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旬味「泰平」で越前九絵若狭甘鯛刺身喉黒生雲丹蒸し若狭鰈一夜干し幸橋北詰の料理街

或る如月の福井市街。
雪はそう多くなかったものの、やはりまだなかなかにひんやりとする。
市街地に沿うように流れている足羽川の土手を歩けば、澄んで凛とした冷たい空気が川面から上がってくる。
少し散策しようと桜橋から川向こうに渡り、愛宕坂の階段をゆっくりと登る。
坂の上の展望台から市街を眺め遣ってからふたたび、足羽川のほとりまで降りてくる。

幸橋で足羽川を渡り戻り、土手脇の小路へ。 そこで見付けたのが、
旬味「泰平」の粋な佇まいだ。

格子戸の脇に掲げた黒板には、
本日のおすすめの白墨の文字。 “若狭”と謳う品が三つ、続いています。

料理屋としての気風と情緒に溢れる店内。 奥へと続く石畳の通路の脇には、
箪笥階段が設えてある。

海鼠の酢の物といった突き出しで、瓶の麦酒。 分厚い俎板の上で細魚を捌く様子を眺めながら、
ゆっくりとグラスを傾けます。

A3大の紙にびっしりと書き込まれた圧巻のお品書き。 黒板の品書きを横目にしつつ、
あちこちに目線が飛んでしまい、
まずは落ち着けと自分を宥めます(^^)。

突き出しに続いてやってきたのは、
「ゆり根の塩蒸し」。 茹でずに蒸すのもまたちょっとした料理屋のひと手間。
百合根独特の歯触りと甘味が繊細に届きます。

若狭ののど黒か、甘鯛か、桜鱒か、赤貝か。
越前の鯵か、目地鮪か、烏賊か、ばい貝か。
迷わされ惑わされた挙句選んだのが、
「越前の九絵の刺身」。 小葱と一緒に山葵をちょんのせしていただく。
柔らかな甘味を思わせる旨味に上品な脂が、実にいい。

欲張って「若狭甘鯛の刺身」もお願いしてしまう。 皮目を湯引きしているような様子。
松笠に仕立てる印象も割と強くある甘鯛で、
刺身でいただくのは初めてだったかもしません。

お酒もやっぱり地のものをと鯖江の蔵、
加藤吉平商店の「梵(ぼん)」のうすにごり。 滑らかにするすると入ってしまいます(^^)。

軒並み気になるお魚メニューゆえ、
お次にと選んだのもそのうちのひとつ「のど黒生うに蒸し」。 のど黒と生雲丹とは実に贅沢な取り合わせ。
蒸し上げられてふっくらしたのど黒の身に、
雲丹のコク味が色気を添えて、佳き哉、佳き哉。

厨房の焼き台を眺めていたら、
炙った干物も欲しくなる。 そこで、「若狭がれいの一夜干し」。
干して一旦凝集した旨味が、
炙ったことでふたたびそっと花開くよな、
そんな美味しさだ。

福井市街、幸橋の北詰近くの小路沿いに、
旬味「泰平」はある。 若狭や越前、能登の食材を惜しみなく供する、
びっしりと書き込まれた品書きが印象深い。
近くには他にも料亭や割烹、懐石料理店などが見付かり、
界隈がちょっとした料理屋街であることを知るのです。

「泰平」
福井県福井市中央3丁目14-11 [Map]
0776-25-4686

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