「大森蒲田川崎ライン」カテゴリーアーカイブ

餃子舗「龍門」で大鳥居の在り処と餃子に思う安堵きっと塩のタンメンがいい

何故かよく憶えているのは、石垣島でのダイビングへと羽田へ向かう道すがら。
池上線に岩石のような重さのホイールバックを引き連れて、蒲田駅の東口ロータリーに降りてゆく。
タクシーのトランクに担ぎ上げるようにバックを押し込んで、空港へと環八を往く。
その車窓に何気なく眼にした大鳥居の交叉点の光景。
何処にでもあるよなシーンを印象深く思ったのは、そふ云へばその大鳥居そのものは今何処にあるんだっけ?という疑問とセットになってのことなのかもしれません。

空港の駐車場らしき広場に立つ鳥居には、
映像で見覚えがある。
撤去ないしは移転させようとすると、
色々と良からぬトラブルが起きて頓挫した、
なんて話を聞いたこともある。
相応しいお祓いなどを施してか、
穴盛稲荷神社の大鳥居は今、
空港エリアとの間を流れる海老取川が多摩川河口へと流れ込む、
弁天橋の向こうに鎮座されているんだね。

そんな大鳥居の交叉点から平和島方向へ少々北上し、
川の跡ではないかと思うような折れ曲がる横道へ入った処。イレブンフーズの「源流」もこの辺りだったはずと思いつつ、
餃子舗「龍門」の前に佇みました。

カウンターの面板は正しき紅きメラミンのもの。親子かとお見受けする女将さんと大将がその奥に。
餃子を包んでいるようです。

カウンターの大将には特段の笑顔はない。
一気に満席に近くなったところでやってきたお姐さんには、
もうちょっと出来ないな、とにべもない。
待っているのでと抗っても、
出来ない出来ないと追い返す。
長年培った業務の流れやキャパからの判断なのか、
待たすこと待たれることを忌むからなのか。
成る程な理由があるとすれば正しいし、
ただ他に云い様もあるような気もする。

「龍門」の「餃子」はまるで、
甲羅を背負ったようにも見える独特のフォルム。揚げ焼いた部分の芳ばしさをやおら口に含めば、
キャベツなぞの野菜の甘さを思う具がしゅっと弾ける。
超絶に旨い、ってのとは方向の違う、
安堵しつつウンウン頷くような美味しさなのだ。

お願いしていた「炒麺ヤキソバ」が、
紅いカウンターに湯気を立てて届く。ラードのようなコーティングが、
甘美な顔を時折齎してくる。

麒麟と餃子とを註文して暫し。
予約註文の電話がテンポよく入る。
電話の餃子の数と店での註文の数とを重ねて数える。
ポリタンクから入れる醤油。
味をみる小皿。
麺はほとんど湯切りをしない。酢に胡椒でという食べ方をすることが最近増えた。
醤油やラー油に不満がある訳ではないのだけれど、
「龍門」の餃子にはよく似合うと思うのだ。

そして「龍門」には三種類の「タンメン」がある。
「湯麺(タンメン)」「味噌タンメン」「醤油タンメン」と、
そう品書きにあるので、
「湯麺」がスタンダードな塩味のタンメンなのでしょう。思い悩んでぐるっと一周して「醤油タンメン」をご註文。
しまった、タンメンならやっぱり塩だったと少し後悔。
今度は必ず「湯麺」をお願いすることとします。

大鳥居駅近くの住宅街に餃子舗「龍門」はある。塩味の「湯麺」をいただいた後には、
弁天橋の袂まで足を伸ばして、
大鳥居に臨む羽田の夕景を拝んでみよう。

「龍門」
大田区西糀谷3-35-3 [Map] 03-3742-8859

column/03731

味の店「末広」で豚肉のしょうが焼きとおたまのかたち期待以上の佇まい

suehiroそう遠くないところで暮らしていながら、一度も降り立ったことのない駅というのも意外とあるもので。
ふと考えたら、大井町-二子玉川間の路線距離10.4kmの東急大井町線では、辛うじて15駅全駅を利用しているものの、15駅、路線距離10.9kmの池上線では、御嶽山駅の改札を通った憶えがなかったりする。
御嶽山駅と云えば確か、東海道新幹線や横須賀線の跨線橋にホームがあるですね、グヤ父さん(笑)。

その横須賀線でも利用した機会がなかった駅のひとつが新川崎駅。
改札から出て鹿島田跨線橋を渡って吃驚いた。suehiro08なにやらいい顔している貨物機関車が何輌も待機中。
sepp先生曰く、かつての新鶴見操車場、今の新鶴見機関区あたりはその筋では有名な場所であるらしい。
なんだかちょっとワクワクする光景であることは間違いありません。

そんな新川崎駅から線路に沿って南へ延々と歩いた辺りが小倉地区。suehiro09矢向駅側に渡る陸橋近くにはパイオニア本社があったりします。

コンビニくらいしか見当たらない界隈でひる飯時となって思案する。
コンビニめしするくらいなら、バスに乗って川崎駅に出てしまおうか。
そう考えてバス停でバスを待つうちに、ふとバス停近くのフェンスに貼られた附近図が目に留まる。
何気なく眺めていたら、「洋食」の文字を発見!
バスをやめて早速、その地図が指し示す場所へと向かいました。

それは期待以上の佇まい。suehiro01色褪せたカラー鉄板の壁に掛けた看板の文字が掠れはじめてる。
洋食、定食、焼き肉の味の店「末広」さんでおひるをいただきましょう。

ショーケースを覗き込むと、「カキフライ」のサンプルがある。suehiro02時季でないことが一瞬悔やまれるものの、「オムライス」に「かつ丼」に「チャーハン」と和洋中混交が違和感なくなされていることを頼もしく思います。

暖簾を潜って顔を上げたところに目に映ったのは、すっかりいい感じに赤ら顔のオヤジさんのニッコリ笑顔(笑)。suehiro04カウンターには熱燗徳利が載っている。
テーブル席はといえば、職人さんらしきおふたりがウーロンハイらしきグラスを重ねてる。
いいねぇ、思わず「麦酒!」と叫びそうになります(笑)。

卓上にはメニューがなくて、キョロキョロさせた目線は壁の品書きに向かいます。suehiro03実はすっかり「チャーハン」な気分だったので、ショーケースのメニューはできますかと訊いてみる。
ハイ、できますよとのオカーサンの応えをいただいてから、何故だか口をついて出たのは、では「豚肉のしょうが焼き」に「チャーハン」つけてください、でした。
オナカ減っていたのですね(笑)。

カウンター越しにオトーサンが手渡してくれた「豚肉のしょうが焼き」。suehiro05でろろんと溶岩流的ソースがたっぷり。
胡椒の粒子もたっぷりと覗くけど、辛い訳ではなく、生姜がぴりりとするノリでもない。
でもなんか、まったりしたソースが素直にシズる。
付け合わせはトマトに千切りキャベツ。
素ナポはありません(笑)。

「チャーハン」は歴とした”おたまのかたち”。suehiro06パラッパラな炒め具合ではないけれど、オカーサンに北京鍋をガコガコと激しく繰ることを強いるつもりは毛頭ないのでなんの文句もありません。
ペロっといただいて、ご馳走さまです。

鶴見川と横須賀線の狭間の住宅地に、
ぽつりと味の店「末広」というオアシスがある。suehiro07もしも今度寄れる機会があったなら「日替わり定食」をいただきたい。
看板に描かれた、掠れた扇子の図もまたいい味だしてます。

「末広」
川崎市幸区小倉4-16-26 [Map] 044-588-5041

column/03577

大衆酒場「鳥万」でなかおちユッケ納豆きつね冷しおでんオトナのワンダーランド

toriman蒲田駅の駅ビルを東口に降りて右手を振り向くと、いまや解体を待つばかりの蒲田三和ビルがある。
ロータリー越しに真っ直ぐ正面を見据えれば中央通りのゲートが望めて、その先には例えば懐かしの和風ラーメン「和鉄」を思い浮かべたりする。
左手を振り向けばそこには、大衆割烹「三洲屋本店」の暖簾がある。
駅前という立地も手伝ってか、昼から夜までの通し営業も嬉しい「三洲屋」ではきっと、土曜日の昼下がりに一杯やっつける紳士淑女がおられるものと思ったりいたします(笑)。

対して、蒲田駅の西口に出ると、ほぼ正面のサンライズ蒲田から左手へと自ずと目線が動く。
さらに左手のサンロードやさらにさらに左手高架脇のバーボンロードな横丁が実にいい味を出しているからなのであります。

どっこい、西口ロータリーのドン・キホーテ方向にも憩いの場所がある。toriman01そう、皆さんご存知の大衆酒場「鳥万」がその止まり木だ。
それはもう彼是ウン年前、蒲田といえばのキミマツさんキミマツさん一ファンのlaraさんと落ち合ったのが初めての「鳥万」じゃなかったかな。
周囲のパチンコ屋やらの照明の影響でいっつも赤味を帯びているのがなんだけど、いつ見ても惚れ惚れするような雄姿ではありませんか。

キミマツさん等とテーブルを囲んだのは二階席だったりするのだけれど、ひとりでぷらっと寄る時は、まず一階に居場所を探すことになる。
わさっと混み合っているようでいて、大概どこかに空きがある入れ込みのテーブルなのであります。toriman02そこから厨房方向を眺めれば、ずらずらずらっとびっしり貼り込まれた品札が否応もなく目に留まります。
どんだけ迷わせようっていうのかねぇ(笑)。

黒ホッピーのセットと一緒に注文むのは、例えば「くじら刺し」。toriman03おろし生姜をのっけて醤油をちょちょんと漬けていただきます。
捕鯨の行方をちょっぴり憂いつつ、そのまま喰らう赤い身肉の滋味は牛肉とは一興違う趣きがいいよね。

くじら刺しを追いかけて注文むのは、例えば「なかおちユッケ」。toriman04玉子の黄身が綺麗に収まった鮪なかおちのクボミ。
これまた牛肉にあらずして、ふわりとした赤い身の滋味と脂を愉しめる。
黄身との相性も勿論の佳肴でございます。

冬場は特に欲しいよねといえば、例えば「かきフライ」。toriman05つまみにするには、こんなサイズの三個並びがちょうどよい。
二個じゃ寂しいし、四個じゃライスもらって食事にしちゃう方向だしね(笑)。

フロアのオバちゃんが注文の度に手にしてテーブルに置いていくのが、味の「鳥万」の伝票。toriman06流石、品数が多いだけあって、いつになく長いものになっている。
当然、ここに載っていないメニューもある訳で、注文受けるにも慣れが必須でありますですね。

あ、それもまたズルいと思うのが、例えば「納豆きつね」。toriman07油揚げの中に刻んだ長葱と納豆がやや控えめの量を詰めて炙ってある。
もっと中身があってもいいかなと思うも、油揚げと葱納豆とのバランスはこれでいいのだと思い直します。
練り芥子を溶いた醤油をちょちょんと漬けてね。

ホッピーのジョッキの向こうを幾人もの紳士淑女がやってきては、そして帰ってゆく。toriman08ま、もっとも、自分を含めたオッサン率は9割にも上ろうとするものでありますが(笑)。

例によってぐるっと見回した一階フロアは、この夜も混んでいる。
どふいふ訳か、案内されるのが女将さんがデンと構えるレジのすぐ横のカウンター席が多い。toriman09今夜も早速、ホッピーを所望しましょう。

たまにはとパウチされた手許のメニューをチラッとみて注文むのは、例えば「ねぎホイコーロー」。toriman10くたっと炒めた長葱の甘さとちょっと辛めに味付けた豚バラ肉が素直にイケる。
コレでご飯、でもいいかもしれません。

背中をちょっと反らせるようにして眺めたお品書きから注文んだのは、確か「つまみ穴子」といったでしょうか。toriman11生干しにしたような穴子を炙って短冊状に刻んだおつまみ。
ちょいと粉山葵を載っけるのもオツな食べ口です。

女将さんの声や話を聞けるカウンターの隅は特等席だと思うのだけど、唯一の難点はずらずらっと並ぶ品札をゆっくり眺めての吟味がし難いこと。toriman12そのため入口近くから店の奥の壁を眺めたりなんかするのでありますね。

酷暑の日の夕方なんかにいいよねと思うのは、例えば「冷やしおでん」。toriman13まさにおでんをそのまま冷蔵庫で冷やしてたらこうなった的な見映えであるけれど、煮凝り状になったスープが冷た旨くて愉しくなる。
冷やして崩れてしまう具材は除いているような気もするので、これ用に拵えたものなのかもしれません。

「かきフライ」に劣らぬ揚げ物の王道を注文みたいよねと思えば、例えば「あじフライ」。toriman14揚げ立ての鯵フライになんの文句がありましょか。

レジ前カウンターにいると、焼き鳥の注文が厨房に通る様子がよく判る。toriman15そしてその先には、焼き台があって、みるみる焼き色がついてゆく串の様子も観察できる。

然らばと、つくね、鶏皮、鶏正肉あたりのやきとりをいただきます。toriman16しっとりと細かく挽いたつくねの焦げ目に頷いてみたりする。
出色の焼き鳥という訳ではないけれど、きっとこの辺りに「鳥万」の原点があるのでしょうね。

蒲田駅の西口のザ・大衆居酒屋といえば勿論「鳥万」本店のこと。toriman20女将さんがレジを打ちながら身の上話を話してくれた。
千葉から出てきた女将さんは、新宿に出て過ごし、その後蒲田へと移ってきたらしい。
その当時蒲田で網タイツ履いていたのはアタシくらいのものヨとも仰る。
それは東口に下着の類を商いしている知り合いがいて、試しに買ってあげたらこれが破れなくて重宝したのだそう。
女将さんのお話は、戦時中のことにも及んで、兎に角戦争はダメよと実感を籠めて云う。
なんにもなくなった蒲田のこと、何故だか生姜だけはあってよく食べたと、そんなこともあったそう。
女将さんの出身地が千葉のどの辺りかは訊き損なったけれど、千葉駅の近くにあるという「鳥万」はもしかして支店にあたるのかなぁ。
あ、そうそう、秋葉原の銘居酒屋「赤津加」への道すがらでも「鳥万」の看板を見掛けたことがあるのだけれど、あちらも支店なのかなぁ。
まだまだ気になる品札目白押しのオトナのワンダーランドに、
今度はいつ寄れるかな。
女将さんに支店はあるやなしやなんて訊ねるタイミングはあるかな。

「鳥万」本店
大田区西蒲田7-3-1 [Map] 03-3735-8915

column/03561

大衆割烹「三洲屋本店」でかきフライ鳥豆腐鰤のあら煮一献と食事に大満足

sanshuyahonten銀座で牡蠣フライと云えば、ちょこっと路地奥の「三洲屋」銀座店のそれを真っ先に思い浮かべるひとも少なくないでしょう。
ホールのオバちゃん達に微妙に仕切られながら入れ込みの狭い椅子に座っていただく臨場感もなかなかの醍醐味のひとつ。
二階の座敷で呑る宴会もオツなもの。
ご近所にある「三洲屋」一丁目店での一献もまた悪くないものでありますね。

その一方、JRの蒲田駅前には本店と示す「三洲屋」がある。
欧州から羽田に到着したばかりの方を連れて蒲田駅前のこちらへ直行!なーんてことがある(笑)。
でも、じっくり一杯やっつけることが今までありませんでした。

「三洲屋本店」と灯りを点す白鶴提供の看板を横目に暖簾を払う。sanshuyahonten01おひとりさまは、右手のカウンター席が似合います。

気分は「ホッピー」かなと、中身とのセットを貰う。sanshuyahonten02グラスには勿論、キンミヤのマークが記されています。

ホワイトボードから、まずは早速「かきフライ」。sanshuyahonten033ヶか5ヶの選択肢もちょと嬉しい。
今や身近な都市伝説と化した(笑?)、銀座「三洲屋」のそれと比べたりなんてことはせず、素の気持ちで齧り付く。
うんうん、一抹の臭みもなく、澄んだ滋味にぐっとくる。
はい、美味しゅう御座います。

続いて正面の壁に貼られた短冊のひとつから「鳥豆腐」。sanshuyahonten04間違いなくソソる感じは銀座の店に軍配だけれど、これはこれで文句はないぞとホッピーのグラスを追いかけます。

「茄子のしぎ焼き」ってのにもお供になってもらいます。sanshuyahonten05しぎ焼きってのは、鴫焼きと書くようで、つまりは茄子の味噌田楽の別称であるらしい。
名古屋的濃いぃ系味噌がたっぷり載せられていて、濃密な食べ口でありました。
ホッピーの中身、ください(笑)。

なんやかんやでひと心地ついたので、お食事で〆ようと試みる。
ホワイトボードから「鰤のあら煮」を選んで、ご飯と味噌汁を添えてもらいます。sanshuyahonten06醤油タレがこっくりと滲みたブリあらの身が甘く解ける。
うーん、贅沢な晩御飯であります。

改めて壁の短冊を眺める別の夜。sanshuyahonten07さてどの辺りのから攻めましょか(笑)。

まずはホワイトボードに書かれたその日のお造りから「しまあじ刺身」。
ほんのり桜色の皮目を愛でつつ山葵を載せる。sanshuyahonten08しっとりとした旨味がじわじわっと舌にのってきます。

こりゃ熱燗が欲しいとお銚子をもらう。sanshuyahonten09徳利には「活魚 三洲屋」の文字。
ホワイトボードのその日メニューがその一端とお見受けします。

かきフライに並び書かれた「かき塩焼き」に惹かれてみる。
特に強く塩を利かせた訳でもなく、牡蠣が自身の中に含んだ塩分で焼いた感じ。sanshuyahonten10うん、美味い。
広島の牡蠣ですかと訊くと、いえ長崎あたりですとお兄さん。
九十九島だったりするのでしょうか。

今日もご飯で〆ようと、今度は「若鳥唐揚げ」を所望する。sanshuyahonten11赤出汁とご飯を添えて大満足の夕餉でありました。

蒲田駅前に本店の冠抱いた大衆割烹「三洲屋」がある。sanshuyahonten12銀座や神田、八重洲など、三洲屋の系譜に詳しくないものの、ここも他に負けない気風があるとそんな風に思います。

「三州屋本店」
大田区蒲田5-11-10 [Map] 03-3731-5647

column/03533

台湾家庭料理「喜来楽」で 豆腐干炒三杯鶏牡蠣煎大腸麺線ちゅるちゅる

shirairu2それは晦日も押し迫った年末頃のこと。
またまたあのお店へと擦り抜けたのは、 蒲田駅の中央改札口。
西口の階段を降りて、ロータリーの脇を通り、 たまにはこっちからとサンライズ蒲田のゲートを潜ります。
ここに23区内唯一の「山田うどん」があるのだよ、 なんてツマンナイことを云いながら、 サンロードの方へと左に折れて、 蒲焼の「寿々喜」の佇まいがいい感じだね、 なんてことを話しながら線路沿いを往く。
すると踏切のところでなにやら撮影に勤しんでいる御仁がいる。
あれ?っと声をかければやっぱり、グヤ父さんじゃありませんか(笑)。

そのままやーやーと例の狭くて急な階段を上がる。
二階の客間を覗くと、窓側には「HAPPY BIRTHDAY」の飾り付け。shirairu2_01あれ?誰かの誕生日だったっけと顔を見合わせていると、 そこへ店のオトーサンが上がってきて、 手前、冷蔵庫前、厠前のテーブルを指差した。 あ、こっちですよね、そうですよね(笑)。

料理はもう全面的におまかせでお願いをして、 隅の冷蔵庫から勝手に麦酒瓶を取り出して、 最初のカンパーイ!shirairu2_03そこへお皿が4品ほど届きました。

ところが、さっきから時計をちらちらみていたグヤ父さんが、 それ今だとばかりに立ち上がり、線路側の硝子窓を引き開ける。
じっと待つこと数十秒。shirairu2_02頭上の「HAPPY」が風に少し揺れる。
父さんのiphoneがちゅるちゅるちゅるちゅる~と唸る
一体全体、なにを撮っているのでしょう。

ちゅるちゅるをひとまず終えて、テーブルに座り直して、 ちょっと遅れて合流した、蒲田と云えばのkimimatsu姐さんとご無沙汰のカンパーイ!
テーブルのお皿には、「筍の豚炒め」に「葉大蒜のベーコン炒め」。shirairu2_04shirairu2_05素朴な炒め物だけど、葉大蒜の風味にベーコンの脂がよく似合って旨いっス。

もうふた皿は、「豆腐干炒め」に「三杯鶏(さんぺいちー)」。
高野豆腐とはちと違う豆腐干ってこうしていろんな炒め物に重宝しそう。shirairu2_06shirairu2_07三杯鶏は、大蒜がごろごろっと入っていてダイジョブかなっと思うけど、 まずは、すっかり濃い目の飴色に染まった小さめの手羽中を両手で持ち、 口の廻りを汚しながら齧りつく。
うまい。
醤油に紹興酒あたりのお酒を主体にこっくりと煮付けてある。
ほっこりとろんとした大蒜もまた旨いのだ。

おまかせメニューは、ココのトーサンカーサンの愛情の勢いのままどんどん来る。shirairu2_08お馴染みの絲豆腐のサラダ「豆腐干絲」は、胡瓜、セロリ、人参を同じ細さに刻んでいるところが、 まず肝要なのでありますね。

iphoneでちらっとなにやら調べ物をしていたグヤ父さんがふたたびむっくりと立ち上がる。
引き開けた窓辺のさっきのポジションに座り直して蒲田駅方面を注視する。shirairu2_09今通ったヤツがまたすぐ折り返してくるのがまたえーんや、とかなんとか宣ひつつ、 ちゅるちゅるちゅるちゅるちゅるる~っとiphoneを繰る。
一体全体、なにを撮っているのでしょうね(笑)。

「嗚呼、あの、ヴァージンオイスターに似た牡蠣がここにも!」と、 以前お邪魔した時に愕かせてくれたのが、「牡蠣煎」。shirairu2_10小さな牡蠣を片栗的とろみ粉と溶き玉子の膜で包むようにする、 印象的な台湾のお皿のひとつだ。

台湾料理で印象的と云えば、これもそうだねと「緑竹筍」。shirairu2_11那覇で見付けた台湾料理の店「青島食堂」でいただいた筍も柔らか甘くって、 そこでも同じように、例の甘いマヨネーズをつけていただいたのを思い出します。
ザルツブルク帰りのlara姐さんも、マヨネーズたっぷりつけてご満悦。

定番の子袋と胡瓜の和え物をいただいていると、 オカアサン(芸名マリさん)が、紹興酒にこれが合うよと持ってきてくれたのが台湾の梅干。shirairu2_13shirairu2_14しわっしわで小さい梅干を紹興酒のグラスに投入すると、 徐々に水分を含んで次第に柔らかくなっていき、 それと同時に梅エキスがほんのり甘く紹興酒に滲み出す。
ザラメ入れたりなんかするよりも断然この方がいいね。

これも以前、とっても面白がせてくれたよねと「茶葉蛋」の殻を剥き始める。shirairu2_15お茶で煮ることで茶褐色の殻になり、 中の白身も蜘蛛の巣状の模様と風味が加わるのであります。

台湾腸詰で紹興酒のグラスを舐めているところを思い出すと、 またこの光景も思い出す。shirairu2_16ちゅるちゅるちゅるちゅるちゅるちゅる~ん
あれ?グヤ父さん、走りゆく電車を撮ってるんでしたっけ(笑)?

これも定番かと思うのは、「しじみの醤油漬け」。shirairu2_19ふと、名古屋は栄の台湾薬膳料理の店「満拿(まんな)」の妖しい感じを思い浮かべます。

「食べる?」と訊くオトーサンの問いかけに勿論NOとは云わない総意にて「大腸麺線」。
パクチー大盛りでお願いします。shirairu2_20鰹出汁魚粉の利いたとろとろツユにまさに”麺線”という趣の極細米麺がよく似合う。
そこへホルモンの滋味が追い駆けるっつー仕掛けであります。

今度は、ほろ酔いのマリさんが二階に上がってきて、これ食べる?と訊く。
手にした野菜は、「A菜」というそうで、冬しか採れないという台湾の野菜。
既に随分食べたような気もするけど、全然膨満感はない。shirairu2_18勿論いただきますとお願いした炒め物の葉っぱは、 なんだほっとするよな優しい味わいでありました。

デザートには、谷中の専門店でもお馴染みの「愛玉子」。shirairu2_21シロップをちょっと加減したらやっぱりほぼ味がない。
檸檬汁も甘味もしっかり注入するのが美味しい愛玉子のいただき方だと改めて知りました。

池上線の線路際でちょっと妖しいネオンが誘う台湾家庭料理「喜来楽(しーらいるー)」。shirairu2_22狭い一階のキッチンからこれだけの色々台湾メニューが繰り出されてくるなんてちょっとミラクル。
台湾のオトーサンと台湾のオカーサンが親戚一同を迎えるように接してくれるのが心地よい。
そして、そんな「喜来楽」には基本的にお休みがないそう。
台湾に帰ることがないので、日本に渡航する知人があれば、 台湾ならではの食材を持ってきてもらうことが多いという。
実はタイムリーで貴重な台湾の食材を惜しみなく供してくれているんじゃないかと知れば、 ますます有難くいただかなければいけないね。

口関連記事:
軽食喫茶「愛玉子」でつるりんと涼しげ檸檬色谷中の夏の風物詩(14年10月)

「喜来楽」
大田区西蒲田7-60-9 [Map] 090-4527-3392
http://homepage3.nifty.com/shirairu/

column/03512