「とある人形町風情」カテゴリーアーカイブ

旬の味「十四郎」で 和装家屋の魳の焼き物鶏南蛮おまかせ昼膳

toshiro.jpg人形町通りから文教堂書店を折れて真っ直ぐ、 日本橋小学校・日本橋図書館へと向かう裏通り。 一本隣の甘酒横丁続きの通りほどではないものの、 此方にもぽつりぽつりとお食事処が並んでいます。 硝子越しに覗く雰囲気が気に掛かる、 鉄板焼きの「No Reservations」とか、 閉店した中華「華子」の跡には、 如何にも際コーポレーションな装いの 小籠包・餃子の店「雲龍一包軒」であったり。

その並びには、コンパクトな間口乍ら、 板塀で囲んだ風雅な面持ちの家屋が建つ。toshiro01.jpg旅籠であれば、外国人旅行者に人気の出そうな、 そんな雰囲気を醸し出しています。

頭を少し屈めて入った処には、紅赤の暖簾。toshiro02.jpgその脇には、筧注ぐ水鉢が配されたりなんぞしております。

正面の木戸のところで人数を告げると、おひとり様は大概、 下足を脱いですぐのカウンターに通される。toshiro03.jpgバックバーならぬ正対する棚には、大きな皿や深い鉢など、 色々の大きさ、高さ、厚みで焼いた酒器食器が並んでいます。

此方「十四郎」のおひるは、限定30食の日替わり「おまかせ昼の膳」のみ。 店先からその日の献立が判らず、 今日はなんだろなと考えながら腰を落ち着けることになります。

例えば或る日は、カマスの焼きものが主菜にて。toshiro04.jpgありそうでいて意外とおひるご飯の膳の上では余り見掛けないカマスくん。 なんだかちょっと贅沢な気分で嬉しがらせます。

別の日には、鶏と卵の二色のそぼろに甘めのあんのかかった鶏のお重。toshiro05.jpgお箸だと不調法となるので、匙でいくのがテンポよく美味しい。 何気に鶏づくしのお重に満足です。

タイミングによっては、いつものカウンターが満席なこともある。toshiro06.jpgそんな時に初めて階上へと案内されました。

6名さまほどの個室の一室で、最近頻出メニューの鶏南蛮。toshiro07.jpgカラっと揚がった衣と程よくジューシーな身肉にタルタル。 タルタルに玉葱が使ってあれば”南蛮”なのか、 こふいふ揚げ口が広く”南蛮”なのかなぁ。 お蕎麦の鳥南蛮には筒切りや斜め切りの長葱が定番だけどなぁとか、 そんなことを考えていたらもう食べ終わっていました(笑)。

帰りがけにもう一方の、表側の階段に回ってみた。toshiro08.jpgtoshiro09.jpg幕板には細工が施してあり、 京都・源光庵の悟りの窓ならぬ、円形の窓が陽射しを取り込んでる。 暖簾の前から見上げると、笹の葉の影の理由が分かります。

人形町の裏通りに和装の設えで迎える会席の店「十四郎(とうしろう)」。toshiro10.jpgオーナーの女将が素人から発起して創めたところから”とうしろう”。 夜は夜でおまかせコースの旬な会席料理がいただけるよう。 逆説的に、玄人であること、 玄人としての技術と知識と気概を備えるべく努めていることを暗示しているのでしょうね。 丸ビル35階にもお店があるようです。


「十四郎」人形町本店 中央区日本橋人形町1-5-14 [Map] 03-3662-0163 http://www.touhonpo.com/
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にんぎょう町「谷崎」で 谷崎潤一郎生誕の地で冷しゃぶにカキフライ

tanizaki.jpg人形町のメインストリート、人形町通り。 その人形町通りが交叉する道のひとつが、 ご存知甘酒横丁であります。 甘酒横丁というと、パフェの想い出の「森乃園」とか、 一杯呑れるそばやどんぶりモノの「東嶋屋」とか、 “天然ものたい焼き”で連日行列の「柳屋」、 そして居酒屋「笹新」なんかを思い浮かべる、 人形町通りから明治座へと至る通り。 でも、どふいふ訳か、日頃徘徊するのは、 それとは逆の小網町寄りの通りなのです。

甘酒横丁の信号から喫茶去「快生軒」、西洋料理「来福亭」と過ぎると、 いつもお決まりの「玉ひで」の行列にすれ違う。tanizaki01.jpg通常は、お店側から折り返して、車道寄りにもずらっとひとが並んでいるのだけど、 極稀に「あれ、今日は割りと空いてるな」という日もあるようです。 行列を特別苦にしている訳ではないものの、 此処の行列だけにはいつも「ご苦労さま」と小さく呟いてしまいます(笑)。

その先、Bistro「CHEZ ANDRE」の向かい、西洋御料理「小春軒」の前を往く。 「小春軒」隣のビルの脇に立つ黒御影の石版を何気にみると其処には、 “谷崎潤一郎生誕の地”と刻んであります。

その脇には中央区の教育委員会による解説の標が掲げてある。tanizaki02.jpg「細雪」や「痴人の愛」の谷崎潤一郎は、 此処にあった祖父経営の谷崎活版印刷所で生まれたんだそう。 兜町にある今の阪本小学校(阪本町公園の並び)に入学後、 父の事業の失敗により、近くを転々とする暮らしをしていたらしい。 ふーむ、そうだったのか。

そんな、谷崎潤一郎生誕の地にあるのが、 その名もそのまんま、にんぎょう町「谷崎」。tanizaki03.jpgふーむと思いながら、おひとりさまは、 馬蹄形のカウンターの一角に収まります。

そのカウンターの中程には、通常厨房の何処かにあるであろうスライサーが、 すっかり磨き上げられて鎮座してる。tanizaki06.jpgお肉屋さん系統のお店であることを示しているようにも見受けます。

それならばということで、常設メニューから「ハンバーグランチ」。 選べるソースをこの日は、おろしポン酢でお願いします。tanizaki04.jpgころんとした背の高いフォルムのハンバーグは、 オーブンで火を入れた後に焼き上げているのでしょう。 肉々しさと滲む脂の具合は悪くない。 崩した半熟目玉焼きとの相性も勿論です。

夏の日には、「冷しゃぶ定食」。tanizaki05.jpg豚の旨味と脂の甘みが真っ直ぐ味わえる。 味濃いぃめの胡麻ダレじゃなくて、 青しそおろしポン酢か、柚子胡椒のちょい付けにすればもっと佳かったかな。

とある日の週替わりランチは、「黒毛和牛すきやき丼」。tanizaki07.jpg所謂ツユダクとは逆方向のちょっと品のあるおどんぶり。 でも、牛肉の滋味がじわじわっと攻めてくる。 やっぱりオプションの温泉たまごのっけをしておくのだった(笑)!

tanizaki08.jpg またまたとある週に階段下の黒板を確かめると其処には、 「豚肉の生姜焼き」。tanizaki09.jpg肉厚のロース肉におろし生姜たっぷりのタレがしっかり絡んで、 ご飯が一気に減っていきます。

そして、シーズン突入の頃には「カキフライ」。tanizaki10.jpgあれ、お肉系のお店だとばかり思っていたけれどと思いつつ、 椅子に座るなり「カキフライ!」と叫んでみたりします(笑)。

半月の網に据えたカキフライが奮発の六丁。tanizaki11.jpg如何にも時季初めを思わせる小振りな牡蠣が、 それでも頑張って滋味を炸裂させてくれました。 また、季節が深まるにつれて変遷する味わいが愉しみですね。

人形町は、彼の谷崎潤一郎生誕の地にしゃぶしゃぶと創作料理の店、 その名もそのまま「谷崎」がある。tanizaki12.jpg主軸であるところの牛肉・豚肉と谷崎潤一郎との関連は、 最早全くきっとないのではなんて、この際言いっこなし。 夜の部ではやはり、 豚のしゃぶしゃぶやすきやき風の牛しゃぶのコースが待ち構えているようです。

口 関連記事:   ほうじ茶「森乃園茶房」で 抹茶と違いほうじ茶パフェは熟々難しい(09年06月)   西洋料理「来福亭」で カキバタヤキ最高のご飯の友(08年10月)   Cafe Bistro「CHEZ ANDRE」で シューファルシとママンの笑顔(08年11月)   西洋御料理「小春軒」で かきフライにかきバタヤキ春さんの面影(08年12月)


「谷崎」 中央区日本橋人形町1-7-10 ツカコシビル1F [Map] 03-3639-0482 http://www.tanizaki.jp/
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RESTAURANT「日勝亭」で ナポリタンオムライス新装前のおひる時

nisshotei.jpg蛎殻町にある日本橋公会堂の前から、 「伴助鯖定食」や「生姜焼定食」が小粋な店、 酒肴「柿一」へと向かう途中で、 自然と目に留まるのが「日勝亭」なるお店の看板。 店先のスタンドにあるメニューを眺めると、 「チキンカツレツ」から始まるセットメニューが20ほど。 典型的な洋食屋さんメニューには、 日替わりのランチも用意されています。

一階の窓辺の席が空いていたら、そこへ滑り込む。 先ずは気になる「ナポリタン」からいただきましょう。

蛇腹な衝立のむこうから、 さっさっさっと割と軽やかな炒め音が聴こえてきた。 それは、「ナポリタン」の音でしょか。 それとも「ヤキメシ」あたりを炒めて、 フライパンを返しているのかもしれません。

やや時間を要して届いた「ナポリタン」。nisshotei01.jpgお皿の縁の”Nisshotei”が一瞬、”Noritake”のようにも見えます(笑)。

見た目やや細麺で、油断したらシャツに飛ぶ系の気配のする。nisshotei02.jpg実食してみると、麺を湯掻いた湯の塩が強過ぎるのか、 それがそのまま食べ口を塩辛めにしちゃってる感じ。 炒めももうひと越え煽って、ケチャップの角が取れてくるといいのだけどなぁ。 やっぱりナポリタンは茹で置き太麺を豪快に炒めたものが好みなのだと、 そう思うおひる時でありました。

nisshotei03.jpgお品書きの”ハワイアン”という文句が気になって、 「ポークソテーハワイアン」をいただこうと足を運んだら、 いつの間にか”ハワイアン”の文字が目隠しされている。 そうとなればと「ビーフカツレツ」に路線変更してみました。nisshotei04.jpgポテトフライ、隠元や人参のグラッセを覆い隠すようにして、 ステンレスの楕円皿にカツレツが載っている。

薄手に叩いた牛肉と衣が離れてしまうのが残念も、 かかっているデミソースがキリッとしていてイケる口。nisshotei05.jpgふむ、もしかしたらお隣のお父さんが注文んだ「ハヤシライス」は、 なかなかの逸品かもしれません。

そんなこんなで、「ハヤシライス」をいただこうと思ってやってきたのに、 気分は何故だか、「オムライス」(笑)。nisshotei07.jpgその中央にでろんと横たえるようにケチャップを戴いた「オムライス」は、 半熟の気配のない、しっかり目に火を通すスタイルのやつ。

パラパラなケチャップライスはやや薄味の上品な仕立て。 戴いたケチャップを引き伸ばしながらいただくのが丁度よい。nisshotei08.jpg端正なオムライスに、まるで教科書に忠実な正しき気風を思います。

少しのサラダと熱々カップのコンソメではじまるおひる時。nisshotei06.jpg二階席も次第に埋まっていくのが、日常のようです。

蛎殻町の公会堂近くに老舗洋食店「日勝亭(にっしょうてい)」がある。nisshotei09.jpgnisshotei10.jpg一階のお姐さんに店名「日勝亭」の由来を訊いてみた。 すると、90年くらい親族で経営を続けているけれど、 何故に「日勝亭」なのか、その話はちょっと…、と仰る。 残念ながら、店名の由来は引き継がれていないようです。

そして、「日勝亭」は、店舗の建て替えのため、 この11月末をもって一時閉店するそう。 15年の秋に新装開店の運びとなるようです。

口 関連記事:   酒肴「柿一」で 気風のいいまぐろ漬定伴助鯖定生姜焼定煮魚定(13年10月)


「日勝亭」 中央区日本橋蛎殻町1-32-2 [Map] 03-3669-4768
column/03456

酒肴「柿一」で 気風のいいまぐろ漬定伴助鯖定生姜焼定煮魚定

kakiichi.jpg水天宮前交叉点の南側は、 住所でいうと日本橋蛎殻町。 唯一お昼メニュー「鳥わさ丼」の「よね家」や、 昭和な中華「来々軒」のある日本橋公会堂の周囲をぷらぷらと散策してみると、 鼻白むよなチェーン系店がない代わりに、 気になる家族経営・個人経営の飲食店がぽつぽつと見つかります。

そんなお店のひとつが、 日本橋公会堂の正面口近くの酒肴「柿一」。

一間間口の入口右脇の足元に品札が立て掛けてある。kakiichi01.jpg使い込まれた木札は、何処かの壁に引っ掛けていたもののようだけれど、 それをこうして並べているのが、なんだか風雅だ。

kakiichi02.jpg袖が触れ合いそうな間隔で並べられた椅子のひとつに納まって、 さっき眺めた木札のひとつが知らせる品を口にする。 「生姜焼定食」の生姜焼きは、北京鍋で炒めるスタイル。kakiichi03.jpgたっぷりのロース肉に丁寧に火が入って。 キリッとしたタレ味と豚の旨味に茶碗のご飯が甘く感じられます。

目を惹く品書き「伴助鯖定食」。kakiichi04.jpg「伴助鯖」とは、福島県いわき市の干物専門店による鯖の干物であるらしい。 干物にして見るからに、立派な鯖。 凝集した旨味と脂の甘さ。 なんだかとっても贅沢な気分です。

とある日の「煮魚定食」は、金目鯛のお皿。kakiichi05.jpg金目鯛らしいふんわりとした白身に滲みる煮汁。 煮汁を吸った大根には、金目鯛の旨味。 これもまた、素朴にして贅沢な気分にさせてくれます。

お隣さんの手元を眺めて気になっていたのが、「まぐろ漬け定食」kakiichi06.jpg注文を受けてから、ボウルの醤油タレに潜らす鮪は、赤身や中とろか。 魚介を沢山、無造作に盛り込んだ何処かの海鮮丼にはない、 気風ある美味しさであります。

kakiichi07.jpg 急がず、慣れた所作でおひるの定食を供する大将の背には、 夜のお品書きと思しき酒肴たちがホワイトボードに書かれてある。 実に何気ないメニューなのだけど、なんだかとっても佳さそうな、 そんな予感がいたします。

日本橋公会堂近くの一間間口、酒肴「柿一」。kakiichi08.jpg夕暮れ時に訪れて、ぬる燗のお猪口を手に酒肴の並ぶホワイトボードを眺めたい。 ゆったり解けた時間が過ごせると想います。

口 関連記事:   和食「よね家」で 昼の一本勝負鳥わさ丼その表情や味や佳き哉(13年10月)   中華料理「来々軒」で 昭和なラーメン醤油やきそばニラレバ炒め(13年06月)


「柿一」 中央区日本橋蛎殻町1-32-1 [Map] 03-3667-7375
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和食「よね家」で 昼の一本勝負鳥わさ丼その表情や味や佳き哉

yoneya.jpg日比谷線の人形町駅を茅場町寄りに出れば、 水天宮前の交叉点も目と鼻の先。 昭和な中華料理店「来々軒」のある、 一本裏手の道を行けば、 緑青色した看板建築の名残が見つかったりする。 その近く、日本橋公会堂の裏手にみつかるのが、 「よね家」の幟だ。

ランチタイムの始まりを待って、順番に空いている席へと向かう。 火鉢を据えた板の間の奥のカウンターだったり、座卓のいずれかで相席だったり。 中二階のような小部屋もあるみたいだ。

入口を入った頭上には、大きな提灯が迎えてくれる。yoneya01.jpgカウンターの頭上には、注連縄(しめなわ)に紙垂(しで)を挟んだ神棚がある。 宮鍵とあるのは、神田明神の構と関係があるのかもしれません。

「よね家」のランチの注文は、大・中・並・小・極小などどサイズを告げるだけ。 暫し後、お願いしていた「鳥わさ丼」が届きました。yoneya02.jpg表情の佳いどんぶりに、 御飯をこんもりと覆うように載せられた鳥肉が美しい。 刻んだ大葉に菊科、紅蓼、そして山葵おろしが色を挿す。

さっと湯引きして浅く包丁を入れた鳥に辛めのタレがきりっと利いて、山葵の風味。yoneya03.jpgその身の量感にも唸りながら御飯を掻き込み、 山葵を少しづつ散らした奴を噛んではまた唸る。 鳥そのものの味も濃いよな、そんな気もするどんぶりなのです。

おひる時には、「鳥わさ丼」一本勝負の水天宮前「よね家」。yoneya04.jpg夜の酒肴たちもきっと粋に気が利いているのが、 自ずと想像できます。

口 関連記事:   中華料理「来々軒」で 昭和なラーメン醤油やきそばニラレバ炒め(13年06月)


「よね家」 中央区日本橋蛎殻町1-30-10 [Map] 03-5623-4122
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