定食「美松」で菜種油の牡蠣フライ鰆の味噌焼立田揚げ池袋駅前大通りでこの風情

東京芸術劇場のリニューアルに続いて、そのアプローチともなる公園にも改修の手が入った池袋西口界隈。
愛称とされる「グローバルリンク」はピンと来ないけれど、浮浪者や酔客の姿が目に留まり、切なくも複雑な心境を齎す光景もみられたエリアの様子も変わってきているように映ります。
舞台棟では演奏音を50%だけ反射する反射板などを用いて、屋外では難しいとされるクラシックの生コンサートを可能にした、というのは本当にそう機能するのでしょうか。

そんな西口公園から西口五差路を渡って、
立教通りとの二又を過ぎた辺り。
植栽の陰で何気なく「ごはん」と示す木札のサインが見付かります。池袋駅前と云ってしまってもいいような大通り沿いの舗道にあって、
水盤にも似た睡蓮鉢が涼しさを誘う。
木札の裏側には、「ふくはうち」とあるのが微笑ましい。

ちょうど満席ゆえ、入口の暖簾の裏でしばし待つ。ふと右手の棚を眺めれば、雑誌・書籍が並んでいる。
熊谷守「虫時雨」、水上勉「精進百撰」「折々の散歩道」、
NHK「江戸の食・現代の食」などのタイトルに、
「山手線ひとり夜ごはん」「dancyu」といった文字も並ぶ。

カウンターの頭上を見上げれば、下がり壁に沿って張り出す小屋根。
竹天井には千社札が処狭しと貼られている。これまたふと奥の壁に目を遣れば、器の図画とともに、
「Teishoku MIMATSU」と標す銘板が何気なく、ある。

開け放った扉の暖簾の向こうは池袋の大通り。
焙じたお茶の湯呑みにも何気ない味がある。

カウンターから正面に見据える竹編みの壁に、
その日の品書きを白墨で整然と書き留めた黒板が掛かる。
晩秋に訪れれば、品書きの筆頭はカキフライ。
既に横線一閃で消されてしまっている行もあって、
急に気が急いてくる(笑)。使用している菜種油が国産100%であること。
使っている卵が、白州の平飼いのものであること。
そのことが味のある文字で木札に示されている。
そして、茶碗に盛り込むごはんは、
雑穀米、玄米、白米から選べる。

品書き黒板の縦長な二枚目には、
単品のお惣菜メニューが並んでいる。何気なく「やっこ」を註文すれば、この風情。
右手の先あたりにお猪口がないのが不思議でなりません(笑)。

やっぱり註文んでた「カキフライ」は、
大き過ぎないサイズがジャストフィット。
カラッとした軽やかな揚げ口の衣の中から、
牡蠣の滋味が素直に零れてくる。「美松」の牡蠣フライの特徴は、その揚げ口に留まらず。
ホロホロしっとりと甘いカボチャのフライなんぞを、
合いの手を入れるように用意してくれるのが粋じゃぁありませんか。

別のおひる時には「サワラのみそ焼き」の定食をいただく。西京チックに味噌に包まれて味の沁みた鰆が美味しい。

雑穀米に潜む甘さを探す感じがなんだか妙に嬉しい。味噌汁はと云えば、「カキのみそ汁」への変更が出来たりするのです。

おひるのザ定食的「鶏の立田揚げ」なんて選択もいい。ピュアな菜種油の恩恵をたっぷりと受けているような端正さがある。
菠薐草の小鉢を添えたりするのも秘かな贅沢でありますね。

池袋西口の大通りに面して、粋な定食屋「美松」はある。いや、あった、というべきか。
今度こそは、空席を待つ人にたとえ白い目でみられようとも、
此処のカウンターでひるから呑んでやるんだ!と、
そう思っていたのに、この春、店を閉めてしまった。
今は、3年程前から「美松はなれ」として営業していた、
裏通りの店へと移って、
コロナ禍の最中ながらも盛業中です。

「美松」
豊島区池袋2-18-1 タムラ第一ビル1F(移転前)
https://teishokumimatsu.wixsite.com/teishokumimatsu

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