋上と同じように、
提燈の揺れるテラス席へ。
シェードがあるので多少の暑さは凌げて、風も入る。
眺望よろしく、四条大橋渡る鴨川を見渡し、
お向かいの南座の横顔を眺めます。

ただ実はちょっと困難なことがあった。
メニューを開き、日本語勉強中のお兄さんに相談するも、
一品料理それぞれのポーションがそもそも、
おひとりさま客の想定をしていないンだ。

あれこれいただきたいけれど、お皿を絞り込まねばならぬと、
まずはビールをいただいてからウーンと腕組み(笑)。
日本の中華料理の定番系で攻めてみようかふとそんな気になって、
まずは「乾焼明蝦」つまりはエビチリをいただく。「糖醋肉」つまりは酢豚の肉団子がいいんだな。

そして「東華菜館」の素朴なスペシャリテが「五色炒飯」。しっとりと炊かれたご飯の粒が立っているのは勿論のこと、
薄味にして旨味のベールがきちんと包んでいて、
なんかこう、ちょっとした品格があるのです。

京都の真ん中、四条大橋の畔に純北京料理の「東華菜館」はある。Webページには、
「東華菜館」の前身は、西洋料理店「矢尾政」。
「矢尾政」二代目店主・浅井安次郎氏がビアホールブームに乗り、
新しいビアレストランをイメージ。
その設計をウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏に依頼し、
大正15年に、このスパニッシュ・バロックの洋館が生まれました。
とある。
成る程、元々は洋食のレストランだったんだ。

ところがその後、戦時色が深まる中にあって、
洋食レストランの存続が許されない状況になり、
二代目店主は建物を中国人の友人・于永善に託す。
大連で北京料理のベースである山東料理を修得していた于永善は、
ここで北京料理店を創業。
昭和20年末に「東華菜館」が誕生する。
この独特な異国情緒と存在感は、
そんな時代の背景の下生まれたものなのでありますね。

「東華菜館」本店
京都市下京区西石垣通四条下ル斎藤町140-2 [Map] 075-221-1147
http://www.tohkasaikan.com/

column/03758

八丁堀「中華シブヤ」で素直に旨いニラ玉ライスひるメニューたち正しき町中華の店が

築地川へと繋がる、嘗ての楓川に架かっていた弾正橋。
江戸の初期、その東詰に島田弾正忠利正屋敷があったことが、橋の袂に建てられた記念碑に刻まれている。
今はその橋の上を鍛冶橋通りが通り、さらに橋の上下を首都高の環状線が交叉して、絶え間なく車の走行音を周囲に轟かせています。

その弾正橋の片側に設けられた公園に面して、
一軒の中華料理店が町の風景に馴染んでいる。店の勝手口にも見える入口脇の表札で、
その町中華が澁谷さん家の営むものであることが判ります。

と、そんな八丁堀界隈の日常のお店が、
一夜にして脚光を浴びるようになった。
ご存知の通り、TX「孤独のグルメ Season7」の最終話に登場。
松重豊扮する井之頭五郎が見慣れた八丁堀の裏通りを闊歩する映像は、
ちょっと不思議でどこかむず痒いような気持ちにさせました(笑)。

放送後の7月初旬にお久し振りに店を訪れる。すると、番組を観て訪れる客への対応からか、
番組で話題になったメニュー「ニラ玉」のみにて、
100食限定に制限されていました。

それ故、註文の声を発することなく、
入れ込みのテーブルにて待つこと数十秒。当の定食「ニラ玉」がやってくる。

楕円のお皿のおよそ全域を覆うような玉子の絨毯。
その外周の所々からざく切りしたニラが顔を出す。改めていただいた「ニラ玉」が、素直に旨い。
豚肉とともに油との相性よき韮をさっと炒め、
北京鍋に流し込んだ溶き玉子を手早く纏めて、
その上に載せる所作が自ずと想起される。
味付けの中に旨味の芯がちゃんとある。
某ズルい系万能調味料を思い浮かべちゃったくらい(笑)。

月が替わっての8月の初旬には、多少体制が図れたのか、
おひる時に3品が用意されるようになる。「ホイコーローライス」は何気に大振りな豚ロースたっぷり。
「ニラ玉」に負けず劣らずゴハンの進む旨いヤツであります。

8月中旬になってやっと落ち着いてきたのか、
通常のランチメニューを選べるようになる。「チャーシューメン」はこれぞ昭和な町中華のちゃんとした方のヤツ。
従来からの寸胴の基本の基本を着実に踏まえた様子のスープ。
煮豚にメンマ、やや細めの縮れ麺もいい。

ところがところが、8月下旬にふたたびお邪魔したところ、
店先に閉店を告げる貼紙を見付けることとなる。既報の通り、いよいよ期日の迫った築地の移転が大きな理由。
160束になる「ニラ玉」用の韮や野菜たちを
毎朝店主自らやっちゃばで仕入れているが、
至近な築地なら足回りもよく、バイクが仲卸店に横付けできた。
そんな市場が豊洲に移転してしまうと、
市場までの行き来の距離、そして場内移動の距離や方法が変わり、
それが仕込み時間などに影響し、お皿にも及び兼ねない。
年齢的にも無理が出来ないと判断されたという。

9月末の閉店までの期間の夜の営業時間帯は、
あっという間に予約で一杯になる。
ひる時の開店時間前から出来ていた行列は、
閉店告知の報を受けて熱を帯びるようになる。

そんな行列にそっと紛れ込んで「鶏バンバンジー」。これも650円というのは、
今更乍らなかなかにお徳なのではないかと腕組みしたりする。
ライスの代わりに所望する素朴なる「チャーハン」も同価格。
なんせ500円もしくは550円のラーメン類以外は全て、
650円なんですもの(ライス別)。

9月半ばのあるおひるには、「チンジャオロース」を。
青椒肉絲と呼ぶ程細切りでもないのが「シブヤ」の個性(笑)。「ニラ玉」に通じる味付けの按配は、
「ヤキソバ」にも勿論盛り付けられています。

いよいよ閉店が迫ってきた9月下旬。
外出ついでに行列に交じり一回転目でテーブルに着く。
席が埋まったところで気のいい女将さんがこう註文をとる。
「ニラ玉のひと~」。
「はーい!」
皆が一斉に手を挙げる様子はまるで小学校の元気な教室のようだ(笑)。

「ニラ玉」に追い駆けてお願いした、
「ラーメン」もまた素敵な一杯。スープと麺とを啜り味わったところで、
前後して届いていた「ニラ玉」をするするっとドンブリにスライド。
勝手に「ニラ玉麺」にしてしまう。
「ラーメン」そのままにもまったく文句はないけれど、
ニラ玉の美味しさをラーメンのスープや麺と一緒に愉しむのも、
これまた旨いのだ(「ニラ玉麺」と註文もできるけどね)。

60年もの永きに亘り八丁堀の片隅で営んできてくれた、
「中華シブヤ」が間もなくその営業を止める。思えば築地市場の移転延期が齎したともいえる注目や混雑にも、
驕ることなくいままで通り誠実にとする姿勢が、
厨房からも伝わってくる。
「シブヤ」の夜の部メニューで、
何度もちょい呑みしておくんだったと後悔頻りです。

「中華シブヤ」
中央区八丁堀3-2-4 [Map] 03-3551-9021

column/03756