酒場「江戸一」で 白鷹かき醤油〆鯖鰯ぬた空中眺め合うカウンター

edoichi.jpg大塚さんもーるという横丁にある、 「天王寺 はち八」本店のカウンターで、 ハフホフッとたこ焼きや明石焼きなぞをいただいて、 フラフラッと界隈に漂い出る。 すると、近くから何やら賑やかさが伝わってくる。 足を向けてみるとそれは、 天祖神社という神社の境内からのよう。 階段を上がって行くとそこには、 一重二重の人垣がありました。

なんだろと近づいて覗き見ると、 刀を手にした御仁が、自らに気合を入れている真っ最中。 ちょうど天祖神社の例大祭の時季だったようで、 居合い奉納演舞が執り行われていたのです。

研ぎ澄ました”気”とともに、どりゃー!と振り下ろす刀。edoichi01.jpg刃を受けて、巻き藁がすぱっと斜めに切れ落ちる。

どうだ!とばかりに切り落とした断面を確かめる。edoichi02.jpg背後には、昨今のラーメン店主よろしく、腕組した同志たちが見守っている。

ふたたび標的を、ぬぬーと凝視し、巻き藁のあるところに狙いを定める。edoichi04.jpgぬぬぬー。

いざ、参るぞ!と刀を振り翳す。edoichi03.jpgむむむー。 背後のラーメン店主ポーズの者は、幹越しに小首を傾げてその瞬間を待つ。

えりゃー!edoichi05.jpg見事今度は、真一文字に一刀が振るわれ、 敢なく散った巻き藁を確かめるまでもなく背を向ける。 拍手喝采であります。 模擬の居合い刀でないとすると、真剣だということなるね。 警察への届出なんかも済ませていたのでしょう。

天祖神社の鳥居を後にして、南大塚通りを渡ったエリアを散策する。edoichi06.jpgぐるっと廻って辿り着いたのが、ご存知「江戸一」の前でした。

凛とした”気”の漂う格子戸と扁額。edoichi09.jpg窺うように払った暖簾の奥は、 これまた静謐を基調としたよな空気を帯びています。

落ち着いた肌合いのコの字のカウンター。 向かって右手には大きな鏡があって、 その先にもまだカウンターが続いているような錯覚を覚えます。

お品書きは、中央奥の頭上に下がる木札の並び。 まぐろぶつ、焼きたらこ、あん肝煮、たらの昆布〆に、 さらし鯨、鰹の酒盗、厚揚げ、カラスミ等々。 向かい側に座るご隠居さんやおひとりさま女性客の視線がちらちらと、 時折其方へと向かいます。

灘の樽酒、「白鷹」をお燗でいただきます。 「白鷹」といえば、伊勢「一月家」の看板にも刻まれていた神宮御料酒でありますね。 杉の香りがふっと漂い、オツな気分をそっと鼓舞してくるようです。

そんな燗酒のお供には、例えば「かき醤油漬け」。 広島産だという牡蠣がゆるりと醤油に滲みている。 胡椒がよく利いています。

「合鴨つくね」は、定番のひとつである模様。 串から剥がすように齧ると、ほろっと合鴨の風味が零れる。 鶏のつくねとは違う、やや強めの香りがいたします。

「いわしのぬた」というのがあったので、それを追加してもらう。 今まで鮪とか青柳、分葱のぬたは見掛けても、鰯のぬたは初めて相見える。 ふむふむ、鰯に酢味噌ってのもオツなものでありますなぁ。

そして、これまたこちらの定番のひとつであろうところの「〆鯖」。 これがまた、なんとも美しい。 容姿端麗、眉目秀麗であります。 浸した醤油に脂が滲む。 蕩けるような美味さを「白鷹」でまた拭います。

もう一品いこうかな、ってなところでさっと切り上げて長っ尻しないのも、 ちょっとした粋の嗜みってなヤツでこざいましょう。

お勘定をお願いすると、女将さんが丈の短い算盤を手に近づいてくる。 どうやら、お皿をみて勘定するようで、値段があまりバラバラしないよう、 似たような金額のものは同じ値段にしているみたい。 ご馳走さまです。

お店の中からふたたび暖簾を払うと、目の前の南大塚通りを神輿の巡行が往く。edoichi07.jpgこんな時間にも宮入するのでしょうか。

夙に知られた銘酒場「江戸一」は、大塚駅前にあり。edoichi08.jpg少しのざわめきの中で、 見知らぬ客同士がカウンターを挟んだ空中を思い思いに眺め合う。 燗の番をしていた女将さんが時折、顔を出す。 冒頭にやや感じた堅苦しさは、お店の所為ではなくて、妙に身構えた自分の所為。 ひとりの時間をそっと過ごしたいが為に訪れる客も少なからずいるようです。 両壁に据えた行燈看板が「江戸一」と示す、八方篆書にも見える書体が、いい。 あ、「江戸一」と云えば、同名の武蔵小山「江戸一」の女将さんは元気かなぁ。

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「江戸一」 豊島区南大塚2-45-4 三栄ビル1F [Map] 03-3945-3032
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