「代々木新宿馬場あたり」カテゴリーアーカイブ

サントリーラウンジ「イーグル」で白洲ハイボール67年開業の老舗バーの空気

eagle中野のSUNTRY PUBといえば、
ご存知「BRICK」のこと。
昭和39年(1964年)の創業だから、
なかなかの老舗バーだということになりましょう。
「BRICK」はもう一軒、八重洲通りから一本日本橋寄りの横丁にも現存するけれど、そこには”SUNTRY PUB”のサインは見当たらない。
一度寄りたいなと思っていた大阪のションベン横丁にあった「十三トリスバー」は、残念ながら焼けてしまったという。
宮崎市には「赤煉瓦」というトリスバーがあるらしい。
最盛期には、全国で35,000軒ものトリスバーがあったらしいけれど、今ではそのうちの何軒が残っているのでしょう。

新宿紀伊國屋書店近くの「鳥源」で水炊きのコースをいただいたご一行さまは、もう一軒だけ寄り道しようとアルタの裏手方向へと漫ろに歩く。
「桂花ラーメン」近くの角地に建つシブい鰻店「こばやし」の佇まい眺めつつ、その向かいにある「どれすでん」なんて独逸の都市の名のバーに反応しつつ、紅い看板の前にやってきました。

階段を降りていくといきなり、硝子扉が自動で開いてちょと吃驚く(笑)。eagle01そのまま階下へと足を下ろしていくと、眼下にカウンターやテーブル席が俯瞰できる。

ちょうどお帰りのお客さんたちがあって、それがハケるのをしばし待つ。eagle02センサーがあるんだよねと話しつつ、でも横にスライドしないで蝶番から開閉する自動ドアはなかなか愉しい仕掛けだと今降りてきた階段を振り返ります。

緑青色の円形の中央にエンブレムをあしらったパネルが目に留まる。eagle03ここは秘密組織ショッカーのアジトか!と思ったりなんかして(笑)。

テーブル席に収まって、カウンターやバックバーを見渡してみる。eagle04頭上のシャンデリアが、明る過ぎず暗すぎずの仄赤く加減のいい照度を齎してくれています。

ジントニックのお三人に対して「白洲のハイボール」で、Prost ! eagle05角のそれに比べて、スッキリキリリとした吞み口になるのです。

雑炊まで平らげた「鳥源」のお料理でお腹はくちいので、軽いおつまみをひとつだけ。eagle06「薬膳ナッツ」は、木の実あれこれに無花果のドライフルーツ。
ちょっと、兎か栗鼠のような気分も過ぎります(笑)。

グラスを持ち上げてしげしげ眺めたコースターには、こちらの店名の他に「SUBARU」や「ASUKA」なんて名前も記されている。eagle07「昴」はご近所同系列のサントリーラウンジなんだけど、西口にあった「飛鳥」は既に閉店してしまっているらしい。
「SUNTRY LOUNGE」と並んで「HERMES WINE CORNER」という文字もある。
そうそう、池袋にある「ヘルメスワインコーナー」にも未だ訊ねたことがないけれど、そこでは壽屋がサントリーへと名を替える謎が解けるのでありましょか。

もう一杯だけと「モヒート」を。eagle08ラムの匂いとミントの風味に包まれれば、気分は一瞬に初夏になるから不思議なものです。

お会計の際に佇んだ場所の背面には、さらに階下へと辿る階段がある。eagle09地下二階にもカウンターがあるのかな、それともゆったりしたテーブル席があるのかなと想像が膨らみます。

新宿アルタ裏のサントリーラウンジ「イーグル」は、
1967年開業の老舗バー。eagle10-01一朝一夕では醸し出せない、大入り人気も納得のいい空間です。

「イーグル」
新宿区新宿3-24-11 セキネビルB1F・B2F [Map] 03-3354-7700

column/03558

鳥料理「鳥源」で新宿の思い出と水炊き雑炊コースビルの谷間の創業60余年の佇まい

torigen学生時代、新宿コマ劇場前といえば噴水のある広場でした。
学生やサラリーマン風情が、酔っ払った勢いで突入して奇声を上げている光景を何度も目撃したものです。
中村雅俊主演の青春群像ドラマ「俺たちの旅」のオープニングで、若き中村雅俊演じるカースケや田中健演じるオメダたちが噴水を横切るシーンがあったのは、同じ歌舞伎町の噴水なのでありました。
このシーンをよく憶えている方は、それなりのお歳だということになりますね(笑)。

そんな噴水の背景にいつもあったコマ劇場も、2008年(平成20年)の年末をもって閉場してしまった。
つい先日、物凄く久し振りにコマ劇場があった場所の前を通るとまだ開場前ではあるものの、すっかり建て替わって、シネコンTOHOシネマズのサインも目に留まる。
周囲の上空を見上げる視線に吊られるようにして建物の上方に視線を動かすとなんと!大きな爪のようなものが見える。
ゴジラがそんなところにいる、なんてね(笑)。

そして、待ち合わせは紀伊國屋書店の一階正面。
新宿での待ち合わせといえば、ミドマド(JRのみどりの窓口)か、ココだったものなぁ。
地階のカレーショップ「モンスナック」はまだまだ健在かなぁ。

独逸からの客人とご無沙汰ぁ!と手を振って、都合4名で集ったのは紀伊國屋の横っちょ、今はなき「NEW TOPS」とアドホックビルの間へと抜けていく道。
そこには、何度も何度もその前を通っているのに今まで一度もお邪魔したことのなかった店がありました。torigen01建物と建物の間でちょっと拉げたようにも見える古びた家屋が鳥料理「鳥源」の佇まいです。

予約の名を告げると、お二階へと招かれて狭い階段を上がる。
引き戸の奥は、何やら自然石の置物をずらりと収めた棚の控えるお座敷。
店主のご趣味なのありましょか。
おまかせ「水たき雑炊コース」をお願いしました。

ジョッキの麦酒をいただいているところにまず届いたのが、とりわさ。torigen02お通し的小鉢が、これから鳥料理が始まるヨと知らせてくれるようです。

続く突き出しの鶏皮ポン酢が、地味ながらもなかなか旨い。torigen03ちょっと炒ったような感じが芳ばしく、お酒を誘います。

「つくね」には、表面張力漲る黄身が添えられて。torigen04細か過ぎず粗過ぎずに挽いた鶏の歯触りが、すっきりしたタレと炭火で炙った芳ばしさでいい感じに纏まっている。
つくねをたまごの黄身のソースで喰ってやろうと最初に思い付いたには一体誰なんでしょうね(笑)。

12種類ほどある中から届いた串焼きは、わかどりに相鴨。torigen05合鴨じゃなくて、相鴨と書くのがちょびっといい。
鴨らしい香りが嫌味なく愉しめます。

そしていよいよ、鍋も登場。torigen06鍋の中は、当然のように白濁したスープがなみなみと。
ぶつ切りした鶏の身が顔を出しています。

二階担当のお姐さんの指示のまま、具材を鍋に投入して煮えるのを待つ。
いただいた独逸からのお土産は、シュナップスと可愛らしいスキットルのコンビ、そして小さなボトルが16本も並んだチョコレートリキュール。
ありがとう、でもどんだけ呑兵衛だとおもわれているのでしょう(笑)。

くつくつと煮えたところで、いざいざ。torigen07まずは、表層の白菜、エノキ辺りからいただきましょう。
もしかしたら、ずっとずっと昔博多でいただいた以来の水炊きかもしれません。
京都西陣の「鳥岩楼」でいただいたのは「親子丼」だったしね。

鶏のスープで炊いた野菜やらキノコやらをハフハフいただいてから辿り着いたのが、骨付きの身ややゴロッとしたブロックのような鶏の塊。torigen08まぁ、鶏の身そのものよりもこの白濁のスープにこそ本懐があるのかもしれません。

そうとなれば、雑炊は欠かせない。torigen09どちらも野菜の甘さも取り込んだ美味しい鍋になるけれど、博多の水炊きは一般的な水炊きに比べて鶏エキスのコクでひと味違うよね。

新宿紀伊國屋近くに創業60余年を数えるという鳥料理と博多水炊きの店「鳥源」がある。torigen10とんとご無沙汰の中洲辺りでもう一度、水炊きの鍋に正対したいものだなぁとそう思います。

「鳥源」
新宿区新宿3-17-11 [Map] 03-3354-7868

column/03556

居酒屋「どん底」でドンカクピロシキMixピザにナポリタン文化人の根城往時の空気

donzokoそれは今からもう、20年以上昔のこと。 新宿三丁目に足繁く通う店がありました。
お店といってもそれは、雑居ビルの二階にあった所謂カラオケバーで、弱いところもすぐ表情に表して憎めない子供っぽさが魅力のマスターとそりゃもうよく喋るマリさん夫婦が営む店でありました。
通い始めた当初のカラオケはといえば、俗に云う”8トラ”。
武骨な機械の口にガチャリと押し込む、あのカラオケ機器を知っているか否かで年齢がバレてしまう(笑)。
その後一時、レーザーディスクカラオケに切り替わったかと思ったら、あっという間にカラオケは通信されてくるものになったのでした。

そんな新宿三丁目界隈でその頃からずっと気になっている店が幾つかありました。
その中の筆頭が、その名にも慄く「どん底」。
「末広亭」も間近な路地に、まるで苔生しているかのように蔦が絡まり、妖しい雰囲気を漂わせている建物が古色蒼然と佇んでいたのです。

デデンと「どん底」の在り処を示す彫刻の赤い文字。donzoko01見上げた二階にある窓は、堅く閉ざされているかのよう。

乱れた積み方の煉瓦がいい表情で、その脇の扉も武骨重厚な佇まい。donzoko02知らぬものを拒むような静かな力強さを想います。
古材の丸柱は、アジトたる山小屋に闖入してゆくような心持ちにさせてくれます。

ドアを開こうとしてさらに怯ませるものがある。donzoko03だって握ろうとしたドアノブがひとの腕を象ったものなのですもの(笑)。

予約の名を告げて案内される店内は、丸柱に想った通りの山小屋のよう。donzoko04蟻の巣の迷路を昇っていくような気分になるのは、階段の途中にちょっとしたフロアがあったりして、床が幾層にも分かれているように映るから。
なんだか探検心を擽る設えであります。

階段にちょっと隠れた空間を見据えると、古びたシャンデリアの向こうに埃を被ったワインボトルがずらっと並んでる。donzoko05赤いランプに照らされて、ひっそりと”古城”ムードを醸し出しています。

久々に上京してきて顔を見せた仲間を交えて、まずは麦酒で乾杯。donzoko06どんな風にロシアロシアしているのかと妙な期待は的外れな「自家製ロシア漬け」は、和風にも思えるパリッとしたピクルスであります。

やっぱりこれは外せないよと「牡蠣のオイル漬け」。donzoko07漬け過ぎ感のない、いい塩梅のオイル漬け。
日持ちする上に生とは違う美味しさも愉しめるなんて、いいよね。

お野菜も食べておかなければと「大根サラダ」。donzoko09ところで皆さん、刺身の妻もちゃんと残さず召し上がっていますかと訊きたくなったりなんかして(笑)。

麦酒が干せたら次はやっぱり”ドンカク”、つまりは「どん底カクテル」でありましょう。donzoko08元祖酎ハイとも謳われる通りの檸檬風味の呑み易いカクテルで、クイクイと呑み過ぎてしまいそうな予感に駆られます(笑)。

ピクルスに続いて「ピロシキ」も所望する。donzoko11最後に軽く揚げた感じもするタイプのピロシキは、あらかじめ半切してくれている。
割と具は少なめのバランスか。
そう云えば、図らずも真冬のシェレメチボ空港のベンチで一泊してしまった時にも空港の食堂で食べたはずなのだけど、どんなピロキシだったか思い出せません。
折角本場で食べたのにね(泣)。

ロシアものがあるかと思ったら、ザ・アメリカンなものもあるんだねと「チリコンカン」。donzoko10甘めのソースの中にチリパウダーの風味が重なるお豆が旨い。
具がたっぷりなので、添えてくれている薄焼きのクラッカーが圧倒的に足りません(笑)。

“ドンカク”には「どん底カクテル黒」なんてバージョンもある。donzoko12もしかしてコーラが入ってる?的な色合い味わいなのですが、酔っ払いの間違いでしょうか(笑)。

「ハーブたっぷり自家製 鶏ハム」は、バーっぽいひと品。donzoko13しっとりした旨味風味がイケる佳作。
刻んだハーブを包み込んだ様子がその断面からじっくり覗けます。

“ドンカク”を載せていたコースターを改めて眺めると、「どん底」ロゴの周りには、「イタリー料理、ピッザパイ」とか「Spagatti:Macayohi」とかの文字が囲んでる。donzoko14ロシア寄りとみせて、アメリカンのフリして、実はイタリアンなのが「どん底」なのだ。

ということで、どん底自慢の一品と謳う「Mixピザ」も所望する。donzoko15生地を覆い尽くしたチーズの量感が嬉しいピザ。
決して”ピッツア”ではなく、”ピッザパイ”なレトロ風情が泣かせます(笑)。

そうとなったらナポちん、コレも外せないよねと「ナポリタン」。donzoko16細麺ではありますが、じっくりしっかりと煽り炒めた様子がよく伝わる仕立てがいい。
細かく刻んだ茹で玉子が載ってたりするのをどこか懐かしくも愛おしく思います。

たまたま棚の脇のテーブルにいた時に目に留まったのが「どん底」書籍。donzoko17「どん底今昔物語」と題するページには、今の建物とはまた違う迫力の店構えのモノクロ写真が載っている。
それは、1951年(昭和26年)に和洋酒店「どん底」が誕生した頃の写真であるらしい。

店先の立看板にはその創業年と、新宿の酒場で最も古い建物であることが示されている。donzoko18三島由紀夫や黒澤明監督が”ドンカク”のグラスを傾けていた様子を想像するのも一興でありますね。

昭和26年の創業来60有余年の新宿最古参居酒屋「どん底」が今を息づく新宿三丁目。donzoko19Webサイトによると「どん底」の店名は、俳優を目指す学生だった創業者が酒場を開店しようと準備していた時に出演した舞台、ゴーリキーの「どん底」に由来するものであるようです。
その当時、文化人たちが根城にし、きっとハイカラだったあれこれが折り重なって今に続く空気を味わいに、また寄りたいな。

「どん底」
新宿区新宿3-10-2 [Map] 03-3354-7749
http://www.donzoko.co.jp/

column/03550

アジアキッチン「ヤマニャ」で ミャンマー料理シャン族風ソーセージ

yarmanya所在地や足回りの都合から、
高田馬場で会いましょうとなった時。
古くからの学生の街だけあって、
チェーン系の居酒屋あたりだったら、
いくらでもありそうな気はする。
行こうとは思わんけど(笑)。
ただ、呑む!という訳でもない場合には、
さて、どんなお店があるんかいなと、
腕組みして思案することになったりします。

例えば、早稲田通りからちょと離れた裏道にある、
台湾料理の店なんかどうだろうねということになりつつ、
当日の晩を迎えたのでありました。

やや出遅れて駅に着くと、先陣は当該地に辿り着いたという。
ところがね、どうもその住所にその名前の店がない。
でも、目の前にしているお店も面白そうだというので、
突撃することなったのであります。

戸三小通りという裏道を進んで店の前。
なるほど、ネットに上がっていた写真と構えは同じながら、
看板が知らせる店名や色合いはすっかり替わってる。
店の名を「ヤマニャ」という、アジアンなお店だ。

テーブルに合流して、乾杯のビールを所望する。
こんなところにも「ホッピー」がある!と思いつつ、
ご当地ビールをお願いすれば、
やってきたのは「Myanmar beer」の翠色の缶。yarmanya03それは如何にも東南アジアのモノらしい、すっと軽い味わいのヤツ。
瓶での用意はしてないみたいです。

既に卓上に上がっていたお皿のひとつが、「特選サラダ」。yarmanya01豆苗や玉葱なんぞを胡麻油で和えて、そこに海老粉がたっぷり載せてある。
シャキッとした歯触りと海老粉の香ばしさが美味しいね。

お、ピンクなお肉が並んでいるねと「ヌー・ソム・ムー」。yarmanya02豚肉をバナナの葉で包んで発酵させたシャン風ソーセージ、との説明書きがある。
辛そうでいてそうでもなく、でもやっぱり辛いタレがいい具合。
豚肉が孕んだ甘さと酸味をグイっとひき立てて食べさせます。

「ゴーヤ ジョ」は、タイ風ゴーヤチャンプルー。yarmanya04ナンプラーを利かせつつ、こうしてあっさりとした仕立ても悪くない。
メニューにある、「蓋肉」は、「豚肉」の間違いだろうね(笑)。

メニューに「大人気です!」と謳っているのが、「ヤマニャ ワッター・ド・トゥ」。yarmanya05つまりは、豚の串の煮込みなのだけど、
煮込んだ汁が醸すスパイス風味がやっぱりアジア的。
口に含んだホルモンが柔らかに。
小さめの器の下に固形燃料を炊いて、温かいままいただけるようにした工夫が嬉しい。
我等が大衆居酒屋の「煮込み」も同じようにしてくれたらいいのにね(笑)。

「ラベットゥ」は、お茶の葉サラダ。yarmanya06丸皿に刻んだトマト、キャベツ、豆の類に干し海老、
そして青菜のような葉が載ってきた。

それらを云われるままチャカチャカと混ぜ合わせる。yarmanya07お茶の葉っぱの柔らかな発酵具合がいいドレッシングになって、
全体が纏まって美味しいのが、なんだか不思議な気がします。

ご存知、蒸し鶏ご飯は、ココでは「ジャ・スイ・タミン」。yarmanya08やや細めに刻んだ鶏肉の感じと長粒米ではないところが面白い。
長粒米は、その辺では売ってないものね。

豚肉と竹の子の旨煮「ワッターミ・チン」がなかなか美味しい。yarmanya09竹の子の発酵由来にも思う酸味と辛味。
しなっとした竹の子と豚とに含んだ汁がいい。
これで定食にしたいであります(笑)。

そして、「ジェイオーシージェー」は、ホルモンのビーフンラーメン。yarmanya10ラーメンといってもほとんど汁なしで、
たっぷりのホルモンとビーフンを調味油で軽く和えた感じのドンブリ。
成る程、しつこくなくて、旨いであります。

デザート代わりに、ココナツ、タピオカ、バナナの特製ミックスジュース、
「オウ・ターグ・ガァビョー・パウ」をいただいてみる。yarmanya11意外と甘くなく、さらりとバナナやココナツの仄甘みを愉しめるのだ。

高田馬場の裏道の暗がりに、ミャンマー料理の店「ヤマニャ」がある。yarmanya12訊けば、台湾料理店から入れ替わって半年程のことだという。
店名の「ヤマニャ」は、出身地であるミャンマーの町の名前だと、
ちょっとはにかみながら応えてくれた。
メニューの所々に「モン族の」とか「シャン族の」とかあるのは、
どうやらミャンマーの少数派民族なぞのことであるらしい。
図らずも稀少な体験をしたのかもしれません。

「ヤマニャ」
新宿区高田馬場3-14-16 太田ビル 101 [Map] 03-5348-7150

column/03507

酒処「浪曼房」で あん肝煮付ゴマハタ刺炙り〆さば陳腐化しない意匠

romanbo新宿三丁目のビル地階にある「池林房」には、
おでん屋台が立ち並んでいるような独特の設えと、
映画演劇、出版界なぞの文化人が、
夜な夜な集うような独特の雰囲気がある。
「陶玄房」「犀門」と並ぶその姉妹店のひとつが、
酒処「浪曼房」です。

「竹馬グループ」4店舗のいずれもが、
まさに独特の雰囲気を醸す個性的なインテリアデザインを施している。
その中で特に「浪曼房」のファサードは出色のもの。romanbo01アンモナイトをモチーフにしたかのようなアーチで扉を囲んでいて、
頭上にはどこか懐かしいリベット留めの鋼製看板が名を示す。
バブルの終末の頃に日経BP社が出した、
「東京デザイナーズレストラン」に載っていたのではと思ったりなんかいたします。

地階への階段は、何処かの修道場の酒蔵へと下りるそれのよう。romanbo02romanbo03白壁を照らすステンドグラス調のランプたち。
何故かマンボウを象った鋼製の枠の中に緑色のボトルの底が並んでいます。

欅の無垢板を用いて重厚に迫るテーブル席にしか座ったことがなかったので、
小上がりのようなスペースがあることをその時に知ることとなる。romanbo04ランプの彩りは勿論のこと、梁のデザインにも大胆さと力強さが籠もっています。

来日中(!)のsepp先生とどうもどうもと乾杯をして、
まず迎えたお皿が、「あん肝煮付け」。romanbo05さらっと煮付けたあん肝がふくよかさを増しているようで、なかなかイケます。

お品書きに、ときどきあります、と注釈のある「獺祭」の純米大吟醸50を呼んでみる。
うんうん、澄んだコク味がフルーティに膨らむ、美味しいお酒でありますな。romanbo06塩の利いた「焼き銀杏」もよく似合います。

やっぱりこれは外せない、と「牡蛎フライ」。romanbo07牡蠣の身の平たい形状がそのままフォルムに現れて。
もうひとつ食べちゃってもいいですか(笑)。

お刺身は、鹿児島の産だという「ゴマハタ刺」。romanbo08ホウセキハタを市場では「ゴマハタ」と呼ぶらしい。
浸した醤油にちょっぴり脂が滲む。
さらっとした歯触りの中から滋味がじわっときて、美味しい。

こんな組み合わせ見たことないヨな、
「ゆり根とランチョンミートの天ぷら」。romanbo09ご存知、ゆり根のほっこり甘い食べ口に続けて、
衣と一緒に味わうは、うちなーんちゅ云うところの”ポーク”のお味。
いいね、面白いね。

水面に浮かぶのはその爪先か、
「蟹とニラの玉子とじ」。romanbo10ふるふる玉子の出汁には、蟹の滋味が滲んで、
そこへ韮の青い匂いが色を注す。
しみじみ美味い器であります。

「獺祭」のお代わりをいただいて、
宮城からの「炙り〆さば」もお迎えする。romanbo11浅く〆た鯖に皮目の香ばしさが加わって、
うん、獺祭の旨さを押し上げてくれる感じ。

「若鶏の唐揚げ」ほか三品ほども平らげて、
そろそろ〆ようかと「チョリソーときのこのバジルピザ」。romanbo12しっかり香ばしい系統のこんもりチーズの所々で、
チョリソーとバジルの風味が交錯する。
キノコ控えめな感じが反ってオツに思います。

甲州街道の跨線橋を脇に見る新宿の暗がりに、
酒処「浪曼房」がある。romanbo13創業から四半世紀以上が経っても、
陳腐化を思わせない意匠が素晴らしい。
奇を衒った造作のお店は往々にして、
供される料理酒肴が薄っぺらなものになっていってしまう嫌いがあるけれど、
此処には、どこぞのチェーン居酒屋には真似のできない、
地に足のついた気概と脈々と培われた気風を思わせて、いい。
久し振りに「池林房」にも行ってみようかな。

「浪曼房」
新宿区新宿3-35-3 君嶋ビルB1 [Map] 03-3352-1991
http://www.chirinbou.com/

column/03491