「浅草で道草」カテゴリーアーカイブ

食堂&呑み「ボン花火」で厩橋にスカイツリー心地よき隅田川の川床にて

晩夏のある日、銀座での所用を済ませて浅草線に乗る。
向かったのは浅草のひとつ手前の駅、蔵前でありました。
偶に浅草を徘徊することはあっても、蔵前界隈をウロウロする機会はなかなかない。
改札を抜けて地上に上がり、江戸通りを浅草方向へと進むとすぐに春日通りとの交叉点に至ります。

その交叉点に立つ信号機の標識は、厩橋。
視界の抜けている隅田川の方へと、
自然と足が向かいます。ステンドグラスを収めた楕円の柱からそのまま、
優美な曲線を描く鉄橋が今の厩橋だ。
橋の名は、蔵前の米蔵の荷駄馬用の厩であるところの、
「御厩河岸」が西岸にあったことに因んでいるらしい。
ずっと下流を渡る永代橋のアーチのフォルムにも、
間近にしてその量感に目を惹かれたのを思い出します。

そんな厩橋の欄干を横目にするように、
隅田川に沿って伸びる裏通りを往くと、
“かわてらす”とルビをふった「川床」と書いた、
オレンジ色のキューブが目に留まる。店先のオレンジの箱の下には、
花開くように花火を描いた黄色い箱がある。
食堂&呑み「ボン花火」には、川床もあるようです。

促されるまま左手にカウンターの続く店内を抜け、
そのまま戸外へと出る。鋼製の階段下から蒼空を見上げます。

隅田川の岸辺を程良い高みから眺めるテラス。
すーっと風が抜けて気持ちいい。
「川床」と認めた提灯の向こうには、
今しがた眺めた厩橋のアーチの連なりが見渡せます。ぐっとひと息に傾けたビールを手に、
川上方向を見遣ればスカイツリー。
係留している屋形船の向こうを定期運航船が行き交います。

ランチに選んだのは「牛ステーキ定食」。
高菜を載せたやっこといい、
たっぷりのフライドポテトといい、
昼呑みのツマミにしながらの食事に相応しい。
噛み締める度に旨味の伝わるサイコロステーキだ。

夜の帳が降りる頃に訪ねれば、
ライトアップされたスカイツリーもまた、
卓上のキャンドル代わり。この夜のクラフトビールの中から選んだのは、
「GARGERYガージェリー・スタウト」。
スタウトの代表的銘柄ギネスと比べて、
柔らかで軽やかな印象を受けます。

ビールのお代わりを註文して、
定番のつまみの中から幾つかを。ニラのおひたしに若鶏の柚子胡椒焼き。
とん平焼きなんてのもある。
お初天神に至る曾根崎のアーケードをふと、
思い出したりなんかいたします。

テラスを囲む手摺のすぐ下をネオン色に飾った船たちが、
なかなかの頻度で頻繁に滑り往く。ハイボールのグラスの向こうにも、
やっぱり、スカイツリー(笑)。
広く視界の開けたオープンエアで呑るハイボールは、
旨いものですね。

右手に厩橋、左手にスカイツリーを見渡す、
隅田川の岸辺に食堂&呑み「ボン花火」の川床がある。隅田川の花火大会の夜にはきっと、
間近に”ボン”が体感できて、最高の見物場所になるに違ない。
対岸の高速道からも距離があって、案外と静か。
空が広くていつでも川面を眺められる。
この辺りの川沿いの一室で暮らすのもいいと、
忽ちそんな気分にさせてくれます。

「ボン花火」
台東区駒形2-1-7 MKビル1・2F [Map] 050-5590-3224
http://www.bonhanabi.jp/

column/03737

中國小菜「龍圓」で 青島啤酒と皮蛋豆腐牡蠣燻製麻婆白子上湯炒飯

ryuenオーストリア国家資格ガイドにして、
音楽専門書翻訳者といえば、
「ザルツブログ」でもお馴染みのsepp先生。
音楽を中心とした文化大国にして、
工業に並んで観光産業も盛んなオーストリアでは、
国家資格を持たないと観光ガイドができないと聞く。
ガイドのライセンスを持つのは全オーストリアで、
2,000人ほどと狭き門らしく、
その中でザルツブルクの日本人ガイドは、
それでも20名ほどいるという。

そのsepp先生は、
元モーツァルテウム音楽大学・学長であられるところの、
Prof.ギュンター・バウアー博士の著書「Mozart Geld Ruhm und Ehre」、
つまりは、モーツァルトの収入支出本の翻訳をしたことで、
モーツァルトの暮らし振りというか実生活の機微というかにもお詳しい。

「みなさん、いーですか~、コンスタンツェが悪女だったというのは、誤解です(笑)!」。
13年の11月には、北千住の荒川河川敷縁にある放送大学・足立学習センターで、
「モーツァルトの生活、収入支出。コンスタンツェは悪女ではなかった!」と題する、
公開講演会を満席の座で行って、
世界三大悪妻のひとりとして知られるモーツァルトの妻、
コンスタンツェの浪費家説をひっくり返した。
翌年には米倉涼子をキャスティングした、
コンスタンツェの悪女伝説についての番組がBSフジで放送されたりもしていたね。

そして、ふたたび放送大学へと向かった14年初冬の頃。
翻訳作業はとっくに済んでいるのに、何故だか出版への進行が滞っているという、
sepp先生の二度目の講演のタイトルは、
「ザルツブルクの歩き方~モーツァルトと映画サウンド・オブ・ミュージックの街~」。
スライドを適宜使い、常日頃のガイドの片鱗を滲ませる考えられたコース取りで、
行ったことがあるひともないひとも、北千住に居ながらにして、
ザルツブルクの町を巡った気分にさせてくれるという有難いものでした。
でも、例の本が出版されていたら、
講演の内容も違ったものになったかもしれませんね(笑)。

講演会ミッションが済んで、肩の荷の下りたsepp先生ほか一同は、
北千住からつくばエクスプレスに乗り込んで浅草駅で下車。
国際通りをスタタっと進み、辿り着いたのは、お久し振りの「龍圓」であります。

ども!と顔をみせてくれた栖原シェフは、なんだか忙しそう。
当初予定の一階の席がうまく調整できずに、二階のテーブルへ。ryuen02二階にこんな丸窓が設えた部屋があるなんて知らなかったなぁ。

お昼だけどおつかれさまの乾杯しましょと「青島啤酒」。ryuen03癖のない吞み口と味のある翠のボトルに一種の風格を思います。

まず登場したのは、ご存知「ピータン豆腐」のカクテルグラス。ryuen04ryuen05上から覗けば、エスプーマを通じてムースとなったお豆腐が、
下から覗けば、ざく切りのピータンとご対面。
皮蛋独特の滋味と香りとを豆腐のムースがまろやかに包んで唸らせます。

「ヤリイカの老酒漬けサラダ仕立て」は、その名の通り、老酒のタレが肝。ryuen06霜降りするように柔らかくボイルした新鮮な槍烏賊を妖しく引き立てます。
さてはシェフ、烏賊釣りに行ったな、なんて考えてはいけません(笑)。

いつぞやに初めて目の前にして面白くも感心した「牡蠣の燻製」がふたたび目の前に。ryuen07スープ碗にラップを張るようにフィルムをピンと張って、その上に牡蠣の身が載っている。
一瞬牡蠣が中空に浮かんでいるようにも見えるのがまず愉しいところ。
そしてフィルムの所々に穴が開いていて、そこから芳ばしい薄煙が漂い出る。
半生状に水分の抜かれた牡蠣を薫香のベールが包む。
はい、美味しゅうございます。

「よだれ鶏」は、真空パックに入れ湯煎しての、最近定番の低温調理。ryuen08自らの旨味をその中にしっとりと閉じ込めたところに、
きりっとした辛味の芳ばしいタレが利いています。

「青島啤酒」から紹興酒に替えたところに、「焼き餃子」。ryuen09ryuen18そこに添えてくれたのは、米油でつくるという特製のXO醤。
さらさらっとして旨味を含んだXO醤を使うと、
ベッタリしたラー油が妙に野卑なものに思えてきます。

おおお、とみんなの顔に感嘆符が浮かんだのが、秋トリュフと毛蟹のかに玉。ryuen10ふわりと薫るトリュフをおずおずと玉子に載せて匙を動かす。
官能的にして澄んだ味わいでございます。

那須和牛と舞茸とアスパラの炒め物に続いてやってきたのも、ズルイやつ。
それって絶対に似合うよね!と思わす「麻婆白子」。ryuen12ぱっと見では、普段通りの豆腐の麻婆かと思わせるような、
そんな洒落の利き具合もまた愉しいであります。

「上湯炒飯」は、まずそのまま玉子が米粒を薄く包んだ軽やかさをいただいて、
やおら上湯スープを注ぎ込む。ryuen13ryuen14炒飯もスープもお互いがお互いをより美味しくしてくれているような気がします。

Mぞうさんのナイス注文は、裏メニュー的「具なしソース焼きそば」。ryuen15濃密な黒褐色にして、ながーい麺が個性的。
クドそうな見た目をニヒヒと笑って裏切るようなあっさり感が愉し旨いんだ。

昼酒に一瞬やられていつものように眠り込んでたH氏も既に復活して(笑)、
デザートの「苺とキャラメルの杏仁豆腐」のグラスを手にする。ryuen16杏仁豆腐と甘さ控えたキャラメルって、美味しいね。

云わずと知れた浅草・国際通りは栖原シェフの店、
中國小菜「龍圓」にまた来れた。ryuen173年ほど前にお邪魔した時の日記を振り返ってみたら、
ファサードに一層の風格を与えていた緑青色の看板が今はない。
どうしちゃんたのでしょう。
颱風の強風攻撃を受けてしまったりしたのかな。

口 関連記事:
  中國小菜「龍圓」でピータン豆腐牡蠣老酒漬燻製蒸オレンジ白菜(11年12月)

「龍圓」
台東区西浅草3-1-9 03-3844-2581
http://www.ryuen1993.com/

column/03511

洋食店「大木」で 昭和な佇まいに寄り添う素朴なカツ丼の景色

ooki.jpg浅草のシンボルのひとつ「神谷バー」。 右手には、改装済んで、そのほとんどが「EKIMISE」になってしまった松屋浅草。 フロアの閉鎖前に出掛けた青森物産展での中華そば「長尾」を思い出す。 その間を北へ往くは、馬道通り。 言問通りに近づいたところで見えてくるのが、 名代おでん「丸太ごうし」の赤い提灯だ。

出汁と日本酒の匂いに後ろ髪を引かれつつ、さらにさらに歩みを進める。 馬道、浅草六丁目、浅草五丁目と信号を過ぎて、いよいよ静かになった辺り。

歩道に突き出したテント地の庇の向こうに「大木」の文字。ooki01.jpgよく見ると、庇どころか暖簾までもが半円を描いて突き出しています(笑)。

もう三度目のお邪魔だなぁと考えながら暖簾を払い、硝子越しに店内を覗く。 すると、定位置の事務椅子に腰掛けて、オヤジさんが居眠り中。 起こさないように、そっと引き戸を開け閉めします(笑)。

洋食「大木」の店内はまるで、昭和30年代を舞台にした映画のセットのよう。ooki02.jpgooki04.jpgooki05.jpgooki06.jpgooki03.jpg贔屓筋であったという立川談志をはじめとした噺家たちの千社札が、 あちこちに貼られてる。 およそ変わらぬまま時を経た古色が、なんとも味わい深いのであります。

話好きのオヤジさんとツレナイ世情の話なんぞを交わしながら、 「カキフライ」できます?と前回までに二度訊いたけど、 「お昼で終わっちゃった」などで、結局望みは叶わず仕舞い。 それでもふたたび腰を下ろした華奢なテーブルで、改めてお品書きを眺めます。

ooki07.jpg 夜の部は、ご飯を残さないよう余計に炊いておくようなことをしないので、 場合によってはご飯がないなんてこともある。ooki08.jpgご飯があることを確かめてから、「カツ丼」をお願いしました。

普段着のとんかつに玉葱と玉子。ooki09.jpgジューシーな豚でもなければ、玉子の半熟を残そうとか、そんな気配も特にない。 衣はところどころで剥がれているのはご愛嬌。 素朴なカツ丼の景色が、店やオヤジさんの佇まいにそっと寄り添って。 美味いどうかなんてこととは別の魅力に和んでしまいます。

裏浅草の先でひっそりと、 洋食店「大木」の暖簾が今日も風に揺れる。ooki10.jpgooki11.jpgooki12.jpgooki13.jpg問わず語りに聞くオヤジさんの来歴。 昭和11年生まれで、信州から18歳で上京。 小僧で店に入り、浅草に根付いて今に至る。 つまりは、オヤジさんが「大木」さんなのではなく、 先代が亡くなってからずっと任されているのだそう。 でももう疾うに、間違うことなくオヤジさんの店になっています。

口 関連記事:   デンキブラン「神谷バー」で電氣ブランと牡蠣フライ浅草の夕暮れ(12年02月)   中華そば「長尾」青森物産展で 再会ごぐ煮干あの風景へトリップ(10年02月)   名代おでん「丸太ごうし」 で鰹出汁薫る昔ながらおでん剣菱で(08年03月)


「大木」 台東区浅草5-45-13 [Map] 03-3872-0610
column/03401

デンキブラン「神谷バー」で電氣ブランと牡蠣フライ浅草の夕暮れ

kamiyabar.jpgお気に入りの鰻処「小柳」で、お昼からお燗のお酒。 想定以上に絶品だった「〆さば」に驚きつつ、お猪口をつつつ。 そして、奮発して「鰻重」の松を堪能します。 その足で、初めての「浅草花やしき」。 憧れのローラーコースターやお化け屋敷は初めてなのに懐かしい愉しさ。 「花やしき」のゲートを潜り、 仲見世通りを雷門に向けて、漫ろに歩きます。
雷門の提灯の口輪を下から覗いて、龍の彫刻を眺めながらふと思いつきました。 そうだ、「神谷バー」に行こう!

まだ、夕闇手前の「神谷バー」はこの雄姿。kamiyabar01.jpg古色が似合うタイル貼りに、円形の窓に繋がる開口の三本柱。 どなたのデザインによる意匠なのでしょう。

覗き込んだ一階フロアは既に大賑わい。 なんとか空いたテーブルを確保して、食券を求めにレジの列に並びます。

勿論、「デンキブラン」をとレジのメニューを眺めると、 「電氣ブラン〈オールド〉」なんてヤツもある。 最近、古(いにしえ)のものにも弱いんだなどとよく判らないことを呟いては(笑)、 そのチケットを。

奥のカウンターでは、どんどんと「デンキブラン」のグラスが並ぶ端からあちこちのテーブルへと運ばれる光景が続きます。 「電氣ブラン〈オールド〉」のグラスが届きました。

「電氣ブラン〈オールド〉」は、30度の「デンキブラン」と違って、アルコール度数40度。kamiyabar02.jpgグラスも違っていて、紋章も入っていないシンプルなヤツ。

ペロペロっと舐めるようにグラスを傾けると、甘い舌触りにに仄かに薬草の香りが混じる。kamiyabar03.jpgああ、他所では幾度か吞んだことがあっても、 本家本元のテーブルで舐めるのは、今更ながら初めてだ。

kamiyabar04.jpgやっぱりジョッキのビールをチェイサー代わりにするのばオツな感じ。 既に周知なことだけど、 明治の頃に舶来のハイカラなものに冠したのが”電氣”で、 ブランデーと表記するにはちょいと不足があって、”ブラン”となったそう。

ショーケースに目敏く見付けた「牡蠣フライ」がやってきた。kamiyabar05.jpg「小柳」の鰻で十分お腹は満ちているけど、牡蠣フライは別腹(笑)。

うんうん、何気ないけど、 大振りのパン粉で上手に牡蠣を包み込んであって、 牡蠣の旨味の凝集がそのまんま愉しめる。kamiyabar06.jpgタルタル風ソースもたっぷりなのが心意気だ。

現在地、浅草一丁目一番一号。 明治13年に酒屋を興すことに始まり、浅草の移り変わりを眺めてきた「神谷バー」。kamiyabar08.jpgkamiyabar07.jpg店内には、例えば、明治45年の改装の写真がパネルになっている。 長方形に囲むカウンターにしっかりした革張りを窺わせるスツールが並んでる。 その頃にタイムトラベルして、そのカウンターに腰掛けたい。 そんなことを思いながら、店内の喧噪を背にします。

吾妻橋の渡る隅田川はちょうど夕暮れ時。kamiyabar09.jpgkamiyabar10.jpgビルの間からスカイツリーも望めます。


「神谷バー」 台東区浅草1-1-1 [Map] 03-3841-5400 http://www.kamiya-bar.com/
column/03227

中國小菜「龍圓」でピータン豆腐牡蠣老酒漬燻製蒸オレンジ白菜

ryuen.jpg巷に評判を聞く、浅草「龍圓」。 気になりつつも、いつかそのうちと惚けているうちにまた年が暮れようとしていました。 師走を迎えたそんな頃、お久し振りのくにちゃんからお誘いがかかりました。 ご無沙汰のくにろくOFFへと、 田原町駅に降り立ちます。
年の瀬の国際通りを浅草ビューホテル目掛けて歩む。 公園録区入口の信号の先、通り沿いに「龍圓」の緑青色の看板が見えてきます。

くにちゃん、ご無沙汰ぁ。 そして、一階の厨房前からずらずらッと並んだテーブルには、 ご無沙汰の顔々、初めての方々の顔がある。 テーブルの一番奥では、月島仮面さんと「龍圓」のシェフ、栖原さんが如何にも親しく話し込んでいる。 お喋り好きそうなシェフ(笑)のニカニカの表情は、福々の料理を喰わせてくれそうな、そんな予感を抱かせてくれます。

麦酒とかをすっ飛ばして、端から紹興酒で乾杯のテーブル。 ちょうど、監修の期間限定喜多方らーめん「大崎食堂」も絶賛販売中の大崎会長ともご無沙汰の乾杯です。

口開きは、「龍圓」のザ前菜「ピータン豆腐」のカクテルグラスから。 ムース状にした豆腐は、大豆の風味が濃厚に活きたもの。ryuen01.jpgryuen02.jpgそこをホジホジしていくと、刻んだピータンが現れる。 その皮蛋と豆腐とをいい具合にちょい混ぜしていただけば、 むふふと思わずひとりごち。

サラダ仕立てでやってきたのが、「小ヤリイカ老酒漬け」。ryuen03.jpgとろんと柔らかく、じわじわと旨味が沁みる。 烏賊の滋味をフレッシュに活かすにこんな方法もあるのだね。 紹興酒に勿論よく合います。

その艶麗しき「鯖の燻製」には、椒麻ソースが載っている。ryuen04.jpg椒麻ソースは、煎った四川山椒のパウダーと、長ネギ、生姜を包丁で細かくたたき、 醤油、酢、胡麻油、みじん切りのブラックオリーブとを合わせたものだそう。

そしてその鯖と同舟なのが、 「三重県鳥羽の牡蠣、老酒漬け燻製 ミモレットチーズ」。ryuen05.jpg老酒の深い甘みと薫香が気品よく包み込んだ牡蠣の身には、程よい凝縮感が宿っていて、 うん、旨い。

綺麗な揚げ色の春巻だねぇと断面を覗き込む。ryuen06.jpg「海老クリーム春巻き」の外殻は、海老独特の風味を優しくいただくための軽妙な仕掛け。 さくっと軽やかにして、澄んだ海老クリームの旨味をそっと後押ししてくれます。

お、トリュフだねとこれまた覗き込ませてくれのが、 「オータムトリュフのかに玉」だ。ryuen07.jpgそのままでも十分美味しいカニ玉に、トリュフのピールを添えたよう。 その香りの奥行きは、なんだか兎に角ズルいものです(笑)。

ryuen08.jpg 「蒸しオレンジ白菜 金華ハムあんかけ」は、三浦の白菜の葉先のところの甘みもズルいけど、金華ハムがはぐくんだあんかけスープもこれまたズルい。ryuen09.jpgryuen10.jpg三浦大根でサンドした唐墨を合いの手に使うなんていう、 贅沢な手管に興じます。

何杯目かのカラフェの紹興酒をお代わりして迎えたのが、 「信玄鶏、砂肝、ブロッコリ、紫人参の炒め ケッパー風味」。ryuen11.jpgコロコロして、シコシコした歯応えの中に素材の素直な滋味が弾けます。

「蒸し肉団子」には、フカヒレあんかけがとろりんと。ryuen12.jpg肉団子が下敷きにしているのがメイクイーンのピュレ。 ジャガイモのふわっとしたコクがこのお皿のアイデアのキモかもしれません。

ゴハンの芳ばしくも甘い匂いが漂ってきたかと思ったら、それは「ジャスミンライス炒飯」。ryuen13.jpg刻んだ干し貝柱や叉焼などなどと一緒にパラパラと綺麗に炒めたタイ香り米。 それゆえ、より軽やかに品良く旨いチャーハンとして愉しめます。

デザートには、艶粉色のイチゴアイスを戴いた杏仁豆腐。ryuen14.jpg意外や、苺の風味で杏仁の香りが引き立つという不思議。 さらっとして、一連のお皿たちに句点に相応しいグラスです。

人懐っこい印象の栖原シェフが繰り出す優しくナチュラルで軸のある料理で人気の、 浅草・中國小菜「龍圓」。ryuen15.jpg強すぎる味わいや濃過ぎる仕立てに頼らずして、輪郭のある像を結ぶお皿たち。 いいなぁ、いいなぁ。 今度はぜひ、具なし焼きそばもいただかなければいけません。


「龍圓」 台東区西浅草3-1-9 [Map] 03-3844-2581 http://www.ryuen1993.com/
column/03212