「はんなり京町修学旅行」カテゴリーアーカイブ

純北京料理「東華菜館」本店で川床の麦酒と炸春捲五色炒飯独特な異国情緒と存在感は

八坂神社を背にして四条通りを歩き、先斗町や河原町へと鴨川を渡る。
橋の左手の欄干に沿って往き、視線をその先に送れば自ずと目に留まるその威容。
京都のど真ん中にあって、この異国情緒とは何ぞや。
四条大橋を渡る度に、その建物を含めた存在がずっと気に掛かっていました。

団栗橋との交叉点前にある、
おでん「蛸長」の佇まいをお久し振りに眺めてから、
川端通りの舗道に沿って遡上する。焼肉「天壇」祇園本店の向かいを過ぎ、
南座を背にする位置に立ち止まり、改めてその姿を眺める。
鴨川沿いに建ち、そのファサードをすっかり晒していることが、
建物の魅力の直截な発露にひと役買っているのだなぁと思わせます。

そんな「東華菜館」のエントランスは、四条通り沿いにある。
設計者は、米国生まれの建築家にして、
メンソレータムで知られる近江兄弟社の創業者のひとりでもある、
ウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏であるという。

Webサイトでは、ヴォーリズの設計や造形について、
玄関ファサードで印象的な海の幸・山の幸等食材のモチーフは、
館内にちりばめられており、目を楽しませてくれます。と、
解説しています。緑青色の銘板の脇からも鴨川納涼床の舞台が見下ろせる。
約120席の納涼床は例年、
5月の始めから9月末日まで催されているようです。

心配していた天気も愚図つくこともなく、
心配していた強い陽射しも、
川の西側に建物が建つという立地に助けられ、
川面を渡るそよ風の中でいただく口開きのプレモルが、
これまた美味しい(笑)。前菜の盛り合わせ「冷葷」のお皿には、
若鶏の蒸し物、焼き豚、湯葉に海月の酢の物等が載る。

そしてとっても気になっていたのが、
「炸春捲」つまりはハルマキ。
それは、上七軒の「糸仙」でいただいた「春花捲」や、
河原町通りの「ハマムラ」でいただいた「焼鰕捲」に似た、
独特の皮が包む。
太目の千切りにした筍をメインにそれを束ねるようにした具が、
スッパリと包丁を入れた断面から綺麗に覗く点も同系統だ。
実はこの手のハルマキが好きなんだ(笑)。「干烹大蝦」はその名の通り、
大きな海老の揚げ物が主題。
大口開けてガブリと齧り付けば海老の甘さが一気に弾ける。
うん、これも悪くない(笑)。

ひと心地ついたところで何気なく頭上を見上げる。
壁にもタツノオトシゴや蛸などをモチーフとしたレリーフが、
所々に配されているらしい。夜の帳が鴨川の縁にも下りてきました。

お会計を済ませたところで、
建物内部やエレベーターなぞを見学したいと申し出る。
ぜひぜひと快諾してくれて早速、
みんなでエントランスホールのエレベーター前へ。

「東華菜館」のエレベーターは、Webサイトによると、
1924年米国で製造、輸入されたOTIS製。
現存する日本最古のエレベーター、であるという。三枚の硝子扉の中にある格子形の蛇腹式内扉がいい。
運転手のオジ様が操作盤を操作するとゆっくりと昇っていく。
四角い箱ではなく、
当時からしてL字の二面に扉があるカゴの形状であったなんて、
何気に凄い。
扉の頭上に備えた時計針式のフロアインジケーターが、
兎に角いい味出してます。

いい味といえば、上階の宴会場の設えも調度も遜色がない。
長椅子やサイドテーブルなど、
2階の個室にはヴォーリズ設計の家具が配されているそう。テラスから眼下を見下ろせば、
さっきまで佇んでいた川床のデッキがみえる。

そう云えば丁度一年位前にも此処にお邪魔したことがありました。その時はビアガーデンとなる屋上と同じように、
提燈の揺れるテラス席へ。
シェードがあるので多少の暑さは凌げて、風も入る。
眺望よろしく、四条大橋渡る鴨川を見渡し、
お向かいの南座の横顔を眺めます。

ただ実はちょっと困難なことがあった。
メニューを開き、日本語勉強中のお兄さんに相談するも、
一品料理それぞれのポーションがそもそも、
おひとりさま客の想定をしていないンだ。

あれこれいただきたいけれど、お皿を絞り込まねばならぬと、
まずはビールをいただいてからウーンと腕組み(笑)。
日本の中華料理の定番系で攻めてみようかふとそんな気になって、
まずは「乾焼明蝦」つまりはエビチリをいただく。「糖醋肉」つまりは酢豚の肉団子がいいんだな。

そして「東華菜館」の素朴なスペシャリテが「五色炒飯」。しっとりと炊かれたご飯の粒が立っているのは勿論のこと、
薄味にして旨味のベールがきちんと包んでいて、
なんかこう、ちょっとした品格があるのです。

京都の真ん中、四条大橋の畔に純北京料理の「東華菜館」はある。Webページには、
「東華菜館」の前身は、西洋料理店「矢尾政」。
「矢尾政」二代目店主・浅井安次郎氏がビアホールブームに乗り、
新しいビアレストランをイメージ。
その設計をウィリアム・メレル・ヴォーリズ氏に依頼し、
大正15年に、このスパニッシュ・バロックの洋館が生まれました。
とある。
成る程、元々は洋食のレストランだったんだ。

ところがその後、戦時色が深まる中にあって、
洋食レストランの存続が許されない状況になり、
二代目店主は建物を中国人の友人・于永善に託す。
大連で北京料理のベースである山東料理を修得していた于永善は、
ここで北京料理店を創業。
昭和20年末に「東華菜館」が誕生する。
この独特な異国情緒と存在感は、
そんな時代の背景の下生まれたものなのでありますね。

「東華菜館」本店
京都市下京区西石垣通四条下ル斎藤町140-2 [Map] 075-221-1147
http://www.tohkasaikan.com/

column/03758

北野上七軒「ふた葉」でたぬきうどんお揚げとあんとおろし生姜のトリオがズルい

futaba上七軒、と聞けば真っ先に思い浮かべるのが、北野天満宮の菅原道真公の御歌を掲げた楼門脇の梅の花でも、天満宮の鳥居前で行列をつくる「とようけ茶屋」でもなく、軒と軒とが鍔競り合うような上七軒の路地に潜む廣東料理の店「糸仙」。
五つ団子の紅い提灯やきりっとした藍色の暖簾。
京都の中華料理の個性の片鱗を垣間見させてくれるようなお皿たち。
その「糸仙」へ向かう上七軒通りにもう一軒、ずっと気になる佇まいの店がありました。

久し振りに天満宮にお参りしてから境内の奥から横手に出る。futaba01東門を背にして二岐を右手に往けば、それが上七軒通り。
目当ての店は、過日と変わらぬ佇まいを魅せていました。

小上がり席にひとつだけ空いている卓を得て、
配膳口の上にずらっと並べ掛けられた品札を見上げます。futaba02京都でうどんなら、
祇をん「萬屋」の「ねぎうどん」に代表される、
九条葱のおうどんがいい。
ところがまだその時季(冬季)に至っておらず、
恐らくひっくり返っている品札が「ねぎうどん」のそれなのでしょう。

ならばお揚げさんで参りましょうかと、
改めて黒の品札の並びを見定める。futaba03届いたどんぶりには、
しっかりとしたあんの湖面が張られてる。
半透明のあんの下に刻んだお揚げの並びが窺えます。

京都で”たぬき”といえば、
“お揚げにあんかけ”であるらしい。futaba04futaba05甘辛く炊いたお揚げに、
片栗粉でとろみをつけた出汁が妖艶に滲みる。
そこへおろし生姜の辛味風味が色を挿す。
うどんそのものに特段の妙味はないものの、
この、お揚げとあんとおろし生姜のトリオは、
九条葱のおうどんに負けないズルさがあるのです。

京都北野、上七軒通りに京のうどんの店「ふた葉」がある。futaba06「おぼろ」に「のっぺい」、「けいらん」に「肉カレーうどん」。
「にしんそば」に「中華そば」までもが気になるけれど、
次回の機会があるならぜひやっぱり、
「ねぎうどん」をいただきとう御座います。

「ふた葉」
京都市上京区真盛町719 [Map] 075-461-4573
http://www.futaba-kami7ken.com/

column/03661

大衆酒場「京極スタンド」でかきフライオムレツすじ肉煮込ハイカラな昭和の匂い

standいつぞやの琵琶湖南西の街、大津からの帰り道。
浜大津駅から上り坂の軌道をするするっと走る京阪京津線の路面電車は、そのままなんと地下鉄になる。
道路の上を走っていた車輌が地下鉄に化けるというのは、世界的にもそんな事例の多いものではないのじゃないかと思うのだけれど、如何なものでしょう。
そんなことを考えている裡に、ややスピードを上げて地下鉄東西線のトンネルを進んでいた電車が、京都市役所前駅のホームへと滑り込む。
久し振りにこの辺りを徘徊してみましょう。

河原町三条から寺町通りへ廻って、
いつぞやの「京都サンボア」の表情を拝み、
そのままずっと南下して、
ひと筋お隣の新京極のアーケードへ。stand01「スタンド」と示すどこかノスタルジックな立体文字が、
行き交うひとの流れの向こうに見付かりました。

白の暖簾越しに中を覗き込むと、
ずっと以前に初めてお邪魔した時と同様、 ほぼ満席状態。stand02ちょっと待ってねと、
奥のほうで一席を捻出してくれるの待つ間、
レジ近くの類さんの写真を眺めます(笑)。


案内いただいた椅子から入口方向を振り返り、
天井を見上げればまたそれもいい表情。stand03赤銅色を天井や照明器具にもってくるなんて、
なかなかのセンスではありませんか。

席の正面の壁を見遣れば、
「かきフライ」の文字。stand04stand05しっかりめに揚がった「かきフライ」は、
いただいた麦酒にも勿論いいお供。
添えてくれたマヨネーズも、なんだかとっても似合います。

「すじ肉煮込み」はきりっとした仕立て。stand07細かめに包丁を入れた蒟蒻にも味が滲みて、
いい合いの手を挿し込んでくれます。

両側からお客さんがぐるりと囲むテーブルのトップは、
長くお仕えしている風の大理石。stand06グラスやお皿を置く瞬間にほんの少し気を遣う。
でもその、レトロな風合いが好ましい。
係りのお名前がしっかり刻まれた伝票も勿論、
どこか懐かしいテイストを保持しています。

お代わりのジョッキを角ハイにする。stand08しっかりめの炭酸がキュッと利く。
ジョッキを口に傾けながら、壁の品札を物色します。

遠く入り口側の品札には、
南蛮漬、シュウマイ、ミックスフライ、ハムカツ、そしてオムレツ。stand09刻んだハムをたっぷし含んだオムレツの、中はふんわり。
なんだかさらに心地よくなってきました(笑)。

新京極の有名酒場と云えば、
ご存じ「京極スタンド」の名が真っ先に挙がる。stand10昭和の匂いを色濃く漂わすハイカラな大衆酒場は、
地元のひとと観光ちっくなひととが袖触れ合って、
きっと今日も混み合っている。
今度は複数名で訪れて、
こんもり盛られた「揚げそば」なんかもやっつけたいな(笑)。

「京極スタンド」
京都市中京区新京極通四条上ル中之町546 [Map] 075-221-4156
http://sutando.aa0.netvolante.jp/

column/03659

割烹「おお杉」で牡蠣胡麻油鍋に逆立ち炭火焼琵琶湖産本諸子絶品なる簳魚天麩羅

ohsugi琵琶湖の南西に位置する大津市。
一応県庁所在地なんですけどねと聞かされて、疑う訳ではないけれど県庁がどこにあるのかと調べると成る程、滋賀県の県庁は大津にあるのですね。
件の県庁は、JR大津駅北口から割りとすぐの場所にある。
泊まったホテルからもすぐなので表情を窺いに足を向けると、ひっそりとした中にこじんまりとしつつも風格のある建物が拝めた。
明治4年に建てられた登録有形文化財であるらしい。

県庁のある場所は、どこかの時代で町の中心であった筈なので、
周囲にはそれなりに飲食店街があるように思っていたのだけれど、
滋賀県庁の周りは実に静か。
旧来の繁華街は浜大津寄りの方になるのかなと考えつつ、
県庁を背にして歩き出す。
と、そこでいい表情をした店の灯りが目に留まる。
ちょっと敷居が高そうだけど、一丁お邪魔してみましょうか。

店先のお品書きを眺めてから、
右手のアプローチを進む。ohsugi01道路からすぐに入口を置かない設えは、
やはり一定の風格を思わせます。

縦格子に匿った道路寄りはテーブル席になっているようで、
お一人さまは入って正面のカウンターへと迎えられました。ohsugi02ご主人と思しき御仁に会釈を送り、
小さな麦酒をとお願いした肌理細やかな泡からスタートです。

お通しがいきなり面白い。ohsugi03高さを三段に変えた小皿に、
煮付けた鰯や白和えなんかが盛り付けてある。

この日の品書きを捲れば、
気なる行が続いていて、困る(笑)。
三品ある牡蠣の料理から「かきごま油鍋」をお願いしました。ohsugi04出汁の利いた醤油の仕立ての鍋に胡麻油の色が浮かび、
漂う匂いが香ばしい。
牡蠣の滋味に胡麻油のコクが備わって、
成る程、牡蠣はこふいふ鍋にすればいいんだと膝を打つ気分になる。

その並びに書かれてあったのが「琵琶湖産 本もろこ炭焼き」。
公魚とは違うんですよねとご主人に訊くと、
これが諸子ですと見せてくれた。ohsugi05そもそもが、琵琶湖特産魚で、
京都でも取り扱われる高級魚であるらしい。

カウンターに炭火の網が据えられて、
ご主人から焼き方のご指南がある。
まず両面をじっくり目に焼く。ohsugi06ohsugi07次に泳いでいるような姿に諸子を網に置き、
魚のお腹側をじっくりと焼きます。

お腹側が焼き上がったらなんと、
網目の間に諸子を頭から突っ込んで、
逆立ちスタイルで頭もじっくりと焼くお作法。ohsugi08中々拝めない光景であります。
誰ですか、スケキヨスタイルだなんて云っているのは(笑)。

こうして兎に角、四方からじっくり焼いた諸子は、
生姜醤油にちょん漬けしていただきます。ohsugi09公魚よりも濃いぃ滋味があり、
じっくり焼いた皮目が香ばしくて儚くも旨い。
決して清澄ではないと知る琵琶湖の魚が故の、
じっくり焼きではあろうと想像するも、
網の上の逆立ちとじっくり焼いた滋味がいいね。

近江地酒から「喜楽長」を燗でお願いして、
改めてこの日の品書きを物色する。
「近江牛あぶりみすじ」の隣に見付けたのが、
「やがら天ぷらカレー塩」。
ヤガラって、あの、細長い魚のヤガラですよねと、
そう訊ねると、にっこりと頷くご主人。
赤いのとか黄色のとかがいますよねと重ねると、
あれ、よくご存知ですねとなる(笑)。
ダイビング中に割りとよく出会うヤツですなんて話をしていると、
ダツと同じように突っ込んできて危ないみたいですねと、
ご主人はそう仰るけれど、
目の前にいてもゆったり泳いでいる様子しか見たことがありません。

そんなこんなで註文した簳魚の天麩羅がやってきた。
添えてくれたカレー塩をほんのちょっとだけ付けて、
お初のヤガラだなぁと思いつつ口に運びます。ohsugi10おおおおおおおお。
これは旨い!
鱧なんかより断然美味しいじゃないですか!と思わず口走る。
あ、京都も近い関西圏でこう云うと引かれちゃうかな(笑)。
心地いい弾力の中から濃密な旨味が炸裂する。
頃合いよく天麩羅にしているからこそのことなのかもしれないけれど、
いやはや吃驚した。
水中で割りとよく出会う簳魚が、
こんな美味しさを秘めていたなんて。
専ら赤い体躯のヤガラが入るようです。

お代わりした燗酒を、
「田上産 菜の花漬け」あたりでちびちびといく。ohsugi11黄金色に映る菜の花漬けは、
大津の田上地域が産する菜の花を用いた、
大津の特産品であるという。
乳酸の風味も手伝って、粋な菜の花の漬け物。
大津は琵琶湖沿岸の町だとばかり思っていたら、
山間に近い地域もあるのですね。

そろそろ〆ちゃおうかなとお品書きのお食事の項を眺めると、
「かまあげそうめんカルボナーラ風」なんて一行がある。
なんだか愉しそうですねぇと訊くと、ご主人がにやりと応えます(笑)。ohsugi12適当に混ぜてお召し上がりください、
ということでグルグルクニュクニュ器の中を回すと、
カルボナーラ風というにはちょっと弛め軽めの、
玉子和え釜揚げそうめんができあがる。
この、つるんと太目の素麺はどこのものなのかなぁ。
重たくしないのがキモなのかもしれません。

滋賀県庁至近の静かな場所に割烹「おお杉」がある。ohsugi13お店に踏み入る前にちょっと身構えた気持ちは、
あっという間に和らいで途端に居心地がよくなった。
身近なる京都での修行も経ていると仰るご主人に、
その修行先を訊ねるとそれはあの「たん熊」であるという。
残念ながら「たん熊」経験はないけれど、
京料理の手練を格式張らない雰囲気で供してくれる感じがいい。
もしも今度があるのなら、その折にはぜひ、
「おお杉」名物と謳う「うなぎしゃぶ」をいただかなくっちゃ。

「おお杉」
大津市中央3-4-30 [Map] 077-526-3824

column/03650

酒亭「おふく」でおでん牡蠣バター醤油に琵琶湖産公魚天ぷら京阪の軌道のすぐ脇で

ofuku琵琶湖の南西に位置する大津市の街中で一晩を過ごすこととなった宵。
お食事処を漁ろうと当てずっぽうに徘徊を始めました。
JR大津駅近くのホテルを出て大通りを渡り、例によって細い道細めの道へと気の向く方へ進路を取ります。
大津には”京町”と呼ぶ住居表示のエリアもあり、町屋造りの家屋が所々に見付かる。
その内の幾つかは、小料理屋や割烹に仕立て直されていたりする。
知らなかったが故に余計にいい風情に思えて、一々立ち止まって眺めたりなんかいたします。

なんとはなしに浜大津駅方面へクランクしながら歩いていると、
突然にアーケードの入口に出会した。ofuku01暗がりに浮かぶは、丸屋町という大きな文字。
ひと気の少ないアーケードに闖入すると、
店先に大樽を置いた間口の広い店がある。
木彫りの文字が示すのは「平井酒造醸」。
「平井商店」は、万治元年(1658年)創業の酒蔵であるらしい。

アーケードを抜けて、京阪の京津線がスルスルと走る西近江路を渡り、
更にその裏手の方へと廻ってみる。
スナックの灯りが幾つか浮かぶ裏道を抜けると今度は、
京阪の石山阪本線が通る軌道に出た。ofuku02京阪の車輌がすぐ脇を通る角地に見付けたのが、
酒亭「おふく」の灯りです。

暖簾を潜ると早速、
ふわんとお出汁の匂いに包まれる。ofuku03そうとなれば抗うことはなし。
壁に貼られたおでんメニューの短冊から、
基本ラインの大根、玉子、すじ肉辺りをいただきます。
やっぱり寒い頃のおでんの湯気って、いいものですよね(笑)。
品書きに、クジラコロやひろうすがある辺りに、
京都の「神馬」や「蛸長」のおでんを思い出します。

おでんをいただきながらその日メニューを眺めて思案する。
「カキフライ」か「カキバター醤油炒め」か、
はたまた両方か(笑)。ofuku04選んだのは、炒めの頃合いも文句のないバター醤油炒め。
大津だとどの辺りからの牡蠣が多いのかと考えます。

やっぱり日本酒だよなぁと呟きつつ振り返って認めた短冊に、
「浅茅生(あさぢを)」という銘柄の行を見付けた。ofuku05さっき店先の前を窺った、
あの酒蔵のお酒だと合点して女将さんに御燗を頼む。
お猪口を手にうんうんと判ったような所作でほくそ笑みます(笑)。

すっかり日本酒モードになったので、
「鯖へしこ焼き」なんぞにも挑んでみる。ofuku06燗酒には勿論合うのだけれど、
如何せん塩辛いのは、血圧が気なるお年頃だからでしょうか(笑)。

琵琶湖の浜辺にいることを実感させてくれる肴はないかしらんと、
改めてこの日メニューを紐解けば、
「若サギ天ぷら」には”琵琶湖産”と冠がついていた。ofuku07これが琵琶湖の公魚かと、これまた訳知り顔になる(笑)。
大将に訊けば、まだ小振りな時季であるらしい。
もうちょっとカラッと揚げてくれるとより美味しいものと思います。

ここいらで〆てしまおうと更にメニューを物色すると、
お店の名前を冠した「おふく鶏うどん」というのがある。ofuku08ぶつ切りした鶏の身が、
ゆったりした汁に浮かんでいい感じ。
うどんそのものは、
コシつきで迫るでもやわやわに溺れるでもない、そんなヤツ。
いつぞやのおひるに近所の「麺せい」でいただいたのが、
鍋焼きうどんであったことをふと思い出す。
この辺りは何気にしっかり根付いたうどん文化圏なのでは?
なんてことも思ったりいたします。

浜大津駅前、京阪石山坂本線の軌道のすぐ脇に、
酒亭「おふく」がある。ofuku09近所のスナックのおねぇちゃん達が、
煙草ぷかぷか吸っているのがちょっぴり迷惑だったけど
彼女らがきっと常連だもの、
まずは気にしないように努めるのが、
一見さんの振る舞いでありますね。

「おふく」
大津市浜大津2-4-13 [Map] 077-524-0933

column/03644