
川沿いを走る地下鉄に乗って、
降り立ったのがシェーンブルン駅。
そう、ウィーンの代表的な観光スポットのひとつ、
シェーンブルン宮殿へとやってきました。
陽射しのなかなか強い午後で、
汗を掻きかき正門前へ。
大貴族の隆盛と栄華にいざ謁見であります。
シェーンブルン宮殿は、彼のハプスブルク家の夏の離宮であったという。
いやはや、門からのアプローチにして既に広く遠く、
一体どんだけ広いのだろうとまた汗が出る(笑)。

正面に見据える宮殿には、なんと1441もの部屋があるのだそう。
フランツ・ヨーゼフ一世の執務室とか皇妃エリザベートのバスルームとかモーツァルトがマリー・アントワネットに求婚したという鏡の間などなど、コースに従って見学です。
見学コースの窓から覗いていた庭園側に廻り込むと、想像を遥かに凌ぐ広大さ。

どこまでも続く皇太子庭園のずっと向こうの丘に凱旋門グロリエッテを望む。
この光景ですら宮殿の一部に過ぎないなんてね。
宮殿を後にして、ふたたび旧市街方面へと戻ります。
前夜お邪魔した「Amacord」の面したナッシュ・マルクトのご近所界隈。
カフェ「Anzengruber」の前に佇みます。

古くからの街角のカフェ、飾らずずっとある感じがいいね。
入ってすぐのテーブルのソファーにお尻を滑らせて。
天井高くゆったりとして、カウンターの高いスツールには常連らしきオジサマが新聞を広げています。

奥にあるのが喫煙者エリアで、古いカフェにして分煙がなされているンですね。
通りに掲げた看板にあるように、「ORIGINAL Budweizer」の店。
早速そのグラスをいただきます。
v.fassとあるのは樽から注ぐ、ってな意味かな。

バドワイザーというと、どうもあの妙に軽い呑み口のアメリカンなヤツという気になってしまうのだけど、そもそもバドワイザーというのは、古くからのビールの産地、チェコのチェスケー・ブジェヨヴィツェ市(独:ベーミッシュ・ブトヴァイス Böhmisch Budweis)のBudweis からきているらしい。
知らなかったなぁ。
お供にと、「Extrawurst mit Öl & zwiebel」あたりを。

特製と謳うハムを極薄切りにして、これまた極薄にスライスした赤玉葱をトッピング。
そこへ胡椒とさらっとした植物性のオイルというシンプルなお皿。
ちょっとしたおウチおつまみに真似してしまいそうです。
お供を得て、ビールのグラスをもう一杯、「Grieskirchner」。

Grieskirchnerというのは、リンツ西方の小さな町のことらしい。
こちら、クリアでドライな喉越しで迫ります。
そしてお目当ての「グーラッシュgulasch」。

それは、牛肉の旨みと玉葱の甘みがぎゅぎゅっと詰まったソース。
やや塩っ気が強く、焦げに似た香ばしさがあるのが此方のグーラッシュの個性かな(焦がしちゃった?)。

Anzengruberってどんな意味なんだろねとメニューを引っ繰り返すとそこには、
顎鬚をたっぷりと蓄えた御仁の肖像がある。

そして、その御仁は壁の古びた額の中にもいて、1839-1889と生没を示してある。
ああ、そんな頃から日々を重ねてきたカフェなのだね。
120年のほど歴史を持つ、ウィーンの街角の老舗カフェ「Anzengruber」。

額の御仁が創業者ということではなくて、
当時の常連だった作家の名前を拝借して店の名前としたものらしい。
池波正太郎御贔屓の料理屋が店の名を「正太郎」と改めてしまうような感じかな(笑)。
「Anzengruber」
Schleifmühlgasse 19, 1040 Wien [Map] +43 1 5878297
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