「麻布プラチナ漫ろ歩き」カテゴリーアーカイブ

お座敷洋食「ハチロー」でショウガヤキカキフライメンチカツとイチローかハチローか

hachiro恵比寿駅、広尾駅、白金高輪駅に白金台駅、そして目黒駅。
そのいずれからもなかなか距離のあるのが、恵比寿三丁目交叉点。
それ故、バス通りの交叉点にもなっていて、並木橋辺りから続くバス通りは、首都高2号目黒線が高架を走る恵比寿三丁目を抜けて、北里研究所前を通って白金高輪駅のある桜田通りへと辿り着く。
方や、西麻布辺りからやってきたバスは、広尾駅前や天現寺橋から恵比寿三丁目を抜けて、首都高に沿って目黒駅方面へと向かい行く。
そんな風に、バス便も便利な恵比寿三丁目界隈ですが、嘗ての「ロウホウトイ老饕檯」や「きえんきえら」のある白金北里商店街へは、広尾駅から散策モードで訪れたりもいたします。

交叉点を背に北里研究所方向に少し歩くと、
あれ?「きえんきえら」はここだっけ?
という風景にすぐに出逢う。hachiro01成る程「きえん」という「きえんきえら」の兄弟店なのかと、
横目で覗きながら歩くと、
青いアクリルに灯りを点した看板に目を惹かれます。

庇を作るテントも然ることながら、
壁の上部に取り付けた横長サインの書体も素晴らしい。hachiro02青い看板には、
お座敷洋食、レストラン「ハチロー」と標されています。

“お座敷洋食”といえば、
最近ご無沙汰の大森「入舟」を思い出す。hachiro03「入舟」の女将さんの様子を思い浮かべながら、
覗いたショーケースの目玉焼きは、
日当たりのよい所為か、少々陽に焼けて燻んでおりました。

扉を引くと左手にテーブル席が並んでる。hachiro04一番手前は列車のボックスシートのようにもなっていて、
おひとりさまが似合いそう。
頭をぶつけてペンダントライトを揺らしつつ(笑)、
腰を落ち着けます。

昔ながらの見開きのメニューから「メンチカツ」を選びました。hachiro05hachiro06狐色では不十分とばかりに、
くっきりときっちりと揚げた衣が特徴的。
油はきちんと切れていて、成る程さくっと芳ばしい。
煮浸した茄子の小鉢も気が利いていて、
懐かしさの滲む、安心なる食堂の味わいです。

日を替えて今度は、
Gingerちんも齧ってた「ショウガヤキ」を所望します。hachiro07hachiro08カタカナ書きがレトロでいいかもと思いつつ横から眺めると、
まるで隠すかのように重ねたロースの二枚重ね。
おろし生姜の表情を確かめながら齧り付く。
その噛み応えになぜかニンマリ。
ショウガの利きが嬉しいしょうが焼きです(笑)。

季節が巡って冬となったなら、
此処にも「カキフライ」シーズンがやってくる。hachiro09hachiro10ただし、夏も冬も揚げ油の温度は変わらない。
小振りな牡蠣フライをわらわらっとお皿に盛ってるのも特徴的。
醤油使いもよく似合う牡蠣フライでありました。

白金北里商店街の片隅にお座敷洋食「ハチロー」がある。hachiro11イチローならぬハチローさんがご主人なのかと、
そうだとばかり思っていたらなんと、
ご主人の苗字が鉢蝋さんだから。
ロレンスさんによると大森にも同系の「ハチロー」が現存するらしい。
大森「ハチロー」にもお邪魔してみなくっちゃだ。

「ハチロー」
渋谷区恵比寿2-39-4 [Map] 03-3444-8600

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木ようカキ屋「コジシタ」で 世界向け先端カキフライ牡蠣あれこれ

cozyshita.jpg知ってるひとは勿論知っている、 世界初の牡蠣の資格、オイスターマイスター。 Webで行うテストにパスして手続きすることで、 今日からあなたも、 Jr.オイスターマイスターの仲間入り(笑)。 そして、より気合の入った方は昇格試験を受けて、 晴れてジュニアの外れたオイスターマイスターとなり、 それぞれの活動を愉しんでいます。 そしてそして、さらに気合の入った方々は、 グランドオイスターマイスターとして、第一線で日々活躍されているのです。

そんなオイスターマイスターのおひとりが、役者にしてカキ☆ガールの泉祥子さん。 例えば、「第1回かき日本一決定戦」といった日本オイスター協会のイベントでもMCを担ったりなんかして、グランオイスターマイスターの候補にも挙げられています。

そんな泉さんが麻布十番に開いたお店が、「コジシタ」。 “木ようカキ屋”という副題が示すように、 木曜日の夜だけ営む、オイスターバーなのであります。

麻布十番の2番出口の階段を上がり切って、 ちょっと振り向いたところにあるのが、「Cozy Table」。cozyshita01.jpg「Cozy Table」は、 ゆったりソファの向こうにカウンターや丸テーブルを配したシガーバー。

迎えてくれたおねえさんに下へ行きますと指を指して、 そのまま階段を降りる。cozyshita02.jpgそう、「コジシタ」は、「コージー・テーブル」のシタにあるから「コジシタ」。 ふと、東京タワーを見上げるレストラン「タワシタ」を思い出します(笑)。


ところで、初めて此処を訪れたのは、 木曜日ではなくて、連休狭間の日曜日の夜のこと。 殻付き生牡蠣の伝導師氏協会会長が催す「世界制覇用カキフライお披露目2Days」の一夜へとお邪魔したのでありました。

その直前まで行っていたという、オイスターマイスター昇格試験。 合格者お祝いの乾杯にちゃっかり混ざります(笑)。 お祝いのグラスは、ご存知ギネス。 黒い缶のプルを引けば仕込まれた小さな玉が活躍して、クリーミーな泡を引き出すのが、 ギネスのスタイルだけど、この夜のギネスは業務用の缶。 cozyshita03.jpg業務用には小さな玉が仕込まれておらず、その代わりに用意されていたのが、 専用のマシン。 ギネスを注いだグラスを載せれば、微細な振動が与えられて、みるみる例のクリーミーな泡が生まれる。 カウンターでのちょっとしたデモにもなるね。

さて、目の前でオイスターマイスターになりたての女性が早速牡蠣を剥いてくれている。 その名を世界展開用牡蠣「先端」という。cozyshita04.jpg丸の内のイベントで確かめた、 “小さめの牡蠣が美味しい牡蠣”を実践する戦略的な牡蠣で、 すんなりひと口サイズの牡蠣が深いカップの殻に収まっている。 ポイントはまだあって、その身が牡蠣が取り込んだ海水に浸っていること。 洗うことなく、海の魅力と共にある牡蠣をそのままいただくのが、「先端」の本懐であると。 そのためには、当然のことながら、清澄な海域で、汚れなきよう牡蠣を育む必要がある。 「先端」は、西日本某所の、沿岸の富栄養の海とは異なる海域で育てた真牡蠣。 ひっくり返して見つめる牡蠣殻が綺麗なのは、シングルシード式で垂下し、収穫することも大きな要因なんだね。

そんな「先端」は、そんな育った海の滴も魅力の裡。 それならと、殻から掬った身をバゲットで受けていただくのが、塩梅がいい。cozyshita05.jpg海水は勿論塩っぱいので、それを緩和しつつ、海の魅力ごと牡蠣をいただく。 バゲットのモソモソ感がやや難なのだけど、その辺りも工夫と改善が図られることでしょう。

そうして「先端」を幾つもいただいたところへ届いたのが、 これまたお待ちかねの「カキフライ」。cozyshita06.jpg「先端」を使っているので、勿論のひと口サイズ。 会長が揚げてくれた揚げ立てをフーフーとしてから、丸ごとを齧ります。

うんうん、美味い。 臭みや磯っぽさではない、海のミネラルが牡蠣グリコーゲンと一緒にぶわっと小さく弾ける。 小振りがゆえの素っ気なさなく、堂々とした存在感があるのは、 「先端」が生食に留まらず、火を入れることにも適う牡蠣であることを示している感じ。cozyshita07.jpgcozyshita08.jpg顆粒状の山葵をちょんづけしたりもしたけれど、 醤油やタルタルも添えずに、そのまんまでも十分イケるのじゃないでしょか。

この「カキフライ」には、 “世界制覇用”と謳うならではの戦略が色々な角度で準備されている。 マーケティングと云ってしまうとちょっといやらしく聞こえるかもしれないけれど(笑)、 フライ衣への工夫や食べ方提案をはじめ、 価格競争力をも備えるための図式が描かれはじめている。 世界に向け、まず手始めに「カキフライ」から、ということなのかもしれない(?)けど、 生産体制が確保できたなら、国内ですぐにでも流通してちょっとした話題になりそう。 どんなカキフライか気になる方は、 このところ毎日曜日に催している「世界へ羽ばたけ!日曜かきフライヤーズ@麻布十番」へ、ね。


さて、「コジシタ」本来の営業日である木曜の夜、 ふたたび麻布十番へやってきました。cozyshita09.jpgこの夜に用意されていた牡蠣は、5種類。 注文に応じて、泉さんが殻から剥いて提供してくれます。

まずは、「先端」に「ヴァージンオイスター宮島」。cozyshita10.jpgメニュー”Today’s Oyster”が書き示すように、 どちらも瀬戸内海に浮かぶ無人島”大黒神島”の清浄海域からやってきたもの。

もう一方の3種が「広島イノベ」に「岩かきSS」「デナイアル」。cozyshita11.jpg大振りなものになりがちな岩牡蠣も、勿論ひと口サイズ。 若竹色を帯びた「デナイアル」は、 オーストラリアのデナイアル湾から大黒神島を経て遥々やってきた。 「岩かきSS」はもう時季終盤かな。

「コジシタ」には、生牡蠣以外にも盛り沢山の牡蠣メニューがラインナップ。 白ワインでもいただいて、そちらにも触手を伸ばしましょう。

素朴に生牡蠣のどれかを「素焼き」してもらうの一興かもねと思いつつ、 それじゃぁ、「各種焼き」とあるのはなんだろうと訊ねると、 トッピングや味付けに工夫したメニューを5種類ほど用意してあるという。 その中から、泉さんが「料理対決イベント 【秋のシャンピニオン祭り~】」で調理したレシピだというシャンピニオン焼きをいただきます。cozyshita12.jpgマッシュルームと牡蠣が合わない訳がないことを実証するよな料理、だね。

片や、その名も愛らしき「オイルちゃん達」。cozyshita13.jpgま、つまりは牡蠣のオイル漬け2種類のお皿なのだけど、 オリーブオイルは兎も角、胡麻油漬けってのが面白美味しいのであります。

そして、同じオイル使いでも真鍮の手鍋に熱々でやってきたのが、「カキージョ」だ。cozyshita14.jpgcozyshita15.jpg云わずとも、なにをモジッたか分かりますね~(笑)。 思わず似たような鍋を買いに行こうかな、なんて思ったり。 そうそう、他にも「カキディーヤ」なんてメニューもございます。

そしたらば、「タイ焼き」ってなぁに?と訊ねれば、 それはあのエスニック仕立ての牡蠣となる。cozyshita16.jpgふたたびバゲットに載せてみるのも正解でした。

気がつけば、 席を得られないお客さんも出始めた満員御礼の「コジシタ」フロア。cozyshita17.jpgcozyshita18.jpg飲み物は一階からのサービスで、一階と地階が不思議な一体感のあるのも、 オイスターバー「コジシタ」の特徴のひとつになっています。

口 関連記事:   レストラン「タワシタ」で 水彩画メニューと見上げるタワーの借景(06年07月)   ENOTECA「THE LOUNGE」で未来へのシークレットオイスターバー(12年07月)


「コジシタ」 港区麻布十番4-4-1 ツイン一の橋ビル2号館「Cozy Table」B1 [Map] 03-6809-4205
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首里そば「ゆくる」で スーナのツナ和えドゥル天首里そばゆったり

shurisoba.jpg雨のそぼ降る麻布十番。 十番稲荷の前からたい焼きの「浪花家総本店」の方へと信号を渡ると、右手に「taachiターチ」のロゴタイプが見つかる。 これから向かおうとしているのは確か、此処の姉妹店なんだっけねと思いながら、そのまま”きみちゃん”の前を通り過ぎ、網代公園の脇を抜けます。 雨足強まる中、立ち止まったのはとあるマンションのエントランス前。 “首里そば”と示す暖簾がその奥に覗きます。

右手に厨房を仕切るカウンター。 正面から左手には、互いの視界を遮るように回したロの字の止まり木。 左手奥に落ち着いてみましょう。

まずはやっぱり、「オリオン」のジョッキから。shurisoba01.jpg一気にジョッキを傾けてから捲るお品書きには、 定番な沖縄料理の名前から創作の匂うお皿まで、精力的な品揃え。

ジョッキのお供にと、やや珍しいところでと選んだのが「スーナのツナ和え」。shurisoba02.jpgスーナは、石垣島などで稀少ながら採れる個性的な海藻。 “珊瑚海藻”と注釈があるように、枝サンゴのような形をしていて、 コリコキュとした歯応えが特徴。 サラダや、こうして和え物にするといい感じに南の島の恵みを愉しむことができるのです。

もういっちょとお願いしていた「ドゥル天」が熱々でやってきた。shurisoba03.jpg那覇の琉球料理店「うりずん」なんかでもいただいた、言わば沖縄料理の定番のひとつ。 “練り田芋の素揚げ”と補足があるように、田芋(たーんむ)を練って、揚げたもの。 裂け目から薄紫色の田芋がはみ出しちゃってる感じがいい。 熱々を熱々のまま、ほふはふと齧り付けば、 田芋の素朴な甘さが周囲の香ばしさと一緒に味わえて、うん、美味しい。

shurisoba04.jpg 「ゆくる」には、夜の部でも「定食」の用意があって、それが黒板に書いてある。 「首里そば」メインの定食をいただきましょう。

澄んだスープに針生姜を載せた出で立ちの「首里そば」。shurisoba06.jpg 魚介系スープの旨味に動物系のコクがひたっと支えて、なかなかオツな出来。

麺は沖縄すばらしいやや平打ちのアルデンテ。shurisoba08.jpg那覇赤田町の「首里そば」との関係や如何にと思い至るものの、 あそこまでの個性に感じ入るところではありません。

添えてくれたのは、「ラフテー丼」。shurisoba07.jpg味の滲みたほろほろの豚バラに芥子のソースが利いている。 あああ、満腹でございます。

麻布十番の沖縄料理店、首里そば「ゆくる」。shurisoba09.jpg気取らず構えず、かといってなんちゃって沖縄料理の店とは一線を画す印象のする。 「ゆくる」とは、沖縄方言で「休む」「寛ぐ」こと。 ふらっと寄ってひと時、あの島の味わいの一端に触れつつひと息、ゆったりと。

口 関連記事:   古酒琉球料理「うりずん」で 琉球料理居酒屋ドゥル天に血イリチイ(10年07月)   手打ち「首里そば」で 澄んだ一番出汁スープと一本気な剛性麺(10年07月)


「ゆくる」 港区麻布十番2-19-7 [Map] 03-3455-7220 http://www.taachi.jp/yukuru/
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てっぱんやき「むー」で 鉄板出来立てかきバター焼きしょうが焼き

muu.jpg恵比寿からのんびりバスに揺られてやってきたのは、 なんだかとってもご無沙汰な感じの白金北里通り。 「酉玉」に別館があったのだねと思いながら恵比寿三丁目の信号を渡り、中華「老饕檯(ロウホウトイ)」やバー「きえんきえら」を懐かしく眺めつ進みます。 洋食「ハチロー」にも後ろ髪を引かれながら飛び込んだのは、鉄板焼きの店「むー」であります。
ちょうど先客さんグループと入れ替わるように隅のテーブルにご案内。 店内は、左右に木製ベンチに囲まれた鉄板台が鎮座。muu01.jpg左隅のテーブルへと案内されました。

まずはビールのジョッキをいただいて。 そこへ店の大将が手に運んでくれたのは、牡蠣の剥き身とバターのキューブ。 muu03.jpg油をひき直した鉄板に牡蠣を並べ、丸カバーを被せる。 そして暫し待つのだよとばかりに厨房へ戻ってゆく大将の背中を見送って、 またジョッキを傾けます。

テーブルに戻った大将は、今がその時とばかりに丸カバー外し、そこへバターを投入。 溶かし絡めるようにしてからまた蓋をして暫らく。muu04.jpg何故か使い捨てのアルミ箔皿に盛り付けて、檸檬を添えて出来上がりだ。

ああ、その焼き目のなんとも麗しい。muu05.jpgこれで不味い訳ないわなと呟きつつ、檸檬をしゃっと搾り回して、いただきます。 うん、シンプルにバターの風味と香ばしさとが牡蠣の旨味を倍化させて、いい(親指上向)。 こいつぁビールもウマいぜい!てなもんだ。

訊けば、牡蠣は広島からのもの。 いつもは三陸の牡蠣なのだけど、とご主人。 大丈夫、きっと来シーズンには三陸の牡蠣を仕入れられると思います。

ジョッキのビールを飲み干し、お食事モードで迎えたのは、 モヤシほか野菜と豚のバラ肉を手にした大将。 バラ肉を綺麗に並べるように鉄板に配置し塩胡椒、その隣にモヤシの小山を丸く整えます。 一時被せていた丸カバーを開いてやおら、ヘラを駆使してそれぞれを焼き炒め、 調味料を施し、そしておろし生姜を投入です。muu06.jpgおろし生姜、もっと沢山でもオッケーです!と心の裡で囁きながら(笑)、 出来上がる様を見届けます。

またまた、アルミ箔皿に盛り付けられた「豚しょうが焼き」セット。muu07.jpgモヤシはそのまま鉄板の上です。

まさに焼き立ての生姜焼きをほふはふしながらいただくことの倖せよ。muu08.jpgもっと生姜を利かせて欲しいと思ったのもどこへやら、 豚バラ肉の甘さを素直に愉しむのに何時の間にか集中しています(笑)。

すべて平仮名で表記するあたりにもアットホームさ漂う、 てっぱんやき「むー」。muu09.jpg店名の「むー」は、内装を設計した方がつけてくれたそうで、 意外や特段の意味はないというか、その意図は今となっては判らないと云う。 なるほどな想いの籠った店名だと秘かに期待してたんだけどなぁ(笑)。

口 関連記事:   中国料理「ロウホウトイ」 で紅い叉焼塩魚のチャーハン古咾肉(05年07月)   和風Bar&Dining「きえんきえら」 でCAOLILA一軒家で和む(03年04月)


「むー」 港区白金5-13-8 [Map] 03-3441-2939
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牡蠣料理「麻布 楸」で ブイヤベースに炊込みご飯妖しきお部屋

j-hisagi.jpgこのところ、 ひと冬に一度くらいはランチしている銀座「楸」。 その一方で、ずっと気になりつつも麻布十番のお店には一度もお邪魔したことがありませんでした。 そんな頃、監督グヤ兄さんがこう呟いくれました。 「麻布、いこ〜や〜〜」。 御意!行きましょう、参りましょう。
予約を入れていた平日の夜。 十番パティオから網代公園の脇を抜け、 どこだろうと振り返る角地のビルにそれらしき入口が見つかりました。 階段の脇には、PIERROTの絵と「楸」の文字。j-hisagi01.jpg階段を上がり、雑居ビルの怪しい一室の扉の前で、一瞬の躊躇(笑)。 額に収まった「楸」の文字がなければ、引き開くにさらに間がかかったかもしれません。

と、店内もまた妖しい。 紅い天鵞絨のカーテンが囲み、シャンデリアとアンティーク調のランプがほの暗く灯ってる。j-hisagi02.jpgj-hisagi03.jpg奥には、カーテンで仕切る二人だけの世界的ソファー席。 バブルの頃、そんなんちょっと流行ったかもと。 四名さまは、フロア唯一にして中央の長テーブルに案内されました。

メニューは、悩ましき裏表。 j-hisagi04.jpg前菜と真牡蠣それぞれ3種をベースに、主菜と食事を別途組み合わせるか、 黒毛和牛と牡蛎のステーキか、ブイヤベースか、チーズフォンデュかを選ぶフルコース。 四人にして、何度もメニューをひっくり返して、あーだこーだ(笑)。 ベースコース+主菜+食事で挑むことに決します。

ソーヴィニヨンブランの一本で乾杯。j-hisagi05.jpg そこへ届いた最初の前菜もまたグラス。 「生ウニと牡蠣のコンソメジュレのカクテル」。j-hisagi06.jpg翳したランプの灯りを頼りにグラスの中の表情を探る。 なにせ暗いので、なにが入っているのか手探りする感じ。 ああ、コンソメのジュレを包んだトマトの酸味の中に、 雲丹の甘さと牡蠣の風味が確かにあるね。

続いて、スプーンならぬ、蓮華に載った小さな前菜「イクラと牡蠣サーモン手毬風」。j-hisagi07.jpgイクラと牡蠣とサーモンのバランスを図るのが意外や難しいのが判ります。

j-hisagi08.jpg 謂わば定番の、「焼牡蠣 香草とチーズのパン粉焼き」を食べ終えたところで生牡蠣3種。j-hisagi09.jpgj-hisagi10.jpgj-hisagi11.jpg厚岸、日生などで、妙に拘った産地のものを用意するものでもないようです。

メインディッシュのひとつが、いつぞやつきじろうさんもいただいていた、 「伊勢海老と牡蠣のブイヤベース白子入り」。j-hisagi12.jpgやっぱりウマウマな表情をじっくり拝みたいところも、なんだか覗き込むような感じになる。 半切の伊勢海老はやや小振りか。 浅蜊に鮃に、勿論牡蠣の身も含んでいます。 ああ、でも、こうすりゃやっぱり旨いよなぁ、と唸るスープの旨み。j-hisagi13.jpg余り複雑濃厚に過ぎず、魚介のエキスが素直な恵みを与えてくれています。

たまには、「牡蠣のムニエル」とか「牡蠣のチーズフォンデュ」とかという手もあるなと承知しつつも、結局選んでしまう「特上牡蠣フライ」(笑)。j-hisagi14.jpgj-hisagi15.jpg水菜を下敷きに、たっぷりのタルタルとバルサミコっぽいソース。 正直、期待したいほどの特上感はないものの、 遜色なく旨い牡蠣フライであります。

監督グヤ兄さん羨望の「楸特製 牡蠣フライのせ黒いカレー」は、 フライがダブっちゃったりするやなんやで、昼に銀座で喰うワ、ってなことに。 代わってシメのお食事に選んだのは、突然和風な「牡蠣の炊き込みご飯」。 どこぞの割烹や築地「やまだや」なんかでも思わず、おおぉと小さな歓声を上げるパターンよろしく、土鍋ごと一旦テーブル持ち込んで、蓋をぱかり。j-hisagi16.jpg立ち昇る湯気中にみる、牡蠣の身たち。 縮んでいない勇姿にやっぱりおおぉと口走ってしまいます(笑)。

そして改めて器に盛り込まれた、炊き込みご飯。 ふっくらとそしてつややかに色づいた牡蠣をその滋味を移したご飯と一緒に頬張る。j-hisagi17.jpgこれもまた、ある意味ズルい、牡蠣の堪能の仕方のひとつでしょう。

どこか懐かしい妖しさ漂う牡蠣料理のお部屋、「麻布 楸」。j-hisagi18.jpgワインをちょいと呑めば、表裏どちらのコースを選んでも、結局一万円札では足りない感じになる模様。 それに照らすともうひと超え、満足度を充たす工夫をお願いしたいところです。 付け加えるなら、料理が一番美味しくビビットに映える照度と色温度に配慮した照明が施されているのも、イケてるレストランの構成要素のひとつではとも思います。 監督kimimatsuさん油ちゃん、ありがとー。

口 関連記事:   演繦料理「銀座 楸」で 赤穂牡蛎フライのせカレー牡蛎入りカレー(11年10月)


「麻布 楸」 港区麻布十番2-16-9 網代ビル2F [Map] 03-3452-3902
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