「四谷神楽坂お濠沿い」カテゴリーアーカイブ

石臼挽き手打「蕎楽亭」で芹お浸し稚鮎天婦羅煮穴子馬刺し鴨ざるお濠端の桜と

都内に桜の名所数あれど。
例年仲間で集う葛西臨海公園では、桜並木の下に車座になって乾杯し、時々桜の花弁越しに背景の観覧車を見上げたり。
身近なところでは、茅場町の通称桜通りを往復してからやき鳥「宮川」の行列に混じったり
薄いピンクに彩られた隅田川沿いの新川公園を散策してから土手に腰掛けて、行き交う遊覧船を眺めたり。

他にふとその様子を眺めに行きたくなる場所のひとつに、
飯田橋のお濠端がある。
神楽坂下信号から外堀通り沿いに四谷方向へ。
舗道際の桜並木で、風に揺れる桜の花を一時愛でる。お濠を見下ろすと、
水上カフェ・レストラン「CANAL CAFE」の賑わいが覗く。
桜の見栄えとしてはなんのことはないのだけれど、
どうも気になるスポットなのだ。

気になる理由が実は神楽坂の坂の上辺りとの連関にある。
それは神楽坂を上がり、
見番横丁へと左に折れたその先にある蕎麦の店。店先では、薄緑色を帯びた蕎麦の実をゆっくりと挽く、
一種の石臼製粉機と思しき道具が稼動しています。

カウンターの真ん中あたりに案内いただいた春には、
味のある筆の文字の品書きの中に「せりのお浸し」を見付ける。細長く掻いた削り節を戴いた芹には勿論根っこも添えてある。
浸した出汁の塩梅や佳く、春の香気が噛むほどに小さく弾ける。
口開きの酒は例えば、
埼玉は上尾の酒蔵による本醸造辛口「鬼若」だ。

目移り必至の「蕎楽亭」の蕎麦前用品書きの、
核のひとつが天麩羅のあれこれ。
例えば、歯触りも愉しき「白魚」だったり。春の定番「ふきのとう」は、
期待通りのほんのりした苦味がいい。

厨房に向かって右手奥にある水槽に目線を投げれば、
いるいる、稚鮎くんたちがちょっと所在なげに泳いでる。それが暫し待っていれば今度は、
卓上の敷き紙の上で泳ぐ姿を拝める。
此方もやっぱり澄んだ苦味、腸の苦味が実にいい。
酒が進んでしまうではありませんか(笑)。

天麩羅もきっと美味しい穴子は例えば、
「煮穴子」という一手に賛同してみる。このために焼いたかのような両端半円の長皿に、
ちょうど良く収まった煮穴子の姿を俯瞰してまず愛でる。
品のよい身の厚さの穴子からは何処か繊細な甘さが届く。
うん、美味しい。

「煮穴子」があれば穴子の「白焼き」も勿論ある。焼き網に炙った表面や芳ばしく、
搾った檸檬やおろし山葵がよく似合う。

あいかわらず品書きの上を彷徨う目線を留めたのは、
例えば「会津の馬刺し」。
モモ、ヒレ、レバーに盛り合わせとある。
調味された味噌をちょんと載せていだけば、
うんうんと思わず何度も頷いてしまう。そうそう、品書きには会津由来の品が幾つもあって、
例えば、会津の郷土料理たる「こづゆ」を始め、
会津の茶豆だったり、会津地鶏の塩焼きなどが鏤められています。

お酒のラインナップも福島ものがほとんどで、
例えば純米「金水晶」とか純米吟醸「泉川」、
例えば特別純米生原酒「飛露喜」、純米吟醸「豊国」などなど。選んだお猪口に、カタチ色々な片口からそれらのお酒を注ぎ、
例えば「出汁巻き玉子」を端からつまんでを繰り返します。

そうこうしている間には何度も、
打ち台で打った蕎麦がアルミのパッドから計量器の上に載せられる。そして、所定の量が湯殿に投入されてが繰り返されています。

冷たいもの、温かいものそれぞれ20品ほどがずらっと並ぶ、
そんな品書きから選ぶは、例えば「鴨ざる」。素朴な筈の蕎麦そのものから確かな旨味を覚えるのは何故でしょう。
それは鴨肉からの出汁や脂をも湛えた汁だけの所為ではない気がする。
汁の中からツクネを見付けた瞬間もまた嬉しからずや(笑)。

蕎麦の註文が繰り返されるが故に、
届けられた蕎麦湯はエキス豊かなものになる。蕎麦湯が旨い蕎麦屋の蕎麦は旨いって、
思えば至極当然のことでありますね。

春先までの季節のおすすめのひとつに「牡蠣そば」がある。小長井産の生牡蠣を板海苔の筏に浮かべた温かい蕎麦。
さっと甘汁で煮含めた半生の牡蠣が旨い。
そして気が付けば、牡蠣の風味を帯びた汁を完飲してしまっています。

ふとちょっとした悪戯心と天邪鬼が顔を出した日には、
蕎麦ではなくうどんの「肉ざる」を註文してみたりする。つるんと喉越しのよい饂飩に具沢山の肉汁。
正調派武蔵野うどん喰いのひとりとしては、
どうしても斜に構えてしまうものの(笑)、
そんじょそこらのうどん専門店にも引けをとらない、
何処か凛としたおうどんであります。

神楽坂は見番横丁の奥に石臼挽き手打「蕎楽亭」はある。横丁の名もまた然り。
花街情緒の残り香漂う神楽坂の裏通りという、
そんな立地をよくぞ探し当てたものだとそう思う。
大将を中心に回る厨房の有機的な様子がよい。
春先のみならず、季節を変えて訪ねたい蕎麦料理店であります。

「蕎楽亭」
新宿区神楽坂3-6 神楽坂館1F [Map] 03-3269-3233
http://www.kyourakutei.com/

column/03790

キッチン「たか」でかきのバターソースにポークジンジャーハンバーグ車力門通り

丸の内線の四谷三丁目駅のある外苑東通りとの交叉点から新宿通りを四谷駅方向へ。
北へと伸びる横丁の二本目が、入り口に懐かしの支那そば「まるいち」のある杉大門通り。
その先を右手にクランクすれば、鮨「てる」本格焼酎屋「羅無櫓」のある柳新道通りと呼ぶ小路だ。

そして、もう一本四谷寄りの横丁が車力門通り。「車力門通り」という呼び名は、
江戸時代にこの地に美濃国高須藩藩主・松平義行の屋敷があり、
上屋敷の裏門には御所車(車輪)の文様が描かれていて、
この通りを通じてその門へと、
荷車が出入りしていたことに由来する、らしい。

荒木町のメインストリートとでも呼ぶべき通りには、
その両脇の小路を含めて沢山の気になる飲食店が並ぶ。荒木町に住んでしまいたいと、
来る度に思うのは勿論、その所為なのだけど(笑)。
そんな荒木町のアイコンのひとつに思うキッチン「たか」は、
車力門通りのに入って右手ひとつめの袋小路の入口角にある。

冬季限定メニューから選ぶのは、「かきのバターソテー」。
いや、冬場にわざわざこれを目掛けてやってくる、
と云うのが正しいかもしれない。大き過ぎず、小さ過ぎずの牡蠣の身がひと回り薄衣を纏い、
その衣に守られつつバターソースに揚げ焼かれて。
もう、これ、旨くない訳がないというね。
かつれつ「四谷たけだ」とどっちがよいかなんて、
比べてる場合ではありません(笑)。

ここらは4、5年前の思い出。
夕方近くやすっかり夜の帳が下りてから訪れると、
売切れ閉店の憂き目にあうことも少なくない「たか」だけど、
しっかり営業しているラッキーな夜も勿論あった。その頃は入口の扉の横の壁に、
メニュー写真をコラージュするように沢山貼り込んでいたっけ。
「たか」を訪れる度にその奥の袋小路も覗き込むのだけれど、
他の店には一度もお邪魔したことがありません。

きっとGingerちんはとっくに召し上がっておられるであろう、
といえばそれは、「ポークジンジャー」のお皿。しっかりと揚げ焼きして芳ばしい膜をつくる。
ナイフを入れ、ぴりっと生姜の利いたソースと一緒に口に運べば、
ムホホと笑顔を誘ってくれるのです。

コロンとした「ハンバーグ」のお皿は、
目玉焼きを添えて、如何にも”らしい”佇まい。真ん中にナイフを挿し入れれば、程ほどに肉汁溢れる。
ただそれよりも、濃密にしてすっきりとした旨味のデミソースがいい。
半熟目玉焼きの黄身ソースをそこへ混ぜ込むのもお約束です。

四谷荒木町は車力門通り沿いにキッチン「たか」はある。「トマトのビーフ」や「しょうがのビーフ」といった牛肉メニューに、
「レモンガーリックソースポークソテー」などなどの豚肉メニュー、
「マスタードソースのチキンソテー」などの鶏肉ソテーメニューも、
ずっとずっと気掛かりなまま。
「鮭のバターソテー」をはじめとする魚介メニューはもとより、
「黒ソースのオムライス」や定番「カレーライス」と、
ご飯ものメニューにも宿題課題が目白押し。
ただただ残念なのは、
頃合いのいい時間帯に荒木町にいるというのが、
案外と難儀なことであります。

「たか」
新宿区荒木町3-1 [Map] 03-3356-2646

column/03786

飯田橋ワインバル「八十郎」で南豪州産ヤルンバの夜料理により個性的な表情を変える

hachijyuro飯田橋というとどちらかと云えば外堀通り側に出ることが多くって、そのまま神楽坂上に向かっててろてろと上がっていくシチュエーションが多かったりする。
早稲田通りを千代田富士見の丘に進めば、そうそう「青葉」の並びの餃子「おけ似」は健在だろうかと急に気になったりする。
九段下へと至る目白通り側にもお店が続いているものの如何にも幹線通り沿いの雰囲気の光景が思い浮かびます。

東西線で向かったこの夜は、
当てずっぽうに飯田橋駅のA2出口から地上へ出る。
と、目の前に早速目的地のサインを見つけてしまう。
今夜は、飯田橋ワインバル「八十郎」にお邪魔です。

促されるまま階段を辿った二階の天井は、
旧き木造建屋を利用した風情。hachijyuro02hachijyuro01誂えてくれたテーブルを囲むよう腰掛けて振り返れば、
網入り硝子越しにさっき出て来たメトロの出口が見下ろせます。

今夜のお題は、
まだ耳慣れない「ヤルンバ」というワイン。hachijyuro03コーナーのテーブルに何気なく飾られています(笑)。

「Carlsberg」で乾杯の後、
早速グラスに注いでいただいた「ヤルンバ」の白。hachijyuro04“割とクセがある感じ”という、
「ヤルンバ」経験のある女史の寸評に頷きつつ、
グラスを傾けます。

確かに独特の味わいではある。hachijyuro06ただ、いただいたのは「ヤルンバ」の中では比較的、
クセのないタイプのボトルらしく、
ドライで軽快な呑み口が第一印象だ。

どうぞどうぞと届くお皿には、
イベリコにハモンセラーノ。
どっちゃり載せた前菜の盛り合わせには、
田舎風パテや鰯の酢漬け、穴子のフリットなぞ。hachijyuro05hachijyuro07hachijyuro08青々をこんもりと盛られてきたのは、
最近よく目に付くようになってきたご存知、パクチーのサラダだ。

どこか素っ気ないのかもとも思っていた「ヤルンバ」が、
用意いただいたタパス的お惣菜たちと逢わせる度に、
ふっと表情を魅せては退いていく。hachijyuro09hachijyuro10hachijyuro11薫香を纏わせたカルパッチョに追い駆ければ、
実は得意分野なの!とばかりにふふっと笑顔を魅せたかと思うと、
次の瞬間にはすっと仄かな気配になる。

なんだかツレナイようでいて、
折に触れて眸を輝かせて応えてくれる感じのする「ヤルンバ」。hachijyuro14hachijyuro13ふたたびパクチーをいただいたトムヤム的アヒージョには、
ぴり辛系でオイリーな挑みにも柳腰で受け止めて、
妖しい流し目を送って消えていく。
白桃のニュアンスだったり、白い花のイメージだったり。
ただただドライなだけの白なのではなくて、
幾重にも個性的な味わいや香りの層を潜ませているような、
そんな吞み口が「ヤルンバ」の「ヴィオニエviognier」なんだ。

そんな「ヤルンバ」は、オーストラリアからやってきたワイン。
ワイナリー「ヤルンバYALUMBA」は、
オーストラリア最古の家族経営によるワイナリーだという。
その所在は、南オーストラリア洲のバロッサ。
それは地図を眺めると、南極に面した地域とも云えそうだけれど、
州都アデレード郊外のバロッサ・ヴァレー周辺には、
沢山のワイナリーがあり、
欧州からの移民によって開拓された、
優良なワイン産地として知られているらしい。
南極海をその先に控える地域の谷合がそんなことになっていたとは、
恥ずかしながらまったく知りませんでした(汗)。

“ヤルンバ”は、先住民の言葉で”すべての土地”の意。
自らをそう名付けたワイナリー「ヤルンバ」では、
バロッサ隣接の、やや標高の高いエデン・ヴァレーで、
栽培が難しいといわれる「ヴィオニエviognier」の栽培に、
力を注いでいるのだそうだ。

テーブルには脂のコクとスパイシーさで迫るお皿や、
蝦夷鹿の身肉がやってきた。hachijyuro15hachijyuro17hachijyuro19そこへ空かさず顔を出したのが「ヤルンバ」の赤。
シラーズにヴィオニエを数%程度含んだ2013年のボトルだ。

それは、ドン!と直球の赤ではなく、
オーストラリアを思わせるシラーズゆえの華やかな果実味。
それが、大胆な妖艶さの中に繊細さが顔を覗かせるのは、
少し含んだヴィオニエの悪戯なのでありましょか。hachijyuro18hachijyuro20hachijyuro21肉料理ばかりでなく、
胡椒たっぷり、カルダモンたっぷりのスパイシーなパスタにも、
ふたたびパクチーをいただいたアラビアータにもそつなく似合うんだ。

デザートに栗のカタナーラをいただいて大団円。hachijyuro22今までオーストラリアのワインの印象は、
シーラズの?ぐらいしかイメージを持てていなかった。
けれどこれからは、南オーストラリアにバロッサという産地があるんだ、
といった目線が活かせそう。
その代表格が、オーストラリア最古の家族経営ワイナリー、
「ヤルンバ」だって知ってしまったもんね(笑)。

メトロの飯田橋、
A2出口のその前にワインバル「八十郎」の古家がある。hachijyuro23心地よいざわめきの中で、
ワインに合う料理と料理に合うワインとを、
朗らかに繰り出してくれそうな雰囲気を持っている。

そう云えば、中央区役所裏の図書館へ向かう途中のあの店も、
新富町の「BROZERS」に向かう道すがらで目にしたあの店も、
どちらも確か「八十郎」。

そんな「八十郎」へは、
エスニック料理に「ヤルンバ ヴィオニエ」をぜひにとグイと推す、
サントリーの企画でお邪魔しました。
「ヤルンバ ヴィオニエ」ブランドサイトは、こちら から。
Amazonで速攻お試しも可能のようですよ。

「八十郎」
千代田区飯田橋3-7-8 1F-3F [Map] 03-6256-8063

column/03637

八幡浜ちゃんぽん「莢」で八幡浜ちゃんぽん長崎でないちゃんぽんは純和風

saya遠くはないのになかなか用事のないのが、例えば新宿御苑辺りとか。
新宿三丁目までは行っても、そこから更に四谷方向へ赴くことはなかなかない。
なんだかコワ~い新宿二丁目というエリアが障壁のように横たわっていることがその理由であることも否定できない。
でも新宿御苑そのものをゆっくり歩いた経験が未だにないことに気がついたりする。
毎年、桜の時季になるとそう思うものの、果たせていない宿題のひとつなのです。

過日、野暮用があって新宿通り沿いの新宿一丁目辺りにいることがありました。
このまま二丁目探検に挑もうかと一瞬思うも踵を返して(笑)、四谷方面へと向かいます。
四谷四丁目の信号を渡ったところで目に留まったのが、植栽の向こうにある「ちゃんぽん」の文字でありました。

あ、”八幡浜ちゃんぽん”のお店は此処にあったのか!と早速のご入場。saya01白基調でシックなインテリアは、郷土料理的麺類のお店とは思えぬ雰囲気です。

一杯だけとウーロンハイを所望して、ちょいとしたツマミに「じゃこ天」をいただく。saya02八幡浜名物と謳う所謂さつま揚げは、ご存知の通り魚のすり身を揚げた”てんぷら”。
石垣島の”かまぼこ”とは違って、その断面は如何にも鰯の小魚を擂りおろしたような色合い。
魚の滋味をそのまま香ばしくいただける感じが嬉しいところ。
ハランボとかいう地魚を使うことが多いようです。

お願いしていたのは「八幡山 海鮮ちゃんぽん」。saya03それは、スタイリッシュなフォルムのドンブリによそられてカウンターに置かれました。

蓮華で啜るスープは、軽やかにして出汁の風味が素直に味わえるもの。saya04いりこ出汁の軸を下支えするように鶏のコクが添えられている様子。
濃さで迫ることなく、ひたひたと表情を現す感じが好ましい。

麺はと云えば、押し出し方式で作ったかのよな丸い断面のツルツル仕様。saya05どっちかと云えば、スープとの馴染みよりも口元のツルツルとシコシコ食感に比重を置いた感じ。
でもでも、たっぷりトッピングしていくれている野菜や魚介と一緒に併せ食べれば、うんうん頷く食べ口になるのであります。

荒木町のキッチン「たか」で「牡蠣のバターソテー」を狙って赴いたものの、どうやら最近では夕方頃までに売り切れ仕舞いになることが多いらしく、すっかりフラレた足をふたたび四谷四丁目にへと向けました。

この夜お願いしたのは「ちゃんぽん」ならぬ「八幡浜 焼ちゃんぽん」。saya06オーダーが通るとすぐに具材が用意された様子で、北京鍋の煽り所作が始まります。

焼きちゃんぽんなので、当然のように麺を浸らすスープはない。saya07でも、立ち昇る湯気の中には、過日嗅いだと同じスープの匂いが含まれています。

ドンブリに盛り付けた所為もあるけれど、麺も具も十分なたっぷり感。saya08焼いたちゃんぽんは、つまりは皿うろんやないんかと長崎の郷土料理を一瞬思い浮かべるけれど、思えば福建料理がベースといわれる博多ちゃんぽんは豚骨も使った白濁スープ。
八幡浜ちゃんぽんは、いりこなどの煮干し出汁主体の実に和風な麺料理なのだ。

それぞれの系譜は詳しくは判らないけど、所違えば品変わるのもまた愉しくも面白いことでありますね。saya09久々に博多の屋台の「焼きラーメン」が食べたくなりました(笑)。

四谷四丁目の交叉点の「莢」は、初めて出会った八幡浜ちゃんぽんの店。saya10八幡浜(やわたはま)ってどこかといえば、四国は愛媛県の佐田岬半島の付け根辺り。
豊後水道の近くゆえ、八幡浜港には地魚もいろいろ揚がるに違いない。
愛媛には、松山しか訪れたことがないので、四万十川から宇和島、八幡浜と巡る旅なんかいいかもなぁなんて思います。

「莢」新宿四谷本店
新宿区四谷4-9 グゥビル 1F [Map] 03-6380-4938

column/03549

旬菜と地酒「萬屋おかげさん」で 皮剥秋刀魚肝和塩むすび大団円

yorozuya.jpg日頃主として墺太利で暮す方を囲んで、 帰国の機会を捉えてのご一献。 何処のお店にご案内するのがよいかなぁと、 なけなしの抽斗から思案する。 とっても渋~いオヤジな居酒屋はどうだろう、 カウンターだけの焼き鳥屋だと皆で話難いし、 いっそのこと池尻のフレンチなんかどうかと、 予約してみたりして。

でも、やっぱりフレンチじゃないでしょうと省みて、 予約を入れたのが、お久し振りの「萬屋おかげさん」でありました。

四谷三丁目交叉点の地上に上がり、 荒木町界隈のご機嫌を窺い乍ら、新宿通りを四谷駅方向へ。

判らずに通り過ぎてしまうひとあり勝ちな、 雑居ビルの入口を思い出すようにしながら、到着します。 ちょうど、PUB&SCOTH「cheerio」のお姐さんがスタンド看板を出すところ。 いざ、地階へと向かいましょう。

予約の名を告げ、掘りテーブル席のひとつに落ち着いて。yorozuya01.jpg振り返り眺める馬蹄形のカウンターでは、鍋が微かに湯気を上げています。 何を炊いているのでしょう。

yorozuya02.jpg ご案内の、今夜のおまかせ料理の黒板をじっとみる。 これが此方での愉しきひと時の口開きです。

最初だけの麦酒で乾杯して迎えたのが、「新銀杏の素揚げ」。yorozuya03.jpgこの時季ならではのオツな恵みのひとつ。 腐った果肉の匂いは難儀だけれど、洗浄や天日干しなんかの手間をいただくと、 こうしてとっても美味しくいただける。 有難いことでありますね。

お通しとして頂戴したのが、おからのお惣菜。yorozuya05.jpg滑らかにしっとりとしたおからの細やかな美味しさ。 お通しで実力が測れる、なぁんてことも云われますが、 そうであれば、此処が間違いのないことを確かめ、 そして以降の展開を期待させてくれる小皿だと云えましょう。

次のお皿の綺麗な白身は、「竹岡の活け真鯛 煎り酒で」。yorozuya04.jpg竹岡というのは、内房・富津のこと。 おろしたての鯛の身が、ほんのり酸味の煎り酒にそよいで、いい塩梅。 醤油に浸しちゃったら鯛のこんな繊細な味わい、知ることができません。 そうそう、今はなき高輪台の「梅乃家」は、竹岡式らーめんの店だったなぁ、 そんなことも思い出したりなんかして(笑)。

お酒はというと、「東光」で知られる山形・小嶋総本店の純米大吟醸「洌」から、 佐賀「鍋島」の純米吟醸・山田錦へ。

粗塩を盛った小皿には、「揚げたて蓮根のさつま揚げ」。yorozuya06.jpgはふほふいただけば、蓮根の甘さ風味が解れ出る。 ちょんヅケした塩の効果、絶大であります。

鯛と同じ竹岡からの「活き皮はぎ 肝あえ」が小鉢が届く。yorozuya07.jpg河豚より断然美味いと思い込んでいる皮剥をいただけば、 嗚呼、堪らん! そして、底冷え極寒の船上でただ一匹だけ釣れた時のシーンを思い出す。 警戒心の強いおちょぼ口な魚は、素人には釣るに難儀だったのであります。

長崎の鰹は、「わらあぶり」に加えて「づけ」までも。yorozuya08.jpgyorozuya09.jpgきちんと藁で炙るお店は、意外と多くない。 炙って包んで活性化した旨味と香りに唸り、 ヅケで纏ったほの酸味にまた唸ります。

唸ると云えば、秋口に酒呑みを唸らせる逸品のひとつが、 「秋刀魚刺しの肝あえ」。yorozuya10.jpg厚岸から届いたという、ザ新鮮なしっかりとした秋刀魚の身に、 肝の滋味が絡みつく。 同じ台詞、嗚呼堪らん!がまた脳内を駆け巡ります。

片口には、美山錦主体だという澄んだ旨味の「小左衛門 純米吟醸 ひやおろし」の滴。yorozuya11.jpg代わる片口に注がれたのは、 青森は「陸奥八仙」の純米吟醸原酒華吹雪だ。

竹製のおにおろし器を想像しながら、「新潟の舞茸 鬼おろし」。yorozuya12.jpgキノコが恋しい季節になってきた。 「雪国まいたけ」も新潟の南魚沼の会社だけど、 舞茸の国内シェアはその六割が新潟県みたいだね。

yorozuya14.jpg そんな頃には、特別純米「杉勇(すぎいさみ)」生酛辛口+14原酒。 茨城の「来福」の仕込み水を添えてもらいます。

酒肴の最後を飾るのが、「栗原豆腐と皮はぎのカマの煮付け」。yorozuya15.jpg皮剥のカマの煮付けなんて口にするのは勿論初めて。 澄んだ滋味がこれまた佳いのであります。 栗原豆腐店は、お近く四谷三丁目、創業120有余年の老舗豆腐屋さんらしい。

そして、「萬屋おかげさん」のシメといえば、ご存知「塩むすび」。yorozuya17.jpgyorozuya16.jpgyorozuya18.jpg 塩梅のいい、美しくさえもあるおにぎりをパリパリの板海苔に包んで齧り付く。 そこへ椀のお味噌汁。 大団円で御座います(笑)。

美味しい日本酒と旬の酒肴たちが揃う、 云わずと知れた四谷の銘居酒屋「萬屋おかげさん」。yorozuya19-01.jpgご無沙汰しているうちに、料理がコースになっていた。 黒板からどの酒肴をお願いしようか悩むのも愉しみのうちだったけれど、 日本酒の銘柄も含めて、まさにすっかり「おまかせ」して委ねてしまうのも悪くない。 “おかげさん”で、いいひと時が過ごせました。

口 関連記事:   旬菜と地酒「萬屋 おかげさん」で 日本人に生まれてよかったー(08年08月)   竹岡らーめん「梅乃家」で 竹岡式らーめん甘いタレ味と玉葱細麺(10年06月)


「萬屋おかげさん」 新宿区四谷2-10 松本館B1F [Map] 03-3355-8100 http://www.okagesan.net/
column/03470