「ディープ荒川台東区」カテゴリーアーカイブ

洋食「一新亭」で カキフライ付きオムライス古き下町の味わい

isshintei.jpg浅草橋の一角に古びた洋食屋さんがあるらしい。 ハヤシとカレーとオムライスを盛り合わせた「三色ライス」というのが、謂わばその店のスペシャリテ。 その「三色ライス」を食べずしてその店の魅力は語れない的な内容のことをテレビ画面が伝えていたことを覚えています。 もうちょっとで蔵前橋通りに至ろうとする、そんな辺り。 寒空の宵闇に揺れていたのは、 大きく「洋食」と墨した、潔き白い暖簾だ。
ガラっと引き戸を開くと、定位置と思しき椅子に腰掛けて相撲に見入っていたオヤジさんが、「あいよーっ」ってな所作で立ち上がる。 テーブルに腰を下ろして周囲をきょろきょろ(笑)していると、「三色ライスとかオムライスとかカキフライとか」と助け船を出してくれました。 ここで食指が動いたのが、オムライスに揚げ物を組み合わせるシリーズ。 デフォルトコロッケからメンチ、魚フライ、エビフライ、カツ。 やっぱりね(笑)、と「オムライスカキフライ付」をオーダーです。 isshintei01.jpg 揚げ音が響き始めた店内には、雷門の大提灯の向こうを都電が走る写真を始めとした古き下町の味わいを発露するモノクロームが飾られています。 isshintei02.jpg 味噌汁のお椀と一緒にお皿がやってきました。 ハコフグを連想させるような、やや角張ったフォルムのオムライス。isshintei03.jpgフライパンの立ち上がりが形造っているのかな。 そこへ寄り添うは、2片のカキフライとケチャップ炒めのスパゲティ。 たっぷり載せたケチャップごとスプーンを割り入れて、パクリ。isshintei04.jpg中のご飯もケチャップをたっぷり使った仕立てで、ケチャップの酸味が利いており、そこへ玉子内側の半熟が溶け込んでいる。 isshintei05.jpgisshintei06.jpg カキフライともども気取りのない感じ、といったところでしょうか。 それは、今更衒うことはない、オッチャンオバチャンやお店の情緒とすんなりと一致する魅力です。 ひと通り少ない下町の一辺にある洋食「一新亭」。isshintei09.jpgお品書きisshintei07.jpgisshintei08.jpgを改めて眺めながら思うは、今度こそ「三色ライス」か、はたまたやっぱり一年中あるという「カキフライ定食」か(笑)。 「一新亭」 台東区浅草橋3-12-6 [Map] 03-3851-4029
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寿司の伝導師「酢飯屋」で 都内某所に秘かに饗す宴黒米の握り

sumeshiya.jpgそれは年の瀬も押し迫った頃。 襟足を過ぎる風が身を縮めさせ、足下からセリアガる冷気が身震いさせる冬の夜。 都内某所のひと通り少ない裏通り。 閉めているはずの店にこそこそと、ひとりまたひとりと集まる挙動不審な輩たち。 そこが、裏世界で「酢飯屋」と呼ばれる闇寿司店の最近のアジトらしい。
自ら”寿司の伝導師”と名乗り、カルトで神出鬼没だという「酢飯屋」。 その「酢飯屋」を舞台に密かに饗された宴に潜入してみた。 まず提示しなければならないのが、持参した酒。 自らの嗜好や共有したい滴、怪しい場にふさわしいプレゼンテーションなど錯綜する想いを酒瓶に籠めろ、というのだ。 カウンターではなく、小上がりに案内されて、一同に目配せ。 早速マグナムな「POMMERY」を抜く儀式で、何事かが始まる。 卓上には、「煮貝の盛り合わせ」「小物の南蛮漬け」。 sumeshiya01.jpgsumeshiya02.jpg そこへ大きく赤い異物が持ち込まれ、添えられた人数分のスプーン。 sumeshiya03.jpgsumeshiya04.jpg 大間の鮪のものだという中骨を中おちのついたままをデンと載せ、スプーンで削って食べるようにさせる様式は余興要素をも含んでいて愉しいが、これもまた何かの儀式ではないのか。 様々な瓶には、甘口赤の「天橋立ワイン」があるかと思えば、津軽のりんごジュースが差し出され、果たして梅干を入れ割る球磨焼酎「もっこす」。前後して、出処秘匿の無農薬米純米酒に発泡酒「すず音」に「酔鯨」に燗酒にと、いよいよ訳が判らなくなってくる。こ、これは危険だ。 酔いの縁を辿り始めたところに牙を剥いた異形にハッとする。sumeshiya05.jpg老成バラクーダにも似たグロテスクに黒いカマスを「しゃびの塩焼き」と謳って、まるで生贄のよう。 黒々とした外皮とふわりと軽やかな白身とのコントラストが妖しい。 海産が互いに僥倖を想うよな「牡蠣とブリの味噌鍋」で、ぶりっとした牡蠣の身の洗礼を受けたかと思えば、 sumeshiya07.jpgsumeshiya06.jpg 内子と味噌と剥き身が混然となった「豊前本ガニ」に陶然とする。 このまま酔いに任せてしまおうかと悪魔が誘う中で、めくるめく握り世界が展開されていく。 sumeshiya08.jpgsumeshiya09.jpgsumeshiya10.jpgsumeshiya11.jpg 赤酢にしては妙に鮮やかだなぁと想った酢飯は黒米仕立て。 sumeshiya12.jpgsumeshiya13.jpgsumeshiya15.jpg「穴子の押し寿司」を経て、「バラちらし寿司」へと至る。 sumeshiya14.jpgsumeshiya16.jpgsumeshiya17.jpg ふう、なんとか無事に寿司の伝道師のアジトへの潜入を果すことができそうだ。 背中で遠ざかるアジトは、はて、いつまで其処にあるのだろう。 酩酊した脳裏で想うのは、そうとなれば今度は、ゆっくりと適度な酒量配分で、かつ、正対するカウンターで握ってもらいたものだということ。 今夜の宴の司祭は「築地市場を食べつくせ!」の築地王さん。 そして執事役多謝の「フェティッシュダディーのゴス日記」のジュネさん。 また、秘かなる宴の様子は、ワシ・ブロさん佃の旦那さんの潜入レポに詳しい。 「酢飯屋」 都内某所 詳細不詳
column/02751 @11,500-

焼肉「スタミナ苑」で メクルメク満ち足りた幸せをありがとう

staminaen.jpgずっとずーっと行きたいと思っていた、鹿浜「スタミナ苑」。 でも、普段の生活圏とは離れているし、公共交通機関をどこからどう辿るのがいいのかイメージが沸かないし、なんだかスッゴい行列に並ばなきゃいけないらしいし。 そんなこんなで、つまりは勝手が分からないまま、ずるずるお邪魔することのないままでありました。 それが京橋で呑んでいる時にそんな話になって、晴れてこの日、参上することになったのです。 んも~ぉ、わくわく(笑)。
初めて降り立った赤羽岩淵からタクシーで到着すると、既に道端に行列が出来ている。 皆んなキャンプチェア持参で来てるンだ準備いいなぁーと思ったら、それは店が用意したものらしい。 秋のカラッとした清々しい陽光の中、のんびり駄弁ってその時を待つのです。 なんとか一巡目に入れそうな順番ではあったけど、人数を告げておいてもメンバーが揃っていないと後続さんたちに席を譲らなければいけないというルール。 シズるな匂いがしてきたけど(笑)、もうちょっと待ちましょう。 行列を振り返ると、うわー、ずっと向こうまで伸びてるね。 暖簾のすぐ向こうの、右側のテーブルが片付けられる様子を眺めながら、きっとあそこが今夜のステージだねと囁き合って、「どーぞー」の声を聞く。そして、いそいそとテーブルを囲みます。 きゅーっと氷点に冷えたジョッキの乾杯で迎えたお肉がまず「上タン塩」。staminaen01_joutan.jpg炙るようにして、もうそのまま、ムホっと口に放り込む。 心地いい歯切れとタンらしい香気に思わずニンマリ。 staminaen03.jpg ニクい仕立ての「生野菜」を平らげて、 続くお皿が「上カルビ」。 staminaen04_joukarubi.jpgstaminaen05_joukarubi.jpg 濁りなき甘さの如き旨味がただただ、いいなぁ。 「ミックスホルモン塩」はこの表情。staminaen06.jpgstaminaen07.jpg子袋、センマイ、ハツ、ギアラ、ホルモン。 つまりは内臓たちなのだけど、なんだか妙に綺麗な印象なのは、鮮度に加えて、それだけ丹念かつ入念に仕込みをしてくれたから?なんて思ってしまう。 塩ダレと醤油ダレを比べてみると、断然醤油の方がホルモンそれぞれの味わい旨味が引き立ってくる。うんうん、はふはふ。 そしてすっごいお皿がちょっとコッソリやってきた。staminaen08.jpgこの艶かしさをなんと表現すればいいでしょう。 暫らくじっと見惚れてしまったとだけお伝えしましょう(笑)。 ぴんとしたエッジ。 お皿に余計な汁が垂れ滲んだりしないことで活きの良さが自ずと判るというものです。 いつもいただけるってもんじゃないのがますます気持ちを煽るのですね。 さくーっと歯の先を受け止めつつ張り付くような感触と鉄分の風味を含む澄んだ旨味旨味。 なは~、なはははー。 濃厚なるコンソメの「ホホ肉スープ」とか、こんなサイドメニューも「スタミナ苑」の底力。staminaen09.jpg 「上ロース」や「上ヒレ」にも大満足。 staminaen10_jourousu.jpgstaminaen11_jouhire.jpg メクルメク感じも最高潮。 気持ちの割りに意外と量がイケなくて口惜しく思うことが多いのに、どんどんするする食べちゃえるノリになるのは、何故だろうね。 staminaen12.jpg 甘さ控えめ「手作り杏仁豆腐」でそっと気持ち落ち着く大団円です。
この満ち足りた幸せをありがとう。staminaen13.jpg焼肉の匂いの沁みた藍の暖簾に最敬礼であります。 今宵のご同席多謝は、「らーめんダイニング【ど・みそ】」店主みそもっこりさん「飲みたいから♪」築地人さん、ほかの皆さんでした。ありがとうございましたっ。 「スタミナ苑」 足立区鹿浜3-13-4 [Map] 03-3897-0416 http://www.mode-web.jp/sutamina/
column/02703 @7,000-

天麩羅「千束 いせや」で 比べりゃ地味軽い海老穴子天丼

senzokuiseya.jpg日本堤の有名な天麩羅屋「土手の伊勢屋」の兄弟店が、 隣町の千束にあるという。 圧倒するようなシツコさにほぼノックアウトだった「土手の伊勢屋」だけど、兄弟店はまた多少違ったりするのかも、と冒険心が湧いてきました。 昭和通りと国際通りとを結ぶ金美館通りという鄙びちゃった通りのアーケード。 その一辺に、ひっそりとした表情の「千束 いせや」がありました。
「土手」ほどの枯れはありませんが、こちらのお店も年期の入った昭和な井出達。 使い込んだカウンターの丸椅子へ腰掛けようとしたら、「どぞ」とオカアサンに左手のテーブルを勧められました。
海老、きす、烏賊の「天麩羅定食」か「天丼」がひとまずの選択肢。 女性におススメの新メニューとある「海老と野菜の小天丼」をオッサンが注文んじゃ、オカアサン嗤うなかぁと悩んで、「若いヒト達はこれだわね、だいたい」という「海老穴子天丼」をお願いしました。若く見えたのでしょうか(笑)。 穴子の骨の刺さったどんぶりには、当然の如く、深く濃いぃ茶色の天麩羅が横たわる。senzokuiseya01.jpgサプライズな盛り込みだった「土手」の「穴子天丼」と比べちゃうと、地味な印象は否めません。 ところが食べ口は、意外と軽くて好感。 甘いツユには違いないけど、 そこへさっと潜らせたような衣には幾許かの軽妙さが残っているンだ。senzokuiseya02.jpg メニューに車海老とあるのは、開いて揚げた一匹のことらしい。 他の二匹も含めて海老のサイズは寂しいし、ご飯はもう少し硬めに炊ていほしい。 そしてお椀くらいつけて欲しいよなぁ。 あれ?ぺろっと食べちゃったクセして、要望が多いかも(笑)。
思えば、胡麻油っぽさを強くは感じなかったあたりが、つまりは揚げ油の構成が「土手」と違うのかもしれないな。
“○に天”を暖簾の中央にする「千束 いせや」。senzokuiseya03.jpg 蔵前にもご兄弟のお店があるようです。
「千束 いせや」 台東区千束2-23-5 03-3872-5588
column/02486

とんかつ「河金」

kawakin.jpg入谷のとんかつ「河金」は、駅に極近くも、通り掛かりにふらりと入ることはそうそうありそうもない、そんな路地にあります。先客は、右手の小上がりにおふたりさま。新聞や雑誌が散らばっていて、どこか雑然とした印象のする中、奥のテーブルまで進みます。隣の座卓の座布団の脇には、黒い猫がすやすやと就寝中。そんな情景を微笑ましく眺めながらお願いしたのは、店名を冠した「河金丼」です。何気なく卓上のスポーツ新聞の文字を目で追っていると、背中の方からジジと油に揚げる音。そして、どんぶりが届けられました。「河金丼」というのは、つまりは、カツカレー丼。濃い色に揚げられたカツに、如何にも小麦粉をたっぷり使った見映えのカレーがどろんとかけられています。揚げ立ての衣の香ばしさがうどん屋的カレーと素朴にマッチ。カツもカレーも特にどうということもないものの、なんだか下町ックな魅力があると思いたくなってくるのが不思議だ。見上げた壁の上部に、「あさくさ河金 支店」の文字。大正の頃、屋台を牽いていた初代が発案し、浅草に開いた洋食のお店「河金」から分家したのがここ入谷「河金」ということらしい。元祖カツカレーは「河金」の、ということなのか。「トンカツ」の品書きをよく見ると、50“匁”とか200“匁”とかという表記になっている。一匁が3.75g。あれ? ってことは、200匁は、750gのトンカツってこと!? 見間違いかな(笑)? 「河金」 台東区下谷2-3-15 03-3873-5312
column/02347