「アキバ上野湯島ゾーン」カテゴリーアーカイブ

天神前「兜魚」で穴子の西京焼き寳劔浅利クリコロ金目天涙巻き天神様の梅の花

“湯島”と聞くとふっと脳裏に浮かぶのは、何を隠そうさだまさし「私花集アンソロジィ」からのシングルカット曲「檸檬」。
♪或の日 湯島聖堂の 白い 石の階段に腰かけて…ではじまる曲は、聖橋の上から食べかけの檸檬を放る情景やJRの車輛と交叉するように丸ノ内線の赤い車列が走る光景を鮮烈に描いていた。
シングルのアレンジよりアルバムの素朴なアレンジの方が断然相応しいと思ったものです。

湯島聖堂のあるの湯島の南端から、
不忍池や旧岩崎庭園に向かって北上すれば、
学問の神様として知られる菅原道真公を祀る、
湯島の景勝地にして、
東京を代表的する天満宮であるところの湯島天神、湯島天満宮がある。

例年2月半ばあたりから梅まつりのシーズンとなる湯島天神。湯島駅側から辿る女坂では、階段に沿うように梅の花が咲き誇る。

梅園の中では野点が行われたりなんかして、
よろしき情緒を醸し出す。まさに白梅と思わせるものもあれば、淡いピンクの梅も勿論ある。
境内に果たして何本、何種類の梅の木があるのでしょう。

的屋の屋台が並ぶ本殿へのアプローチが、
参拝するひと達で犇めいていたのを見たのは昨年、2019年の春のこと。陽溜りの暖かさに漂いはじた春の気配を想いつつ、
行列を眺めたことを思い出します。

一年後、開花の盛りは過ぎて、
時節柄の自粛ムードが忍び寄ってきた頃。
開花の進捗によって、陽射しの加減や向きによって、
その表情を変える梅の花たち。夕闇の気配が漂ってくるとまた、
違う表情を魅せるようです。

唐門の扉を飾るは、湯島天神の神紋「加賀梅鉢紋」。境内から唐門の外を眺めると、
日の陰ってきた門前に灯りを点す店がある。

店先には「兜魚」と染め示した大漁旗と酒箱が幾つか。黒のボードでは、旨い魚と酒ありますと呑兵衛を誘います。

品書きにみる本日の刺身には、
方々、黒鯛、糸撚鯛、鰹のたたき、〆鯖に活き赤貝といい感じ。魚種ひとつをじっくり味わいたいという思いと、
あれこれ色々食べたいという思いが交錯するのはいつものこと(笑)。
おひとりさま用に仕立ててくれた盛り合わせをいざ。

小さなビールをすっと呑み干せば、
横目で見る柱のおすすめ日本酒の墨文字が気に掛かる。広島の純米「寳劔」あたりからはじめましょう。
うん、辛口にして旨口という感じのバランスの良さを感じる酒だ。

当店名物と謳うラインナップから穴子の西京焼を所望する。うん、美味しい。
水分を引いて凝集した旨味が西京味噌なぞと結託して、
それを焼くことによって更に香ばしくも迫る。
西京焼きってやっぱりズルいわー(笑)。

自家製「アサリクリームコロッケ」も此方の人気定番商品である模様。真ん中から半裁してから、どれどれとその半分を齧る。
なはは、そうだ、クラムチャウダーを包んで揚げちゃった感じだ。
トロンとしたベシャメルな感じと浅利風味が、実にいい。

天麩羅はどうよとばかりに、
贅沢にも「金目天」をいただいてしまおう。衣に包まれ脱水した金目鯛の身から湯気が上がる。
より繊細で上品な甘さを堪能するにはやっぱり塩がいいですね。

〆てしまおうとお食事メニューから「涙巻」。「わさび飯」と並んで書いてあるので想像はつくところ。
ひと切れを口にポイと入れると山葵の甘い香気が一瞬過り、
その後を追うようにツンとした辛味が鼻に抜ける。
思わず天を仰ぐように顔が天井を向いてしまうのは、
一体全体何故なのでしょう(笑)。

湯島天神は唐門の向かいに旨い魚と酒の店「兜魚」はある。「兜魚」と書いて”かぶとと”と読む。
店主カブちゃんが繰り出すお魚主体の酒肴たちには、
まだまだ目移りしっ放し。
合いの手を任せるお酒の選択肢にも楽しい発見がある。
あんまり間を空けずお邪魔しなくっちゃだ。

「兜魚」
文京区湯島2-33-10 宝盛ハイツ1F [Map] 03-5817-4210

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客家料理「新竹」で魯肉飯とんちゃん拉麺野菜の煮物新竹は台湾北部の県

shinchiku創業来60年ほどの年月が醸し出す鄙びた佇まいと飾らないお皿ドンブリたちが魅力的で何度も足を運んだ「来集軒」。
昭和の香り麗しき中華そばや店の名を冠したソース焼きそば、そしてオバちゃんの力作ソースチャーハンも妙に旨かった。
その帰り道、例によって裏道へ路地へと廻っているうちに見つけたお店の一軒が、客家料理「新竹」です。

引き戸を開けると朗らかなるオバちゃんの高らかな声が迎えてくれる。shinchiku01おひとりさまは、奥の厨房前に陣取りましょう。

お品書きに見るランチメニューは都合15品。shinchiku03目に留まったのは、お久し振りの「魯肉飯(るーろーはん)」です。

粗いそぼろ状にした豚肉には、大蒜や生姜、そして八角あたりの香辛料がしっかりと風味を利かせてる。shinchiku04青梗菜の炒め物もいい合いの手を添えてくれて、うん、おいしい。
そう云えば、残念ながら渋谷にあった魯肉飯の専門店「髭鬚張」は、とっくになくなってしまったね。

別の日には「とんちゃん拉麺」なるドンブリを所望する。shinchiku05揚げたパーコーではなく、柔らかく煮込んだ厚切り豚バラをトッピング。
ここでもやっぱり八角の香りが漂うのは、魯肉飯と同じそぼろも載せてくれているから。
うんうん、これも美味しいラーメンだ。

今日は日替わり定食にしようと決めて訪ねてみる。
その日の日替わりは「挽肉と高菜と野菜煮物」。shinchiku06なんだか残り物を並べただけのようにも思えるけれど(笑)、なかなかいい感じの屋台飯。
とろっとに白菜なんぞの甘さを引き出した煮付けが素朴に旨い。
あ、気がつけばどれもに挽肉そぼろが含まれているね(笑)。

所は台東三丁目、
昭和通り近くの裏道に台湾客家料理「新竹(しんちく)」がある。shinchiku07客家(はっか)というのは漢民族のひとつで、中原や中国東北部の王族の末裔であることが多いらしい。
戦乱に追われて南方に移り住み、香港や台湾、東南アジアへの移住者も多いという。
会計してくれたオバちゃんに、店名「新竹」の意味由来を訊いてみた。
すると、店内に貼ってあったポスターの前へと連れていかれ説明を受けることに(笑)。
新竹は、台湾北部の県の名前。
つまりは、オバちゃんらの出身地をそのまま店名にしたってこと。
新竹は風が強くって、ビーフンが名物なんだとオバちゃんはいう。
ならば今度は「焼米粉」か「湯米粉」をいただかなくっちゃだ。

「新竹」
台東区台東3-14-9 水野ビル [Map] 03-5688-1388

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中華料理「来集軒」で ラーメン来集メンソース焼飯旧き良き佇まい

raishuken.jpg最近頓にノスタルジックな光景に惹かれる。
そんなお年頃な今日この頃(笑)。
御徒町に昔乍らの中華の店があると知り、いそいそと仲御徒町の駅まで足を運びました。
それは、九月の終わり頃。
ところがなんと、九月末日まで夏季休業中ですと、そう知らせるメモがドア硝子に貼ってある。
暑い夏にはやってられないわってなことなのでしょう。
何時からの夏休みなのかなぁ。
そう云えば、野毛の至宝、三杯屋「武蔵屋」も酷暑の八月だけはお休みする。 空調でガンガン冷やして店を開けるというのを潔しとしない、 そんな処が同じ様にあってもいいんじゃないかと思うところ。 ましてや、営んでいるのがご高齢の方となれば、至極当然のことと存じます。

そんなこんなで、十月に入ってからの営業日にふたたびやってきた、 すえひろレンガ通り、嘗ての通称を新東京通り。 この近所に映画館があったなんて信じられないなぁと思いつつ、そっと扉を開きます。raishuken01.jpg店内は、期待に違わぬ、懐かしき昭和の匂い。 天板に貼ったメラミンを抑えるアルミのフレームの表情。 座面を紅く包んだパイプ椅子。 壁上方の角に据えたテレビは疾うに映像を流さなくなってる様子。

合板の壁に画鋲で貼ったお品書き。raishuken02.jpgその下に置かれた扇風機がそよそよと活躍しています。

おばあちゃんにお願いしていた「ラーメン」が届きました。raishuken03.jpgお店に似つかわしい、素敵な佇まいであります。

啜るスープは、煮干しがひたひたと利いたオツなお味。raishuken04.jpg raishuken05.jpgraishuken06.jpg こうでなくっちゃと秘かに頷きます。 麺もかん水臭いなんてもこともなく、 ツルっと具合とシコっと具合の加減もよろしくて。

お店の名前を冠したのが、ソース焼きソバ「来集メン」。raishuken07.jpg意外な具沢山に悦びつつ、「ライス小」との炭水化物攻撃に自らの身を曝します。

「湯メン」も野菜の甘みが充分スープに顕れていて、いい。raishuken08.jpgraishuken09.jpg今度は、ライスに飽き足らず、 「カレーライス小」をセットしてしまう。 ちょいがけ的おウチカレーにも一日の長があるよに思えてきます。

これまた別の日に、「ラーメン」のお供に添えたのが、「ソースチャーハン」。raishuken11.jpgカツなどにかけるソースは味が強すぎて正直余り好みではないのだけれど、 こうしてじゃっじゃと炒めたチャーハンとなると話が別で、 角の取れたソースの風味がそそる、そそる(笑)。 小柄なおばあちゃんに鍋を煽るよな調理してもらっちゃって、 なんだか申し訳ない気分にもなります。

1953年(昭和28年)創業とも1956年(昭和31年)創業ともいわれる、 町の老舗中華料理店「来集軒」。raishuken10.jpgずっとお元気で店を続けていただきたいとか、 もしかしたらもう辞めたいと思っていらっしゃるのに続けているのだったらとか、 暑い時にはたっぷり休むからダイジョブなのよ、なのかもとか、 働くのがアタシの活力なのよ、なのかもとか、 勝手なことをあれこれ思ってしまうけど、 やっぱりなくなってしまうのは寂しく、なくなれば二度と得られないお店であります。 平日も、水曜日木曜日は定休日なので気をつけて。 注文は、テーブルで待っていないで、厨房口辺りで声を掛けるのがよいでしょう。 どうやら、浅草の来集軒製麺所の暖簾分けのお店であるようです。

口 関連記事:   三杯屋「武蔵屋」で 絶好の武蔵屋日和三杯後のお猪口油絵の空気(14年09月)


「来集軒」 台東区台東2-31-9 [Map] 03-3831-3593
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生姜醤油ラーメン「青島食堂」で 懐かしくも力強き生姜醤油中華

aoshima.jpg秋葉原~浅草橋界隈に旨いご当地ラーメンの店があるという。 そりゃ知らなんだと早速足を向けたのは、 昭和通りの秋葉原。 目的地は、総武本線と神田川に挟まれたエリア。 高架の脇をずいっと進んで、一本神田川寄りの薄暗い通りに出る。 はて、目当ての店が見つからないぞと思ったところが店の横でした。
節電対応か、看板のスポットは消えていて、シャッターが降りている。aoshima01.jpg何故か入口ところのシャッターすら半開きで、 営業終了間際のような佇まいなのが、「青島食堂」だ。

やってますよね?といった風情で硝子戸を引くと、 実に快活に「いらっしゃいませ」と声が掛かる。 慣れてるフリして(笑)、券売機の前に立ち、ボタンを眺めます。

沢山あるボタンのほとんどが無表示の白いまま。 それだけでシンプルなメニュー構成であることが判ります。 「青島ラーメン」か「青島チャーシュー」か、いずれかの大盛りか。 面白いのは、大盛りとは別に「自家製麺100円増し」「自家製麺50円増し」というチケットもあること。 ひと玉100円、半玉50円ということなのかもしれません。 「青島チャーシュー」に「茹でほうれん草」「6つ切りのり5枚」のトッピングをお願いします。

ああ、懐かしくも力強い見映えのどんぶり。aoshima02.jpg立ち昇る湯気には、醤油の香りに仄かな生姜の風味が混じってる。

どれどれとスープを啜ると、なははは、素朴に真っ直ぐ旨い。aoshima03.jpgaoshima04.jpg濃いめの醤油の甘さを基調に生姜の香気がぐいっと誘います。

自家製の麺はといえば、加水ぷりっとつるつる縮れ麺。aoshima05.jpgそれがスープによく似合う。 スープの脂をちょっと纏った麺が口元を滑るは、艶かしくもあり。

店の隅には、キッコーマンの業務用「こいくち」本醸造醤油の一斗缶が無造作に積んである。 それがタレになり、このどんぶりのスープに輪郭とコクと仄かな酸味を齎す。 化調もまったく気になりません。

店内に貼られた営業許可証でも確認できるように、営業者の所在は、新潟・長岡。 ここ「青島食堂」は、長岡が誇る生姜醤油ラーメンの秋葉原支店。aoshima06.jpgヒロキエさんみたいに長岡のお店にも訪れてみたい、 ふとそんな気にさせる魅力があります。


「青島食堂」秋葉原店 千代田区神田佐久間町3-20-1 [Map] 03-5820-0037
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讃岐饂飩「根の津」で 小粋酒肴と肉つけ麺と釜めんたいバター

nenotsu.jpg根津駅降り立つ不忍通り。 いつぞやお邪魔したバー「根津BAR」の路地をちらっと覗いて、もうちょと往くと根津神社の信号に下になる。 信号を渡って右手の裏道に入り込めば、魚菜「根津 呼友」がある辺り。 左手に足を伸ばせば津軽料理の「みじゃげど」だ。 その信号を根津神社、本郷通り方向へと忍び込むと、どこか凛とした表情で佇む讃岐饂飩の店「根の津」が見つかります。
nenotsu01.jpg暖簾を払って、重いような軽いような不思議な手応えの引き戸を開くとそこは、 小じんまり具合が心地良さそうな空間。 入れ込みの六人掛けのテーブルの隅に場所を得て、お品書きを眺めます。

そんな気分で、久し振りの芋の「山ねこ」。 水割りにしてもらって、肴を所望します。
ビールにも似合いそうな「根の津風キツネ焼き」。nenotsu02.jpgnenotsu03.jpg納豆と豆腐にベーコンを巾着にして焼いたもの。 パリパリクシュっと囓ると、 お揚げの芳ばしさと納豆の風味が交叉して、美味い。 ベーコンの塩っ気もいい感じです。

「蛸バジル」かなんかで、水割り「山ねこ」もグラスを呑み干したところで、 お願いしていたうどんの準備にかかってもらいます。nenotsu04.jpg

お願いしていたのは、「肉つけ麺」。nenotsu05.jpgnenotsu06.jpgnenotsu07.jpgどうも武蔵野うどんの習慣が染み付いていて、 そんなことになりがちな自分が微笑ましく(笑)。 三つ葉を浮かべたつけ汁には、 バラ肉のみならず、刻んだ茄子なんかも仕込まれています。

そしてなにより、うどんの艶やかさが美しい。nenotsu08.jpg「エン座」のうどんの艶かしさが印象深いけど、どっこいこちらのうどんも負けてない。 生命反応があるかのように滑らかにちゅるんと口許を滑る。 バラ肉の脂のコクにも負けない粉の風味が直球で届く感じ。 いいね。

そんなこんなで裏を返すようにふたたび根津神社の参道辺り。 nenotsu10.jpg偶然同じ席に案内されて、今度は黒糖の「朝日」を所望。 ツンと粋な辛さが鼻を抜ける、安曇野産「葉わさびおひたし」でチュルチュルと。

これまた麦酒にも合いそうだなぁと「煮干しの天ぷら」。nenotsu09.jpg硬い歯触りをちょっと覚悟していたら然にあらず。 さくっと柔らかな調子で、口に含む旨味と風味はまさに煮干しのそれであります。

さて、「おうどんを」と声を掛けて届いたのは、 「根の津」のスペシャリテの釜あげうどん、「釜めんたいバター」。 トッピングは大葉に海苔に明太子。nenotsu11.jpgあつあつのうちにエイヤとばかりに掻き回す。 立ち昇る湯気に明太子に海苔の匂いが混じります。

nenotsu12.jpg しっかりと明太子のソースを纏って、艶やかさとはまた違う妖艶な表情になる。 うんうん、明太子スパ とは 非なる食べ口の。nenotsu13.jpg バターの風味をもっと利かせようとするとクドくなっちゃうかなぁなどと考えつつ、 またズルズズと啜る。 終盤戦になったら粉チーズなんて振ってみたりするのも一手であります。

根津神社の参道の讃岐饂飩の店の名は「根の津」。nenotsu14.jpg小粋な蕎麦屋に通じるようなささやかな昂揚感を想わせる、 意外と稀有な存在のうどん店なのかもしれません。 釜揚げうどん「釜竹」と此方「根の津」。 根津界隈にうどんの佳店が並ぶのにはなにか訳でもあるのでしょうか。

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「根の津」 東京都文京区根津1-23-16 [Map] 03-3822-9015
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