魚料理「高はし」で初夏暖簾穴子丼秋暖簾牡蠣豆腐冬暖簾越後村上鮭に喜知次煮付

takahashi20年に開催が決まっている東京オリンピック・パラリンピック競技大会。
デザイン設計や予算措置の相変わらずの官僚的ドンブリヌケ作対応具合を露呈した新国立競技場の建設費はもとより、D社の暗躍とそのヘッポコ具合すらも邪推させる問題を起こしたエンブレムにだって相応の莫大な費用が費やされる。
新たに決まった競技場の設計やそもそもの要件の中に聖火台が含まれていなかったなんて聞くと、その基本的な準備すらできないグダグダ具合にもう笑うしかない。
でもただ嗤って済むほどの事柄ならいいのだけれど、”オリンピックのためですから”という大義名分ためにどれだけの関連費用がぶち込まれ、時にネジ曲がった政治差配がまかり通っているかと思うと辟易となる。
それ相応に予算がついていたとしても、なかなか建設土木的な側面の大震災から復興がなかなか進まないのは、なによりも人手不足によるものだそうだけれど、その人材は今オリンピック関連の工事事業に回ってしまっているのではと考えても何の不思議はない。

晴海に建設されるいう選手村。
その晴海に向かって、
既に虎ノ門あたりから汐留まで開通している環状二号線が、
いまの築地市場の敷地を突っ切って、
豊洲方向へ延伸して完成するという。

計画道路が世界的に知られている市場の場所を通るという、
そんな計画をした奴がそもそもアンポンタンなのだけど、
一度計画してしまうと何が何でもとそれに拘泥して、
機を見るに敏の変更なんてできないのが行政の劣悪なところ。

経済効果をゴニョゴニョ謳っていることはさて置いて、
聖火台のない競技場に400億円も支出するのだったら、
オリンピックなんて止めちまって、
その支出を築地市場の改修に回せば、
今の場所で世界の築地市場が存続させることができるだろうにと、
何度も何度も考えてしまうのだけど、
そう考えるのはワタシだけでありましょか。

閑話休題。

いよいよ移転のための閉場をこの11月に控えた築地場内は、
いつものようにターレが行き交う。takahashi01takahashi02押し寄せる観光客の人並みは時に、
魚がし横丁の通路を埋めてしまう。
此処が遠からずなくなってしまうことをちらっと脳裏に瞬かせながら、
行列のひとりとなっているひとも少なくないでありましょう。

そんな横丁の8号館の真ん中辺り。
ご存知「高はし」の初夏の或る日の暖簾は、
くっきりとした苗色。takahashi03止まり木の覗く開けっ放しの扉たち。
魚がし横丁がより一層開放的な場所になる時季なのかもしれません。

「高はし」が耳目を集める品書きのひとつが、
名物と謳う「あなご丼」。takahashi04takahashi05期待に違わぬふっくら状態で供される穴子。
煮含める加減が過ぎず、不足なく。
煮汁の加減も甘過ぎず、辛過ぎず。
毎朝毎朝の仕込み調理にきっと微妙な匙の違いはあれど、
安定して美味しき穴子くんでございます。

別の或る日のおひるには「刺身定食」。
それは、とり貝にヒラマサに本鮪の赤身なぞ。takahashi06takahashi07定食のお供に出してくれるいつもの小鉢は、
切干大根と里芋の煮付け。
いつもの小鉢にいつも和んでしまうのは何故でしょう(笑)。

季節が移ろって秋が深まってきて気が付くと、
「高はし」の暖簾は深い紺色のものになっている。takahashi08誘うようにまだ少しだけ開け放している扉も、
もうすぐ閉じられてしまいそうな、
そんな気配も漂い始めています。

そんな時季にはやっぱり、
お待ち兼ね!とばかりに湯気を上げる、
この器が欲しくなる。takahashi09takahashi10註文を受けてから火を入れた三陸の牡蠣は、
ふるぷるとして艶かしくも滋味深い。
その滋味には白味噌仕立ての汁がぐっと後押し。
牡蠣と交互にいただくお豆腐は勿論のこと、
もうひとつ相棒の鮪の角切りも粋な役回りを演じてくれています。

霜月の或る日には珍しく”兎に角鮪”な気分になって、
生本鮪赤身と中トロの刺身盛り合わせ」を所望する。takahashi11takahashi12思わず見詰めてしまうのは、
切り分けた鮪の断面の肌理がとっても美しかったから。
こんな贅沢はじっくると目を閉じて堪能しなければいけません(笑)。

年が改まったら替えることにしているのか、
新年早々に訪ねた「高はし」の暖簾は、
雅な気配を帯びた臙脂色。takahashi15流石に閉じている扉の前には例によって、
その日におススメの一品や定番名物の品が貼り出されています。

年末から気になっていたのが、
「越後村上塩引鮭」なる短冊。
値が張るもの故、一度躊躇して、
改めてでもやっぱりと努めて冷静に註文を入れました(笑)。takahashi16takahashi17こんがりと焼き込んだ皮目の厚みに、
鮭の身の胆力を思ったりする。
ほろっと解れる艶やかな身は薫り高く味わいが濃いぃ。
塩分気になるお年頃故、
塩引きでない状態ではいただけたらもっと素敵と思うも、
それが叶うのもなのか大将に訊き損ねてしまいました。

値段に躊躇してついでに腰が引けていたものと云えば、
食堂高はしの煮魚四天王の一角「きんき煮付け」。takahashi18takahashi19takahashi20その紅い皮目の鮮やかなこと。
儚き薄皮に包まれた透明感を含む白き身の甘さよ。
深い海がこんな美味しさを育んでくれるなんてと、
改めて驚いてしまいます。

お向かいの店の前によく木製の台車が置かれている。takahashi21これを見る度に、ずっと昔、
実家の隣にあった青果市場のことを思い出す。
台車に乗っかって引っ張って、
市場の中を走り回ってよく怒られたんだ(笑)。

こだわりの魚料理を市場の気風とともに供してくれる、
築地「高はし」ここにあり。takahashi22毎日のように日参するひとあり。
また遠く名古屋から足繁く通うひともあり。
そんな客筋を少なからず生む魅力を持つこの店も、
豊洲への移転を余儀なくされようとしています。

「高はし」
中央区築地5-2-1 築地卸売市場魚がし横丁8号館 [Map] 03-3541-1189

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