割烹「おお杉」で牡蠣胡麻油鍋に逆立ち炭火焼琵琶湖産本諸子絶品なる簳魚天麩羅

ohsugi琵琶湖の南西に位置する大津市。
一応県庁所在地なんですけどねと聞かされて、疑う訳ではないけれど県庁がどこにあるのかと調べると成る程、滋賀県の県庁は大津にあるのですね。
件の県庁は、JR大津駅北口から割りとすぐの場所にある。
泊まったホテルからもすぐなので表情を窺いに足を向けると、ひっそりとした中にこじんまりとしつつも風格のある建物が拝めた。
明治4年に建てられた登録有形文化財であるらしい。

県庁のある場所は、どこかの時代で町の中心であった筈なので、
周囲にはそれなりに飲食店街があるように思っていたのだけれど、
滋賀県庁の周りは実に静か。
旧来の繁華街は浜大津寄りの方になるのかなと考えつつ、
県庁を背にして歩き出す。
と、そこでいい表情をした店の灯りが目に留まる。
ちょっと敷居が高そうだけど、一丁お邪魔してみましょうか。

店先のお品書きを眺めてから、
右手のアプローチを進む。ohsugi01道路からすぐに入口を置かない設えは、
やはり一定の風格を思わせます。

縦格子に匿った道路寄りはテーブル席になっているようで、
お一人さまは入って正面のカウンターへと迎えられました。ohsugi02ご主人と思しき御仁に会釈を送り、
小さな麦酒をとお願いした肌理細やかな泡からスタートです。

お通しがいきなり面白い。ohsugi03高さを三段に変えた小皿に、
煮付けた鰯や白和えなんかが盛り付けてある。

この日の品書きを捲れば、
気なる行が続いていて、困る(笑)。
三品ある牡蠣の料理から「かきごま油鍋」をお願いしました。ohsugi04出汁の利いた醤油の仕立ての鍋に胡麻油の色が浮かび、
漂う匂いが香ばしい。
牡蠣の滋味に胡麻油のコクが備わって、
成る程、牡蠣はこふいふ鍋にすればいいんだと膝を打つ気分になる。

その並びに書かれてあったのが「琵琶湖産 本もろこ炭焼き」。
公魚とは違うんですよねとご主人に訊くと、
これが諸子ですと見せてくれた。ohsugi05そもそもが、琵琶湖特産魚で、
京都でも取り扱われる高級魚であるらしい。

カウンターに炭火の網が据えられて、
ご主人から焼き方のご指南がある。
まず両面をじっくり目に焼く。ohsugi06ohsugi07次に泳いでいるような姿に諸子を網に置き、
魚のお腹側をじっくりと焼きます。

お腹側が焼き上がったらなんと、
網目の間に諸子を頭から突っ込んで、
逆立ちスタイルで頭もじっくりと焼くお作法。ohsugi08中々拝めない光景であります。
誰ですか、スケキヨスタイルだなんて云っているのは(笑)。

こうして兎に角、四方からじっくり焼いた諸子は、
生姜醤油にちょん漬けしていただきます。ohsugi09公魚よりも濃いぃ滋味があり、
じっくり焼いた皮目が香ばしくて儚くも旨い。
決して清澄ではないと知る琵琶湖の魚が故の、
じっくり焼きではあろうと想像するも、
網の上の逆立ちとじっくり焼いた滋味がいいね。

近江地酒から「喜楽長」を燗でお願いして、
改めてこの日の品書きを物色する。
「近江牛あぶりみすじ」の隣に見付けたのが、
「やがら天ぷらカレー塩」。
ヤガラって、あの、細長い魚のヤガラですよねと、
そう訊ねると、にっこりと頷くご主人。
赤いのとか黄色のとかがいますよねと重ねると、
あれ、よくご存知ですねとなる(笑)。
ダイビング中に割りとよく出会うヤツですなんて話をしていると、
ダツと同じように突っ込んできて危ないみたいですねと、
ご主人はそう仰るけれど、
目の前にいてもゆったり泳いでいる様子しか見たことがありません。

そんなこんなで註文した簳魚の天麩羅がやってきた。
添えてくれたカレー塩をほんのちょっとだけ付けて、
お初のヤガラだなぁと思いつつ口に運びます。ohsugi10おおおおおおおお。
これは旨い!
鱧なんかより断然美味しいじゃないですか!と思わず口走る。
あ、京都も近い関西圏でこう云うと引かれちゃうかな(笑)。
心地いい弾力の中から濃密な旨味が炸裂する。
頃合いよく天麩羅にしているからこそのことなのかもしれないけれど、
いやはや吃驚した。
水中で割りとよく出会う簳魚が、
こんな美味しさを秘めていたなんて。
専ら赤い体躯のヤガラが入るようです。

お代わりした燗酒を、
「田上産 菜の花漬け」あたりでちびちびといく。ohsugi11黄金色に映る菜の花漬けは、
大津の田上地域が産する菜の花を用いた、
大津の特産品であるという。
乳酸の風味も手伝って、粋な菜の花の漬け物。
大津は琵琶湖沿岸の町だとばかり思っていたら、
山間に近い地域もあるのですね。

そろそろ〆ちゃおうかなとお品書きのお食事の項を眺めると、
「かまあげそうめんカルボナーラ風」なんて一行がある。
なんだか愉しそうですねぇと訊くと、ご主人がにやりと応えます(笑)。ohsugi12適当に混ぜてお召し上がりください、
ということでグルグルクニュクニュ器の中を回すと、
カルボナーラ風というにはちょっと弛め軽めの、
玉子和え釜揚げそうめんができあがる。
この、つるんと太目の素麺はどこのものなのかなぁ。
重たくしないのがキモなのかもしれません。

滋賀県庁至近の静かな場所に割烹「おお杉」がある。ohsugi13お店に踏み入る前にちょっと身構えた気持ちは、
あっという間に和らいで途端に居心地がよくなった。
身近なる京都での修行も経ていると仰るご主人に、
その修行先を訊ねるとそれはあの「たん熊」であるという。
残念ながら「たん熊」経験はないけれど、
京料理の手練を格式張らない雰囲気で供してくれる感じがいい。
もしも今度があるのなら、その折にはぜひ、
「おお杉」名物と謳う「うなぎしゃぶ」をいただかなくっちゃ。

「おお杉」
大津市中央3-4-30 [Map] 077-526-3824

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